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2010年3月28日

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[DTM作品] sakura_no_utage(サクラの宴)

3月も終盤だというのに寒い日がつづいています。ぽかぽかと陽射しのあたたかい日もあるのですが、午後には翳ってしまうことも多く、とても変化しやすい天候です。寒暖の差が激しいと身体に不調を起こすもの。みなさん健康には十分にご自愛くださいね。

トウキョーでは、サクラの花もまだまだ五分咲きのようです。それでもちらほらと、つぼみから花に変わりつつある景色がみられるようになりました。

毎年チェックするウェザーニュースというサイトでは、「さくら情報を公開しています。今日のトウキョーの開花状況をみると、サクラの名所では、小石川後楽園(シダレザクラ)と妙法寺の2箇所が満開のアイコン(赤)でした。しかし、まだまだつぼみのところが多いようです。

100328_sakura1.jpg

ウェザーニュースでは、次のように開花状況を解説されています。

九州や高知・和歌山では各地で満開!お花見ピークです。また、その他の西〜東日本でも開花が進んでいますが、冬の寒さが戻ってきているため、満開へ向かう速度はゆっくりめ。

また、ウェザーニュースのページには「SakuraSimulator2010」という開花のシミュレーションページがあるのですが、4月中旬までの日曜日の推移を、1週間ごとに並べてみると次のようになります。

■3月28日(日)
100328_sakura2.jpg

■4月4日(日)
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■4月11日(日)
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■4月18日(日)

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サクラが北上して、葉桜(緑の部分)になっていくようすがよくわかります。1週間でずいぶん散ってしまうようです。サクラは短命です。関東では4月の1週間目がピークだとおもうのですが、見所を逃さないようにしたいですね。

というわけで、やや時期的には早いのですが、趣味のDTMでサクラの花見の曲を作ってみたいとおもいました。

といってもどんちゃん騒ぎのための曲ではなく、宴会の終わったあとで妖艶な夜桜の光景を見渡しているようなイメージです。日本的というか、和というか、そんな曲調をめざすつもりでした。

「サクラの宴」というタイトルにしました。ブログで公開します。お聴きください。


■sakura_no_utage(5分02秒 6.92MB 192kbps)

作曲・プログラミング:BirdWing


なぜ「和」的なものをめざしたかというと、日曜日の夜8時、NHKで放映されている「龍馬伝」の影響があったかもしれません(苦笑)。

実はNHKのドラマはあまり観たことがなかったのですが、Twitterでソフトバンクの孫正義社長が熱く盛り上がっていたこともあり、毎週欠かさず観るようになりました。見事に嵌まりました。あまりにも単純ですが、龍馬伝に対する思い入れが今回の曲の原動力になっている気もしています。

福山雅治さんの龍馬はもちろん、加川照之さんの岩崎弥太郎、大森南朋さんの武市半平太、迫力ありすぎの田中泯さんの吉田東洋など、キャストが凄すぎる。毎回、あっという間に45分が過ぎ去って、ドラマを超えていろいろなことを考えさせられます。

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さて「サクラの宴」制作メモです。

今回、基本的なリズムは前回同様フリーシンセのRhythms v3.6.1を使用しました。その基本リズムににTTS-1のブラシによるジャズドラムの音を加えています。広がりのあるスペーシーな音は、フリーシンセのCygnus-Oを使っています。幻想的な音の出るシンセですが、なかなか使い方が難しい。いくつかのプリセットの音を打ち込んで音声ファイルにバウンスして重ねました。

080721_cygnus.jpg

後半、ストリングス的な音とシンセベースは、これもまたフリーシンセとしては定番のSUPERWAVE P8を使いました。定番的ではありますが、やっぱりいい音です。ストリングスにはワウでフィルターをかけています。

superwavep8

ほんとうは妖しさを表現したかったのですが、なかなか表現しきれていません。おんなへんである「妖しさ」は、ある程度、女性の感性が必要ではないかと感じました。というのも、80年代の洋楽で、化粧をして一種の倒錯したイメージを醸し出していたカルチャー・クラブのボーイ・ジョージや、ジャパンのデヴィッド・シルヴィアンは妖艶だったので。彼らには退廃的な匂いも感じました。そんな不健全さを求めていたのだけれど、もともと健全・安全・好青年(?)なぼくには、表現力にあり余るものがありました。

