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2010年6月28日

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iPadの衝撃、ふたたび。

100627_gamen.jpgiPadにつづいてiPhone4が登場して、アップル製品がますます話題を呼ぶようになりましたね。

残念ながらぼくの携帯電話はiPhoneではありません。しかし、わが家のiPadは購入からおよそ1ヶ月が経過して、ファミリーマシンとしての確固としたポジションを築いています。予想以上に利用頻度が高く、使いたいなとおもうと、必ず家族の誰かが使っています。もう1個欲しかったとおもうぐらいです。

ゲームができると知って、子供たちにさっそく奪われました。初期インストールされていたアプリでは「写真」は家族の写真を取り込み、「カレンダー」には家族の予定を記入して情報を共有しています。SafariやYouTubeは延々と「へんないきもの」の動画を探したり、気になったキーワードを検索したり。地図アプリも近所の情報を再確認するなど重宝しています。

仕事系とコミュニケーション系のアプリはまったくなし。仕事に使うならウィンドウズマシンと考えているのでiPadを仕事に使う用途がみつかりません。使いはじめたら有用だとはおもうのですが、とにかくウチではiPadはリビング専用マシンです。ちなみに教育系のアプリとしては「元素図鑑」がずうっと気になっているのだけれど、1,600円は高い。

さて。いままで購入したアプリを整理するとともに、これは!とおもったアプリについて感想を書いてみたいとおもいました。

カテゴリーごと購入したアプリを列記しつつ、無料でダウンロードしたアプリは数え切れないので、厳選してみます。ひじょーに偏った趣味なのですが、iPadユーザーのご参考まで。

※補足ですが、iPadのスクリーンショットは、ホームボタン+電源ボタンです。画像は「写真」(PNGファイル)として保存されます。


■ブック

≪購入≫
・i文庫(HD) ¥700
・数学ガール ¥900
≪無料≫
・「藍色の蟇」大手拓次(i文庫)
・「ガリ版の話」津野海太郎(理想書店)
・「テロメアの帽子HD」
・「志高く 孫正義正伝」

電子書籍リーダーとして期待されるiPad。しかし、実際の感触として、680g(Wi-Fiモデル)はまだリーダーとして重い気がしました。片手で持つには腕力がいる。ちょっとしたダンベルとして腕が鍛えられるのかもしれないけれど率直にいって重いです。また、画面全体が明るい印象なので、すこし輝度を落としたり、背景の色を変えたほうが目にやさしいかもしれません。

以下、紙の本が発行されているものは、紙の本のリンクも貼っておきます。

結城浩さんの「数学ガール」は読みはじめたばかりです。同級生と後輩のふたりの美少女から数学を教えられたり教えたりする主人公が羨ましくもあり、数学の「解くことの楽しさ」をあらためて感じさせる本です。

4797341378数学ガール
結城 浩
ソフトバンククリエイティブ 2007-06-27

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正直なところ高校時代に数学は最も苦手でした。しかし、どちらかといえば無機的に殺伐としたものとして感じていた数学ですが、この本のように物語形式によって対話で解かれていくと親近感をもつことができました。最後まで読み終えられるかどうか不安ですが。

「テロメアの帽子HD」はゲノムについてわかりやすく書かれた絵本。とぼけたキャラクターがいい感じです。電子書籍の絵本らしく、ページをめくる音が出ることはもちろん、アニメーションでイラストが動いたり、日本語だけでなく英語のナレーションも用意されています。サイエンス系の絵本は電子書籍という媒体にぴったりです。増えてほしいですね。

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「志高く 孫正義正伝」も読書中。ソフトバンクの孫正義さんの起業家としての熱い志に打たれます。これもまたiPadにはぴったりの書籍。

4408107050志高く 孫正義正伝 完全版 (じっぴセレクト)
井上 篤夫
実業之日本社 2007-07-20

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ページをめくる腕を鍛えつつ、電子書籍で上記の本を読んでいます。


■ゲーム

≪購入≫
・10 pinShuffle ¥450
・iFish Pond ¥350
・Labyrinth 2 HD ¥900
・Pinball HD ¥350
≪無料≫
・MultiPong
・DismountLite
・ACrawlerHD
・フーフーミントン
・太鼓の達人
・対極!!将棋

「iFish Pond」は釣りゲーですがリアルな映像が楽しい。アプリを立ち上げると池にさざなみが立ち、鯉のようなサカナが泳いでいます。水面に指をふれると、ちゃぷちゃぷと音がして揺れる。これが気持ちいい。背景も4画面から選ぶことができて、鳥や虫の声の効果音にも和みます。癒されます。

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そういえばマイクロソフト社が、かつてサーフェスというインターフェースを開発していたことをおもい出しました(関連記事はこちら)。ガラスのテーブルがタッチパネルになっていて、その上で写真を選んだり、「iFish Pond」と同じように水面の画面に指で触れると波紋ができる。凄いなあ!とおもったのですが、その環境が数年も経たないうちにいまここにあるわけです。時代の急速な変化を感じました。21世紀だ。

加速度センサーによって球を転がす「Labyrinth 2 HD」は子供たちが嵌まっていました。また、ブラックなのだけれども、階段から突き落として骨折の度合いで点数を稼ぐ「DismountLite」もユニークです。さすがに、ちょっとこれは・・・と眉をひそめましたが。


