2014年5月11日
輝きのアリカ
新緑の若葉が日を追って色が濃くなっていく季節になりました。
ゴールデンウィークも終了。歩くと汗ばむぐらい暑い日もあり、初夏を感じる連休でしたね。とりわけどこかへ出掛けたわけではありませんが、弟の発案により、77歳になった母の喜寿を祝いました。妹の家を使わせてもらって、久し振りに家族が顔を合わせて会食。楽しいひとときを過ごしました。
兄の自分とは違って、弟は頻繁に帰省して母を温泉に連れて行ったり、田舎の家を改修する相談に乗ったり、非常に親孝行な息子です。
喜寿のお祝いでもAmazonで喜寿セットを購入していて、彼の気配りに感銘を受けました。喜寿のカラーは紫色なのですが、紫色の大黒帽を被り、ちゃんちゃんこを羽織った母は、なかなか「かわいいおばあさん」の雰囲気があって素敵でした。次は80歳のお祝いで、このちゃんちゃんこを羽織っていただきます。
長生きしてくださいね。
さて、木々の緑が眩しい季節。過去に作った「輝きのアリカ」という曲を弾き語りしてみました。1994年といえばもう20年前になります。自作曲の中では勢いのある作品です。
今回はAdobeのPremiereという動画編集ソフトを使って、タイトルを入れたり動画素材をオーヴァーラップさせたりしました。はじめて使ったので初歩的なことしかできませんが、映像の色調補正もしています。音声はAuditionというソフトでマスタリングしています。
ギターの演奏はもうちょっとゆっくり弾いてもよかったのかな、と反省。途中でハーモニクスを入れていますが(ぽーんという高い音)、押尾コータローさんみたいに、ぽーんぽーんハーモニクスを入れて、きらきらな曲を弾けるといいなあとおもいました。
以下でお聴きください。
1994年当時のデモテープをカセットテープからPCに取り込んでデジタル化した音源は、SoundCloudにアップロードしました。YAMAHAのDMX100-Ⅱという4トラックの中古レコーダーで、ギター2台とヴォーカル、あとドラムスとベースおよびブラスは打ち込み(たぶんQY-20)で作りました。
テレキャスターを弾いていますが、とてもキンキンした音で音のバランスとかめちゃくちゃです(苦笑)。そもそもデモテープで、お蔵入りしていた未公開の音源でした。何回か作り直した形跡があるのですが、結果として着地点が見えずに放り出してしまった曲です。
とはいえ、最終バージョンより制作過程のキンキンした不完全なバージョンが面白かったので復活させてみました。ギターポップというかネオアコというか、80年代風の輝きを表現したいとおもっていました。
こちらは以下からどうぞ。
歌詞を載せておきます。
+++++++++++
輝きのアリカ
+++++++++++
地上に映る雲を眺めてた遙かな昔
プラタナスの木陰で微かな風を集めて
2000ピースのパズルを組み立てるようにきみと
10年後のぼくらを描いたね ノートの隅に
星が巡りいつか変わっていくトウキョーの街で
描かれた未来が少しずつ現実になる
不思議なことはやっぱりぼくはここにいて
遠い場所を見つめてること きみはいないのに
繰り返す流行 メゾフォルテの夏が
ぼくをせき立てる 輝きのアリカへ
動き出したバスを 急いでつかまえたら
永遠の課題にぼくは取りかかるつもりさ
いいだろ?
壊れかけた時計の螺子をきつく巻いたら
少しだけ近くなる 輝きのアリカへ
あの頃探してた飛行機の行方は
光の中で消えたまま いまもぼくの声を待っている
+++++
時計のネジなんて、いまでは巻かないですよね。というよりも、ウェラブルコンピューティングにより、メールのチェックやブラウジングができる腕時計型端末が登場しています。ソニーのSmartWatchやアップルのiWatchなどがあります。
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ジャイアントロボという特撮テレビがかつて少年の頃に放送されていました(同世代しか知らないでしょう)。巨大ロボをコントロールして敵と闘うのですが、主人公の大作少年は時計型のコントローラーに向かって「立て!ジャイアントロボ」などと命令を出していました。真似して遊んだりしたものですが、「時計に話しかける」という行為は今後当たり前になるかもしれません。
ちなみにジャイアントロボの映像はこれです。この最終回の予告のなかで、腕時計を開いて命令を出すシーンが一瞬だけ見ることができます。
まさに「輝きのアリカ」の歌詞に書いた通り「描かれた未来が少しずつ現実になる」という感じです。21世紀、テクノロジの進歩はぼくらの生活を少しずつ変えています。
さて、今年になって読んだ本の中からツイッターの140字感想を引用しつつ、「輝き」を感じた3冊をご紹介します。
まず1冊目は『永遠の0』。
永遠の0 (講談社文庫) 百田 尚樹 講談社 2009-07-15 by G-Tools |
百田尚樹著『永遠の0』読了。最後は号泣で読み終えた。戦争を生き残った複数の人物の証言から浮かび上がる宮部久蔵の生きざまが素晴らしい。また、彼に生かされた人々が辿った数々の恩返しの行方にも感動した。誠実に生きることが他者を生かす。歴史の重さを感じる。 #books...