夜桜の妖艶さは、いったいどこからきているのでしょう。たぶん日本人には敏感に捉えられる感覚だとおもうのですが、その妖艶さを表現する術をぼくはまだ獲得していません。夜桜でも眺めて、ものおもいに耽りたいところです。

投稿者: birdwing 日時: 17:06 | | トラックバック (0)

2010年3月13日

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[DTM作品] mizu_no_wakusei(水の惑星)

和歌山県太地町のイルカ漁を題材にした長編ドキュメンタリー映画「ザ・コーブ(the cove)」が、アカデミー賞を受賞しました。「わんぱくフリッパー」の調教師リック・オバリーを含む撮影隊が、隠し撮りによってフィルムに収めた作品であるとのこと。

ただ、ぼくは多くのひとと同様、このニュースをきいてとても居心地の悪い印象を受けました。というのは、日本人全体がおとなしいイルカを殺戮しているようなイメージにとらえられ、批判の対象になっている気がしてならないからです。

ぼくはイルカの肉を食べたことがありません。

クジラの肉は、ちいさな頃に学校給食で竜田揚げを食べた記憶があります。ウシやブタの肉なら日常でずいぶん食べています。ときにはウマやヒツジもおいしくいただきますが、イルカを漁で捕獲することがいけないのであれば、なぜ他の動物たちはいけないのでしょう。極論をいってしまえば、トマトやニンジンだって生命です。イルカだけが槍玉にあげられるのは何か納得がいかない。

生態系(エコシステム)の連鎖のなかで、ぼくらは他の生き物たちを食することによって生きています。全体論でくくるべきではないのかもしれませんが、自然に生かされているぼくらのちっぽけな存在の有難さを感じ取る必要はあります。他の動物を食することで自分の生命を維持している、ということ。食べ物であると同時に、すべての生き物は同じ地球上に棲む仲間でもあります。

ということを考えながら曲を作りました。今回もエレクトロニカ風の曲です。タイトルは「水の惑星(mizu_no_wakusei)」としました。ブログで公開します。お聴きください。


■mizu_no_wakusei 水の惑星(4分13秒 5.78MB 192kbps)

作曲・プログラミング:BirdWing


すこし「ザ・コーブ(the cove)」の映画の話に戻ります。池田信夫さんがブログで批判されていました。とても共感したので、3月10日の「エコロジーという自民族中心主義」というエントリを引用します。

イルカを年2万頭殺すことが残虐なら、年3500万頭の牛を殺すアメリカ人は何なのか。デリダもいうように、高等動物と下等動物の区別には意味がなく、人間と動物の境界も恣意的なものだ。たとえば新生児を殺したら殺人だが、妊娠3ヶ月で中絶するのは犯罪にはならない。逆に、かつては老人を「姥捨て山」に遺棄することは犯罪ではなかった。殺してはならないものの境界を決めるのはそれぞれの時代や地域の文化であり、絶対的な基準はない。

ところがキリスト教文化圏は、すべての人類に普遍的な倫理があると信じる特異な地域だ。さらに人間が神の姿に似せてつくられたという特権意識をもち、すべての動物は人間のために殺されるのが当然だと考える人間中心主義が強い。「イルカは賢いから殺すな」という主張の根底には、黒人などの「劣った民族」は殺しても奴隷にしてもよいという自民族中心主義がある。

池田信夫さんは日本をバッシングする「政治的意図」を危惧されています。自分たちの文化は棚上げして他の文化を批判あるいは排除しようとする「自民族中心主義」には、確かに危険性が潜むと感じ取りました。