■音楽

≪購入≫
・iELECTRIBE ¥1,200
・ProKeys ¥230
≪無料≫
・Beatwave
・Soundrop Free
・Virtuoso
・JamPad
・SonataNote
・AirGuitar
・GrooveMaker
・iRelax
・Shiny Drum
・digidrummer Lite

KORGの「iELECTRIBE」。いろいろとできそうなのですが、使いこなせていません(涙)。ほかにも有料版の音楽アプリにはシーケンサーや多重録音のHDレコーダーもあるようなので、興味津々です。

「ProKeys」は最初はLite版(無償)を使用。安いので有料版を購入してみました。上下2段の鍵盤が使えるのですが、録音することも可能です。指先によるリアルタイム録音で、試しに音を作ってみました。

※以下はFlashのMP3プレイヤーです。白い棒の左端を押すと音が再生されます。音量は変えられません。お手数ですがPCで調節をお願いします。


○ProKeysデモ(BirdWing作)





まずドラムをパッドで打って録音。指先ドラマーという感じでしょうか。それを再生しながら「Organica」というプリセットでコードを弾きました。なかなか幻想的ないい音です。リバーブのエフェクトもかけられます。鍵盤がちいさいし、そもそもぼくは鍵盤が弾けないので音がびみょうにズレていますが愛嬌ということで。

iPadの大きさとタッチパネルのインターフェースから、ヤマハのTENORI-ONやmonomeのようなシーケンサー(関連記事はこちら)がないかなあ、とおもって探したらやっぱりありました。「Beatwave」です。

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垂直18(うち2つはリズム)×水平16のマトリックスをタップすることで、16ステップのシーケンサーになっています。垂直方向は音程、水平方向は左から右へリズムで、リアルタイムで打ち込みが可能です。

これもちょこっと打ち込んでみました。


○Beatwaveデモ(BirdWing作)





音の位置によって、さまざまな色がディスプレイに表示されます。これは楽しい。音色は有料で追加できるようになっています。シンプルですが、4つのトラックが用意されていて、トラックの音量やパン(定位)など変えられる。細かい配慮がなかなか素敵です。

偶然性の音楽という意味では「Soundrop Free」も楽しめました。

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左端から白い点が落ちてきます。その点の先に指先で線を引くと、その線に点がはねかえって音が出る。はねかえった先にまた線を引くと、それが音になる。マリンバのような音色です。NHKで放映されていた番組「"スコラ" 坂本龍一 音楽の学校」のタイトルミュージックのような感じでしょうか。雨音の滴を音楽にしていくような面白さがあります。

上のシンプルな点と線の画面から、こんな音が出ます。


○Soundrop Freeデモ(BirdWing作)





■ビジュアル・3D

≪無料≫
・Sunny3D

最後にお絵描きソフト。ふつうのドローイングソフトやレタッチソフトでは特に目新しいものはないなあ、とおもっていたところ「おおっ?!」と目を引いたのが3D描画ソフトの「Sunny3D」でした。これは凄い。

やや操作がわかりにくいところはあるのですが、くるっと指先で描いただけで立体ができあがる。この素早さには驚きます。子供たちに使わせてみたところ、あっという間に次のようなみょうな生き物たちを作り出しました。

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ギャラリーでは実際に作ったものを、指先でぐりぐり回転させたりズームイン/アウトすることができます。また、iPhone用のアプリもあるようです。

あとはこの3Dの怪獣たちを動かすことができれば、あっという間にアニメーションやゲームなどを作ることができるでしょう。YouTubeでアマチュアの方がアップロードした凝ったアニメーションを観たことがありました。しかし、アプリさえあれば小学生にも3Dが作れます。

次男は怪獣の絵を描くのが好きで、最近では紙を丸めて怪獣を造形するようになりました。その延長線上でコンピュータグラフィックにもすっと入っていくことができるようです。卵が描かれていて、そのなかを拡大すると怪獣がいる、というようなCGも自分で考え出して描いていました。びっくりしました。

*****

iPadの発売以降、テレビでCMも頻繁にみかけるようになりました。

CMのメッセージに頷ける部分が多くあります。たとえばアプリケーションは確実に増えつづけていて、毎日アプリのランキングをみるのが楽しみになっています。いくらポータブルだといっても、さすがにバイクの二人乗りの後ろでiPadを抱えるようなことはできませんが、「世界を変えてしまう革命がいま、はじまった」とナレーションにあるように、わが家のリビングというちいさな世界を起点に、家族の生活を変えつつあります。

変化というものは急激に変わるものではなく、じわじわと変わっていくものなのかもしれません。いちばん身近なところから。

投稿者: birdwing 日時: 21:00 | | トラックバック (0)

2010年5月30日

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iPadの衝撃。

Apple製品には、ぼくらをわくわくさせる魅力があります。デザインでしょうか、製品が提供するライフスタイルでしょうか。Windows派のひとには冷ややかな視線を浴びそうですが、"iPad"はAppleファンに新しい希望を与えてくれました。多くのひとが発売前から熱狂的に取り付かれ、たくさんのニュースで取り上げられました。ぼくもまた日本の発売当日に購入したひとりです。

100510_ipad.jpg最初はそれほど大きな期待があったわけではありません。5月10日に、今日はiPadの予約開始日だということを偶然に思い出して、量販店に並んだのがきっかけでした。

