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2006年4月 3日

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「ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則」ジェームズ・C. コリンズ , ジェリー・I. ポラス

▼book06-023:時代を超えて存続する企業の条件。

4822740315ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則
James C. Collins
日経BP社 1995-09

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1995年に初版の本ですが、書かれていることは現在でもまったく色あせない真理ばかりです。逆にいまだからこそ鮮やかな視点も多い。第一章では「時を告げるのではなく、時計をつくる」企業がビジョナリー・カンパニーであると書かれていますが、Googleなどの企業もテクノロジーによって時計をつくる企業ではないか、と思いました。カリスマ的な経営者によって時を告げるタイプの企業ではなく、ハードではないけれどもインターネットによるサービスという時計作りをする企業です。さらに第6章の「カルトのような文化」をもつこと、第7章の「大量のものを試して、うまくいったものを残す」という特長も該当します。さらに、BHAG(ビーハグ:Big Hairty Audacious Goals)という社運を賭けた大胆な目標を掲げるという点もぴったりです。Web2.0関連の企業であっても、基本的にはビジョナリー・カンパニーの法則の上で成り立っているような印象を受けました。

仕事の15%を自分で考えたプロジェクトに費やすという15%ルールも紹介されていました。けれどもそのプロジェクトには、不文律の規範のようなものがある。それが企業の価値観であったり、文化というものです。目先の利益も重要だけれど、愛社精神をもち仕事にのめりこめるような文化を創り出したときに、企業は創設者がいなくなってもその意思を存続することができる。そのためには、価値観を共有すること、自分たちの価値観とは何か、ひとつひとつ判断することが重要になります。いま自分が働く価値観とは何だろう、ということを考えさせられました。すばらしい本です。4月3日読了。

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(23/100冊+26/100本)

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2006年3月28日

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「書きたがる脳 言語と創造性の科学」アリス・W・フラハティ

▼book06-022:病と天才のあいだで。

4270001178書きたがる脳 言語と創造性の科学
吉田 利子
ランダムハウス講談社 2006-02-03

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書かずにいられないハイパーグラフィアと書きたいのに書けないライターズブロックという病を中心に、自ら子供を失ったときに精神病を患って入院した経験のある神経科医の著者が、痛々しいまでの文章を書き綴った本です。引用されたさまざまな文章とプライベートな体験が織り成された、とてつもなく危険な書物といえるかもしれません。真面目に書かれたことを受け止めようとすると、かなりアブナイ。

インスピレーションに関する記述もありますが、天才のひらめきと精神病はほんとうに紙一重にあると思います。というぼくも、深夜に曲を作ったり文章を書いていたりすると、神様が降りてきた、という感覚を味わうことがある。わかるひとにはわかるのかもしれませんが、その快楽は異常なほどです。時間の感覚も吹き飛んでしまう。もちろん朝になって聴きなおしたり読みなおしてみるとがっかりすることが多いのだけど、あれはいったいなんだったんだろう、と思うことがあります。と、同時に、何かそれは触れてはいけないもののようにも思える。その触れてはいけないものに挑んでいる著者はすごい。

とはいえ、率直な感想を書くとすれば、周辺(辺縁)をめぐる表現に終始している感じもあり、いまひとつぐぐっと本質に突っ込んでいないような印象も受けました。大量の文章を書いているのだけれど、真理の深みは意識的に回避しているような感じもあります。一方で茂木健一郎さんの文章は短いけれど、真理に踏み込んでいる印象がある。あくまでもぼくの私見ですが。

苦しいとき、行き詰っているときに生き生きとした文章が生まれる、というのは非常にわかります。作家というのは、ある程度病んでいないと、才能を発揮できないものなのでしょうか。モーツァルトだって変質的な言葉を使った曲も作っているようなので、ひょっとしたら病んでいたのかもしれない。ビョーキの崖っぷちの手前で立ち止まって、現実と仮想の世界の両方を引き受けることができるといいのですが。3月28日読了。

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(22/100冊+26/100本)

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2006年3月 8日

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「上陸」田中小実昌

▼book06-021:戦争による壊れ方。

4309407579上陸 (河出文庫)
河出書房新社 2005-09-03

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ずっと前に購入して半分まで読んだところで放っておいた本でした。ある小説作法の本で、田中小実昌さんの「ポロポロ」が絶賛されていて読んでみたいと思っていたのですが、なかなか手に入らず、この短編集から読みました。作者である田中小実昌さんのことはよくわからないのですが(勉強不足です)、この短編集は同人誌などに書いていた初期の作品らしい。確かに生き生きとしたものがあります。

