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2007年8月10日

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The Cinematic Orchestra / Ma Fleur

▼music07-037:セピア色の音、哀愁に満ちた架空の映画音楽。

Ma Fleur
The Cinematic Orchestra
Ma Fleur
曲名リスト
1. That Home
2. Familiar Ground
3. Ma Fleur
4. Music Box
5. Time and Space
6. Prelude
7. As the Stars Fall
8. Into You
9. Breathe
10. To Build a Home

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ずいぶん前に購入していたのですが、ブログのお引越しなどがあって感想を書かずに置き忘れていました。そもそもこのアルバムを知ったのは、iTunesの画面だったような気がします。アルバムジャケットのデザインに惹かれて購入するのは「ジャケット買い」などと言われますが、ぼくがこのCDを購入した動機はアーティスト名がなんとなく素敵だったということもあり、名前買いといったところでしょうか。そもそも映画が好きだったこともあったので。

「Ma Fleur」は愛と喪失をテーマに、架空の映画をイメージしながら創り上げた作品とのこと。ぼく自体も趣味のDTMでは、映像や物語を音化するような試みを大切にしていて、彼等の創作方法にも興味がありました。詩と音はなんとなく近いところにある気がするのですが、物語を音に翻訳すること、あるいは逆に音から物語を生み出すような試みを考えるとき、そこにはシナリオ(脚本)というか、時間の推移、起承転結のような考え方が必要になってくると思います。ただ音は言葉ではないので、その場面を説明することができない。説明できない世界を音でどのように表現するのか。

CDショップで試聴して、まず一曲目「To Build a Home」の静かなピアノではじまり、ハスキーなボーカルがたどたどしく歌枯れた雰囲気、そして弦が入って盛り上がっていく楽曲に打たれました。事前にサイトでいろいろと調べたところちょっとジャジーなバンドかと思っていたのですが、そうでもなく、フォークトロニカというか何というか、形容できない雰囲気があります。

The Cinematic Orchestraは、スコットランド生まれのジェイソン・スウィンスコーがカレッジ時代にはじめたバンドのようで、友人から「きみの音楽は映画みたいだ」と言われたのでこのプロジェクト名になったらしく、このアルバムは3作目ということで、前作からは5年目の時が流れているようです。坂本龍一さんやコールドカットなどの作品にもリミキサーとして参加しているらしい。ライナーノーツに書かれていました。

他の作品を聴いていないので比較はできないのだけれど、聴こえてくるのは、アコースティックギターであったりピアノであったり、とても叙情的な少し物悲しい世界です。5曲目「Prelude」の流れるような弦の音もいい。その曲がすぱっと終わったところで聴こえてくる「As The Stars Fall」のフランジャーのかかったギターの音、ジャズっぽいドラムもよいですね。

熱帯夜に聴くよりも、もう少し涼しくなった秋頃に聴くとしんみりと浸れるのかもしれない。フォーキーな世界の向こう側に広がる心象風景としては、激しい恋愛よりも、ちょっと疲れてお互いに肩を寄せ合って眠るような、そんな許されない恋に堕ちたふたり、という感じでしょうか。大人な感じ?

音楽を発端にして、ショートフィルムを制作する、なんて動きがあってもよい気がします。ネットでそんなコラボが生まれると楽しそう。音楽づくりだけでなく映像にも、と貪欲な夢がある自分ですが、自分で可能なことは限られていて、もちろんひとりで箱庭のように音楽を作るのも楽しいのだけれど、うまいコラボができないかな、などということを考えたりします。7月1日鑑賞。

*年間音楽50枚プロジェクト(37/50枚)

投稿者: birdwing 日時: 01:18 | | トラックバック (0)

2007年7月 1日

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Tom McRae / King of Cards

▼music07-036:孤高の詩人に憧れて。叙情的で、繊細で、力強く。

King of Cards
Tom McRae
King of Cards
曲名リスト
1. Set the Story Straight
2. Bright Lights
3. Got a Suitcase, Got Regrets
4. Keep Your Picture Clear
5. Houdini and the Girl
6. Sound of the City
7. On and On
8. Deliver Me
9. One Mississippi
10. Ballad of Amelia Earhart
11. Lord, How Long?

