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2007年8月26日

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Tamas Wells@東京・渋谷O-NEST

人間の声は究極の楽器だと思います。残念ながらぼくの声は楽器としてはあまりよい響きを奏でられないようですが、だからこそ美しいボーカルに惹かれます。

未熟な音楽経験のなかで、美しい声だなあと思ったアーティストを思い浮かべてみると、まずTamas Wellsがいます。彼のアルバムを聴いたきっかけは、とあるブログだったのですが、「A Plea En Vendredi 」に収録された「Valder Fields」という曲を試聴したところ、自然に涙が出てきた。ささくれだった気持ちが癒されるような音でした。

Tamas Wellsはミャンマーに移住したこともあるオーストラリア人のようで、地元では「ニック・ドレイク・ミーツ・シガー・ロス」と評されるようです。ただ、シガー・ロスっぽいどこか天上に存在する場所のような世界観というものよりも、ピュアで透明な日常という感じでしょうか。身近なのだけれど、まるで夢のなかに広がるような美しい風景があります。

そんな彼が、今年の夏に初来日しました。

tamas.gif

■Lirico presents TAMAS WELLS JAPAN TOUR 2007
8/17 (fri) 金沢21世紀美術館
8/18 (sat) 大阪・カシミア
8/19 (sun) 奈良・sample
8/23 (thu) 東京・自由学園明日館
8/25 (sat) 東京・渋谷O-NEST

ぼくはツアーの最終日の8/25 、渋谷O-NESTのライブに行ってきました。自由学園飛鳥日館では、50人限定のPAなしのアコースティックライブだったようですね。こちらもできれば聞きたかったのですが、ぼくがチケットを買う頃には売り切れてた。行動が鈍いわたくし(泣)。

直前まで仕事をしていて、場所がよくわからずに焦ったので(WESTと別の場所だと思っていたら同じ場場所だった。焦って損した)会場に着いたときには汗びっしょりになってしまい、しかも空腹にジントニックを流し込んだら、お腹というか背中が痛くなって苦悶。でも、音楽がはじまってしまうとけろっと直ってしまうから不思議です。

O-NESTのようなライブハウス、ぼくは好みです。あまり広くなく、アーティストを間近でみることができる。そして、疲れたら床に座ったり、ポールに寄りかかったりもできる。

まず共演者として、ふたりの演奏がありました。最初は木下美紗都さん。アコースティックギターの弾き語り(最後だけはレスポールを演奏)で、男性ボーカル、キーボード、エピフォンのエレキギターという4人編成でした。歌の感じとしてはGutevolkに似ている感じでしょうか。ざらつき感のある、かわいい声。しかしですね、いまひとつ何をやりたいのかが、よくわからなかったな。厳しいことを言わせていただくと。また、この手のアーティストは非常に多い気がしました。

つづいて、the guitar plus me。これはシオザワヨウイチさんの一人ユニットで、弾き語りだったのですが、ユーモアの効いたトークと曲が楽しかったです。曲名は忘れてしまったのだけれど、曲の紹介としては、最初はペンギンの曲、次は夜逃げ、それから冬眠、つづいて信号が青なのか赤なのかわからなくて困惑する歌、と、おおっなんだか自分のいまの状況にぴったりだ、という感じで思わず笑ってしまった。ギターも上手かったですね。

おっ、サイトで検索したところ、アルバムは打ち込みも入っているんだ。すべてをひとりでこなされているようです。すばらしい。今度、買ってみようと思います。PVっぽい動画もありました。結構好みかも。

■new yearのPV
http://www.sound-tv.net/artists/theguitarplusme/
■オフィシャルサイト
http://theguitarplusme.com/
■myspace
http://myspace.com/theguitarplusme

そして、やっとTamas Wellsの登場です。木下美紗都さんは5曲、the guitar plus meは7曲ぐらい演奏されていたかと思うので、なんとなくオールスタンディング状態に疲れも出てきたのですが、一気にふっとびました。

飄々とした感じで現れたTamas Wellsは、これセットリストなんだ、というような感じでメモをピアノの上に置き、演奏開始。ところがギターはぼろぼろで(サンバースト系の赤いアコースティックギターなんだけれどメーカーも不明)、音もあまりよく出ていない。2本のマイクでナマのギターの音をとろうとしていたようですが、1曲目ではぴーっというハウリングの音が入ったりしました。

