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2007年6月 9日

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Elliott Smith / New Moon

▼music07-032:飾らない、純朴な声が、そして音が心に染みる。

New Moon
Elliott Smith
New Moon
曲名リスト
1. Angel in the Snow
2. Talking to Mary
3. High Times
4. New Monkey
5. Looking Over My Shoulder
6. Going Nowhere
7. Riot Coming
8. All Cleaned Out
9. First Timer
10. Go By
11. Miss Misery [Early Version]
12. Thirteen

1. Georgia, Georgia
2. Whatever [Folk Song in C]
3. Big Decision
4. Placeholder
5. New Disaster
6. Seen How Things Are Hard
7. Fear City
8. Either/Or
9. Pretty Mary K [Other Version]
10. Almost Over
11. See You Later
12. Half Right

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そもそもこのアルバムをみつけたのは、iTunesの画面でした。時勢に反してダウンロード販売で音楽を買う習慣があまりない時代遅れなぼくですが、たまたま立ち上げたiTunes Storeの画面にこのアルバムジャケットが表示されていて、思わずメモしていました。というのは「月」という言葉がぼくにとっては重要なテーマだったからでもあり、このジャケットの青い色が気に入ったからでもあります。

聴いてみて、アコギの弾き語りっていいなあ、とあらためて感動。最近はフォークトロニカというかアコギ+エレクトロニカというちょっとテクノロジー+アコースティックなものに憧れている傾向があるのですが、純粋にアコギで弾き語るスタイルの音にも癒されます。駅前で歌う勇気はありませんが、秋ぐらいになったらTakamineのアコギをハードケースで抱えて持ち出して、公園で歌っていたりしたいものだ、とか思ったり。

「New Moon」は2枚組みにも関わらず、ぜんぜん飽きません。むしろこの音楽をずーっと聴いていたい気持ちになります。

ディスク1の目玉はやはり、「グッド・ウィル・ハンティング~旅立ち~」という映画で使われた「Miss Misery」のアーリーバージョンでしょう。音楽とは関係なくなりますが、天才であるがゆえの苦悩という映画では、「ビューティフル・マインド」に近い物語という気もするのですが、ぼくは「ショーシャンクの空に」を加えて、この3つの映画が好きです。ヒューマンタッチの映画をよく観ます。エリオット・スミスの歌とギターは、そんな心あたたまる映画のシーンにしっくりと馴染む音であるような気がしました。

シンプルな音ですが、6曲目の「Riot Coming」の指をスライドさせたときのノイズだとか、アルペジオの空間的な広がり、ピックでカッティングしたときの音もきれい。どうやったらこんな風にアコギを録音できるんだろう、と思ったりもして。そして弾き語りもいいのですが、4曲目「New Monkey」 のようなバンド編成もいい感じ。

ディスク2では、6曲目「Seen How Things Are Hard 」から、オルガンも入ったバンド演奏っぽい7曲目「Fear City」、8曲目「Either/Or」の辺りが好み。お酒でも飲みながら聴きたい感じでしょうか。とはいえ、いちばんすきなのは10曲目の「Almost Over」ですかね。熱さが伝わってくる。その熱さのあとにクールなカッティングとトーンを落としてやわらかめのボーカルの「See You Later」がくるところもいい。

ダブルボイスという用語だと思ったのだけれど、コーラスやフランジャーなどのエフェクターがなかった時代に、同じヴォーカルをユニゾンで二度録音する(つまり同じ音程のメロディを二度録音する)ことでボーカルに深みを与える録音技術があったかと思います。失礼ですが、あまり歌の上手くないアイドルの歌唱力をごまかす手法でもあった。ビートルズも使っていたと思います。10代のぼくは自宅で多重録音しながら、これってすごいんだぜーというような感じでダブルボイスを使っていたこともありました(ただ二重録音しただけで、どこがすごいんだか。苦笑。もちろん多重録音のデッキがないボウズ頭の中学生頃のことで、2台のテープレコーダーの音をダビングして作っていたのですが)。

エフェクター使用の部分もあるかもしれないのですが、エリオット・スミスのボーカルを魅力的にしているのは、この処理によるところも大きい気がします。歌声の厚みが70年代っぽくて、なんとなくノスタルジックなのは、さりげなくボーカルが処理されているからかもしれません。このボーカルがまたいい味なんですよね。せつなく、もの哀しい。

ドラッグとアルコール依存症で、最後は胸に刃物を突きつけて亡くなったとのこと。34歳という短命で亡くなったことが残念ですが、短いけれども密度の高い人生を生き、そしてすばらしい作品を残したのだと思う。そんな生きざまに敬意をあらわしながら、聴いてみたいものです。ウィスキーでもあれば、完璧ではないかと。6月9日鑑賞。

