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2008年5月11日

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レンジを拡げる。

ぼくらは多様な関係性のなかで生きていて、さまざまな役割を担っています。仕事における役割もあれば、家族のなかの役割もある。それぞれのペルソナというかキャラクターのようなものがあって、役割によって発言や行動が制限されることも多い。

ブログに関してもそうかもしれません。なんとなくぼくは背伸びをして書き始めたところもあり(途中から、方向転換をはかったけれど)、ハイブロウなテーマを多く取り上げて、どこかサブカルチャー的な雰囲気をめざしていたような気がします。紹介する音楽は、インディーズが中心で、ヒットチャートに出てこないような曲ばかりだったりして、おまけにあまり邦楽には触れていない。

一方で、やわらかな思考をめざしつつ、ほわほわした文体を志向していました。途中からは、できるだけ子育てやプライベートのあれこれを取り上げて(ときには、恥ずかしいこともカミングアウトしつつ。苦笑)、プライベートとパブリックを横断するような内容をめざしました。これがなかなか問題もあり、うまくバランスが取れないものです。成功すると、ほんとにあったかくてそれでいて節度のあるエントリーが書けるんですけどね。

しかしながら、ほんとうはもっと吹っ切れたことも書いてみたい。書いてみたいんだけれど、BirdWingというブロガーのキャラが固定しつつある現在、なかなか壊すことができない。先日ちょっと辛辣方面に内容を振ってみましたが、やっぱりどこか抑制してしまう。これが非常にもどかしい。

基本的に読むひとを排除したくないんですよ。お高くとまってもいたくない。まだぼくにはできないけれど、ほんとうにアタマがよいひとは、どんなに難しいこともやさしく(=優しく、易しく)書けるものだと思っています。テーマは知的で難解なことだったとしても、小学生にもわかるように書けるだろうし、こころを打つことができるはず。そんな文章が書けるようになりたいものです。

ブロガーを名乗っていますが、当たり前だけれどリアルなぼくはただの一般人です。要するにちょっとだけ文章が書けるかもしれませんが(というか、うまいかどうかは別として、文章を書くのが好きであるというだけですが)、ひとりのおじさんなわけです。かっこつけてもどうかなあ、と思いました。

そこで、少しばかりブログで扱う内容のレンジを拡げてみようと考えています。ぼく個人に近いところへブログの内容を持っていきたい。

というわけで、音楽のお話です。連休や週末を使ってCDなどを整理したのですが、久し振りに邦楽を発掘して聴いてみたら結構よかった。うわ、エレクトロニカやインディーズばっかり聴いていたけど、邦楽も結構いいんじゃないの?と思いました。よかったのは、こんなアルバムです。


B00005G4G3BACK TO THE STREET
佐野元春
エピックレコードジャパン 1992-08-29

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B00006HBF3ハチミツ
スピッツ 草野正宗 笹路正徳
ユニバーサルJ 2002-10-16

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B00005FDPQCLOVER
スガシカオ
キティ 1997-09-03

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佐野元春さんは懐かしかった。先日も取り上げたけれど、若かりし日のぼくはフィルムコンサートに行ったり、カセット付きの本とか買ったりしたっけ。なんというかですね、いろんな洋楽の要素が詰まっていて素敵だと思う。音楽に励まされるというか、元気が出る。

スガシカオさんは古くから好きだったわけではないけれど、ハスキーな声がいいですね。あと楽曲のセンスはすごいと思った。ついでに歌詞のちょっとえっちなところも好み(笑)。考えてみると、佐野元春さんもスガシカオさんも、広告代理店に勤めていてミュージシャンに転職したひとでしたよね、確か。言葉はもちろん、音楽のセンスが光ってる気がします。

スピッツはどうかな、と思ったのですが、ギターのきらきら感にやられた。すーっと入ってきて、いままで難解な曲ばかり聴いていなかったかなーわたくし、シンプル・イズ・ベストかもしれない、と反省しました。知的で難解な曲もよいのだけれど、ギターの聴かせどころがわかりやすい曲も気持ちいい。