けれどもですね、驚いた。
このひとの声は、ほんとうに天国に通じているかもしれない。

身体はでかくて、MCは低い声、おまけにギターはおんぼろなので、あなたは本物のTamas Wellsですか?と思ったのですが、歌いはじめたら、透明な声が響きわたって、思わず背筋が伸びました(笑)。スピーカーから聴こえる彼の歌が、会場に漂う空気さえ変えたようでした。

musha7さんのブログにセットリストがあったので参考にさせていただき、以下に箇条書きにします。曲順をすべて把握できるなんて、すごいですね。ぼくには絶対にできない(苦笑)。

  1. when we do fail abigail
  2. The Opportunity Fair
  3. Vendredi
  4. From Prying Plans Into The Fire
  5. cigarettes,a tie and a free magazine
  6. Valder Fields
  7. the Northern Lights (new song)
  8. stitch in time
  9. I'm Sorry That The Kitchen Is On Fire
  10. beauty cream
  11. The Telemarketer Resignation
  12. broken by the rise
  13. reduced to clear
■encore
Lichen and Bees
Open The Blinds
■w-encore
Nowhere Man (cover/The Beatles)

確か三度目のアンコールもあったのですが、ぼくにはよくわかりませんでした。ただ、最後の曲は、ほんとうに透明な風景のなかに消えていくような儚げなゆったりとした曲で、思わず眠ってしまいそうだった。えー、空腹と疲れがピークに達したせいかもしれませんが。

英語はよくわからないぼくでも、わかりやすくゆっくり話してくれるせいか、意味をとることができました。タマちゃんと呼んでほしい、とか、このギターはミャンマーで日本にして500円ぐらいで買ったんだ、とか、お好み焼きうまい、とか、なかなか親しみやすくていい感じです。

とにかくですね、ぼくは3曲目「Vendredi」で、もう涙ぼろぼろ出てしまった。

「A Plea En Vendredi 」を聴いていた時期は個人的に辛い日々でもあり、このアルバムにずいぶん支えてもらいました。CDを聴いても美しい声なのだけれど、渋谷O-NESTのライブハウスはこじんまりとしていて、ぼくは前から3列目の中央で聴いていたので、2メートルも離れていない場所にタマちゃんがいる。そしてその声が聴こえてくる。これは幸せだな、と。

実は、去年の12月にボーナスで中古のアコギ(Takamine)を購入したのだけれど、これはValder Fieldsをコピーして歌うため、というただそれだけの動機で購入しました。いつ演奏するのかな、たぶん真ん中あたりか最後だろうと想っていたのですが、6曲目に生で聴くことができて感激。

ただですね、その曲を含めて2曲はピアノ+ギターという編成で、サポートのむすっとした女性が登場してピアノを弾くのですが、彼の奥さんかな?とも思いつつ、彼女のピアノがいまいち(苦笑)。Valder Fieldsも、CDとメロディラインを変えている部分もあり、ああ、CD通りに演奏してくださいっ!と気になってしまい、いまひとつのめり込めませんでした。

2回目のアンコールでは、ビートルズのNowhere Man。こんなに美しい曲だったのか、とこれもまた感動です。カバーではあるのだけれど、彼が歌うとこの名曲もまた別の名曲になります。

演奏後、天国の余韻に浸ってぼーっとした顔でフロアに出ると、タマちゃんが現れて、アルバムを購入すると彼のサインがもらえる特典付きでした。ミーハーなので(そのアルバムを持っているにも関わらず)思わず購入したのですが、ぼくの前の順番の女の子と写真撮影に忙しく慌てて戻ってきた彼は、ぼくの名前をよく聴き取れなかったようで、がしがしと訂正されてしまった(苦笑)。

とはいえ週末の混み合った電車に揺られて家に帰っても、ぼくの周囲に何か天国らしき香しい匂いがあるような気がしました。その余韻は次の朝まで残っていました。すばらしいライブでした。

+++++

ライブのMCでも、この曲はmyspaceで聴けるよ、のようなお話をされていたかと思うのですが、彼のmyspaceのページはこちら。ぼくがアコギまで購入して弾きたかったValder Fieldsも、こちらで聴けます。

http://jp.myspace.com/tamaswells

CDにサインしてもらいました。ぐちゃぐちゃなところはカット(笑)。

tamas wellsのサイン

ツアーのフライヤー。都内のCDショップでゲットしました。

tamasツアーのフライヤー

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結局、2枚持っていることになってしまったのですが、こちらは実はセカンドアルバムです。

