01.DTMカテゴリーに投稿されたすべての記事です。

2010年8月10日

a001271

[DTM作品] irie(イリエ)

いまはトウキョーで生活していますが、少年の頃には海に近い田舎で育ちました。だからといって、夏にがんがん泳いだ記憶はありません。浜辺で寝そべって昼寝ばかりしていたような。

海なんてどうでもいいや、とおもっていたのですが、年をとったからでしょうか、なんとなく海に対する郷愁が募ります。神戸や横浜などの港町は昔から好きでしたが、ふらりと訪れてみたい気分になります。お台場など海がみえる場所では海を眺めて和んでしまいます。

8月ということもあり、海にちなんだ曲を作ろうとおもいました(単細胞!)。

大勢の海水浴客に溢れた浜辺で、ビーチボーイズの「Surfin' USA」がラジカセからフルボリュームで流れている。そんな賑やかな風景も夏らしくていいのですが、そういう曲は夏専門のアーティストの方におまかせして、だれも知らないような静かな入り江をイメージしました。プライベートビーチのような感じでしょうか。

実際の入り江には、お盆過ぎにはクラゲでいっぱいになってしまう海もあるのですが、それはさておき。アタマのなかに浮かんだ入り江は、白い砂浜で、海はエメラルドグリーン。周囲は小高い緑に覆われた丘で囲まれている、美しい風景です。楽園に近いかもしれないですね。そんなところ行ったことがないけれど。

というわけで趣味のDTMで新曲を作ってみました。タイトルは「irie(イリエ)」。英語にすると「The Cove」かな。和歌山のイルカ漁を盗撮したドキュメンタリー映画が話題になりましたが、ぼくはいまひとつあの映画に共感できないので、日本語で入り江としました。ブログで公開します。お聴きください。

The title of this tune "irie" means the cove in Japanese. There are white sands and green sea at the cove, and the waves are calm. The documentary movie "the cove" was open to the public, but I don't like it. I made this tune imaging the paradise. I'd like you to listen to this tune.


■irie(4分06秒 5.63MB 192kbps)

作曲・プログラミング:BirdWing


この入り江のイメージに合う映像を探したのですが、なかなかみつかりませんでした。かろうじておもい出したのは、レオナルド・ディカプリオが主演の「ザ・ビーチ」という映画。以下、トレイラーをYouTubeから。一瞬だけ美しい入り江をみることができます。


「irie(イリエ)」の制作メモです。

まず全体的には、気だるいまったりとした雰囲気を出そうとおもいました。眠気を誘うようなのんびりとした感じ。BPMも遅めの78です。最初はレイ・ハラカミさんの音楽を意識しつつ、オルガン系のシーケンスをベンダーでねじ曲げた音を作っていたのですが、フレットレスのベースのような、スライドを多用したベースを加えました。ベースはいつも通り無料ソフトウェアシンセのminimoogVAを使いました。プリセット音にややフィルターをかけて音色を丸めています。

レイ・ハラカミさんのアルバムでぼくがよく聴いたのはこれ。


B00005HXT4Red Curb
Rei Harakami
ミュージックマインID 2001-04-25

by G-Tools


今回はiPadから録音した音もたくさん使っています。以前、「iRela」という無料アプリの雨の音を使って「RD(レインドロップス)」という曲を作りましたが、今回も波の音は「iRela」です。

そして、潜水艦のソナー音のような音は、コルグの「iERECTRIVE」。こちらは有料アプリです。このアプリ、かっちょいいリズムがたくさん作れそうなのに、なかなか使いこなせません。そこで「Erectronica1 B25」のプリセット音を使いました。ほんとうは音声ファイルに落としてファイルでPCにコピーできるのではないかとおもいますが、BPMを合わせてヘッドホンジャックからダイレクトにPCにインプットしてDAWに録音、そのままリズムの位置を調整して使っています。こんなインターフェースです。