というわけで、スピッツがらみで次の映画を借りてきました。これから(というか来週の週末にでも)観るつもり。スピッツの曲から物語を膨らませて作った映画のようです。

B000NJLVYW海でのはなし。
宮崎あおい 西島秀俊 天光眞弓
ポニーキャニオン 2007-05-25

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かつてのぼくであれば、こういうことは思っていたとしても書きませんでした。ブログに書く内容を選んでいた。インディーズ志向なのに邦楽のメジャーを取り上げるのはどうかな?という変な選別志向があったんですよね。

ただ、それが逆に自分で自分のレンジを狭めていた気もするので、ちょっと制限を緩くしてみることにします。といっても、てきとーに何でもかんでも書くのではなくて、BirdWingブランドを守るというか、一定レベルの文章のクオリティは保ちたいと思っています。個人的にも、クールで知的で、それでいてあったかいブロガーを標榜しているので。

+++++

そういえば。今日も半額セールのCDショップに行って、この音楽DVDを買いました。なんとなくYMO(というか高橋幸宏さん)つながりという感じです。

B000EZ8BR0ザ・ヴェリー・ベスト・オブ
ジャパン
EMIミュージック・ジャパン 2006-05-17

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ううむ。半額+古本屋で本を売りさばいたお金を充填したので、1300円ぐらいで購入したのだけれど、この内容はどうかなあ。それほどのファンではないので不満が残る。映像のクオリティが悪すぎる。音楽自体はとてもいいんですけどね。フランジャーききまくりの音に、おお!という感じ。退廃的な何かが、かき立てられました。JAPANに関しては、CD買えばよかったのかも。というか、ポール・ウェラーのビデオにしとけばよかったと後悔しています。

投稿者: birdwing 日時: 23:37 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2008年5月10日

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音とビジュアルに癒されて。

エディ・ヒギンズのCDを購入したときに新宿のTowerRecordsをうろうろしながらみつけたのが、schole(スコーレ)というフリーマガジンでした。そもそもぼくは自称フリーマガジン収集家で、R25、L25をはじめとして、東京の地下鉄においてあるmetropolitana、metro min.は必ず持って帰っています。捨てることができないので、部屋がえらいことになっていますが。

そんなわけでいろんなフリーマガジンを読んでいるのですが、このschole(スコーレ)がいい。素敵です。クオリティが高いと思います。インディーズの音楽、カフェやアートを中心に紹介されているのですが、初回限定でCD-ROMも添付されていて、インディーズのアーティストの作品が8曲ほどコンピレーションとしてまとめられています。ここに収録されているエレクトロニカがもろにストライクゾーンで、アンビエントな質の高いサウンドにびっくりしました。これ、無料といわず1500円ぐらいで売れると思う。いや、ほんと。

思わず04と05の2冊を持って帰ったのですが、小冊子をめくってアートを楽しみつつ、CDに収録されている音楽を聴きながら、とても充実した時間を過ごしています。

080510_schole04.JPG

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04号のインタビューでは、ぼくもお気に入りのI am Robot and Proud(Shae-Han Liemさん)のインタビューが掲載されています。レイハラカミのファンだということも書かれていて、なるほど、と思いました。音楽について、以下の言及も納得。

私は日常における様々な要素について、たとえば天候、人々、あるいは思い出などから発想を得ることが多いです。もちろん、曲のタイトルからその曲がどういった内容であるか、想像できるものもあります。しかし、私は曲のトピック(主題)の有無や理解度はリスナーにとって重要ではないと思っています。なぜなら、リスナー自身は曲を聴きながらそれぞれの物語を想像するものだからです。

080510_schole_iamR.JPG

ぼくも同じですね。共感。

不勉強なテキスト論でいうと、読者の受容美学のような観点に近いと思うのですが、作り手の想いというのは確かにあるのだけれど、それを100%伝えることが表現ではない。むしろ勝手に受け手であるリスナーのなかで、想いを増幅させたり、物語を作り変えたりできること。表現に加担して解釈を作りかえる余地があることが、すぐれた作品であるように考えています。

だからどんなに完璧な作品であっても、読者に理解を要求するような作品は質が低いのかもしれない。読者も想像性=創造性を発揮できること、ここはこうしたら面白いんじゃないかな、とカスタマイズの余地があることが、作品としても豊かといえるのではないか。そして、リスナーが満足すれば、それが作り手にとっても至福のときであると思います。

ええと、話が横道にそれましたが、彼のアルバムで持っているのは以下の2枚です。

B000CCD0BWThe Electricity In Your House Wants To Sing
I Am Robot And Proud
Darla 2006-07-24