閑話休題。

音楽でイルカというとおもい出すのは、ネオアコ系のオレンジジュースというバンドの次のアルバムです。ぼくの音楽とは関係ないのですが、ジャケットを掲載しておきます。

B0000565U9キャント・ハイド・ユア・ラヴ・フォーエヴァー
オレンジ・ジュース
ポリドール 1998-03-25

by G-Tools

「水の惑星(mizu_no_wakusei)」の制作メモです。

今回はSONAR付属のGrooveSynthとフリーソフト中心で作りました。イメージとしては広い海原をパッド系のシンセで、あとクジラの鳴き声のようなリフをフリーシンセのminimogueVA、イルカあるいは海鳥の鳴き声をGrooveSynthで作っています。

minimogueVAの操作パネルはこんな感じ。アナログ風です。今回はプリセット音のSoft Mini Sweepをベースにして、つまみをいじって音作りをしました。

100313_minimoog_re.jpg

ドラムスはフリーシンセのRhythms v3.6.1です。テクノ系の音作りにはいい。操作パネルはつまみが並んでいますが、プリセットを利用。コンプレッサーを強めにかけて、低音をイコライザーで持ち上げています。

100313_rhythm_re.jpg

ところで、制作中にトラブルが多発で苦労しました。まずは、いい感じになってきたなあ・・・とおもったらソフトウェアがフリーズ。作ったデータが跡形もなく消えていました。それこそ"海の藻屑"です。調べてみると音声ファイルにミックスダウンした部分だけ多少保存されていたので、そのファイルを利用しつつ制作。しかし非力なPCには限界らしく、ソフトウェア上ではドロップアウトして再生できなくなってしまい、試しにエクスポートしてみたところミックスダウンが書き出せたので、やっと完成した次第です。

インスパイアを受けたのは、特定のミュージシャンではなくサイトの音楽でした。まずは、ユニクロのUNIQLOCK。音楽を担当しているFPMについては、ブルータス2/15「吉本隆明特集」号の記事で知りました。以下では音を消していますので、右下の音声ボタンを押して音楽をお聴きください。

もうひとつは、ソニーエリクソンから発表された新しいケータイXPERIAのサイト。アンドロイドというOSによる携帯電話ですが、さすがにソニーエリクソンだけあってかっこいい。こんな音楽作ってみたいなあ、と。

100313_experia.jpg

と、このようにつれづれに書き進めてみて、イルカ捕獲の問題と音楽の趣向は合致しにくいものがある、と感じました。海外ではトム・ヨークのように環境問題に関心を示しながら良質の音楽を作るアーティストがいます。思想的なものと音楽をうまく重ね合わせることができるといいのですが。大きな(自分にはあまりにも大きすぎる)課題です。

投稿者: birdwing 日時: 18:32 | | トラックバック (0)

2010年3月 6日

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[DTM作品] TOHO(徒歩)

やっちゃったな、とおもうときがあります。たとえば酔っ払って電車で帰宅する途中に眠り込んで、自宅の最寄駅で降りずに通過してしまったとき。

反対方面に引き返す電車があれば逆の路線に乗って戻ればいいのですが、眠りこけていた電車が終電だったりするといけない。帰れません。ひと駅どころか、いくつも駅を乗り過ごしてしまうと悲惨です。

かつて惰眠を貪って駅を乗り過ごして、終電がなくなっていたので、5000円ぐらいタクシー代を払って帰宅したことがありました。あるいは、3駅の距離を線路に沿って歩いて帰ったこともあったっけ。東京都内に住んでいるからまだラッキーなのですが、郊外では、そうもいかないでしょう。

しかし、考えようによっては、春先のコートが要らなくなった時期に、ほろ酔い気分で隣駅で途中下車して、ぶらりと歩いて帰るのもよいものです。

楽しかったどんちゃん騒ぎを思い出しながら、街灯に照らされた静かな道を歩く。街灯のあかりを逆光に、ぼうっと霞んだサクラの花が美しい。ところどころにあるコンビニエンスストアのあかりが、みょうにあたたかい。見上げるとネガポジの反転した雲の向こうに月が出ている。月はうっすら鋭利な刃のように輝いた下弦の月かもしれません。まだ開いている飲み屋からは、陽気な笑い声が聞こえてきたりする。