100810_korg.jpg


ドラムは基本的には読み込んだWAVEファイルのパターンを切り貼りして、特に3連符のアクセントに気をつけました。一部のどこどこどんというフィルインはiPadの無料アプリ「Shiny Drum」です。これはドラムパッドのアプリで、iPadの画面をタップすると音が出るようになっています。往年の著名なドラムマシーンの音がサンプリングされていて、テクノからジャズの音源まで幅広い。シーケンサーが付いていないのが残念だけれど、十分に楽しめるパッドです。


100810_drum1.jpg

100810_drum2.jpg


その他、入り江にある洞窟の感じを出すために、後半ではリバーブをメインに空間系のエフェクトを使いまくりました。というのも、コードがポップなので、ありきたりの音になってしまいそうな危惧もあったからです。打ち込みだけでは単調で陳腐な印象だったのですが、さまざまな音に深いリバーブをかけてぐちゃぐちゃにしたことで、シューゲイザー的な壊し方をできたかな、とおもっています。

エレクトロニカでは、この壊し方の加減が難しいですね。壊しすぎると耳障りで聴くに耐えないひとりよがりのサウンドになってしまう。逆にポップなコード進行やメロディの曲は壊さないと陳腐に聴こえる。先日、久し振りにウルリッヒ・シュナウスの「Goodbye」というアルバムを聴いておもったのですが、あのアルバムではエレクトロニカ的な楽曲の壊し方が美しい。残響音にかき消されてドラムスのリズムなど聴こえないけれども、アルバムを通して、とても繊細でドリーミーな価値観が貫かれています。あんな壊し方ができるといいんだけどなあ。


B000RGSOOGGoodbye
Ulrich Schnauss
Domino 2007-07-10

by G-Tools


さて。今年の夏は帰省せずにトウキョーで過ごすつもりです。海には行かないけれど、プールで太陽の光を反射する水面でも眺めて満足しますか。

投稿者: birdwing 日時: 20:55 | | トラックバック (0)

2010年7月24日

a001268

[DTM作品] Summer Sky (サマースカイ)

連日36度を超えるような猛暑ですね。日本列島全体がヒートアップしています。梅雨が明けたとおもったらわかりやすい夏の到来で、水不足の心配をすこしばかりしてみたり。しかし、暑さをあなどってはいけません。外出の際には、熱中症にお気をつけください。

いつだったか、電車のなかから眺めた雲が典型的な入道雲でした。空の遠い場所で、もくもくと湧き上がって、太陽の光を眩しく反射していました。そんな夏の雲をみつめながら、冷房の効き過ぎた電車のなかで、いいねえ、夏だねえ、とひとり悦に入っておりました。

自称・空の写真家のぼくは、デジタルカメラでよく空を撮影します。7月に入ってから写した夏の空を2点ばかり掲載してみましょう。

まずは、ぽっかりとおいしそうな雲。

100724_sora1.jpg

そして茜色の夕方の空です。

100724_sora2.jpg

写真で、そしてリアルの空を眺めるうちに、夏の空の曲を作ってみたいとおもいました。空の曲といえば、以前、「キュウジツノ空」という曲を作ったこともありました。青空の広がりやフラクタルのような雲の輪郭を表現したい。今回作った曲は「Summer Sky(サマースカイ)」というタイトルを付けました。ブログで公開します。お聴きください。

I often take the picture of the sky. I like the sky, especially blue sky. Because there is no same blue. Today's blue of sky is not yesterday's blue. I want to compose for image of the summer sky. The name of this tune is "Summer Sky". I'd like you to listen to this tune.