受付はラスト2人目。ぎりぎりで間に合ってラッキーな気分になり、受付列の最後尾のおじさんと仲良くお話したりして予約を完了しました。その日最後の予約をしたおじさんは、白い髭に眼鏡が似合うどこかデザイナーさんらしい雰囲気のある方でした。そういえば彼も「なんとなく来て、並んじゃったんだよ」とか言っていたっけ。

予約をしたところ、どういうわけか早く手に入れたい欲求が高まりました。指折るように発売日を待っていると、発売日の前日に入荷の電話あり。混雑を避けるために20分ごとに購入の時間を設定しているとのこと。早く手に入れたいので、28日の金曜日、朝のいちばん早い時間に購入することにしました。

多くのひとは、Wi-Fi+3Gのモデルを購入されたようです。しかし、ぼくはモバイルでの利用を考えず、家で無線LAN(Wi-Fi)で使うこと、iPodと同期させて音楽を入れることもないので保存容量も16GBでいいや、ということでいちばんシンプルで低価格なモデルを選択しました(というよりも予算の問題もあったわけですが。苦笑)。Wi-Fi・16GBのiPadは4万8,800円でした。

ソフトバンクが回線の契約といっしょに販売していたため、キャッシュカードのチェックなどもあり、量販店の店員さんもめちゃめちゃレジで戸惑っていました。確認事項や用紙をひとつひとつチェックして(どこかそんなところも携帯電話の販売に似ている)、梱包されたビニールを切って中身まで確認するのには驚きました。うーむ、できればビニールの梱包は家で自分で切りたかったのだけれど。

家に持ち帰って記念写真(笑)。うひゃひゃー購入したぞ、ということで。

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白い箱の表面にはiPadの初期画面が印刷されています。しかしよくみるとメールのアイコンのところに7通届いている通知マークがある。そんな細かいパッケージの表現にも、思わずにやり。

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上箱を開いてみると、下箱のいっぱいいっぱいに液晶の画面が"嵌まって"いました。でかい。パソコンと比較するとそれほど大きくないはずなのですが、ホームボタンだけのシンプルなデザインのせいか、突起物がまったくないので液晶が広く大きくみえます。

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ぎっちぎちに入っていたのでうまく取り出せなかったのですが、iPad本体を取り出すと、その奥には説明書などの書類が紙のケースに入ってさらに嵌まり込んでいます。まったくムダがありません。なんとなく洞窟のなかで秘密の文書を取り出していくような感覚で楽しい。

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同根されている書類はマニュアルというほどでもなくて、ボタンの簡単な説明が書いてある一枚のシートのほか、保証書など。iPodなども同様でしたが、驚くほど解説書がない。インターフェースを洗練させて、直感的に操作できるから解説は不要なんだよ、というAppleの自信を感じました。白いアップルマークのシールが付属しているのも、なんとなくうれしい。ファンのこころをくすぐります。

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その奥には何があるのかなーとおもうと、USBケーブルと電源アダプタが、これもまた嵌まっている。嵌まりすぎ。

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iPad持ってみました。片手だと意外に重い。

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裏面に感動。大きなロゴマーク以外に、ごちゃごちゃとシールが貼られていたりネジ止めがまったくないのが美しい。なめらかなカーブを描いているのも最高のデザイン。

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ぼくは表面の保護用に、ELECOMのSmooth-Slidein Mat Film for iPad を手に入れました(量販店のカードのポイントで)。マット(ざらざらの)素材なので、指の跡がつきにくい。摩擦係数0.258で滑らず、硬度3Hで傷に強く、紫外線もカットするようです。失敗と埃を恐れたのですが、ヘラでおさえつつ、なかなかうまく貼れました。

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さてパソコンと接続です。ごちゃごちゃしてお見苦しいのですが、ぼくのVAIOノートとUSBで繋ぎました。

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iPadのほうには、iTunesと接続するように画面に表示されます。購入前に気付いてわずかに焦ったのですが、iPadはiTunesと接続して利用することが前提になっています。ところがぼくは、最近はiPodを使わないし、iTunesは重いので削除していました。あわてて最新版のiTunesをインストール。バージョン9.1以上のiTunesが必要となるようです。

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ここからあとは画面の指示にしたがって、スムーズに初期設定が完了しました。Wi-Fiの接続も問題なく完了。はじめての設定には、以下の本がとても参考になりました。

4861905842iPad スターティングガイド (INFOREST MOOK PC・GIGA特別集中講座 384)
インフォレスト 2010-05-06

by G-Tools

さて、実際にiPadを使ってみた感想ですが。

すごいっっっ!iPhoneを使っている方には周知のことだとおもいますが、タッチパネルと加速度センサーによる操作感が気持ちいい。アイコンをタップしたり、画面をフリックするのも快感。IPS液晶はとてもみやすくて美しい。

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SafariによるWebサイトのブラウジング、YouTubeのレスポンスと画面の美しさも感動でした。自宅の環境では1階と2階で無線LANを使っているのですが、アンテナが1本しか立っていなくてもスムーズにサイトが表示されます。

以前リビングでは、Wiiを使ってインターネットをブラウジングしていました。しかし、大画面のテレビに映し出せるメリットはあるものの、WiiのOperaは非常に遅く、YouTubeなどは表示されないことも多かったのです。重いコンテンツの場合、読み込みの経過を示すバーがあと5ミリのところで止まってしまうこともありました。また画面にソフトウェアキーボードが表示されるものの、Wiiのコントローラはゆらゆら揺れてしまうので文字入力にとてもストレスを感じました。

