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2011年4月10日

でっかいモニュメント。

東京スカイツリーが3月18日、634メートルになりました。333メートルの東京タワーを抜いて、東京で(そして世界で)いちばん高い自立式電波塔になったわけです。東京タワーの四角張ったデザインもレトロな感じでよいのですが、グリーンで丸みを帯びた東京スカイツリーは21世紀的な印象があります。この近辺の小学生たちは、スカイツリーを仰ぎながら学校に行くのでしょうか。

「スカイツリーを超えるような、でっかい人間になれよ!」

そんな激励が聞こえてきそうな気がします。

ところで、幼少の頃、ぼくは静岡県御殿場市そして沼津市に住んでいました。御殿場市はやや北ですが、沼津市は駿河湾に面して気候が穏やかで、市の中心に狩野川が流れ、とても過ごしやすい街でした。ひものが名産でしょうか。沼津市から東京タワーはさすがにみえませんでしたが、この街からみえるいちばんでっかいものといえば、富士山でした。

富士山、でっかかったなあ。

子供だったせいもあったかもしれないのだけれど、冬のすかーっと晴れ渡った空に雪を被りながらどーんとそびえる富士山は、まさに日本一の山でした。

Wikipediaに御殿場市からみた富士山の風景写真がありますので引用します。そうそう、こんな感じ。


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厳しい父のおかげで(また、ぼくは足が不自由だったせいもあって)毎朝マラソンで町内を一周することが日課に決められていました。特定のコースを走ったあとで学校に行っていたのですが、早朝に眺める富士山は格別でした。小学校にも冬になると授業の前に朝のマラソンの時間があり、グラウンドをぐるぐる回らされたのですが(走ってばっかり)、トラックの向こうでどっしりと見守っている富士山が頼もしくみえました。

そして、その富士山の雪解け水を浄水した水道水が、きーんと冷たくて、ものすごくおいしいのです。水を買うなんて考えられなかった時代、柿田川用水からの富士山の雪解け水は、水道水でありながら最高においしい水でした。いまはどうなんでしょうか。いまでもあの味のままなのかな。

富士山は、いつどんなときにもどーんとそこにそびえていて、ぼくらを見守ってくれていました。富士山は何も語りません。不動の存在です。ときに山頂の雪を風で吹き飛ばしたり、雲をかぶったりしていましたが姿は変わらない。静岡県といえば地震の頻発地帯であり、座布団型の防災頭巾を学校の椅子にはいつも敷いていて、地震の避難訓練を何度も行ったのですが、なんとなくどっしりとした気持ちで構えることができたのは、富士山が守ってくれる、というような意識があったからかもしれません。という富士山だって、活火山で地震が起きたらどうなるかわからないのですが。

富士山に登ったことは2度ほどあります。1度目は小学校の頃の遠足(?)、2度目は大学の山岳部での登山でした。

小学校のときには、こまかい石の道(砂走りというのでしょうか)をじぐざぐに登っていったのですが、帰路、そのちいさな石が滑りやすいのです。うひょーこりゃ止まらん、滑る、滑ると、スピードをセーブしながらじぐざぐな道を降りていったところ、ごろごろごろっという感じで隣のクラスの男の子が直線で落っこちていったのが印象的でした。彼は救急車で病院に運ばれました。

大学のとき、ぼくはやったことがないのに入学とともになぜか山岳部に入部し(根性がないので1年で退部)、冬山登山のひとつとして富士山頂をめざしました。山岳初心者のぼくは、登頂の前に先輩から滑降訓練などを教えていただきました。仰向けにおしりと背中で滑りつつぐるっと回ってピッケルを雪に突き刺して止まる、強風がきたときは身体を山の側面にぴったりと付ける、ピッケルをスキーのスティックみたいにして登山靴で山を滑り降りる、などを教えていただいたんですが、ゆるやかな斜面で練習したので、子供の雪あそびみたいで不安だったなあ。大丈夫か?とおもいました。

いざ登頂したときは、山頂まで数メートルというところで強烈な風と雪にみまわれ、登頂を断念しました。ぼくは、はー、ひどいめにあった、とんでもない風だった、と軽く考えていたのだけれど、先輩たちの話によると、ベテランでもかなり危険な天候だったとか。冬山をなめてはいけません。断念したからよかったものの、そのまま山頂をめざしていたら大変なことになったかもしれなかった、とのことでした。無知な人間は怖いもの知らずです。

遠くで眺めている山と、登頂する山は別物です。眺めているときの富士山は穏やかですが、登るときの富士山はかなり険しい。夏の富士山であれば冬と比較して楽に登ることができるようですが、富士山にチャレンジするのはもういいかなーと腰が引けています(苦笑)。とはいえ退職して老人になったら、ふと思い立って富士山頂をめざすようになるかもしれません。山がオレを呼んでるぜ、とか言っちゃったりして。

Wikipediaでは、富士山の項目は次のように記載されています。

富士山(ふじさん、英語表記:Mount Fuji)は、静岡県(富士宮市、裾野市、富士市、御殿場市、駿東郡小山町)と山梨県(富士吉田市、南都留郡鳴沢村)に跨る活火山である。

標高3,776mの日本最高峰(剣ヶ峰)[3]であるとともに、日本三名山(三霊山)、日本百名山[4]、日本の地質百選に選定されている。富士箱根伊豆国立公園に指定されている[5]。 1952年(昭和27年)に特別名勝に指定された。

さすがにどんなに未来になっても3,776メートルを超える建造物はできないでしょう。富士山が日本一でっかい。童謡の歌詞をおもい出します。場所がら、幼少のときにはこの歌をずいぶん歌ったような気がします。YouTubeから。



ぼくは高所恐怖症ぎみなのですが、なぜか高いところから眺める風景は好きです。鳥瞰あるいは俯瞰(ふかん)というのでしょうか、眼下にちいさな建物や玩具のようなクルマをみていると飽きない。そして、高い建造物などを見上げるのも好きです。電車に乗っていて西新宿の高層ビル群などがわっと目の前に広がると、なぜだかわくわくします。実際に西新宿界隈を歩き回って高層ビルの風景を見渡したときにも、ほーっという具合に感動がありました。

別に東京スカイツリーを見上げながら、手のひらをぐーにして、よっしゃーっ!と気合を入れなくてもいいのですが、日本一の建造物はぼくらを見守っていてくれると同時に、パワーを与えてくれるような気がするんですよね。富士山がそうであるように。もちろん富士山は人工的な建造物ではありませんが、モニュメント的に。

高い建造物は天に近いから祈りが届きそうだ、という考え方もあるのかもしれません。やや宗教的ではありますが、ぼくらの生活には、そんなささいなモニュメント、拠り所が必要です。

自分だけのモニュメントをみつけてみてはいかがでしょう。志をでっかく保つために。おっきな夢を育てるために。

投稿者 birdwing 日時: 12:35 | | トラックバック

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