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2006年7月 6日

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「数式を使わないデータマイニング入門 隠れた法則を発見する」岡嶋裕史

▼book06-049:データマイニングに困惑。

4334033555数式を使わないデータマイニング入門 隠れた法則を発見する (光文社新書)
光文社 2006-05-17

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数式を使わずにデータマイニングについて解説する入門書であり、データマイニングの書物といえば数式ばかりでうんざりしたのでつい買ってしまったのですが、この本を読み終えてぼくが得た感想を正直に書いてしまうと、「ひょっとしてデータマイニングって使えないのでは...」ということでした。やさしく解説すればするだけ、こんなもんに時間をかけるよりも直感で考えたことの方がよほど深い示唆を得られるのではないだろうか、と思ってしまいました。

自己組織化マップやニューラルネットワークなど、興味深い分析をとてもわかりやすく解説されていてとても参考になります。ただ、これもまた率直に印象を述べてしまうと、文章が「妙」です。それが理系的なオタクっぽい文章の特長なのかもしれないけれど、時々「?」という部分に突き当たる。たとえば、例にあがっている人物は男なのか女なのか、会話を読むとどちらなのかさっぱりわからないという部分がありました。

これもまたぼくの偏見から失礼だとは思いつつ本音を述べると、ガンダムが例に出てくるところで、気持ち悪いな、と思った。理系の学生に向けた講義であればやんやとウケる場所なのかもしれないし、別に掲示板やインターネットで書き込まれている分には読まずに通り過ぎればいいのですが、購入した本の場合そうもいきません。読むのをやめようとかなり強く思ったのですが、700円も払った本なので最後まで読むことにしました。ただ、その決断がよかったのかどうか、いまでもよくわかりません。

出版社あるいは著者の売り上げ増加の目論見なのか、コピーライティング的なタイトルに注目してしまうのだけれど、中身のない本も多いような気がします。余談ですが、いちばん腹が立ったのは橋本治さんの「上司は思いつきでものを言う」でした。あの本を買うぐらいなら、喫茶店でコーヒーを飲んだ方がどれだけ幸せな時間を過ごせたかわかりません。過去に名声のある作家は才能が枯渇しても思いつきで本を出すことが許されるんだ、と思いました。しかしながら、出版社にもコピーで騙して儲ければいい、という柳の下にドジョウ的な発想があるんじゃないだろうか。だから、出版は低迷しているんじゃないか、と思ったりもします。

ぼくは本が大好きで、本を読む時間が幸せだからこそあえて書きたいのですが、内容の薄い本を乱発しても出版社(あるいは作家)が損なだけです。いま、すばらしいブロガーがたくさんいるし、ブログを読んでいた方がずっとためになる。感動することも多い。プロの違いをみせてほしいものです。7月6日読了。

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(49/100冊+39/100本)

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2006年7月 5日

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「武満徹―Visions in Time」武満徹

▼Books06-048:円環のように、音を視るように。

4872951026武満徹―Visions in Time
エスクアイア マガジン ジャパン 2006-04-13

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静かな庭園を散歩するように、ゆっくりと読み進めました。クレーの絵や、ジョン・ケージなどの文化的な知人はもちろん家族の写真や、円形の不思議な楽譜や、そんなビジュアルとともに武満徹さんの短い文章が抜粋されて掲載されていて、その言葉の透明な感じに打たれます。何度も引用してあからさまに影響を受けすぎてお恥ずかしいのですが、glasshouseさんのブログで紹介されていて、そのときにはどういうわけかCDだと思っていたのですが、本屋でみかけて、Visions in Timeは本だったのか、と勝手に驚きつつ購入した本でした。

大江健三郎さんや谷川俊太郎さんとも関係があり、なんとなくぼくの好きなものが円環でつながっていく感じがする。西洋人の直線的な時間感に対して、円環のイメージを解く「時の円環」という文章が気に入っていて、そういえば昨日は螺旋について書いたような気もするのですが、サークルというカタチから発想するものについては、また何か書いてみたい気がしています。デイビッド・シルビアンの追悼文が静かに心に染みました。いつか武満さんの音楽をきちんと聴いてみたいものです。7月5日読了。

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(48/100冊+39/100本)

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2006年7月 3日

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「今すぐ使える!コーチング」播摩早苗

▼book06-047:ポータブル・スキルを獲得するために。

4569652417今すぐ使える!コーチング (PHPビジネス新書)
PHP研究所 2006-06

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コーチングにしてもファシリテーションにしても、どこか眉唾なものを感じてしまうのは、ぼくの根っからの偏見のせいで、というのも体系的な理論になっていないところに疑問を抱いてしまうことに原因があるような気がします。心理学的な裏づけもなく、会話のパターンだけが掲載されているような本を読んでいると、途中で読み進める気が失せてしまう。もちろん著者は抽象論より具体的な会話の方がわかりやすいと考えたのかもしれませんが、逆効果です。