と、そんな情景を曲にしてみました(笑)。

タイトルは「徒歩(TOHO)」です。タイトル的にいかがなものか、とおもったのですが、考えに耽りながら歩くので、途方に暮れることの「途方」かもしれません。あるいは「とほほ」のTOHOかも。東方神起の東方ではないですね、たぶん。

ブログで公開します。お聴きください。


■TOHO 徒歩(3分12秒 4.39MB 192kbps)

作曲・プログラミング:BirdWing


いままでジャズ風の曲をいくつか作ったのですが、一転してエレクトロニカです。制作上の手法も、通常はピアノロールという方眼紙のような画面にマウスで音を置いていくのですが、今回は、音声ファイルの切り貼りです。4小節だけ打ち込んで、その音を音声ファイルに変換し、切ったり貼ったり裏返したり(リバース、逆回転)、そんな手法で作っています。絵に喩えると、通常は点描画なのですが、今回は切り絵という感じでしょうか。

ほんとうは最近よく聴いている武満徹さんの音楽のような、幽玄というか妖しい曲を作りたいとおもいました。しかし、とても無理だと断念。無難なエレクトロニカ方面に匙を投げてしまいました。

ところで、自作曲とはほとんど関係がないのですが、ブログを書きながらエレクトロニカや効果音の処理でおもい出したアーティストがいくつかあります。そのことについてあらためて書いてみようとおもいます。

サンプリングした音の切り貼りや、ノイズをはじめ自然音などを効果音として加えることは、エレクトロニカでは当たり前の手法です。一昨年頃インディーズのエレクトロニカに嵌まり、CDショップで試聴して手当たり次第アルバムを購入していた時期がありました。その当時好きで何度もヘヴィーローテーションしていたausという日本人アーティストの「Halo」をYouTubeから引用します。


■Halo - Aus


キラキラしたせつない音が綺麗です。天気のいい朝、この曲をiPodで聴きながら電車に乗っていたら、なんとなくトリップした気分になったことがありました。これは「LANG」というアルバムに入っている曲ですが「Antwarps」というアルバムも持っています。

ジャズでは菊地成孔さんも演奏に取り入れていました。ライブでそのまま弾いた音をプレイバックして、逆回転させたり、エフェクト処理するところが以下のYouTubeでみることができます。


■菊地成孔ダブ・セクステット - Dub Liz


ピアノの上にもパッド系のコントローラーが置いてあります。弾いたメロディをその場でサンプリングし、逆回転などの効果を加えて、生演奏に合わせてリアルタイムで再生しているようです。

最後に自作の「TOHO(徒歩)」に戻って、こまかい制作メモを残しておきます。

今回ピアノとドラムス(FX)はTTS-1です。ドラムスといっても通常のセットではなく効果音を使い、心臓の鼓動の音がバス、靴で歩く音がスネアです。ピアノは逆回転させるとともに、一部のトラックにはサラウンドをかけました。

他のシンセらしい音はフリー(無料)VSTi音源では定番のCrystalを使っています。やはりエレクトロニカを熱心に聴いていた頃とその数年前には、無料のソフトウェアシンセをネットで探しては試していたものでした。こんなに凝った音づくりができる音源がフリーで配布されているのか!と驚きました。以降、まったく探究心が失われてしまったのだけれど、最近はどうなっているのだろう。

Crystalの操作画面はこんな感じです。波形のカーブなどが、機械ごころをくすぐります。といってもプリセット音をいじったことがないのですが。

100306_crystal2_re.jpg

ぽかぽか春のような陽気の日があるとおもうと、一転して雨降りの肌寒い鬱陶しい日になり、気を緩めることができません。これから卒業・入学シーズンも迎えて、サクラの花も咲きはじめる時期です。コートを手放して散歩が楽しめるような季節になるといいですね。