+++++

アルバムのなかの曲ではないのですが、モノクロの映像と歌がよかったのでYouTubeから。

■Elliott Smith - Angeles (from Lucky 3)

*年間音楽50枚プロジェクト(32/50枚)

投稿者: birdwing 日時: 00:00 | | トラックバック (0)

2007年6月 7日

a000204

DNTEL / Dumb Luck

▼music07-031:妙に懐かしいメロディと、奔放なノイズ。

Dumb Luck
Dntel
Dumb Luck
曲名リスト
1. Dumb Luck
2. To A Fault
3. I'D Like To Know
4. Roll On
5. The Distance
6. Rock My Boat
7. Natural Resources
8. Breakfast In Bed
9. Dreams

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Postal Serviceは聴いたことがなかったのですが、Svoyを購入したときにPostal Serviceが好きなひとにも、のような売り文句があり、なんとなく気になっていたところ、Postal Serviceの片割れであるジミー・タンボレロのソロプロジェクトDNTELの新譜があったので思わず試聴。むむむ、これは何だ!という衝撃が第一印象でした。リズムがない。そして今回はアコギなど生楽器も投入されているようですが、なんだか妙に懐かしい。ノイズ満載なのに。

1曲目の「DUMB LUCK」から、不思議な世界が展開されます。リズムがないと思っていると、途中から16ビートの細かいリズムが刻まれたり、かといってそれが続くわけでもなく、コーラスのパートになったかと思うと、またアコギになったりする。なんでしょうか、これは。けれどもノイズ、サンプリング、逆回転、生楽器というなんでもありな凝った音作りにはまります。

あまりよくわからないのですが、参加アーティストはかなり幅広く豪華とのこと。もう少しこの世界を追求しないとうまく語れないものがあります。女性ボーカルも印象的で、3曲目の「I'D Like To Know」ではベルリンのエレクトロニカ・レーベルであるモー・ミュージックの代表グループ、ラリ・プナの韓国出身ヴァレリーが歌っていたり、4曲目「Roll On」ではロサンゼルスのバンド、ライロ・カイリーの女性ボーカルであるジェニー・ルイスがアコースティックでなかなかいい感じの歌を聴かせてくれたり、6曲目「Rock My Boat」では日系ハーフのミア・ドイ・トッド(土井美亜さん)の歌がいい感じだったりします。国籍もばらばらですが、全体的に表現力のあるアーティストさんばかりという感じです。

まったりとした音の流れのなかに、時折緻密で冷淡な打ち込みが加わり、一方で音響的なノイズが広がったりもする。それでいてボーカルはあったかい。エレクトロニカでありながら、オールディーズのような温もりのある音作りです。7曲目「Natural Resources」のブラスはジャズっぽくもある。実は困惑のほうが強いのですが、どういうわけか妙なアレンジがしっくり身体に馴染んだりする。久し振りによくわからない音楽にめぐり会いました。6月6日鑑賞。

+++++

アルバムのなかの5曲目「The Distance」のPVをみつけたのでYouTubeから。エレクトロニカなのかオールディーズなのか、判別できない懐かしくも新しい音です。操り人形たちの織り成す世界も幻想的。

*年間音楽50枚プロジェクト(31/50枚)

投稿者: birdwing 日時: 00:00 | | トラックバック (0)

2007年6月 1日

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May Your Heart Be The Map / Epic45

▼music030:アコギ+エレクトロニカ+甘いボーカルに号泣。

May Your Heart Be The Map
エピック45
May Your Heart Be The Map
曲名リスト
1. may your heart be the map
2. the stars in spring
3. summers first breath
4. forgotten mornings
5. the stars in autumn
6. we left our homes for winter
7. lost in failing light
8. you are an annual
9. the balloonist
10. winterbirds
11. the trees and lanes
12. we grew up playing in the fields of england
13. early 80's snowfall

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ダウンロード販売の隆盛に逆らうように店頭でCDを漁る時代遅れな自分ではありますが、最近なんとなく感じていることがあります。ショップに立ち寄ると、たいてい3枚ぐらい買うことにしているのだけれど、2枚決まったところで諦めずにねばっていると、これは!というアルバムにめぐりあうことが多い。たぶん潜在的なセンサーがしびれをきらして、ああーっもうこれ買わなきゃだめでしょー!と教えてくれるのかもしれません。しかしながら、そんなスロースタータではなくて、のっけから働いてほしいのだが、センサーくん。