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CDショップはぼくの趣向に合わせて店頭をディスプレイしているのではないだろうか?と思うことがあるのですが(なわけないでしょう。苦笑)、アコースティック系の特集として、Elliott Smithと同じ棚に置かれていたのがTom McRae でした。その繊細な声とギター、そしてどこか懐かしいストリングスの入ったロックに惹かれて購入。

音的には、全然似ていないけれども雰囲気としてニック・ロウとか思い出したりしたのですが、そもそも最初に彼を見出したプロデューサーがエルビス・コステロやスクイーズなどを手がけていたロジャー・ぺキリアンとのことで、なんとなく納得もしました。

純朴で繊細で誠実な音作りは何に起因するのだろうと思ったのですが、まず彼の出身が、「イングランド東部サフォークにある人口250人のちいさな村」であることが記載されていた。なるほどね。250万人と勘違いしていたんですが、250人なんですね。ご両親はともに教会の司祭とのこと。地方であること、そして育ちのよさが彼のセンスとなっているのでしょう。ぼくも地方出身者であり、どちらも教師の両親のもとに生れたのですが、どうしてこんなにひねくれちゃったか(苦笑)。

楽曲としては、ひそやかに始まる1曲目「Set the Story Straight」がいいですね。そして続く2曲目「Bright Lights」も元気になる。ただ、このアルバムは4作目に当たるらしいのですが、実は結構暗めの曲を得意としていたのかもしれません。試聴したときには、それこそBright Lightsを感じて気にいったのですが、自宅で聴いてみると結構重い印象の曲もあります。3曲目「Got a Suitcase, Got Regrets」あたりから、そんな雰囲気がじわじわと滲んできます。ブルースハープも切ない感じで入ってきて、さりげなくダークな気分に浸れます。あるいは6曲目「Sound of the City」とか。悪くないですけどね。

多彩な音で脚色されたサウンドもいいのですが、アコギ一本で弾き語りもいいだろうなあ、という感じです。6月30日鑑賞。

+++++

アルバムのなかの曲ではないのですが、ライブから「street light」という曲を。lightという言葉が好きなのかもしれないですね。

■tom mcrae - street light (09.12.02)

公式サイト
http://www.tommcrae.com/

myspace
http://www.myspace.com/tommcrae

*年間音楽50枚プロジェクト(36/50枚)

投稿者: birdwing 日時: 23:00 | | トラックバック (0)

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獏 / 現状維持

▼music07-035:音楽に対する真っ直ぐな想いが聴こえてくる。

01.ピクセル(インスト) 
02.心に水を体に光を
03.グレープフルーツムーン
04.月晴れ
05.胎児の夢
06.とまと

はじめて国内の自主制作盤のレビューをします。獏はネットを通じて発見したバンドで、ずっとライブで観たいと思っていました。けれども、なかなか機会がないのでCDを購入。ピアノとボーカルを担当するエリーニョさんを中心に、ベースのヤマグチツトムさん、ドラムスのカリーさんの3人編成です。

バンドとしてきっちり音がカタマリになっている。まずその一致団結した音がかっこいい。個人的には、ひそかにカリーさんのドラミングがいいと思いました。結構好みです。高めのスネアとちょっとジャズっぽい繊細な叩き方というか、そんな空気感がよいと感じました。そしてタイトなリズムをヤマグチツトムさんのベースがきっちりと支えている。安定したリズム隊の基盤のうえに、エリーニョさんの元気いいピアノが弾ける。

バンドとして最もかっこいい形態は3ピースではないか、とぼくは思うのですが、3人で出すことのできる音は限られます。あれもこれもやるわけにはいかない。削ぎ落とす必要がある。演奏する立場としては気が抜けません。ちょっとでもミストーンだったり、いい加減な音を出すと全体に影響を与えるんですよね。だから緊張感がともないます。ちなみに日本の3ピースでぼくが好きなバンドはリトル・クリーチャーズなのですが、3人でここまで音が出せるのかという可能性を感じました。彼等に少しだけ似た趣きがあるかもしれません。

エリーニョさんのピアノ、甘ったるいボーカル、歌詞が作り出す世界観がいい。歌に関しては、厳しくいえば○○風ということが言えてしまいそうなのですが、いいんじゃないですか。ぼくは音楽は憧れが大事だと思っていて、ものすごくわかりやすい○○風の音楽は、ああそれが好きなんだ(にやり)という何か微笑ましいものを感じてしまう。かのビートルズだって、そもそもは古いモータウンやリズム&ブルースのスタイルに憧れて演奏していたわけであり、憧れはあらゆる音楽の原動力です。

けれども○○風を目指しても、絶対に同じにはなりません。どうしても自分らしさが出てしまう。さらに、どうすれば模倣から突き抜けることができるのか、という葛藤から自分らしさを追求していくものです。レイ・チャールズの自伝を描いた「Ray / レイ」という映画でも、模倣からの脱出の苦悩が描かれていましたが、クリエイターとして重要なのはその精神的あるいは技術的な袋小路と、そこから抜け出すための破壊と成長だと思います。そして、エリーニョさんは十分に突き抜けているんじゃないかな。