■Summer Sky (3分23秒 4.64MB 192kbps)

作曲・プログラミング:BirdWing


ところで、最近ジョン・コルトレーンの「ジャイアント・ステップス」というアルバムをよく聴いています。ジャズの名盤です。

B0010MTL5Wジャイアント・ステップス(+8)
ジョン・コルトレーン
Warner Music Japan =music= 2008-02-20

by G-Tools

彼の早いパッセージ、ソロに強烈に惹かれます。コルトレーンの真似をする、などということは無理であり、おこがましいのですが、非常にインスパイアを受けました。エレクトロニカの音楽とジャズでは全然違うけれども、吸収できるものがあると考えました。そこで「Summer Sky」の最初のメロディ部分では、サックスの音色を使ってフレーズを打ち込んでいます。隠し味としてSAWのリード音とユニゾンさせています。

ちなみにコルトレーンの「ジャイアント・ステップス」をYouTubeから。楽譜を目で追っていくだけでも楽しい。

うーむ。すばらしいですね。

「Summer Sky」の制作メモです。最初はSUPERWAVE P8のストリングスのプリセットを使って、基本となるコードを作りました。当初はすこしばかりアンビエントな感じにしたいと考えていました。中間部分ではモジュレーターで加工して、サラウンドのエフェクトによって左右にパンさせています。SUPERWAVE P8は無料のVSTiです。インターフェースはこんな感じ。

superwavep8

そのコード進行に合わせて、シーケンスパターンを加えたり、ピアノをアレンジして作っていきました。ベースはTTS-1のプリセットですが、フィルターとイコライザーをかけて音を変えています。ドラムは2つの音源+WAVEファイルです。バスドラムは無料音源のRhythms v3.6.1、ハイハットやスネアはTTS-1のAnalogのドラムセットを使いました。

曲の速さについては、ぼくは通常BPMが100か120に固定して曲を作っています。自分の体内メトロノームに合っているのが、どうやらその近辺の速度のようなのです。しかし今回は、4つ打ちのバスドラムで弾むような明るい雰囲気にしたかったため、BPMは130にしています。といっても、それでもゆったりめの感じでしょうか。

ピアノはベロシティ(音の強弱)に気をつけました。そういえば、NHKで放映されていた坂本龍一さんの「スコラ 音楽の学校」という番組で、どうすればリズムのグルーヴを出すことができるのか、のような講義があったのですが、YMOの時代には、音を前後にズラすことで沖縄のリズムを表現する、というような実験をされていたというお話がありました。ちらっと「その後、音の強弱でも同じようなことができると気付いたんだけれどね」とお話されていたのを覚えていました。

生で演奏している雰囲気を出したいときには、音の位置をズラしたりしますが、基本的にぼくは強弱でノリを表現するほうです。しかし、どこにアクセントを付けるかによって、曲の印象がまったく変わります。難しいところです。

映像的な印象をいえば、イントロのリズムのしゃきしゃきした感じはカキ氷、最後に残るグロッケンの金属音は風鈴、という感じでしょうか(笑)。夏の青空の爽快感をあらわしたかったのですが、表現できたのかできなかったのか。

本格的な夏はこれからです。

投稿者: birdwing 日時: 22:13 | | トラックバック (0)

2010年7月11日

a001267

[DTM作品]RD (レインドロップス)

梅雨の季節です。午前中には曇り空とおもったら午後にはからりと晴れたり、晴れてると油断するとゲリラ豪雨に襲われたり。めまぐるしい天候の変化に翻弄されています。外出するときには空を見上げて、傘を携帯すべきか置いていくべきか悩みます。しかし、この梅雨もあとわずか。7月の中旬を過ぎれば青空に入道雲のかがやく夏がやってくることでしょう。

どちらかといえば嫌われものの雨ですが、ぼくはひそやかに降り注ぐ雨が嫌いではありません。場合によっては、視界を覆うような土砂降りも悪くないのではないか、とおもいます。あくまでも、たまには・・・ですけれども。

趣味のDTMでは、いくつか雨に関する曲を作ってきました。

LotusloungeのボーカリストSheepさんとネットコラボをさせていただいて完成させた「AME-FURU」、個人的にはとても思い入れの強い「LOVE RAIN」、そしてはじめてネットで音楽を公開した時期にmuzieというサイトに掲載した「Rain Dance」。