ところがiPadならばっちりです。スティーブ・ジョブズのようにソファーでくつろぎながら、ふふふん、という感じでインターネットができる(Flashのページはみることができませんが、別にいいかなという気がしてきました)。

Googleのマップも快適です。航空写真の表示も可能であり、ストリートビューもさくさく動くのにはびっくりしました。その他、デジタルカメラで撮りだめした家族の写真のうち、主要なものはほとんどiPadに入れてしまおうと考えています。指先でタップしたり、ピンチイン/アウトできるのが楽しい。

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App Storeも使って早速無料のゲームなどをダウンロードしまくりました。子供(次男)がまっさきにはまったのが、Labyrinth 2 HD Lite。iPadを傾けてパチンコ玉を転がしてゴールの穴に入れるゲームです。iPhoneではもうおなじみのゲームですが、なにしろ画面がでかい。手放せなくなっていました。

■Labyrinth 2 HD Lite (無料・20.3MB)
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つづいて、Air Hockey Gold。これは2人で対戦できるようなので面白いようです。また、10 Pin Shffle TM というボーリングゲームも子供たちは気に入っていたようです。

■Air Hockey Gold(無料・8.5MB)
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音楽系のアプリが揃っているのもうれしいところ。JamPadはなんでもありというか、キーボード(ピアノ)+リズムギター+指板が表示されたリードギター+ドラムキットが使えます。アプリ内で課金をすると機能が拡張されるようです。これだけ楽器を詰め込むとさすがに液晶画面が狭いのですが、ぽろぽろりん、ががーっとピアノ+ギターを適当に弾いているだけでも結構面白い。

■JamPad(無料・26.7MB)
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以上は無料ですが、有料になるとさすがによく作られています。とはいっても、たとえばPro Keysは115円!缶コーヒー1本に満たない価格にもかかわらず機能が充実しています。下の写真では、上段にパーカッションのパッド、下段にキーボードを配置していますが、上下段ともに鍵盤にすることも可能で、上の鍵盤をソロ、下の鍵盤をバッキングに使うことができます。ディレイのエフェクトもあり、ピッチベンドも使える。これはライブなどでも活用できそう。

■Pro Keys(115円・39.5MB)
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個人的には、コルグのiERECTRIBE(6月30日まで1,200円、通常2,300円)を買うつもりです。ひょっとするとiPadで音楽制作も可能になってしまうかもしれない。願わくば、TENORI-ONとかMonomeのような、新しいインターフェースの楽器アプリが出てきてほしいですね。

ところで巷で話題の電子書籍の方面はいかがでしょう。

まずはAlice for the iPad-Liteの無料版をダウンロードしてみたのですが、本体を揺らすと時計が揺れて、おおーっとおもったものの3ページしかないため、なんともいえません。その後、iBooksをインストールしてWinnie-the-Poohを読んでみました。ページをめくる感覚、印刷が裏うつりしているところまでリアルです。単語を指で押していてると辞書が起動するのもいい。しかし、その辞書が英英辞書なので残念。日本語辞書と連携すれば、そのまま英語の教科書にもなりそうです。

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つづいて豊平文庫‐無償版をダウンロードしてみました。うーむ、なんか非常にレアな本が揃っている感じ。しかし、iPhone用のアプリのため、2倍モードで読むと文字にジャギー(ぎざぎざ)がみえていまひとつ。大手拓次の詩集などをダウンロードしました。

電子書籍的なクオリティと醍醐味が感じられなかったので、つづけて有料版のi文庫HD(700円)を購入。本棚にずらりと表紙が並んだ画面は気分が盛り上がりました。とはいえ、本のラインナップは豊平文庫とあまり変わらないような。

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マイナーな作家(というのも失礼ですが)の知られざる名作に出会えるのも興味深い機会です。自己啓発本の新書ばかりのリアルな書店とは、一風変わった書棚といえます。とはいえ、できれば自然科学系で面白そうな本もあるとよいとおもいました。それからやっぱりメジャーな最近の本も揃っていてほしい。

意外にいいなとおもったのが、電子版「産経新聞」です。その日の産経新聞をそのままiPadで読める。文字は拡大できるので読みやすい。どんな収益モデルで運営されているのかという勝手な不安がよぎりましたが、新聞あるいは週刊誌はこのような形態で配信していただくと、読者としては非常に重宝するとおもいます。ラテ欄は不要であり、社会面、スポーツ面だけ読みたいひともいそうなので、それこそ音楽がアルバム販売から曲販売に移行したように、コンテンツばら売りも可能かもしれませんね。

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こうしてiPadを使いながら、このガジェットの位置づけは何だろうと考えつづけていたのですが、電車や移動時に使うモバイラー的な用途は、iPadが本来めざしていた活用シーンではないと考えました。つまり、そのようなツールであれば、iPhoneやiPod touchで十分です。