投稿者: birdwing 日時: 19:33 | | トラックバック (0)

2010年2月21日

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[DTM作品] Haru wo matsu(春を待つ。)

2月に入って東京では雪が降る日が何日かありました。それほど大雪というわけではなく、太陽が顔を出すとあとかたもなく消えてしまう程度の雪です。とはいえ、雪が積もると新鮮な気分です。寒いし道は歩きにくいのだけれど、なんとなく街全体が静かになった気がします。

そんな雪の日のスナップをふたつほど。18日にも雪が降りましたが、過去に遡り、立春の前(2月2日)に降った雪です。隣の家の駐車スペースの屋根に鳥の足跡がついていました。

20100202_yuki1.jpg

ベランダの植木鉢にも雪。

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梅の花も咲くようになり、そろそろ3月にも近付いてきました。はやくあたたかい日が来るといいですね。というわけで、「春を待つ。(haru wo matsu)」という曲を趣味のDTMで作ってみました。ブログで公開します。お聴きください。


■Haru wo matsu 春を待つ(3分41秒 5.05MB 192kbps)

作曲・プログラミング:BirdWing


今回はワルツ(3拍子)です。曲調としては"なんちゃってジャズ"第3弾という感じでしょうか。ピアノとウッドベースとドラムスという編成です。しかし、ドラムスのスネアの入れ方などよくわからないので自己流です。細かいゴーストノートをたくさん使っているので、実際に演奏したら腱鞘炎になりそうです(苦笑)。

ワンパターンなのですが、マイナーコードとメジャーコードがくるくると入れ替わる曲が好きです。今回もコードの明暗によって、春を待つ不安のようなものを表現したつもりです。ビギナー的な制作過程における発見がひとつありました。最初は文部省唱歌のようなきっちりとした音楽になってしまい、どうしてこうなっちゃうかな、と悩みました。その結果、音が「くっていない(シンコペーションしていない)」という単純なことに気付きました。部分的に音を前ノリにさせることで、やっと文部省唱歌的な呪縛から逃れることができました。

洋楽で3拍子といって思い出したのは、The City(キャロル・キング)の「Snow Queen」です。キャロル・キングと彼女の最初の旦那さんであるジェリィ・ゴフィンの曲ですが、ロジャー・二コルスも取り上げています。ロジャー・二コルス版のほうをYouTubeから。



ジャズでワルツといえば、やっぱりこれ。ビル・エヴァンスの「ワルツ・フォー・デヴィ」です。学生の頃に毎朝、繰り返して聴いていたほど好きな曲でした。やさしくて洗練された雰囲気のあるワルツです。



ところで、楽曲の制作とは関係ないのですが、最近、音楽に関して個人的に影響(ショック)を受けたことが、ふたつあります。

ひとつめは現代音楽、武満徹さんの音楽を聴きはじめたことです。はるかむかしに武満徹さんの音楽を聴いて、ああ、こりゃダメだ、ぼくには合わない、とおもって投げ出してしまったことがありました。難解だったし、何かおどろおどろしいものが生理的に合いませんでした。しかし最近、聴き直して嵌まってしまった。癒されるのです。硬質なハープのきらめきとフルートが美しい「そして、それが風であることを知った」をYouTubeから引用します。



ぼくがショックを受けたのは、武満徹さんの音楽の芸術的に高められた無秩序性(のようなもの)です。デジタルで、しかもピアノロールによる打ち込みで音楽を作っているぼくは、どうしても曲に対するアプローチが構造的になります。つまりきれいな「建物」を作りやすい。しかし、武満徹さんの持っている秩序を破壊した「廃墟性」と、そこから生まれる妖しさにまいりました。これはぼくには表現できない、と。落ち込んだなあ。いや、そもそも武満徹さんと自分を比べるのが間違っているのですが、思考と表現の限界を突きつけられた気がして、凹みました。しばらく、「春を待つ。」という楽曲を制作する手が止まりました。