蒸し暑くてじめじめする日本の梅雨は困りものですが、ぼくにとって雨はひとつの大きな創作のテーマであります。

というわけで、今回も雨の曲を作ってみました。タイトルは「RD」。「raindrops」から取りました。6月には楽曲を公開しなかったので、1ヶ月ぶりの新曲です。できれば1ヶ月に1曲公開というペースを維持したいところだけれど難しいですね。そんなわけでやや時間はかかりましたが、新しく作った曲をブログで公開しますので、お聴きください。

The Japanese rainy season is about one and a half months. It continues from June to the middle of July. I programed this tune by my laptop computer. The name of this tune is "RD". The name of "RD" was taken from raindrops. I'd like you to listen to this tune.


■RD(3分45秒 5.16MB 192kbps)

作曲・プログラミング:BirdWing


ちなみに「RD」ときて「レイン」といえば、ロナルド・D・レイン(Ronald David Laing、1927年10月7日 - 1989年8月23日)というイギリスの精神科医、思想家をおもい出しました(Wikipediaの解説はこちら)。綴りはまったく違うので、単なるこじつけにすぎませんが、みすず書房の「自己と他者」という本を学生時代にむさぼるように読んだ記憶があります。

4622023474自己と他者
レイン 志貴 晴彦
みすず書房 1975-01

by G-Tools

と、ぜんぜん関係のない本の話はともかく制作メモです。

本来であれば、雨をイメージした曲はリアルな雨ではなく、旋律やリズムによって雨を再現すべきだとおもいます。当初は、サイン波の単調な音でミニマルテクノのような楽曲を想定していたのですが、次第に物足りなくなって、雨の効果音を入れてしまいました。邪道かもしれませんが、ホワイトノイズを取り入れるように、雨の音も「楽器」と考えることにして。

エレクトロニカには、自然に存在するあらゆる音、あるいは都会の雑踏のノイズなどを継ぎ合わせて音楽を作る手法があります。そもそもぼくは少年時代からナマロクに関心がありました。ソニーの録音機材を憧れのまなざしで眺めたものです。できればデジタルレコーダーとマイクを持って、戸外に飛び出してさまざまな音を収録したい。が、残念ながらいまのところPCMレコーダーを持っていないので、雨の効果音に関しては、iPadのアプリを使わせていただきました。

「iRela」という無料アプリです。

100711_irela.jpg

このアプリは、風の音、雨の音、波の音、火が燃える音など、サンプリングされた音を再生できます。いわゆる癒し系アプリです。ループされた音をただ聴いているだけですが、その名の通り、リラックスできます。

音と音をミックスすることもできるので、「Rain」「Urban Rain」「Water Fall」などの音を組み合わせて、iPadのイヤホンジャックからPCにつないで、DAW上で録音しました。もうすこし、ぴちょん、のような滴の音が欲しかったのですが贅沢はいえません。このアプリ、なかなかよいとおもいます。

100711_irela2.jpg

雨はぽつぽつと降りはじめて、やがて屋根や窓を叩き、道を行くひとの傘を叩いていきます。波のように打ち寄せては遠のく雨。さあっと移動する雨の濃淡が、カーテンのようにみえることもあります。ひとつひとつは水の粒にすぎないのに、雨全体はひとつの生き物のようです。

そして、雨のかすんだ風景を引き裂くようにカミナリが鳴り響く。大音響とともに雨は強さを増していく。タイトなリズムは乾いた音なので湿度感が難しいのですが、リバーヴをかけた残響音のあるスネアは、しっとりと湿って雨音にマッチするような気がしました。

途中でくぐもった音のピアノが入りますが、この部分には、ひとつの表現したいイメージがありました。雨の日の学校。放課後の音楽室で誰かがピアノを弾いている。その音が、リノリウムの敷き詰められた長い廊下を渡って聴こえてくる。そんな情景です。このピアノの音は、フィルターでざらついた感触を加えるとともに深いリバーヴをかけました。