正直なことを書いてしまうと、ぼくは5曲目の「胎児の夢」を聴いたときに泣けてしまった。何かを振り払うように疾走して叩き付けるピアノ。「守っているつもりで 壊してしまった/大事にしているつもりで かき回してしまった」という歌詞。

これはライブで聴いても泣くだろうなあ。よい曲だと思います。個人的に好きなのはこの曲と、1曲目の「心に水を体に光を」です。6曲それぞれ歌い方やアレンジも工夫されていて、何回か聴いたのですが、聴くたびによくなる感じです。それから、しみじみと感じたのは、ピアノを弾けるひとはやっぱりいい、ということ。こんな音を自由に弾くことができたら、それはそれは楽しいことでしょう。

CDは下北沢のハイライン・レコーズで購入しました。自主制作のCDがずらりと並んでいて、ちょっと熱くなりました。ぼくは洋楽の有名なアーティストのCDも聴きますが、趣味のDTMで音楽を創る立場として、あるいはほんとうに趣味のリスナーとして、インディーズやアマチュアのみなさんの隠れた名盤も聴いていきたいと思っています。時間があればライブも行きたい。これは!というものがありましたら、自薦・他薦を問わないのでぜひ教えてください。

ところで、ハイライン・レコーズの上にある楽器屋には、むかしスタジオがあったんじゃなかったっけ? 遠い昔にそこで練習した覚えがあります。

獏のみなさん、夏はライブ満載のようですが、頑張ってください。今後が楽しみです。これからも力強く真っ直ぐな曲を作ってくださいね。6月30日鑑賞。


公式サイト
http://homepage3.nifty.com/bandbaku/index.html


試聴はこちらから
http://monstar.fm/album/317/

*年間音楽50枚プロジェクト(35/50枚)

投稿者: birdwing 日時: 00:00 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2007年6月29日

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Asobi Seksu / Citrus

▼music07-034:インディな雰囲気がいい、アートなドリームポップ。

Citrus
Asobi Seksu
Citrus
曲名リスト
1. Everything Is On
2. Strawberries
3. New Years
4. Thursday
5. Strings
6. Pink Cloud Tracing Paper
7. Red Sea
8. Goodbye
9. Lions and Tigers
10. Nefi+Girly
11. Exotic Animal Paradise
12. Mizu Asobi

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名前がどうかなー、ちょっと恥ずかしいぞ、と思ったのですが、NY出身のシューゲイザー・インディ・ロック・バンドです。ボーカルは日本人女性のYuki Chikudateさん。シューゲイザー・ユニットではGuitarも日本人女性のボーカルアヤコ・アカシバさんを起用しているし、ジャンルは違いますが人気のあるBlonde Redheadもカズ・マキノさんという日本人女性ボーカルです。うーむ、アニメの次に日本から世界に輸出できる文化は女性ボーカルではないか、などと思ったりして。特にインディ・ロックでは引っ張りだこのようですね。

個人的にぼくは思うのだけれど、日本人の女性はやっぱりいい。ボーカルの声質はもちろん、そのスタイルやルックスも素敵です。黒人ボーカルの真似をして歌い込むとか、そういう路線ではなくて、ビブラートなしのややかわいい系のヴォイスで英語の歌詞を歌い、バックはノイジーなギターと重低音なベース、タイトなドラムという編成がベストではないでしょうか。エレクトロニカ系でも増えています。

そもそもグローバリゼーションに反しているのかもしれないのですが、ぼくは日本人女性の贔屓で(音楽以外の面でも)やっぱりかわいいですよ、日本人女性。しおらしさや奥ゆかしさもあるし、それでいて大胆だったり強さもあり、貞淑かと思えば気が多かったりして(まあ、実際に直面するとそういうのは非常に厄介なんだけど)、エキセントリックな魅力的があると思います。日本に生まれてよかった。日本人女性は最高だ。世界に向けて胸を張ってください、日本人の女性のみなさんっ。

と、音楽から大きく離れて個人的な趣味の世界を展開してしまい、しばし反省。Asobi Seksuのサウンドは"ドリーム・ポップ・ワールド"と称されているようですが、「かつてのLUSHなどを彷彿させる世界観を持つ楽曲の数々を披露(CDJarnal)」とあるように、轟音かつフィードバックしたギターに深めのリバーブで音響的な広がりのある音作りをしていて、なかなか好みです。でもですね、アルバム全曲通して聴いたら、ちょっと疲れた(苦笑)。なかなかアーティスティックでもあります。もう少し、Blonde Redheadみたいなポップ感があるといいのですが。