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B000MGBTSYCatch/Spring Summer Autumn Winter
I Am Robot and Proud
Darla 2007-03-13

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Scholeに掲載されているアートでは、04号のYoshimi。。。さんのSora。。。がよかったです。

080510_schole_art1.JPG

それから、Yosua Seasunさんの「月の進化とコスモス畑」という幻想的な写真も素敵でした。

Yosua Seasunさんはインターネットラジオにも取り組まれているようです。考えてみるとぼくの音楽および宅録の原点は、小学校および中学校の放送部でDJ(ディスクジョッキー。回すほうではなくて、喋るほう)をやっていたことにありました。ミキシングのコンソールをいじったり、録音することに興味があった。生ロクに関心がありました。

その後、聴いているだけではなくて自分で作ったらもっと楽しいだろう、ということでバンドや宅録に進んだのですが、先日、声をカミングアウトしたこともあり、ラジオのようなこともやってみたいなーとちょっと思ったりしました。ええと、やりたいことが多すぎなので時間ありませんが(苦笑)。

ほんとにやりたいことが多すぎなのですが、ブログについても、もう少しきちんといろんなことを考えてみたい。なんだか最近、海外からのスパムコメントとトラックバックに悩まされているのですが、さすがにそろそろMovableTypeは4にバージョンアップしたいところ。CSSについても独学で勉強して、もうちょいデザイン的にも(派手ではなくても)クールなサイトにしたいなーと考えています。

音とビジュアルに癒されたら、なんだかいろいろと欲張りな気持ちが増えてきました(笑)

+++++

Scholeのサイト。最新号に掲載されているmp3の音楽ダウンロードもあるようです。
http://www.scholecultures.net/magazine.html

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投稿者: birdwing 日時: 23:54 | | トラックバック (0)

2008年5月 6日

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連休の最終日に手に入れたもの。

黄金の休日の最終日、東京は暑い一日でした。後ろにしか進めないよう(涙)と情けないことを言っていた次男くんを幼児用の自転車(補助輪付き)に乗せて公園に行ってきたところ、帰りにはきちんとペダルを漕げるようになっていました。

やはりものごとのコツを掴むには、一定以上の時間が必要になることもあります。できないっ!とすぐに投げやりになる息子ですが(誰に似たんだか。ん?わたくしですか)、ちょっと付き添ってあげればできるようになるものですね。

うちの息子たちは外に出るのが面倒、嫌だ、というインドア志向なのですが、無理やりに連れ出してみたらそれなりに楽しそうだ。そういえば次男くんは、喘息になる前には、ベビーカーで公園に連れて行って、ぽんと地面に置くと、ぜんまいが切れるまで走りつづけている子供だったっけ。なんとなく昔に比べるとへろへろな走りぶりですが、やっぱり子供は、公園を走り回っている姿が子供らしくてよろしい。

そんな散歩から帰ってきて、とーさんであるぼくは映画観ようかCDでも探そうかとまた近所をうろうろと彷徨ってしまったのですが、何度か入ったことのあるちいさなCDショップに、閉店セールのビラを発見。音楽好きの、ちょっとかわいらしいおばさんがひとりでやっているショップで、ログハウス風の店内などが気に入っていたのですが、5月で閉店するらしい。そんなわけで、あらゆるものが半額になっている。

キリンジの最新アルバムがあり、どわーこれも半額か!?と思って裏返してみたら、割引対象外のシールがあった(苦笑)。まあそりゃそうだよね、と気を取り直してDVDのコーナーへ。コーネリアスとHASYMOのライブDVDが気になって、まさかこりゃ半額じゃないよなあと思いつつ、おばさんに聞いてみると「半額ですよ(あっさり)」とのこと。うぇぇ?と思いつつ、ついついHASYMOのDVDを購入してしまいました。昨年の5月に行われたライブですね、これです。

B0012F9B52HAS/YMO
HASYMO
エイベックス・エンタテインメント 2008-03-12

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YMO世代なんだけど、その割にあまりちゃんと聴いていない。だいたい中途半端なファンは排除されてしまいそうで、あんまりYMOのことは語りたくないのですが、それでも久し振りにDVDで音楽ライブを観て楽しめました。