後半はしっとりした音というより、土砂降りの激しい雨をイメージしています。ぶっといシンセベースの音は、minimoogVAを利用。これも無料のVSTiでありながらアナログシンセらしいとてもよい音です。

100313_minimoog_re.jpg

無機質な音をめざしながら、ポップにまとめてしまうのがぼくのアレンジの難点でしょうか。しかし、雨音と組み合わせるようなサンプリングの用い方が、ひとつの突破口になるような気がしています。

また、ドラムに関しては、最近TTS-1のプリセット+Rhythms v3.6.1という無料音源で組み合わせて作ることが多く、このスタイルも定着しつつあります。「mizu_no_wakusei(水の惑星)」という曲で試した音源の組み合わせですが、好みの音が出すことができました。

100313_rhythm_re.jpg

表現者として、マンネリは避けたいところです。とはいえ、安定したセットでとりあえず類似したさまざまな曲を作ってみたい。その連作のなかで制作スタイルを確立できればいい。そんなことを考えました。

投稿者: birdwing 日時: 16:20 | | トラックバック (0)

2010年5月16日

a001260

[DTM作品] AOBA(青葉)

5月に入って樹木の葉の緑色が濃くなってきました。晴れた空に青葉はよく映えます。まばゆい。外に出て青葉を眺めていると、この季節、風のなかにすこしだけ夏の匂いがして気持ちがいいですね。ぐんぐん伸びて葉をひろげていく樹木をみているだけで、ぼくらのなかにも力が沸いてくる。

100516_sora.JPG

共感覚者の岩崎純一さんが書かれた本「音に色が見える世界」で知ったのですが、日本語にはもともと色彩語として「あか・あを・しろ・くろ」の4つしかなかったそうです。つまり、緑は青とよばれていた。だから木の葉の緑は「青葉」なのでしょう。ちなみに共感覚とは文字や音に色がみえること。通常の感覚しか持たないぼくには想像もつきませんが、世界は色にあふれていることとおもいます。

いま色は細分化され、名前が付いています。和色としては自然から名前を取った色名が多いようです。「和色大事典」から、この時期の樹木の緑色の移ろいを色に当てはめてみると、次のような印象でしょうか。

淡萌黄うすもえぎ #93ca76
■■■■■

鶸萌黄ひわもえぎ #82ae46
■■■■■

千歳緑ちとせみどり #316745
■■■■■

というわけで、青葉をイメージした曲を作ってみました。

風に揺れながら静かに佇んでいるけれど、樹木の幹のなかにある管は水を吸い上げ葉脈まで運んでいきます。成長のために力強く呼吸もしています。そんな木々の葉の力強さ、活力、生命力のようなものをイメージしました。タイトルはそのまま「AOBA(青葉)」です。

ブログで公開します。お聴きください。

I programed this tune by my laptop computer. The name of this tune is "AOBA". "AOBA" is green leaves in Japanese. I made this tune imagining vitality of the trees in May. It is quiet, powerful vitality. I'd like you to listen to this tune.


■AOBA(4分06秒 5.63MB 192kbps)

作曲・プログラミング:BirdWing


制作メモをすこし。

前回『ハルノネイロ』という曲を作ったのですが、あらためて聴きなおしてみるといまひとつ納得できませんでした。そこで基本的には前回の制作コンセプトを踏襲しながら、新しい曲づくりを試みました。したがって制作の基盤にあるのは、前回のエントリで引用したようなシューゲイザーやエレクトロニカの音楽です。

しかし、今回制作の途中でイメージしたのは、ベック、そしてアンダーワールドらしい音でした。特にベックのループ、サンプリングを使いながら、ややローファイな音づくりがアタマに浮かびました。以下のアルバム、そしてベックがシャルロット・ゲンズブールをプロデュースしたアルバムはいまでもときどき聴きます。