英語と日本語の混在した曲が特長的です。好みの曲はまずは3曲目「Strawberries」。ルート外しのベースが好みです。あとぐうわーっという轟音とか。それから、やはり4曲目「Thursday」でしょうか。9曲目の「Lions and Tigers」もひそやかな部分と盛り上がる部分のコントラストがよいです。つづく10曲目「Nefi and Girly」の男性ボーカルとのからみもいいですね。なんだかとても懐かしい感じ。12曲目「Mizu Asobi」はもろに日本語なのですが、この曲は日本語はどうかなという印象です。ラララで歌う部分のほうがよかったりする。

たぶん音的には、残念ながら日本ではあまりヒットしないんじゃないかな(苦笑。ヒットしてほしいけれども)。NYのインディーズ好みという感じがします。爆発的な人気にならなくてもいいので、よい曲をリリースしてほしいと思いました。できればもう少しゆっくり目のエレクトロニカ風シューゲイザーというか、ポップスのスタンダードっぽい曲があると(個人的には)うれしいです。6月28日鑑賞。

+++++

アルバムのなかから「Thursday」。コラージュ風の映像がよいですね。あと非常に海外におけるふつーの日本人女性っぽいところとかいい。ほかのPVでは、すごく海外の日本人女性ファンにウケそうな映像っぽいものもありました。この曲は比較的聴きやすいほうです。こういう曲をもっと作ってほしいと思いました。

■Asobi Seksu - Thursday

公式サイト
http://www.asobiseksu.com/

*年間音楽50枚プロジェクト(34/50枚)

投稿者: birdwing 日時: 23:00 | | トラックバック (0)

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Ulrich Schnauss / Far Away Trains Passing By

▼music07-033:打ち寄せる波のようなリズム、ずっと聴いていたい。

Far Away Trains Passing By
Ulrich Schnauss
Far Away Trains Passing By
曲名リスト
1. Knuddlemaus
2. Between Us and Them
3. Passing By
4. Blumenwiese Neben Autobahn
5. Nobody's Home
6. Molfsee

1. Sunday Evening in Your Street
2. Suddenly the Trees
3. Nothing Happens in June
4. As If You've Never Been Away
5. Crazy For You
6. Wherever You Are

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エレクトロニカのコーナーでausなどを購入したときにみつけたアーティスト/CDなのですが、その当時はausの派手なきらきら感のほうに惹かれてしまい、購入しませんでした。なんとなく地味に思えたんですよね。ところが最近、とある音楽ブログでタイトルを拝見して思い出して、むしょうに聴きたくなった1枚です。店頭ではみつからなかったのですが、先日、ふらりと立ち寄ったところ入荷されていることを発見。購入となりました。

ウルリッヒ・シュナウスは、1977年生まれのドイツ人ひとりユニットのようです。これは2001年のデビュー・アルバム。マイ・ブラッディ・ヴァレンタインなどを好んで聴いていたらしく、その後、シューゲイザー系のアルバムも出しているとか。

クセがあるとか、特別に何かに凝っているとか、そういう音作りではないですね。とにかくベーシックで、あまり特異なところがない。けれども、繰り返される単調なリズムパターンを聴いていると、その流れになんだか癒される。夢心地になる。いつまでもリズムの波に揺られていたい気分になります。たぶんこのアーティストの魅力は、上ものというよりもリズムです。少なくともぼくにとってはリズムの魅力が、Ulrich Schnaussの魅力であると感じている。

メインのディスクで好きなのは、3曲目「...passing by」のちょっとボサ・ノヴァっぽいリズムでしょうか。同じコード進行の繰り返しなのですが、それがいい。なんでもない打ち込みが、こんなに心地よいのに驚きです。つづく4曲目「blumenwiese neben autobahn」のローファイなハイハットからはじまり、ちょっとピコピコサウンドなリズムも気持ちいい。

ボーナスディスクでは、2曲目「suddenly the trees are giveng way」がいいですね。遠い感じといい、パッド系のシンセの浮遊感といい。そして3曲目の裏打ちのハイハットから入る「nothing happens in june」にひそやかにつながれる感じもよかった。使われている音にあまりバリエーションはなくて、どれもが同じように聴こえてしまうところが残念といえば残念だけれど、それがこのユニットのよさでしょう。永遠にこの音を出しつづけてほしい気がします。6月25日鑑賞。

+++++

2月3日追記

ブログを書いたときに掲載した空の高速度撮影の映像によるビデオが消されてしまっていたので、正式なPVではないのですが、一般の方が写真を撮ってBGMとして「...passing by」を使ってスライドショーとした作品です。

■Ulrich Schnauss - Far away trains passing by

*年間音楽50枚プロジェクト(33/50枚)

投稿者: birdwing 日時: 00:00 | | コメント (8) | トラックバック (0)