なんか、ものすごくオーガニックというか聴きやすくなったな、YMO。まず、オープニングの「以心伝心」の楽曲のよさにあらためて感動。この英語詩のサビの部分が好きです。ストリングス系のシンセのアレンジも素敵だ。それから高橋幸宏さんの声いいなあ。昔から大好きでした。こういう優しい声で歌えたらしあわせだろうなあ(涙)

■以心電信

細野晴臣さんが、鍵盤ではなく、ふつうの4弦ベースを弾いているのもいい。なんとなく思い出してしまうのはYMOというより「はっぴいえんど」なのだけれど。ただ、テクノやエレクトロニカのライブって、なんかライブっぽくないですね、何度観ても(苦笑)。楽器を弾くのが音楽だ、と思っているひとは抵抗がありそう。ただ、クラシックにも近い気はするのだけれど、ラップトップコンピュータの機材が置いてあったり、映像と融合させたりして、この知的な配置が結構ぼくは好きだったりします。

RYDEEN 79/07は、あらためて楽曲のよさを再確認するとともに、個人的には挿入されているノイズのセンスに脱帽。グラスが壊れるような音というか宇宙人からのメッセージというか透明なノイズに、うわーこういう音好みだと思いました。たぶんテクノポップの昔のファンは抵抗あるんじゃないですかね。坂本龍一さんのカールステン・ニコライとかフェネスとのコラボレーションを聴いてきたぼくにとっては、すごいよくわかる。

■RYDEEN 79/07

ただ、最後のほうはどうかなーと思いました。「WAR & PEACE」のあたりはぼくはちょっとだれた印象があって、つまらなかった。また、アンコールで演奏された「CUE」は名曲だと思うのですが(コーネリアスの小山田圭吾さんのカバーも素晴らしい。CD持ってる)、この演奏よりもSketch Showで高橋幸宏さんがドラムを叩いていた演奏のほうがいい気がする。YMO、Sketch Show、HASYMOの順に3つの演奏を並べてみます。


インタビューを観ていて面白いな、と思ったのは坂本龍一さんが、おれはYMOはずーっとアルバイトだと思っていた(苦笑)のような発言でした。なかなかユニットで曲を作るのは難しい。いろいろと確執もあったような、ないような。また、坂本龍一さんと高橋幸宏さんがネット経由で曲のやりとりをやっていて、細野晴臣さんはあまりかかわらないのだけれど、時々コメントする、などという裏話が面白かったです。そうか、YMOもネットで音源をやりとりしているのか、とあらためて思いました。そういう時代ですね。

連休の最後に、公園での陽射しのきらめきと、ちょっと懐かしいサウンドをみつけることができて(リアルはもちろんネットでもいろいろと有意義な時間を過ごすことができて)、しあわせでした。

このしあわせな気持ちが、しばらくつづきますように。

投稿者: birdwing 日時: 23:00 | | トラックバック (0)

2008年4月20日

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科学的な思考と主観。

夕方に散歩しようとして外に出ると大粒の雨が降ってきたのですが、天気は変わらず晴れ。しばらくすると青空が広がりました。なんだったのでしょうか、あの天気。キツネの嫁入りというやつでしょうか。ちょうど趣味のDTMで雨に関する曲を作っていたところでもあり、なんとなく符号のようなものを感じたりもしました。単なる偶然ですけどね。

ちなみに趣味のDTMでは、かつて雨が嫌いであることをストレートに表現する曲を作りました(メインページのJuke Boxで聴くことができる「AME-FURU」という曲です)。けれども雨を煩わしく思う気持ちを突き抜けて、それでも冷たい雨を愛する曲を作りたいと思っています。Vocalを入れたいところですが、たぶんインストになる予定。潰したプロトタイプも多く、ぼくとしては久し振りにじっくりと取り組んでいます。仮タイトルは「LOVE RAIN」です。さて・・・どうなるのか。

スローなんとかじゃないですが、いろんなことに焦らずに取り組もうと思っています。昨日ひとつ歳を取っちゃったわけで(苦笑)、まだまだ迷いの多い年齢ではあるのですが、ゆっくり変わらない気持ちでさまざまなものに対して向かいたい。焦って結論を急ぐのではなく、地道に積み重ねていきたい。

と、そんな今のBGMはTom McRaeだったりします。孤高のシンガーソングライターの歌が染みる。

キング・オブ・カーズ
トム・マクレー
キング・オブ・カーズ
曲名リスト
1. Set the Story Straight
2. Bright Lights
3. Got a Suitcase, Got Regrets
4. Keep Your Picture Clear
5. Houdini and the Girl
6. Sound of the City
7. On and On
8. Deliver Me
9. One Mississippi
10. Ballad of Amelia Earhart
11. Lord, How Long?