B000IAZ7V4A Plea En Vendredi
タマス・ウェルズ
Inpartmaint / Lirico 2006-10-15

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ライブ前の金曜日に予習しようと思って購入したファーストアルバム。7月に日本版がリリースされていたようでしたが、気付かなかった。ネットで調べて、あわてて購入しました。

B000RVB8O4A Mark on the Pane
タマス・ウェルズ
Lirico 2007-07-20

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投稿者: birdwing 日時: 18:46 | | トラックバック (0)

2007年8月17日

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Tracey Thorn / Out of the Woods

▼music07-042:なんかふつーになっちゃったなあ、という感じですが。

B000RG12ZEアウト・オブ・ザ・ウッズ
トレイシー・ソーン
インディーズ・メーカー 2007-07-18

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1. Here It Comes Again
2. A-Z
3. It's All True
4. Get Arond To It
5. Hands Up To The Ceiling
6. Easy
7. Falling Off A Log
8. Nowhere Near
9. Grand Canyon
10. By Piccadilly Station I Sat Down And Wept
11. Raise The Roof

トレイシー・ソーンといえば、ネオアコ時代にカリスマ的な人気があったエブリシング・バット・ザ・ガール(EBTH)の歌姫です。ベン・ワットのリバーブの余韻に溶けるギターの音色を背景に、その純朴な歌声が魅力的でした。ネオアコのバイブル系はひととおり聴いたつもりのぼくですが、ちょっとジャズっぽい雰囲気のあるファースト「EDEN」とともに、ベンワットのソロ「ノース・マリン・ドライブ」、彼女のソロ「遠い渚~ディスタント・ショア」は、アコースティックな気持ちになれる一枚だと思います(三枚だけど)。紙ジャケット仕様のCDが発売されているようですね。

生音志向のエブリシング・バット・ザ・ガールがドラムン・ベースに方向転換したときには驚きましたが、そもそもエレクトロニカ志向だったぼくには、その音も歓迎できました。ギターを置いて打ち込みに切り替えたとしても、ベン・ワットの作る曲には彼なりのノスタルジーや複雑さや、それでいてポップなメロディがあり、これはこれでよいのではないか。何よりもすっとぼくの耳には入ってきたものです。

そこで、「Out of the Woods」なのですが。これはなんと「遠い渚~ディスタント・ショア」から27年振りの彼女のソロ・アルバムだそうです。25年ですよ。25年もあれば生まれた子供がいいおじさん、おばさんへの入り口に差し掛かって、結婚なども考え始めているかもしれない。そんな短いようで遠い時間を経て作られたアルバムなのですが・・・。

確かに25年もあればいろんなことがあります。いろんなことがあるのだけれど、変わらずにいてほしい何かがある。一方で、変わってほしい何かもある。それが「Out of the Woods」では中途半端な気がしました。電子音を利用しているのだけれど、別に電子音ではなくてもいい気がします。EBTGと短縮形にバンド名を変えてリリースした「哀しみ色の街」 で受けたような衝撃はありません。洗練されたクラブ感覚もない。どこかいまいちな80年代ミュージックな感じ?

BGMのように聞き流してしまって、もう一度聞きたい気持ちにはなれませんでした。1曲目の「Here It Comes Again」のストリングス+グロッケンを使った曲は、なかなかいいなと思ったんですけどね。全曲、ストリングスバックのアルバムでもよかったんじゃないか。そんなよい年齢の重ね方をしてほしかったような気がしています。トレイシー・ソーンには。

ところが、次の2曲目「A-Z」の電子音のアレンジに入ると首を傾げてしまう。いいとこを詰め合わせても、逆に何をやりたいのかわからない感じでしょうか。4曲目「Get Arond To It」のベースラインやタイトなリズム、9曲目の「Grand Canyon」のシーケンスなどは好みではあるのですが、プロデュースに問題があるのか、アルバム全体を聴くと首を傾げてしまう。

やっぱりソロではなくて、エブリシング・バット・ザ・ガールで聴きたくなってしまいました。エブリシング・バット・ザ・ガールに似た何かではなく、ソロであればソロらしく、アコースティックなのかエレクトロニカ/ダンスなのか、思いっきり方向性を振ったほうがいいのでは。余計なお世話かもしれませんけれども、そんな突き抜けられない思いを抱えてしまうソロ・アルバムでした。