生き生きとしたものがあるのですが、内容としては終戦後、戦争によって壊れた心の主人公が登場するものが多く、なかでもぼくは「生き腐れ」という短編がよいと思いました。通訳として働いている主人公が、雨の日、「ヘイ!ユウ」とアメリカ人の曹長に呼ばれる。名前を聞かれて「ゲンタロー・トクナガ」と応えると「おまえはジョージだ」と勝手にアメリカ人の名前をつけられる。けれども抵抗しない。この無力さが、戦争によって降伏した日本人の敗北感、どうにでもなれという感じをよく表しています。彼は曹長に指示されたことを人夫小屋に行って伝えようとするのだけど、わらわらいる日本人の人夫たちは勝手なことを言って動こうとしない。そこへしびれを切らしたアメリカ人の曹長が銃をかまえてやってくる。無気力と雨で湿度の高い空気、緊迫しているんだけど、やけくそな気持ちが、とてもリアルに伝わってきます。希望を持ってみたり、いや、やっぱり自分はだめだ、と自己を卑下したりする。この壊れ方は、その時代の空気を再現している気がしました。3月8日読了。

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(21/100冊+21/100本)

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2006年3月 3日

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「経営の構想力 構想力はどのように磨くか」西浦裕二

▼book06-020:経営書というよりもエッセイとして。

4492531734経営の構想力 構想力はどのように磨くか
東洋経済新報社 2004-02-13

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冒頭の部分では、いくつか参考になる考え方がありました。たとえば、全体を俯瞰する力と現場の力という両方が必要であるとか、哲学とリアリティの必要性、編集力という視点、「幼い時期の特徴を失わずに成長すること」という生物学用語のネオテニーなど。しかしながら、そうした言葉が引用としてばらばらに散りばめられている感じがあり、全体として統合されていない印象を受けます。おいしい言葉をつまんできてはトッピングしているけれど、本質的な著者自身の思想が見えてこない。

たとえば、編集という用語を使われていますが、たぶん著者は編集者ではないと思うので、その実体がともなっていないような印象を受けました。テキストをツギハギに引用することが編集ではないと思います。借り物の言葉を散りばめることは編集ではなく引用であり、編集にはさらに高度な知的な作業が必要になるはずです。個人的な体験も引用されているけれど、その体験が考え方や思想というところまで高められていないため、薄っぺらな感じがしました。同様に、構想力という言葉も耳あたりはいいけれど、全体的にはキーワードだけが浮いていて、その考え方を深化させていないように思えます。あまりにいろんなものを盛り込みすぎているので、ある特定のテーマを集中して深化させた方がよい気がします。

経営書として考えると物足りないし散漫なイメージの本ですが、エッセイとして読むと、それなりに楽しめるかもしれません。すぐに読み終わることもできるので。3月3日読了。

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(20/100冊+20/100本)

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2006年2月28日

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「あたりまえだけどなかなかわからない組織のルール」浜口直太

▼book06-019:若い頃には読んだけれど。

4756909353あたりまえだけどなかなかわからない組織のルール (アスカビジネス)
明日香出版社 2005-10

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いわゆる啓蒙本、自己啓発本です。見開きページででひとつのテーマが完結して、仕事ができる何か条とか、いまやっておきたいこと50とか、そういうタイプの本のひとつです。新入社員の頃には、この手の本はずいぶん読みました。けれどもいま読むと、どういうわけか少しだけ物足りない。書かれていることは参考になります。もういちど基礎からきちんとしよう、という気持ちにもなる。けれども、どこかプラスアルファを求めてしまうのはなぜでしょう。

著者はMBAを取得し、コンサルタントとしてさまざまな苦労をした後に現在は社長として活躍されている方です。さまざまな知識を基盤に、現場の声、自分の経験を引用して、組織を活性化するための101のルールを提示されています。

しかしながら、たとえばルール41で組織のビジョンやルールを理解すべきだ、ということが書かれていて、理解しない社員を批判しているかのようにも読み取れるのですが、きちんとわかりやすいビジョンを掲げなかった(社長である)著者の表現力と熱意に欠けたのではないか、という疑問を感じました。職場にもよるかと思うのですが、ビジョンはみんなで創り上げるものと、リーダーが(それこそリードというだけに)考え方をかたちにしてぐいぐい引っ張っていくものがあるような気がします。リーダーシップをとるべき人間の言葉が社員に理解されていないということは、コミュニケーションとして問題があるような気がしました。

帯には「これだけ守れば組織の中で絶対うまくいく」というコピーがありますが、その耳あたりのよい言葉に疑問を感じる自分がいます。中小企業のおじさんは飛びつくかもしれない。若い時期のぼくは素直に吸収したかもしれませんが、いまは疑問です。ひねくれちゃったのでしょうか。きっとそうだ。2月28日読了。

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(19/100冊+20/100本)

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