また、ネットブックも隆盛しましたが、結果的にそれらはノートPCの廉価版、小型版にすぎなかったとおもいます。

ホーム・コンピューティング、リビングPCのようなコンセプトは、かなり昔からハードウェアメーカーを中心に提唱されてきました。方向性としてはiPadはそれらに近いのですが、ホーム・コンピューティングが従来のままのPC(Windows PC)をテレビやAVと融合させてエンターテイメント環境を創出しようとしたのに対して、iPadはタッチパネルという卓越したインターフェースや洗練されたデザインによって、まったく別の世界観を構築しているようにおもえます。家電どうしがつながる、という考え方ではなく、このガジェット単体で生活様式を変えてしまう。そんな印象です。

iPadのコンセプトは、ソファに座ってプレゼンテーションをしてみせるスティーブ・ジョブスの姿に既に集約されていたように感じます。

ぼくはiPadに3Gの通信も16GB以上の保存容量も求めませんでしたが、個人的には正解だったと感じています。次世代のiPadがあるとすれば、もっとシンプルで手軽なものになるのではないでしょうか。データはすべてクラウドに預けることによって、手元には何も置かなくていい。通信はどのような方式であれ無線になる。もっとも要求されるのはコンテンツです。

現在、電子書籍に対して日本の出版業界の動きが鈍いということは、大きな機会損失だと感じました。片手で持てるような端末ですが、ビジネス契機と時代の変化を巻き起こす潜在能力を秘めていると感じます。SFのなかにしかなかった世界がいま手元にある。そんな衝撃があります。

投稿者: birdwing 日時: 18:33 | | トラックバック (0)

2010年3月24日

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オンガクと人柄。

KANさんが新しくリリースした「カンチガイもハナハダしい私の人生」というアルバムの1曲目、「REGIKOSTAR ~レジ子スターの刺激~」に嵌まっています。ナタリーという音楽サイトで記事を読んで、どんな曲だろうとYouTubeで検索して聴いたところ、おもわず噴きました(笑)。楽しい。この曲です。


B00317COKIカンチガイもハナハダしい私の人生(DVD付)
KAN
UP-FRONT WORKS 2010-03-10

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歌詞の世界の物語を簡単にまとめてみます。

<ぼく>はスーパー(?)でレジを打っている女の子にひと目惚れします。彼女に会うために通い詰めるのですが、めったに会えない。諦めかけていたところに東急線で偶然オフタイムの私服の彼女をみつけて動揺します。彼女をみつめているうちに駅を乗り越してしまう。しかし、そのときを境に会えなくなる。彼女は姿を消してしまう。そうして、きっと彼女は星だったんだ、また会えるときがくるかもしれないとおもう・・・そんな甘酸っぱくて切ない、誰にでもあるようなささやかなストーリーです。

歌詞は以下のサイトでみることができます。

REGIKOSTAR ~レジ子スターの刺激~ KAN 歌詞情報 - goo 音楽
REGIKOSTAR ~レジ子スターの刺激~ KAN 歌詞情報 - goo 音楽

歌詞で楽しいのは、彼女がレジで告げる清算のことばを8回も繰り返すところ(笑)。ふつうのアーティストはここまで連呼しないでしょう。「20%引きです」は、なんとなくかわいい。サビでは「スター」と韻を踏んで「ひと目惚れました/お会計しました おつりが出ました」と、延々と「~した」でことばを合わせていく部分が秀逸です。「乗り越した」というのもユーモアがあっていい。また、「黒タイツ」を3回も繰り返すのはフェティッシュですね(最後は「黒タイチュ」)。これは二の腕の歌(「夏は二の腕発情期)」を作ってしまうような、KANさんの趣向をよくあらわしているとおもいます。

タイトルは1979年のバグルスのヒット曲、『ラジオ・スターの悲劇(Video Killed The Radio Star)』を彷彿とさせます。ぼくにとっては懐かしい。若かりし頃に好きだったこの曲を聴いてみます。



これ、友達がシングルレコード持っていて、借りて聴いたっけなあ(世代が・・・)。ニューウェーブの先駆けでありながら、ポップスの名曲中の名曲だとおもいます。ピアノ+シンセのキーボード類にしてもベースにしても、完璧なアレンジ。イコライジングしてラジオの声のようにしたボーカル、一転して女性ボーカルがサビを担うところも素敵ですね。

一方で「REGIKOSTAR ~レジ子スターの刺激~」の楽曲自体は、聴けばすぐにわかるようにPerfume風のアレンジです。最新音楽ニュースサイトのナタリーからインタビュー記事を引用します。

──それでは、ここからはニューアルバム「カンチガイもハナハダしい私の人生」についてお訊きします。誰が聴いてもまず1曲目で必ず驚くはずの、ものすごく大きな突っ込みどころが用意されていますよね。Perfume、中田ヤスタカ(capsule)さんからの影響を色濃く感じさせるというか(笑)。

いやそれはもう僕、大ファンですから。例えばビリー・ジョエルのあの感じ、THE BEATLESのああいう雰囲気の曲が作りたいとか、具体的な目標とかあこがれの対象があって、そこに向かって作っていくというのを僕はずっと普通にやり続けていて。「REGIKOSTAR ~レジ子スターの刺激~」はその中に含まれる、最近作った曲のうちのひとつですね。

──たまたま彼女たちがKANさんよりも後輩だったというだけで。

Perfumeのここ2枚のアルバム(「GAME」「⊿(トライアングル)」)は何度も聴いてますね。音楽的にすごいファンですよ。


2年ぐらい前からKANさんはPerfumeが好きだということを公言されていたそうですが、ご自身でここまでやっちゃうとは。冒頭は「ポリリズム」そっくりです。しゅわーんというノイズからはじまります。リズムなど随所に中田ヤスタカさんの音作りを感じました。