+++++

アルバム3曲目の「It's All True」をYouTubeから。うーむ、いまこのアレンジをやる意味って?年をとってしまったけれど、なんとなく80年代に執拗にこだわる若作りなおばさん的な感じがして困惑。

■Tracey Thorn - It's All True

*年間音楽50枚プロジェクト(42/50枚)

投稿者: birdwing 日時: 23:46 | | トラックバック (0)

2007年8月16日

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Radiohead / KID A

▼music07-041:苦しみを突き抜けた虚無、結晶のかたち。

Kid A
Radiohead
Kid A
曲名リスト
1. Everything In Its Right Place
2. Kid A
3. The National Anthem
4. How To Disappear Completely
5. Treefingers
6. Optimistic
7. In Limbo
8. Idioteque
9. Morning Bell

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*年間音楽50枚プロジェクト(41/50枚)

投稿者: birdwing 日時: 23:41 | | トラックバック (0)

2007年8月15日

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Carla Bruni / No Promises

▼music07-040:美貌と才能を備えた、美しいひと、美しい音楽。

B000SM7QVGNo Promises
Carla Bruni
Naïve 2008-02-19

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1. Those Dancing Days Are Gone
2. Before the World Was Made
3. Lady Weeping at the Crossroads
4. I Felt My Life with Both My Hands
5. Promises Like Pie-Crust
6. Autumn
7. If You Were Coming in the Fall
8. I Went to Heaven
9. Afternoon
10. Ballade at Thirty-Five
11. At Last the Secret Is Out
12. Those Dancing Days Are Gone(feat.Lou Reed)

休日の朝、ちょこっと掃除を片付けたあとでくつろいでコーヒーなど飲みながら、お気に入りの本などを読む。たとえそれがスタイリッシュなデザイナーズマンションではなくて木造平屋建ての四畳半であっても、なんとなくしあわせな気分になる。そんなひとときに聴きたいのがカーラ・ブルーニの「ノー・プロミセズ」のようなアルバムではないのかな、と思います。

実際にぼくは結構このアルバムにはまって、くつろぎたいときには結構取り出して聴いていました。癒されます。耳を傾けているうちに音楽が終わってしまって、ものすごく自然な感じで彼女の世界に浸ることができる感じです。

カーラ・ブルーニはフランスのスーパーモデルのようで、これは2ndアルバムとのこと。残念ながら1枚目は聴いたことがないのですが、フォーキーな曲作りの才能、しっとりとしたややかすれ気味なボーカル、派手ではないけれども楽曲を引き立てるアコギの演奏、そしてジャケットの素敵な脚(ぽっ)に惹かれて、以前のアルバムも聴いてみたくなりました。神様は不公平だ。こんなに美しいひとに才能まで与えるとは。

しかしながら解説などを読んで知ったのですが、彼女はモデルとしての儚い生命が終わりつつあるのを感じで、自分がどうすべきかということを真剣に考えていたようです。つまり、美しさや才能を維持するためには、のほほ~んとしているわけにはいかない。その維持のために、実はものすごい努力をしている。そうして若さとか外見の美しさに寄りかかるのではなく、内面を磨くこと、歌を作ることに集中したそうです。

一曲目の歯切れのいいカッティングからはじまる「Those Dancing Days Are Gone」。いいですね。アイルランドの劇作家ウィリアム・バトラー・イェイツの詩であり、このアルバム全編を通じて、E.ディキンソンの詩など、とてもブンガク的な、あるいは知的な雰囲気があります。

ぼくが気に入っているのは1曲目と、メジャーコードとマイナーコードが錯綜する5曲目「Promises Like Pie-Crust」 、そしていちばん好きなのはスキャット風にリズムを刻む「 If You Were Coming in the Fall 」ですね。ピアノもいい感じ。ゆったりめな気持ちになるとしたら、2曲目「Before the World Was Made」 、4曲目「I Felt My Life with Both My Hands 」といったところでしょうか。ワルツっぽい「At Last the Secret Is Out」もかすかにビートルズのDear Prudence的な音の響きが感じられて、ノスタルジックで少し切ないような気持ちになります。

歌詞に目を向けてみると、やはり英語詩の韻の踏み方が気持ちいい。1曲目「Those Dancing Days Are Gone」ですが、1行置きでear - gear、gone - stone、up - cup、rag - bagとなっています。