と、どうでもいいような前置きはともかく、2枚選んでレジを待っていたところ時間がかかりそうなのでふらふらしてしまい、そこで試聴してみつけたのがこのアルバムでした。1曲目を聴いて、おおっと思い、2曲目を聴いたところアコギのきらきらしたアルペジオにがつんと殴られて涙出そうになってしまい、もう勘弁してください、これ以上ここでは聴けません(泣)ということでレジに走りました。加えて趣味のDTMでちょうどアコギ+打ち込みのスタイルを模索している自分としては、はやく帰宅してDAWソフトを立ち上げたくてうずうずしました。


epic45はポストロックの「バンド」としてスタートしたようですが、現在はベン・ホルトンとロブ・グローヴァーの2人によるユニット形態のようです。3年ぶりの3rdアルバムだとか。


とにかく美しい。アコースティックギターを弾き、さらにサンプリングで加工しているかと思うのですが、フェネス的なノイズも入ったりする。ディレイで空間的な広がりのあるサウンドスケープが作られていく。そして力の抜けたボーカル。癒されます。


木漏れ日のアルバムジャケットのような、ひそやかな、けれども美麗な調べが展開されます。アルバムタイトルでもある「may your heart be the map」は、まさにテクノロジーとアコースティックが融合したような感じで、そこから2曲目の「the stars in spring」に流れていく構成は秀逸。アコギの背景でエレピが鳴っていたり、遠くでディストーションギターがリバーブに埋もれていたりするのもいい。そうして逆回転風のリズムから、「summers first breath」のコーラス。ううう(泣)。6曲目「we left our homes for winter 」の囁くようなボーカルや、8曲目「you are an annual」もたまりません。


いま気付いたのですが、12曲のうち前半6曲には季節がタイトルに入っている曲が多い。そしてタイトルもいいですね。4曲目の「forgotten mornings」とか、ハーモニクスがきれいな「winterbirds」とか。エクストラ・トラックの「early 80's snowfall」はまさにフェネス的なノイズからはじまるのだけれど、あらためてタイトルを知って泣けたー。タイトルイメージにぴったりの音です。ぼくにとっては全曲好みで、まったく外れがない。


これは長期的に何度も聴くアルバムになりそうです。とか書きつつ、本日はもう3回以上ローテーションしているのですが。6月1日鑑賞。


myspace
http://www.myspace.com/epic45


+++++


新しいアルバムのなかの曲ではありませんが、モノクロームの寂しげな海と音がよかったのでYouTubeから。


■Epic45 - They Cut Into The Hill


*年間音楽50枚プロジェクト(30/50枚)

投稿者: birdwing 日時: 00:00 | | トラックバック (0)

2007年5月31日

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Svoy / Eclectric

▼music07-029:高層ビルから夜景を見下ろすようなエレポップ。

Eclectric
Svoy
Eclectric
曲名リスト
1. Driving Away
2. Other Side
3. I Don't Love
4. On My Own
5. Make You Mine
6. Cared More
7. One Night Stand
8. Looking for You
9. Stronger Than Wind
10. Shy
11. Eclectric Unwinder
12. To Be What It Used to Be

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エレクトロニカをよく聴くのですが、これはエレクトロニカというよりもエレポップという感じでしょうか。1曲目から完成度が高いな、と思いました。打ち込み系としては緻密なプログラミングで、個性的なボーカルもうまく曲にのっています。特にピアノ系の使い方がうまい。都会の高層ビルから夜景を見下ろすような、そんなロマンティックな音作りをしています。

POSTAL SERVICEが好きなひとに、などというように店頭のPOPに書かれていて周辺情報がまったくなかったのですが試聴して購入。ぼくの第一印象は、ジョー・ジャクソンでした(ぜんぜん違う勝手な空耳的な印象なのだけれど。つまり洗練されているつながり、ということで)。どうやらロシア生まれでNYで活動中とのこと。デビュー作らしい。うーむ、デビュー作からこれだけ完成度が高いのはすごい。ピアノやボーカルは叙情的な路線なのですが、ビートは疾走感があって、ときどき特長的にブレイクする。気持ちよいです。

とはいえ、全部を聴いてしまうとちょっと飽きるかな、というのがホンネです。というのはクセのあるインディーズばかり聴いているぼくのせいかもしれません。あまりにも洗練され過ぎていて、BGMとしてはいいのだけれど、じっくりと聴き込むときになんとなくのめり込めない。

気に入っているのは1曲目「Driving Away」と2曲目「The Other Side」ですね。キャッチーなメロディがいいい。6曲目の「Cared More」のピアノもいい。その次の7曲目「One Night Stand」のシンセ・ストリングスなども思わず過去を回想して遠い目になります。モータウン系の大人の雰囲気もあります。

