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2006年1月 7日

音楽とスポーツ。

オンガクって何だろう、ということをふと考えました。音楽は音楽じゃん、と言われるかもしれませんが、音楽がなくても生活には何も支障がない。けれども、音楽がなければ生きていけないともいえる。一方で、言葉で書かれた小説に対して、歌詞のある音楽は言葉の世界があるという意味では小説に近いかもしれませんが、歌詞がない場合には、とても抽象的になる。風景画や肖像画が現実の世界を再現するものであるのに対して、インストゥルメンタルの音楽は抽象画に似ているといえるかもしれません。

コーラス」というフランスの映画を観たのですが、これはある問題児を集めた寄宿舎のある学校に、舎監として音楽の先生がやってくる。ものすごい問題児ばかりなので、やられたらやり返せ風の考え方によって厳しい体罰を与えているんだけれど、その先生は合唱によって、彼等のこころを変えていこうとするわけです。問題児のなかには歌の才能のある生徒がいて、彼は母子家庭なのだけど、その先生は彼の母親に恋をしたりする。なかなかあったかい気持ちになれる映画でした。ちょっと泣けた。

その映画のなかで、同僚の教師は音楽とスポーツをこよなく愛していて、人生にはこの2つが両輪のように動かなければいけないという哲学を持っている、というエピソードもありました。確かに、うまくなるためには練習が必要だし、ときには挫折もある。そんなわけで音楽とスポーツはまったく違うのだけど、似ているところもあるかもしれません。特に合唱は団体競技ともいえる。人間の声は基本的にはモノフォニックなので、ピアノのようにぽーんと複数の和音を出すことはできない。だからソプラノやアルトなどのパートに分かれて、みんなでハーモニーを奏でる。「コーラス」の映画のなかでは、そのハーモニーと挿入曲の美しさに感動しました。

ところで、挫折を乗り越える音楽ジャンルの映画として思い出すものは、「ドラムライン」と「レイ」でしょうか。「ドラムライン」は、ブラスバンドのエリート学校のお話ですが、主人公は天才的な才能を持つドラマーなのだけど、彼は楽譜が読めない。また、天才であるがゆえに協調性なども考えない。しかし、最終的には仲間の力を借りて、その挫折を乗り越えていく。叩くという演奏自体が既にスポーツ的なのですが、太鼓の威力というか、かなり熱い気持ちになりました。「レイ」は、レイ・チャールズの人生を描いた映画です。彼も盲目でありながら天才なのですが、みんなを楽しませるということを重視してきたあまり、オリジナリティに欠ける、どれもみな誰かのコピーに聴こえる、という指摘を受けて落ち込む。それでもプロデューサーとともに、新しい自分を切り開いていく。

ひとを変えることができるのは、やはりひととの関わりなんだろうな、と思います。ぼくの趣味のDTMは、ある意味、自己完結しているのですが、それでもいろんなひとの影響を受けています。リアルやバーチャルなひと以外に、小説であったり、映画であったりすることもあるのですが、小説や映画であっても、ひとが創作したということには変わりがない。作品を通じてひとに出会えることが大事なことです。

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■チアリーダーやブラスバンドはアメリカならではの文化という感じがします。筋トレもすごい。吹奏楽は文化部というイメージが変わりました。

B000VRXIL0ドラムライン (ベストヒット・セレクション)
ニック・キャノン, チャールズ・ストーン三世
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 2007-10-24

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■レイ・チャールズが過去を回想する映像に号泣でした。目の前でちいさな弟を溺死させてしまったり、目が次第に見えなくなっていく回想など。悲しみがあったからこそ、深みのある音楽を創ることができたのかもしれません。


B0007TW7WSRay / レイ 追悼記念BOX
テイラー・ハックフォード ジェームズ・L・ホワイト
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン 2005-06-10

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投稿者 birdwing : 2006年1月 7日 00:00

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