ただ、KANさんらしい特長としては基本的にバスドラムの4つ打ちを踏襲しながら、サビ以外はエイトビートになっているところだと感じたのですが、いかがでしょう。ちょっとポリリズムも聴いてみます。



ところで、ナタリーのインタビューのなかでKANさんは「例えばビリー・ジョエルのあの感じ、THE BEATLESのああいう雰囲気の曲が作りたい」という動機から曲を作る、ということを述べています。

ぼくもまた、このオンガク好きなんだよねー、という気持ちや憧れが表出していたり、継承されている作品が好きです。

おふざけがすぎると真似やパロディ(それこそ企画モノ)になってしまうのですが、KANさんの場合には誠実さが伝わります。そして、Perfume/中田ヤスタカさんの音作りに対する憧れが込められていながら、ベースとしてはいままでKANさんが歌ってきたシンプルなレンアイの世界です。23年間ずーっと、KANさんが音楽を通じて描いてきた「恋する切ない純朴な青年像」という主題から、大きくぶれていない気がします。

そもそもKANさんの音楽に出会ったのは、大林宣彦監督の「日本殉情伝 おかしなふたり」という映画を観たとき、その音楽を担当されていたからでした。

この映画はモーニングという雑誌の連載マンガが原作ですが、お蔵入りしかけたという危うい状況にあった映画です。しかし、ぼくは大林監督のなかで最も好きな映画です。ビデオが擦り切れるほど観て、いまはDVDで持っています。冒頭だけで、ぼろぼろ泣けました。この冒頭のインストゥルメンタルの曲がいい。ストリングスのシンセによるシンプルな曲ですが、たぶんこの音楽もKANさんが作った曲でしょう。


B00005MIH1日本殉情伝 おかしなふたり ものくるほしきひとびとの群 デラックス版 [DVD]
パイオニアLDC 2001-08-24

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おもえば「愛は勝つ」が収録されている「野球選手が夢だった」にも「健全 安全 好青年」という面白い歌詞の曲があり、エレクトロニックなポップのアレンジでした。また「HAPPY TITLE」というアルバムにおいても、古いスタンダードなロック・ポップスとともに、電子音楽全盛だった当時を感じさせる打ち込みサウンドを聴くことができます。

エレクトロニックでありながらあったかい。

これはストレートなラブソングを作りつづけてきたKANさんの人柄によるものかもしれません。

ぼくはインディーズのひねくれた前衛的な曲も随分聴いてきました。ネガティブな文章も読んだり書いたりしてきたのですが、基本的にはストレートに、まっすぐに想いを表現するひとに惹かれます。そんなわけでKANさんのこの曲に惹かれたのかもしれない、などとそんなことを考えました。

音楽に関わらず「エレクトロニックでありながらあったかい」ものに、今後も惹かれていくのではないかと感じています。テクノロジー(技術)と人間性が重なりあう場所に、ぼくは関心があります。

投稿者: birdwing 日時: 20:47 | | トラックバック (0)

2009年12月 5日

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ヴァイオリニストに首ったけ。

家族が録画していたFNS歌謡祭をみるともなしにみていたところ(基本的に最近テレビをほとんどみません)、徳永英明さんと東方神起が「レイニーブルー」を歌っていて懐かしくなりました。

「レイニーブルー」と「壊れかけのRadio」は名曲だな。それにしても徳永英明さん、若いなー。かっこいいなー。いくつなんだろう。もうすぐ50代なのではないかとおもうのですが(まだかな?)。八重歯だけなら負けないけれど、若々しい姿に圧倒されました。とか、競っても仕方ないんですけども。

しかし、その録画をみながら、ぼくの視線が釘付けになったのは徳永英明さんでも東方神起でもありませんでした。バックでヴァイオリンを弾いていた美しいソリストの女性でした。こ、これは。宮本笑里さんでは。あ!やっぱりそうだ。

今年になってから、がらりと音楽の趣味を変えてクラシックばかりを聴いています。といっても、1,000円程度のリーズナブルな古い録音の名盤ばかりなので、新しいアーティストのCDは一枚も持っていません。ジャケットだけみると、ずいぶんきれいな演奏家の方が多くなったなあ、と感じていました。

そんなとき、雑誌DIMEの11月17日号(No.22)「巷的流行美女図鑑」に「クラシック系美女」として宮本笑里さんのグラビアが載っていました。これです。

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ほんとうにテレビ関係に疎いのですが「のだめカンタービレ」やNHK大河ドラマのテーマ曲なども演奏されていたんですね。うーむ、きれいなひとだ、というわけで、DIMEのWindows7搭載パソコンの記事よりも、こっちのほうが気になっていました。ビジュアル的に、なのですが。

ところがところが。実際にテレビで演奏をしているところをみて、うわーっ素敵だ、と久し振りにまいってしまった。ヴァイオリンを弾く姿は清楚でありながら、力強い感情表現を感じます。美しい。かっこいい。個人的には後光が輝いている感じ。まばゆい。あわててYouTubeをチェックしたり、公式サイトのブログを読んで照れたりしています(困ったおじさんだ。苦笑)。急速にファン熱が高まりました。