ふたつめは、まつきあゆむさんというミュージシャンの活動です。

宅録(自宅録音)で音楽を作っているインディーズの方で、myspaceでも音楽を発表されているのですが、その数が半端ではない。ASCII.jpの記事「著作権は自分で決める 音楽家・まつきあゆむの方法論」を読んでまず惹かれました。冒頭を引用します。

現在、音楽家が作品を売るための最もローコストでシンプルな方法。それは作家自身がリスナーにオーディオファイルを販売することだ。誰もが思いつくであろう「ネット上の手売り」。だが今まで、日本のアーティストは誰もやらなかった。

海外であれば、レディオ・ヘッドがアルバム音源の値段をダウンロードしたひとに決めさせるという過激な手法の例もあり、話題を呼びました。小規模では、決済機能を持つサイトを通じて楽曲を販売するインディーズのミュージシャンの方も存在したかとおもいます。しかし、まつきあゆむさんは販売のための基金まで設立されている。

さらにすごいとおもったのは、ソフトバンクが出資したUstreamというストリーミング(映像配信)サイトで、その制作過程を延々と実況されていたことです。先日2月19日には「2000人ツイッター」として、公開録画もされていました。公式サイトには次のように書かれています。

会場にて、新曲「2000twitter~それはあなたです!~(仮)」の作詞、作曲、録音を行います。
録音の模様はUstream生中継を予定しており「曲が0から生まれて行く姿」を世界中へお届けします。

■公式サイト http://matsukiayumu.com/

20100221_matsuki.jpg

宅録なのでメンバーは当然「ひとり」です。しかし、通常宅録は曲の制作過程を他人にみせないものです。音作りに時間もかかるし、失敗したり途中でのらなくなって曲をボツにしちゃったり、何が起こるかわからない。その過程をすべて中継されていて驚きました。

しかも、Ustreamでは映像と同時にTwitterの投稿が右側にタイムライン(TL)に流れていて、視聴者の投稿した歌詞から「それ採用」のように楽曲に取り入れていく。つまり、オンラインとオフラインを横断したコラボレーションによって、曲を「リアルタイムで」作っていくのです。

公開録音の会場には、ベースやギターが立てかけてあると同時に、ラップトップのコンピューターが設置されていました。向かって右サイドにもサポートするかたちでコンピュータの画面を眺めているひとがふたりほどいらっしゃいました。その中心で、まつきあゆむさんが(たぶんPro Toolsを使って)デジタル録音していく。バンドともエレクトロニカのラップトップミュージックとも違う画期的な制作過程が展開されていて、おおっと熱くなりました。

と、そんな風に、武満徹さんといういままで聴かなかった現代音楽との巡りあいや、まつきあゆむさんというTwitterやUstreamというテクノロジーを活用した宅録の新しい表現に衝撃を受けつつ、揺れ動きながら「春を待つ」自分です。

投稿者: birdwing 日時: 20:02 | | トラックバック (0)

2010年2月 6日

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[DTM作品] OBORO-ZUKIYO(朧月夜)

真冬の季節、空気が澄んでいると月がきれいにみえます。あまりにも寒い日には、コートの襟をきちっと合わせて、俯いて足早に帰路を急いでしまうのだけれど、月を眺めながら帰るのもよいものです。

Twitterで、今夜は月がきれい、というつぶやきを聞きました。ちょうど宮本笑里さんのブログにも、月の写真が掲載されていました(1月30日のエントリー)。ほんとうにきれいな月夜だったんですね。

残念ながら、ぼくの部屋から月はみえなかったのですが、こころのなかの月を眺めつつ、趣味のDTMで月夜をイメージした曲を作ってみようと考えました。相変わらず、瓶のなかのちいさな帆船を組み立てるように、すこしずつ作っていきました。今日はこの小節の最後だけを作ろう、というように。ぼくにとってのDTMは、プラモデルの趣味に似ている気がします。