たぶんですね、このアルバムのいちばん効果的な活用方法は、彼女を助手席に乗せた深夜のドライブだろうと思う。ちょっといい雰囲気になれることは間違いありません。ぼくなんかが聴くと、なんとなく80年代的なノスタルジーを感じてしまうのだけれど、いま若いひとたちにはそんな記憶はないから、おしゃれな曲、ということで自然に受け止められることでしょう。

そんな音楽があっていいと思います。というよりも、そんな恋人たちの語らいを引き立ててくれる曲こそ、実用的な音楽なのではないかとも思ったりして。5月29日鑑賞。

公式サイト http://www.svoy.com/

myspace http://www.myspace.com/svoy

+++++
2008年3月2日追記

なんとなくシュールな感じもするPV。ぼくは単純に高速度撮影のような映像を思い出したのですが。途中、頭から木が生える映像もあるのですが、おもわず落語の「頭山」を思い出しました(苦笑)。

■SVOY - Driving Away

*年間音楽50枚プロジェクト(29/50枚)

投稿者: birdwing 日時: 00:00 | | トラックバック (0)

2007年5月29日

a000192

AXE RIVERBOY / TUTU TO TANGO

▼music07-028:ポップスを究めた懐かしくもオーガニックな歌声。

チュ・チュ・トゥ・タンゴ
アックス・リヴァーボーイ
チュ・チュ・トゥ・タンゴ
曲名リスト
1. Guard
2. Whisper
3. Carry On
4. Roundabout
5. Follow Me
6. Long
7. On an Island
8. Fences
9. Cross the Line
10. Morning Blues

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たまたまコンビニで遭遇した会社の同僚がチケットを購入していたので、誰のコンサート行くんですか?と訊いたところ、「知らないと思うけど、アックスなんとか」と言われたのがきっかけでした。アックスなんとかって誰よ?と気になって検索したところ、アックス・リバーボーイを発見。これってTahiti80のフロントマンのソロじゃないですか!と思いつつ、フリーペーパーでも記事をみつけて購入。同僚は金曜日に原宿のライブに行くようです。いいなあ。それにしても声をかけてみるものだ。


このアックス・リバーボーイ(AXE RIVERBOY)というプロジェクト名は、グザヴィエ・ボワイエ(XAVIER BOYER)の名前のアナグラム(スペルの入れ替え)とのこと。こういうセンスのよさにもまいりました。実はぼくもやったことがあるんですよね。実名から匿名を作るという試み。韻を踏んだりメタファを多用するなど歌詞の言葉遊びも好きなのですが、バンド名そのものにひねりを加えるようなこだわりようがいい。


そもそもTahiti80はフランスのバンドで、おしゃれな1枚目の「Puzzle」はかなり聴きました。しかし、それ以降の「Wallpaper For The Soul」「Fosbury」の2枚がどうもぱっとしない印象で、ぼくはいまいち離れてしまった。彼のポップなソングライティングは好みだし、ゾンビーズのコリン・ブランストーンにも似た鼻にかかって擦れ気味な声なども気に入っているのですが、どうもアルバムは散漫とした感じで印象が薄かったんですよね。


ところが今回のソロはいい感じです。アコースティックギターを中心に、ものすごく懐かしい音作りをしている。ビートルズとか、60年代のポップスを聴いているような気分にもなりました。彼の声の特長も最大限に活かした楽曲になっている気がして、ヴォイスコンプレックスなぼくはうらやましい。こういう声のひとになりたかった(泣)。


3曲目「CARRY ON」から4曲目歯切れのいいドラムからはじまる「ROUNDABOUT」あたりはTahiti80の「Puzzle」を彷彿とさせます。かと思うと7曲目「ON AN ISLAND」や9曲目「CROSS THE LINE」の弦を使ったアレンジなどはさすがポップスのツボを押さえていらっしゃる、という感じ。ボーナストラックで、テクノの大御所エイフィックス・ツインの「MILKMAN」をアコギで弾き語ってしまうところもおちゃめです。


独特の鼻声は長く聴いているとちょっと鼻につく感じもしますが、さわやかな初夏にぴったりの1枚です。5月28日鑑賞。


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アコースティック色の強いアルバムのなかでは、ちょっと異質な感じもしますが、「ROUNDABOUT」のミュージックビデオがあったのでYouTubeから。ポール・マッカートニー的というか、トッド・ラングレン的というか、こんな風にひとりで多重録音をすることに憧れていた時期があります。マルチ・プレイヤーというとかっこいいのですが、結局、なんでも自分でやっちゃいたい偏屈な欲張りなんだと思ったりして(苦笑)。


■AXE RIVERBOY - ROUNDABOUT



*年間音楽50枚プロジェクト(28/50枚)

投稿者: birdwing 日時: 00:00 | | トラックバック (0)