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さて、複数の本を平行して読み進める傾向があるのですが、先日ふらりと書店に立ち寄って購入してしまったのは、大前研一さんの文庫です。ええと・・・まあ、50歳にはまだ遠いですけどね。でも、案外すぐなのだろうか。はぁ(ちょっと凹んだ)。ともかくぼくは先に先に読む傾向があり、20代の頃には35歳にどうするか、のような本を読んでいました。ちょっと読書傾向がおかしいのかも。

408746266850代からの選択―ビジネスマンは人生の後半にどう備えるべきか (集英社文庫 お 66-1) (集英社文庫 お 66-1)
大前 研一
集英社 2008-02-20

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一方で、スローテンポで読み進めている本に茂木健一郎さんの「思考の補助線」があります。ゆっくりと読みたい。そして考えたことを何度か分けて、書いてみたいと思います。

448006415X思考の補助線 (ちくま新書 707)
茂木 健一郎
筑摩書房 2008-02

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この本の前半では、茂木健一郎さんはご自身の大学時代の経歴などを振り返りながら、知の遍歴を確認されています。ところで、なぜ、ここで茂木さんは自分を語らなければならなかったか。

科学者は観察的な視点が重要であり、主観を排除しますよね。たとえば「情熱のせいか、ぼくの感情の粒子の運動が活発化して、なんとなく身体が変化してわずかに熱を帯びた」のような表現は科学的ではない。まず要因として感情やこころのような曖昧なものは、科学の対象にはならない。化学反応のようなものであれば別です。また、「なんとなく変化した」は許されない。数値的に計測できるものでなければ、科学として成立しないのではないでしょうか。

理系(という分類自体がどうかと思うけれど)の科学者だけではなく、たとえば新聞のようなマスメディアの報道記事の原稿作成についても言えることかもしれません。つまり報道の記事では、「私はこう思う」であるとか、「酷い」「悲しい」のような感情は排除して事実を事実として伝えることが望まれます。そうではないと、メディアを通じて情報を受け取った人間に混乱が生じます。とにかく、場所や数値を明確に伝えることがニュース性のあるメディアでは求められます。

けれども、この科学的な思考に主観を持ち込もうとしたのが茂木さんの試みだった、と認識しています。わたしのなかに存在する紛れもないクオリア、みずみずしい質感という感覚を提示したことにはじまり、茂木さんの語ることはどこか主観的です。そして「思考の補助線」で何度か繰り返される情熱(Passion)という言葉も、怒りのような言葉も、個人の感情を軸としている。だからこの本の茂木さんは、脳科学者ではないと思いますね。あくまでも主観的に考えを綴るエッセイストやコラムニストに近い。池谷裕二さんは印象として科学者であるのに対して、茂木健一郎さんはどこか文化人(芸能人、とはいいませんが)の印象が強い。そう演出されているのかもしれませんが。

ところで、主観がどのように形成されるかということを考えると、経験というパターン認識の連続が重要になります。こっぴどい失恋をした。ひとりになった。そして新しい恋をして今度はその過ちを繰り返さないようにした。うまくいった・・・こうした一連の経験があると、そのひと独自の恋愛感‐主観が生まれます。つまり自分がなぜこう考えるか、ということを詳細に説明しようとすると、過去のながーい文脈を引きずり出してくる必要があります。説明が長くなるひとの多くは、そうやって文脈をずるずる引き摺り出す傾向にあります。でも、その膨大なデータを読まなければ理解や共感ができないことも多い。ほんとうに誰かを理解したり共感することは、脊髄反射的にできるものばかりではなく、ものすごい時間がかかることがきっと多い。

ぼくは感情は情報のひとつであると考えるし、その謎を科学的に解明してほしい、五感に訴えるような新しいインターネットが生まれてほしいとは思うのだけれど、茂木さんのアプローチはどこかブンガク的な傾向に向かいすぎていて、科学者としての茂木さんには正直なところ期待できないかな、という気がしました。なんかものすごく失礼なことを書かせていただいていますね。すみません(苦笑)。