ブログで公開します。「OBORO-ZUKIYO(朧月夜)」というタイトルにしました。お聴きください。


■OBORO-ZUKIYO 朧月夜(4分00秒 5.49MB 192kbps)

作曲・プログラミング:BirdWing


月といえば、以前2007年9月に「ハーフムーン」という曲も作ったことがあります。これはDTM×掌編小説という試みで、曲のイメージから短い小説も書いています。なんとなく青臭い物語なのですが、再掲載してみます。

以下、サムネイル(画像)をクリックしてください。縦書きのCSSを使っていますので、縦書きで読むことができます。

縦書きテスト

さて、今回の制作メモを書いておきましょう。

月を表現するには、やはりピアノの音が重要かな、と。3Bのひとり、ベートーヴェンのピアノソナタ(月光)の印象があまりにも強いからかもしれません。ぜんぜんぼくの作った曲とは異なり、唐突な引用ではありますが、月の光をイメージする代表的な曲ということで、ヴィルヘルム・ケンプの演奏をYouTubeから。



この月光という曲、少年の頃にさらっと弾けちゃう男がいて悔しかったなあ。そのコンプレックスがいま、ピアノは弾けないけれど、一種の"オルゴール職人"として、パソコンに入力して曲を作り上げることに奮闘する自分の原動力となっているのですが。

霞んだ月を表現するには、ゆったりとした響きが大事です。いつも使っている明るめのピアノの音色(TTS-1:Piano 2st)ではなく、すこしくぐもった音のプリセット(TTS-1:Piano 1d)にリバーブをうっすらとかけてみました。ベースはウッドベース(Acoustic Bs.)、ドラムスはジャズドラム(Jazz Set)のプリセットです。トランペットも明るく突き抜けた音ではなく、すこしこもった感じの音(Dark Trumpet)にしました。

最後まで選択に迷ったのは、いかにもシンセっぽいSpaceVoiceという音色を使うか否か、でした。ストリングス系やオルガンを試してみてもどうもしっくりこなかったため、この音にしました。とはいえ途中でメロディをとる部分は、シンプルな構成だけれど月あかりっぽい音かな、とおもっています。

DTMの作品では、前回までの2曲は"なんちゃってジャズ"を試みました。今回はその試みで得たものを継承しつつ、「Fine after cloudy」の最後で考えたように、ロジャニコ(ロジャー・二コルス)の楽曲に近い方向性を意識しました。

Roger Nichols & the Small Circle of Friends

と、書いていても実際に作った「OBORO-ZUKIYO」は、ぜんぜんロジャニコに近付かない。こじつけにすぎない印象です。どうにも不甲斐ありません。基本的にA+Bという構成のシンプルな曲ですが、Bつまりサビの部分のトランペットなどでロジャニコを意識したつもりなんですけど。。。

このサビが出てくるまでに、かなりたくさんのサビを作りました。歌謡曲のようなものもあり、クラシカルなものもあり。で、納得がいかずにすべてボツ。壊しました。転調してこの展開を得たときに、おっ?きたかな、という感じが若干ありました。しかし、もうすこしロジャニコを研究しなければ。

ところで月について。Wikipediaの「」に関するページには、天文学的なデータから西洋と東洋の伝承に至るまで、さまざまな解説が掲載されています。以下の月の秤動(ひょうどう)いわゆる満ち欠けの画像はライセンスフリーのようなので掲載します。

Lunar_libration_with_phase2.gif

うーん。凄いな。いつもよりはやくまわっています(笑)。GIFアニメなので、どうにも止められません。目がまわりそうだ。

雲のない夜には、月を眺めてみてはいかがでしょう。

外に出るときは寒いのですが、月を観賞したあとは部屋のなかで、カフェオレやほっとレモンなどを飲んであたたまることにして。

投稿者: birdwing 日時: 14:15 | | トラックバック (0)