B000I2IZ20ザ・インフォメーション(DVD付)
ベック
ユニバーサル インターナショナル 2006-10-06

by G-Tools

B002UMFO6QIRM
シャルロット・ゲンズブール
ワーナーミュージック・ジャパン 2010-01-27

by G-Tools
B000UVXLMSOblivion With Bells[日本語解説・DVD・ボーナストラック付き国内盤]
アンダーワールド
Traffic 2007-10-03

by G-Tools


リズムは、まずTTS-1のドラムにリバーブをかけて生音を切って、空気感のある背景音を作成。基本的なリズムはフリーのドラム音源Rhythms v3.6.1を使っています。その他、パーカッション(コンガ)の音はループ音源。そして中間部分では、ノイズを切り貼りしてリズムを作りました。

うにょうにょいっている音は、これもフリーのSEEQ-ONEというソフトウェアシンセ。こんなインターフェースです。

100516_SEEQONE.jpg

このシンセ、はっきりいって使い道がないなあとおもっていたのですが、こういう風に使えばいいんですね。プリセット音を3パターンぐらいかえて、4小節ぐらいのフレーズをWAVE化して使っています。ブラスのヒット音、その他パッド系の音はGrooveSynthです。

クールな音を作りたいと考えているのだけれど、耳にやさしい音を意識するとありきたりの平凡な音楽になってしまう。一方で既存の枠組みを壊そうとすると困惑するような音になる。夢中になって取り組んで後で冷静に聴いてみると、いつもと同じようなフレーズを使っていることも多々あります。なかなか匙加減が難しいものです。

しかし、考えようによっては、樹木は毎年葉を散らし、けれども次の春にはまた新しい葉をつけます。葉は同じようでいて、毎年新しい。禅問答のようですが、異なるものを作りつつ同じであって構わないのではないか、とおもいました。まったく同じものはできない。時間は螺旋状に進んでいくわけで、いま存在する地点は昨日/数ヶ月前/去年/遠い昔のこの地点ではないのです。

毎年枯れて、しかし次の年には再生する青葉のような存在あるいはクリエイティブでありたい、と考えました。

投稿者: birdwing 日時: 09:50 | | トラックバック (0)

2010年4月29日

a001257

[DTM作品] haru_no_neiro(ハルノネイロ)

天候が安定してきたとおもったら、東京では風が強く雨もぱらつきはじめた(と書いているあいだに午後にはまた晴れ間が・・・)と、結局のところ不安定な空模様の「昭和の日」。ゴールデンウィークに突入しました。みなさんはどのような計画を立てられていますでしょうか。ぼくにはいまのところ何もありません(苦笑)が、家でのんびりと本を読んだり音楽を聴いたりして過ごすつもりです。

サクラも葉桜の頃が遠くなり、そろそろ春から次の季節へと移ろうような時期です。時期的にはややびみょうですが、ハルの音を趣味のDTMで作ってみたいとおもいました。タイトルは「ハルノネイロ」としました。

ブログで公開します。お聴きください。


■haru_no_neiro(3分25秒 4.70MB 192kbps)

作曲・プログラミング:BirdWing


今回、めざしたのは、バンドっぽいノリのある音と、きらきらしたネオアコ的なテイスト、あるいはシューゲイザー風のエレクトロニカです。ぼくの持っているアルバムのなかからピックアップしつつ、ネオアコとシューゲイザーの音楽について自分なりに解説してみることにしましょう。

ネオアコは80年代に隆盛した音楽のジャンルで、アズテック・カメラ (Aztec Camera)やオレンジ・ジュース (Orange Juice)のようなアーティストがいます(Wikipediaの解説はこちら)。高音のきらきらしたギターポップが特長です。ちょっと照れくさい青春っぽい音といえるでしょうか。そのほかに個人的な好みでは、トラッシュ・キャン・シナトラズ (The Trash Can Sinatras)、ロータスイータース (Lotus Eaters)、日本ではフリッパーズ・ギターあたり。と、名前を羅列しただけで甘酸っぱいものが。