しかしながら、この本に関していえば、非常によくまとまっていると思いました。例として挙げている会話も、その意図がきちんと伝わります。理論の体系化については、まだなんとなくすっきりしないものもあるのですが、指摘されているスキルには頷けるところが多いし、最近のビジネスが抱えている課題についても深い洞察があると思いました。コーチングとは「受け入れる力」であり、批判や偏見を排除して、ただそのひとの言葉を「聞く」のではなくて「聴く」。さらにそのひとのなかに「答えがある」ことを信じて、持論へ誘導したり仮説を押し付けたりするものではないという考え方に、ものすごく大切なことを教えられた気がしました。

かつてマニュアルが重視された時代があり、就職活動(いまは就活と短縮するんでしょうか)のマニュアルが爆発的に売れたりもしましたが、現在ではマニュアル通りにやっても成功するとは限らない時代です。ある本を読んでいて深く共感したのですが、その会社ではナレッジマネジメントという名のもとに過去の企画書を共有しようとしたそうですが、企画書を使いまわすことによって逆に創造性がガクッと低下したらしい。創造性と効率化は、ときに相反するようです。

とはいえ、「いまここ」だけで通用するスキルではなく、会社という枠がなくなっても通用するスキルを求めているわけで、もっと究極のことを言ってしまえば、仕事にも子育てにも趣味にも使える方法論をぼくは模索している。それは企画書のフォーマットをリサイクルして使いまわすこととは異なっていて、方法論は同じだとしても常に考えつづけなければならず、まったく異なった正解をみつけるということです。そんな究極のポータブル・スキルを習得するためのヒントが、この本のなかにあったような気がしています。7月3日読了。

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(47/100冊+39/100本)

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2006年6月30日

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「イチロー思考―孤高を貫き、成功をつかむ77の工夫」児玉光雄

▼book06-046:究めたひとの言葉。

4809404129イチロー思考―孤高を貫き、成功をつかむ77の工夫
東邦出版 2004-12

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実際のところぼくは野球にもサッカーにもあまり興味がないのですが、興味がないから、と突き放すのではなく、興味のない世界ってどういうもんだろうという好奇心を持ちたいと思いました。ある意味、同じ人間じゃないですか。ぼくの死角になっている分野を面白がったり、そこで着々と結果を出しているひともいるわけで、そういうひとをわかろうとすることは、自分にとって大きな糧になるのではないか。

この本は見開きで構成されていて、右ページにはイチロー選手のインタビューから抜粋された語録、左ページには児玉光雄さんの解説が書かれています。派手なホームランを打つのではなく、こつこつとヒットというちいさな業績を積み上げていくこと。結果ではなくて、過程を磨くことに注力すること。そして結果に一喜一憂するのではなく、新しい発見や自己の克服によろこびを見出すことなどなど、これは!というタカラモノのような言葉がたくさんありました。何かを究めたひとの言葉はやはり違う。次のような言葉には、奮起させられます。

「あのときの僕といまの僕を比べるのはいまの僕に失礼だと思う(P.50)」

常に進化して変わっていくのだから、いまの自分の方が優れてるのは当然だということです。自分のことを「天才ではない」と書いているのですが、こつこつと努力することによって大きな業績を残し、かといって業績を残すことをアピールするわけでもなく、淡々とふつうに生きていく。プライドをもって、孤高だとしても誠実に進化しつづけるひとでありたいものです。6月30日読了。

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(46/100冊+35/100本)

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2006年6月28日

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「デザインする技術 ~よりよいデザインのための基礎知識」矢野りん

▼book06-045:視覚を技術的に究めると思考も極まるのでは。

4844358588デザインする技術 ~よりよいデザインのための基礎知識
MdN 2006-05-19

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こういう本は最初から最後までしっかり読むのではなく、気になったページをリファレンス的にめくって読むのではないかと思うのですが、最初から最後まで読んでしまいました。そして、これが面白かった。面白いんだけど付箋を付けて読んでいたわけではないので、いまどこが面白いか抜き出そうとして困っています。

一瞬だけエディトリアルデザインの仕事をかじっていたこともあり(出版物の表紙とか本文フォーマットとか作りました。写植だけど)、そのときにいろいろと調べたり勉強したせいか、知っている言葉も多かったのですが、あらためて刺激を受ける言葉も多くありました。この本は「考」「図」「文字」「面」「色」という5つの分野の技法について、キーワードから解説し、実際に図などで説明していくのですが、視覚的なアプローチを理論化するときの考え方が非常に参考になりました。

以前ブログに書いた擬似的に立体をみせるアクソノメトリックをはじめ、色にも距離感があること(目立つ色は手前に見える)とか、情報デザインのチャンキングとか、ルート2、あるいは観音開きではルート5で作った長方形が美しいとか、へぇーっと驚くとともに明日から使える知識ばかりでした。別にこの本の技術を実践したわけではないのですが、こういう本を読んでいるとなんとなくインスピレーションもわくもので、実際にいま書いている企画書もなんだかいままでとは別の色彩や雰囲気の違うチャートになりつつあります。デザインを専門に勉強されている方からみると、なんだそりゃな稚拙な感じかもしれないのですが、専門家になるつもりもなく(なれないので)、だからこそ楽しい。ものごとというのは真剣に関わるのではなく、ちょっとカルチャー的な軽さで関わった方がよいのかもしれません。6月28日読了。

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(45/100冊+35/100本)

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