「自然科学vs.ニューアカ(P.30)」という部分では、浅田彰さんの「構造と力」「逃走論」などのポスト構造主義のブームを批判されているわけですが、やはり象牙の塔のなかで展開している話のように思えます。実は、ぼくも「構造と力」「逃走論」にかぶれた口であり(恥ずかしながらハードカバーで「構造と力」を持っていたりする)、その知の戯れを楽しんだひとりでもあります。

それがぼくはいけなかったとは思わないのですが、若気の至りとはいっても、ポスト構造主義にかぶれたことを恥ずかしがる自分がなんとなくかっこ悪い。

何がかっこ悪いかというと、自己否定しているところでしょうか。過去にはいろんな恥ずかしいことがあるんだけれども、それも自分ではないですか。有名なアインシュタインの愛嬌のある写真であればともかく、科学者であるのに「なーんちゃって」と舌を出して自分の研究に自分でちゃちゃを入れたり、思考の砦を築いてレベルの低い知にブーイングをかますことに快楽を見出すような姿勢は、かっこ悪いと思う。

多様性というのは個々ばかりではなくて、自分にも内在しているものです。

粉砕したいような過去や現在があるからこそ、よりよく(正しくではない)生きていこうと思う気持ちが生まれる。あれこれ哲学的な思考も生まれることもあります。たとえそれがアカデミックな思索ではないから世のなかに何も役に立たないかというと、そんなことはなくて、科学がひとの生命を救うように言葉がひとを生かしてくれることもあるはずです。

科学者ではない茂木健一郎さんに期待するのは、そんな感性のエバンジェリスト、人生のコンシェルジェのようなひとなのですが、期待しすぎでしょうか。というか、ぼくがそんなひとになりたいものであるなあ。

+++++

えーと、今日はこの映画を観ました。

B00005V2LMエレクトリック・ドラゴン 80000V スペシャル・エディション
浅野忠信 永瀬正敏 石井聰亙
パイオニアLDC 2002-02-22

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どわはははは!これ笑った。すごい、面白い。最高だ!YouTubeからトレイラーを。本編観なくても、このトレイラーで十分という感じです。

■Electric Dragon 80,000V


全編モノクロで、俳優さんは、ほとんど浅野忠信さんと永瀬正敏さんのふたりといっていい。物語といえば、幼少の頃にカミナリでショックを受けて脳に障害を受けた竜眼寺盛尊(浅野忠信さん)が主人公。彼はエレキギターに出会い、ギターを弾きつつ逃げた爬虫類を探して生活しているわけですが、宿命のライバル雷電仏蔵(永瀬正敏さん)と戦うことになります。

「電気と感応し爬虫類と心を通わせる男、竜眼寺盛尊(りゅうがんじもりぞん)」「電気を修理し怪電波をキャッチする、雷電仏蔵(らいでんぶつぞう)」というキャラクターも面白いのですが、ノイズとロックと暴力的な映像、すっとぼけた台詞がたまりません。エンディングもよかった。

ああ、難しいことを考えようと思ったら、爆笑して終わってしまった(涙)。まあいいか。

投稿者: birdwing 日時: 23:57 | | トラックバック (0)

2008年4月19日

a000930

日付変更線を超えて。

午前零時が終わりかはじまりか、という話をどこかで読んだ記憶があります。

柴崎友香さんの小説「きょうのできごと」のなかだったでしょうか。文芸誌で読んだような読んでいないような。記憶が曖昧です。小説ではなく行定勲監督の映画を観て、ぼくはそこで午前零時について話をするシーンを観たように記憶しています。山場のない淡々とした映画でしたが、なんとなく切ないような懐かしいような気持ちになりました。

B0002ESL32きょうのできごと スペシャル・エディション
田中麗奈 妻夫木聡 伊藤歩
レントラックジャパン 2004-08-25

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あるいは、佐野元春さん(古っ)の「グッドバイからはじめよう」の歌詞が似た印象かもしれないですね。終わりは はじまり・・・という。ストリングスのアレンジがされている曲で、若いぼくはよく聴いたものでした。