公式サイトからアルバムデビューまでをプロフィールを引用します。

ヴァイオリニスト。
14歳の時ドイツ学生音楽コンクールデュッセルドルフ第1位入賞他。
小澤征爾音楽塾・オペラプロジェクト、NHK交響楽団、東京都交響楽団定期公演、宮崎国際音楽フェスティバルなどに参加し、これまでに徳永二男、四方恭子、久保陽子、店村眞積、堀正文の各氏に師事。
フジテレビ系ドラマ「のだめカンタービレ」オーケストラのメンバーとしても出演、サッポロビール「ヱビス<ザ・ホップ>」CMキャラクターとして父である元オーボエ奏者宮本文昭と共演する等、デビュー前からメディアに多数出演、今最も注目されるヴァイオリニストのひとりである。
07年5月、世界初となるケータイ向け<ビデオクリップ>でシングルデビュー。
そして同年「smile」でアルバムデビュー。

すごいひとだったんだな。出演スケジュールをみると、11月にはいろいろな番組に出演しているじゃないですか(情熱大陸にも)。見逃した(泣)。Wikipediaの解説には、Vanilla Moodという4人編成のクラシックユニットに参加していたことがあるという記述もありました。

ところで、ヴァイオリニストには女性が多いような印象があります。気のせいでしょうか。ということをリビングで呟いていたら、奥さんから「葉加瀬太郎がいるじゃない」と言われてしまった。ええと、高田万由子さんの旦那で、あたまがでっかくてもじゃもじゃの髪のひとですね。まあ、いるけどさ。うーむ。

「絶対音感」という本に書いてあったと記憶しているのですが、オーケストラは男性が多いと音が丸くなるとか。逆に女性が多い場合はきらびやかになるのかもしれません。確かにヒラリー・ハーンも音がきらきらしている。

そんな風にヴァイオリンの音楽を聴いているうちに、いつものように脱線して、そもそもヴァイオリンって何だっけかな、ということをWikipediaで調べはじめてしまいました。ふむふむ。調弦は高い音から順に「E線、A線、D線、G線(えーせん、あーせん、でーせん、げーせん/ドイツ語読み)」なのですね。弾いてみたい気がするけれど、楽器自体の値段が高そうだ。というよりも、練習するのが大変そう。下手に音を出すと近所迷惑です。そういえばヤマハからサイレントヴァイオリンという、骨だけみたいな電子ヴァイオリンが発売されていたことを思い出しました。これです。

ヤマハサイレントバイオリンSV-120BR(ブラウン)
ヤマハサイレントバイオリンSV-120BR(ブラウン)

入門レベルの機種なら、結構気軽に購入できそう(それでもケースなども加えると10万円ぐらいになる)。ヤマハはサイレントシリーズに力を入れているようで、ビオラ、チェロなどもある。トランペットまであるのにはびっくり。さらにヴァイオリンには、エレアコ(本体は木製の普通のヴァイオリンなのですが、ジャックが付いていてアンプにもつなぐことができる)製品までありました。ポップスなど、バンドのなかのソロで使うときに便利かもしれない。

なあんて、楽器の話でごまかしてしまいましたが、いまのところ宮本笑里さんに首ったけです。AmazonにCDを申し込もうかどうしようか、迷い中。

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■公式サイト
http://emirimiyamoto.com/
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■宮本笑里 break PV
YouTubeから埋め込み不可なのでリンクにて。繰り返し再生しながら、ふにゃふにゃになっています。だめだー。
http://www.youtube.com/watch?v=2koxweBcJpk


■Miyamoto Emiri x Solita - Tokyo et Paris (PV)

投稿者: birdwing 日時: 17:45 | | トラックバック (0)

2009年11月29日

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色に音を聴く、ことばを探す。

ふと立ち寄ったちいさな公園に金色の銀杏の樹がありました。そこだけが輝いてみえる佇まい。しばし樹木の相貌に見惚れてしまいました。空は青い。雲はない。静けさのなかに子供の遊ぶ声だけが聞こえています。時折、はらりと樹木から金色が剥がれて地面に落ちてゆく。地面には剥がれた金色が絨毯のように敷き詰められていました。秋の純度が高まったような、そんな風景でした。

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この風景に似合う音は何だろう。

公園を横切りながら、そんなことを考えました。透き通ったグラスハープのようなはかない減衰音。あるいは古典派クラシックによる弦のしらべ。しかし、どうしてもアタマで考えているとイメージが陳腐になります。枠に嵌められたイメージに偏りがちになる。もっと直感的に、風景を音に、あるいはことばに翻訳できるといいのですが。どうしても現前の風景を通俗の枠組み(紅葉、わびしさ、美しさなど)に入れて考えてしまう。

表現者であるために大切なことは何でしょう。ステレオタイプの表現から脱して、眼前の風景をことばや音にできることもそのひとつだとおもうのですが、難しい。新しい表現を創造しようとしても、どうしても既存の感覚に絡め取られてしまう。ことばにすることで、はらはらと零れ落ちてしまう何かがたくさんあります。写生をするように感情を排して風景を描くのもひとつの手法です。ところが、感情を込めようとすると別の困難な壁に立ち向かうことになります。

さて、最相葉月さんの「絶対音感」という本を読み終わりました。

4101482233絶対音感 (新潮文庫)
新潮社 2006-04

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最近関心のある共感覚にもかかわりがある本でした。音と色彩の関連についても言及されています。