天才ですね(しみじみ)。日本の古い和歌にしても、ダブルミーニングであったり韻を踏んでいたり、そんな細かな技巧をさりげなく駆使しつつ琴線に触れる何かを詠む詩人たちがいましたが、そんな知的な遊びにあふれた歌を聴きたいと思いました。ただ、それが耳障りに主張されると台無しであって、この曲のように耳をくすぐってくれる程度がいい。そのあたりもセンスのように思います。

ちなみにCDには英詩と写真のブックレットが付いてきて、こちらも素敵です。

carla_bruni_1.JPG

carla_bruni_2.JPG

+++++

フランスのテレビか何かの映像だと思うのですがYouTubeから「Those Dancing Days Are Gone」。ちょっと音が聴き取りにくくて残念です。PVというほどではないのですが、日常的な風景をつないだこちらのPVもいい感じ。

■Carla Bruni sings

BARKSでレコーディング風景とインタビューの映像を観ることができます。「Tシャツ脱がなくていいの?」「脱ぎたいわ」などと、なんとなくフランスっぽい(どこが?笑)冗談を交えながらはじまり、歌にあった言葉を見つけようと思っていたら「英語詩に恋に落ちてしまったの」という言葉がいいなーと思いました。「Those Dancing Days Are Gone」の試聴もできます。英詩読みたくなりました。そういえば、読んだことあまりないなあ。課題のひとつとしてリストアップしておきますか。課題多すぎですけど。

■Carla Bruni EPK
http://www.barks.jp/watch/?id=1000018827

*年間音楽50枚プロジェクト(40/50枚)

投稿者: birdwing 日時: 23:22 | | トラックバック (0)

2007年8月14日

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Ulrich Schnauss / Goodbye

▼music07-039:遠い、遥かな、儚く、やるせない音の空間

GoodbyeGoodbye
Ulrich Schnauss


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01. Never Be the Same
02. Shine
03. Stars
04. Einfeld
05. In Between the Years
06. Here Today, Gone Tomorrow
07. A Song About Hope
08. Medusa
09. Goodbye
10. For Good

Ulrich Schnauss(ウルリッヒ・シュナウス)はドイツのエレクトロニカユニットで、1995年頃から活動を開始。このアルバムは3枚目となります。ぼく自身がよく聴くのは1枚目の「Far Away Trains Passing By」ですが、ここに収録されている「Passing By」は映画「エリザベス・タウン」のなかでも使われていました。シンプルだけれど耳に残る透明なサウンドとリズムの心地よさが特長的です。

そもそもなんとなく遠くで聞こえているような、せつない音が彼らの醍醐味といった感じなのですが、3枚目の「Goodbye」では1曲目の「Never Be the Same」から、その遥かな感じ、せつない音の広がりが研ぎ澄まされた印象を受けました。音全体としてはリバーブの残響音のなかに溶けているのですが、それでいてどこかエッジが効いている。心をえぐる感触がある。アルバム全体でボーカルをフューチャーした曲が多く、その声もまた遠く、せつない。ボコーダー的な無機質な音に、寂寥感を煽る何かがあります。

夕刻、あるいは夜、ものすごくはまる時間帯があるような気がしますが、一方で、その夢見がちな音があまりフィットしない気分のときもある。実はiPodで持ち出して聴いていたときに、なんとなく苛々してしまったことがあり、その一方でゆったりとこの音の世界に浸れる時間もありました。「Far Away Trains Passing By」が比較的聴きやすいアルバムであるのに対して、「Goodbye」の肌触りはどこかリスナーに聴く姿勢を求めるようなところがあると思います。内向的でもある。

ぼくが好きなのは1曲目「Never Be the Same」を筆頭として、アンビエントなピアノではじまり男性ボーカルが印象的な2曲目「Shine」から一転して女性ボーカルの3曲目「Stars」につづくあたり。バックグラウンドのパッド系のシンセの音に注目されることが多いと思うのだけれど、ぼくは彼等が作るリズムが結構好きだったりします。特に凝っているわけではないのだけれど、気持ちよさを追求している気がする。LongviewのRob McVeyとコラボレーションした8曲目の「Medusa」もいい感じ。

脳内に流れる雲、水の滴り、草原をわたる風、夕暮れの匂いなどをイメージしつつ、壮大な音の壁に寄りかかりながら、よい夢が見れそうです。ただ、現実に戻れなくなっちゃわないように注意。

*年間音楽50枚プロジェクト(39/50枚)

投稿者: birdwing 日時: 00:00 | | トラックバック (0)