No Damage
佐野元春
No Damage
曲名リスト
1. スターダスト・キッズ
2. ガラスのジェネレーション
3. サムデイ
4. モリスンは朝,空港で
5. イッツ・オールライト
6. ハッピー・マン
7. グッドバイからはじめよう 〈ガールズ・ライフ・サイド〉~14のありふれたチャイム達
8. アンジェリーナ
9. ソー・ヤング
10. シュガータイム
11. 彼女はデリケート
12. こんな素敵な日には(オン・ザ・スペシャル・デイ)
13. 情けない週末
14. バイ・バイ・ハンディ・ラヴ

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終わりとはじまりが同居するような午前零時が好きです。

昨日でもあり今日でもある、あるいは、昨日でもなければ今日でもない時間。最初にブログを書き始めた頃、ぼくはこの日付変更線を超える2時間ばかりをブログの時間としていました。自分の部屋でPCに向かい、1日を振り返りつつ、思ったことを思ったままに書き綴っていく。日記を書こうとは思っていなかったのだけれど、PCの画面を眺めていると自然に書きたいことが生まれる。言葉たちはときには不穏なやからもありましたが、すばらしい言葉やひらめきが生まれたときはしあわせでした。

昨日(というか今日)の午前零時は、ぼくにとっては特別な午前零時だったわけですが、日付け変更線をまたいで趣味のDTMで曲をつくりながら、とてもしあわせな気持ちになりました。その気持ちは深夜まで続いていて、なんとなくあったかい飲みものをいただいたような、陽だまりのなかでぬくぬくとまどろんでいるような、そんなしあわせな状態が持続していた。目が覚めてもまだ続いていて、土曜日の1日をそんな気持ちに包まれて過ごしました。

大きな夢を持てとか、大志を抱けとか。グローバルな社会において世界へ向かう気持ちは大事なのかもしれないのだけれど、過剰なしあわせを追い求めるばかりに至近距離にあるしあわせを見失うこともあります。ここでいう距離とは物理的な距離ばかりではなくて、精神的な、というかこころの距離も含めたいと思います。ささいなしあわせでもかまわないから火を消さずにいれば、なんとかやっていけるのかもしれない。

午前零時が、今日の終わりとも明日のはじまりとも解釈できるように、世界は悲観的にも楽観的にもとらえることができるようなものかもしれません。つまり情報の発信者だけでなく、受信者に判断が委ねられていることも多い。ぼくらの解釈によって、午前零時/1日の終わり/悲観的、にとらえることもできれば、午前零時/一日のはじまり/楽観的、にとらえることもできる。

と、ここ数日、非常に混沌とした文章を書き連ねているわけですが(苦笑)、別に無理に突き抜けたりせずに、しばらくは午前零時的な中立で、いろいろと考えていこうと思います。

+++++

最近、きちんと音楽や本などの感想を書いていないのだけれど、次々に忘れてしまって書くのが追いつかないので、備忘録的に。今日はこの映画を借りてきて観ました。1作目をかなり前に観た記憶があり、なんとなく面白かった気がしたのでチョイス。

バタフライ・エフェクト2 デラックス版
ダスティン・ミリガン ジーナ・ホールデン エリカ・デュランス
バタフライ・エフェクト2 デラックス版
曲名リスト
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うーん、1作目の内容がすっかり忘却の彼方なのだけれど、構成的にわかりやすいのがどうでしょうか。2作目は難しいですね。いまいちな気もしました。

ちなみにバタフライエフェクトとは、カオス理論を端的に表した言葉とのこと。ブラジルでの蝶の羽ばたきがテキサスでトルネードを引き起こす、などのような「初期条件のわずかな差が時間とともに拡大して、結果に大きな違いをもたらす」ということらしいです(Wikipediaから)。風が吹くと桶屋が儲かる、みたいなものでしょうか。

+++++

えーと。早い話、ひとつ歳を取ってしまいました。やれやれ。

080419_cake.jpg

ちいさなケーキに火を灯して、息子たちに誕生日の歌を歌ってもらいました。しかし、名前を呼ぶときに「はっぴばーすでい、でぃあ、○○○(ぼくの名前)」というのはいかがなものか(苦笑)。おいおい、呼び捨てかよーと思いました。去年はビール飲んでケーキ食べて気持ち悪くなったこともあったような気がしますが、今年は順序を間違えなかったので、おいしくいただくことができました。


投稿者: birdwing 日時: 23:31 | | コメント (2) | トラックバック (0)