B000NDFJ32ハイ・ランド、ハード・レイン
アズテック・カメラ
ワーナーミュージック・ジャパン 2007-04-25

by G-Tools

B001GM7GT4ケーキ+6
トラッシュ・キャン・シナトラズ
USMジャパン 2008-12-03

by G-Tools
B00005FNXGThree Cheers for our side ~海へ行くつもりじゃなかった
ポリスター 1993-09-01

by G-Tools


一方でシューゲイザーというのは、ディストーションで歪ませて深いリバーブをかけたギターの音が特長である音楽です。Wikipediaの解説に書かれているように、俯いてギターを弾くことが多く「shoe(靴)をgaze(凝視)する人という意味でshoegazerと呼ばれるようになった」ようです。マイ・ブラッディ・ヴァレンタインをはじめとして、ぼくの好きなアーティストでは、アソビ・セクス (Asobi Seksu)、ブロンド・レッドヘッド (Blonde Redhead)などがいます。


B00005G499ラヴレス
マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン
エピックレコードジャパン 1998-03-21

by G-Tools

B000JGEUHEシトラス
アソビ・セクス
ディウレコード 2007-06-22

by G-Tools
B002Y3DEPO23
ブロンド・レッドヘッド
ホステス 2010-01-27

by G-Tools


シューゲイザーを取り入れたエレクトロニカのアーティストはかなりたくさんありますが、何度かブログで取り上げたお気に入りはウルリッヒ・シュナウス。無機質な打ち込みのリズムと、リバーブの彼方から聞こえる遠い繊細な音色にとても癒されます(遠い目)。


B0007LLOVGFar Away Trains Passing By
Ulrich Schnauss
Domino 2005-11-01

by G-Tools

B000RGSOOGGoodbye
Ulrich Schnauss
Pias UK 2007-07-10

by G-Tools


自作曲とは関係ない方向に突っ走って、自分の持っているアルバムの列挙になってしまいました(苦笑)。すこしだけ「ハル」という主題に戻ると、フェネスと坂本龍一さんによる「Haru」という曲がぼくは好きです。この曲を聴いていると、風に揺れている草原のタンポポ、あたたかい陽射しのようなイメージが広がります。YouTubeから。


■Fennesz + Sakamoto - Haru


さて、自分の好きな音楽語りはこのくらいにして、自作曲「ハルノネイロ」の制作メモです。

ドラムスは基本的に、パーツの音声ファイルを切り貼りしてパターンを作り、フィルターやリバーブをかけて加工しています。

シンセは、ほとんどRolandのGrooveSynth。ギターのように聴こえる音もシンセで作りました。リード系の音色をピッチベンドとモジュレーションでギターっぽい音にして、アンプシミュレーターのディストーションを通して歪ませ、ダイレクト音をミュートして深めのリバーブをかけています。カッティングノイズは音声ファイルを貼り付けました。途中に出てくるエレピは、フリーのソフトウェアシンセmda ePianoをイコライザーなどで味付けしました。ストリングスはサンプリング音をスライスして音程をいじっています。

きらきらした音をめざそうとして高音を強調していたのですが、作っている途中で耳がきんきん痛くなって閉口。手探り状態でコンプレッサーとイコライジングを設定しました。とりあえず全体にマルチバンドのコンプレッサーをかけ、低音部を強調、高音部をカットしています。弾力性のあるボムというバスドラムと、ポール・マッカートニー風のぶりぶりしたベースにしたかったので(なんでしょうか、この表現。苦笑)、それなりに自分のイメージした音になったと思います。最後の部分は、空気感を膨らませるために、ネットで拾ってきたイギリスのメトロの雑踏音を加えました。

と、いろいろと書きましたが、個人的にはうーむというイマイチ感があります。BPM=90というゆっくりめのテンポも、もうすこし速めでもよかったかな、とも感じています。

しかしながら、自分のなかにある春霞のような何か、ハルの期待感のようなものには近づけたような。うーむ。

イメージをカタチにするのは難しいですね。

投稿者: birdwing 日時: 15:05 | | トラックバック (0)