— BirdWing (外岡 浩) (@BirdWing09) 2014, 1月 8
司法試験に失敗して人生の目的を見失っていた佐伯健太郎が、フリーライターの姉から言われて、亡くなったおばあさんの元夫、戦時中に特攻で亡くなった宮部久蔵について、戦争を生き残ったさまざまな人々から話を聞木ながら物語は進展します。証言のパズルが組み合わさって次第に祖父の姿が明らかになると、意外な事実が浮かび上がります。
宮部久蔵は飛び抜けた技術を持ちながらも「家族のために生きて還りたい」などと口癖のように言うことで、他の飛行士から臆病者と罵られていました。しかし決して奢らず、後輩に対しても丁寧に「ですます」調で話しかけ、いざというときは上官に殴り倒されても部下をかばう姿勢に「輝き」を感じました。
劇場で映画も観たのですが、この難しいストーリーをよくリアルに再現できたなあと感動。VFXの迫力に圧倒されました。また、岡田准一さんの好演とともに、井上真央さんのつつましさに打たれました。小説を読んでいたときには、いまひとつラバウルのイメージが湧かなかったのですが、映像でばーんと表現されると、そうか!というリアリティを感じました。もちろん実際に戦争を体験された方にとっては、美しすぎるイメージだとはおもうのですが。
この作品については、実は超・長文で感想を書こうとしたのですが、あまりにも多くのことを考えすぎて、書けなくなってしまった経緯があります(苦笑)。
続いて2冊目は『嫌われる勇気』。
嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え 岸見 一郎 古賀 史健 ダイヤモンド社 2013-12-13 by G-Tools |
岸見一郎 ・古賀史健著『嫌われる勇気』読了。凄い本だった。久し振りに背筋に電気が走り、のけぞるほど衝撃を受け、最後には不覚にも涙してしまった。すべての問題は人間関係であり、人生は刹那の連続。人間はいまからでも変われる。ひとつひとつの言葉が響いた。 #books #dokusyo
— BirdWing (外岡 浩) (@BirdWing09) 2014, 4月 27
作り手の面から考えると、哲学と心理学の教授である岸見氏とライター古賀氏の共著、あるいは共創関係によって生み出されたことが最高だとおもう。かなり長い年月をかけて準備された本であることが文章からも感じられた。物語という演出が秀逸。 #books #dokusyo
— BirdWing (外岡 浩) (@BirdWing09) 2014, 4月 27
アドラーの理論は採掘場といわれて自分の考え方が勝手に流用されることに寛容だったらしいが、オープンソースの精神に繋がるものを感じた。自説の所有にこだわるのではなく、自分の考えが社会全体を幸せにすればいいという姿勢が素晴らしい。 #books #dokusyo
— BirdWing (外岡 浩) (@BirdWing09) 2014, 4月 27
この本が支持されている理由がわかる。居場所を失っているぼくらに対して、存在していること、生きていること自体に価値があるんだよ、という言葉ほど勇気づけられる言葉はない。誰からも承認されなくても、あなたはあなたのままでいい、と。 #books #dokusyo
— BirdWing (外岡 浩) (@BirdWing09) 2014, 4月 27
幸福は誰かから与えられるものではなく、みずからが幸福を生み出せるということ。自立することの大切さを自覚した上で、共同体のなかで生きること。自分が悩みながら考え続けてきたことが、そのまま書かれていることに驚いたし、安堵もした。 #books #dokusyo
— BirdWing (外岡 浩) (@BirdWing09) 2014, 4月 27
もう少しアドラーの考え方を知りたいと思ったので、他の書籍も購入。岸見一郎氏の本も注文した。アドラーを知ってしまうと、フロイト的な原因論が陳腐に感じる。何の役にも立たない学問という印象を覚えた。「知」は実践的なものがいい。 #books #dokusyo
— BirdWing (外岡 浩) (@BirdWing09) 2014, 4月 27
過去のトラウマが現在を決定するフロイトの経験論をアドラーは否定し、目的論を唱えます。確かに、心の傷であっても実績であっても、過去が現在を決定するのであれば、それ以上のものにはなれません。
いろんなひとと話をするなかで「若い頃にこの本を読んだ、この映画を観た、この音楽を聴いた。だからいまの自分がある。で、おまえはそれも知らないの?」みたいに、他人の知識を貶めて自分を高める優越コンプレックス的な言い回しに、ぼくは反感を感じていました。確かに若い頃にいろんな経験をしたのはわかる。あんたは偉い。しかし、それに囚われていたら、永遠にそれ以上の人生を体験することはできないとおもうんですよね。過去はよかったかもしれないけど、過去を頂点としたら未来はそれ以下のつまんない人生しか送れないだろ、と。
常に「いまここ」から人生をはじめて、新しいものを吸収し、成長し変化し続ける人生に魅力を感じます。その意味で「人間は誰でも今この瞬間から変わることができる」というアドラーの思想に強い共感を覚えました。過去の「輝き」に拘り続けるのは老人の思想だとおもう。常に新しい輝きを見出していたい。輝きのアリカを探すひとでありたいとおもいます。
最後に3冊目は、村上春樹さんの『女のいない男たち』。
女のいない男たち 村上 春樹 文藝春秋 2014-04-18 by G-Tools |
村上春樹さんの新しい短編集から最初の「ドライブ・マイ・カー」を読了。静かで素晴らしい短編。「死」 「他者への理解」「セックス」を描いた点では、『ノルウェイの森』をぎゅっと圧縮させた印象があった。静かでとても深い。そして切ない。かなり気に入りました。 #books #dokusyo
— BirdWing (外岡 浩) (@BirdWing09) 2014, 4月 28
村上春樹さんの最新短編集『女のいない男たち』から「イエスタデイ」を読了。あまりにも素敵な短編で切なくて泣きそうになった。村上春樹さんって、いまいくつだっけ?とおもってしまった。こんなに若々しい小説を書けるのは凄い。やっぱりこれも『ノルウェイの森』のバリエーションではないだろうか。
— BirdWing (外岡 浩) (@BirdWing09) 2014, 4月 29
村上春樹さんの最新短編集『女のいない男たち』から「独立器官」読了。衝撃を受けた。著者はもの凄い領域に踏み出している気がする。ジャーナリスティックな視点が凄みに拍車をかけている。詳細は語らないけれど、渡会医師のことは「よくわかる」。V・E・フランクル『夜と霧』の引用も重層的な迫力。
— BirdWing (外岡 浩) (@BirdWing09) 2014, 4月 29
村上春樹さんの最新短編集『女のいない男たち』から「シェエラザード」読了。とても官能的な短編。女性にとって官能とは閉塞感や窒息感をともなうものだということを聞いたことがあるが、密室のなかで営まれた行為のあとで語られる物語に官能を感じる。現実と追想の織り成す春樹的な物語構成が秀逸。
— BirdWing (外岡 浩) (@BirdWing09) 2014, 5月 5
実は昨夜「木野」を読んで、あと1篇で完全に読了します。各短編の完成度の高さにまいりました。珠玉の短編集であり、それぞれに「輝き」があります。特に「イエスタデイ」のみずみずしい感覚がぼくには刺さりました。
村上春樹さんはいろいろと批判されることもありますが、ほんとうに「卵の殻」のような人間の脆さを描ける希有な作家だとおもいます。人間の機微をきちんと描いて、その機微が生じる光と影のコントラストも美しい。かつては『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』のようなファンタジー風の作品が好きでしたが、先日『ノルウェイの森』を再読して、いまはリアリティの感じられる作品が好きです。そして、『女のいない男たち』は大人のリアリティを描いているとおもう。
「ベストセラーは読まない」と、ひねくれたポーズを取っていた時期がありましたが、いまベストセラーにはベストセラーになるだけの理由があると考えています。大作家だからだとか、広告宣伝の戦略が優れているとか、それだけでは判断できない。つまり、多くのひとの心を掴むものには掴むだけの「輝き」があり、それを素直に受け止めたいと考えています。年を取っちゃっていろいろ偏屈になりつつあるのですが、可能な限り、ひねくれないでいたいなあ、と。
というわけで「輝き」を察知する感性のセンサーを錆びさせたくない、とおもう2014年の初夏なのでした。
投稿者 birdwing 日時: 07:00 | パーマリンク | トラックバック