以前、久石譲さんと養老猛司さんの「耳で考える」という本からオリヴィエ・メシアンという作曲家が絶対音感と共感覚を持っていたことが書かれていてブログに引用しましたが、「耳で考える」の本ではさわりに過ぎなかったオリヴィエ・メシアンのことが、「絶対音感」にはやや詳しく書かれていました。次のように色彩イメージを持っていたそうです。最相葉月さんが取材したシンセサイザーの元祖といわれるオンド・マルトノの奏者、原田節さんの発言から引用です(P.41)。

ただ、フランスの作曲家のオリヴィエ・メシアンはもっと複雑な色彩イメージを持っていたといわれています。たとえば、『神の降在の三つの小礼拝楽』の楽譜の解説によれば、ド・レ♭・ミ♭・ミ・ファ♯・ソ・ラ・シ♭の音程配列(旋法)ではバイオレット、ド・レ・ミ♭・ミ・ファ♯・ソ・ラ♭・シ♭・シの音程配列ではグレーの奥から金が反射してきて、オレンジ色の粒が散らばって、そこに黄金色に輝いている濃い目のクリーム色が・・・・・・などといろんな色が見えたようです。

音に色彩がみえる。この特殊な感覚は、ぼくにはまったく想像できません。色彩から音へ、という逆の方向が可能かどうかわかりませんが、オリヴィエ・メシアンが銀杏の葉をみたとしたら、どのような音にしたでしょうか。ド・レ・ミ♭・ミ・ファ♯・ソ・ラ♭・シ♭・シの音程配列において「金が反射してきて」という視覚的イメージがあるのなら、この音程に近いメロディということも考えられます。

メルロ=ポンティは「知覚の現象学」で、「諸感官は、ものの構造にみずからを開くことによって、互いに交流しあう」と述べているとのこと(P.142)。視覚による色彩と聴覚による音程も交流し合うものがあるとすれば、音程によって色彩を表現することもできそうです。次のような実験によって、共通の色彩感を見出す試みもされたようです(P.143)。

京都市立芸術大学音楽部教授の大串健吾らは、一九九〇年(平成二)年に「音楽の調性感と色彩感」と題する調査を行っている。それによると、これまで個人差が大きいといわれていた色彩感が、ある程度の共通点を持っていることがわかってきた。
被験者は九割以上が絶対音感の持ち主で、彼らに最も共通していたのは、ハ長調=白だった。順に、ト長調=青、ニ短調・ホ長調=橙や黄色、イ長調=赤・・・・・・といった色彩イメージがあることもわかった。実際、イ長調にはショパンの『軍隊ポロネーズ』やベートーベンの『交響曲第七番』など華やかな明るいイメージの曲が多く、緑をイメージした人の多いヘ長調には、ベートーベンの『交響曲第六番・田園』や『バイオリンソナタ第五番・春』などがある。

銀杏の風景に戻って考えると、イチョウだけにイ長調かとおもうのですが(笑)、そうでもないようですね。一方で、次のような音の色彩感覚もあるようです(P.250)。

また、スクリャービンはハ長調は赤、ヘ長調は明るい青、変ホ長調は金属性の輝きをもった鋼色・・・・・・などと調に対して色彩のイメージを持っていたという記録が残っており、彼の創作活動に色彩は非常に重要な要素だったといわれている。これは絶対音感ゆえのカテゴリー化を思わせるものである。

絶対音感を持ち共感覚者である岩崎純一さんは、「音に色が見える世界」という著書で、音やことばから色彩を感じ取る能力について、古来の日本人の感覚に遡って検証されています。なるほどなあとおもったのは、日本語にはもともと「あか・あを・しろ・くろ」しかなかった、ということです。

4569771092音に色が見える世界 (PHP新書)
PHP研究所 2009-09-16

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以下、引用します(P.111)。

たとえば、「あか」。今の日本人が英語のredとほぼ同義で用いている赤の語は、実は「明か(あか)」「明け(あけ)」などと同源である。「あか」「あけ」は、redを意味するものではなく、上代においては、彩度と明度がともに高い状態を指した。したがって、現代日本語の赤や紅の色相だけでなく、黄という語で示される色相をも含み、他のほぼすべての色相にも及んでいた。すなわち、「光のある色」「明るい色」「輝く色」のこと、その程度の彩度と明度を持った様々な色相をすべて「あか」と呼んだのだ。

銀杏の写真を載せましたが、ぼくらが通常、赤というともみじの葉の色を指すとおもいます。つまり、こんな紅葉の風景でしょうか。

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しかし、古来の日本では、銀杏も、もみじも「あか」だったのかもしれません。確かに、輝くように明るい色の銀杏の葉は「明か(あか)」ということばを使っても間違っていない印象があります。音程的に長調が明るい、というのは後天的に刷り込まれた固定観念のようでもあり、短調でも抜けるような明るい和音があると感じています。どれが、と提示できないのがもどかしいのですが、弦楽四重奏曲を聴いていて、短調の曲がすべて暗いかというとそんなことはない。気分というより和音的に、すかっと抜けた音があります。

音と語と色彩のイメージを比較しましたが、共感覚者の岩崎純一さんは、五十音のそれぞれのひらがなやカタカナにも色がみえるそうです。これが凄い。著作のなかでは、このように紹介されています。

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よくみると、イチョウを構成していることばとして、イとチは黄色、ヨは灰色、ウは黒ですね。全体的に、イ行の音は黄色系のようにみえます。黒川伊保子さん的な解釈では、ア行の音、つまり口を大きく開いた音が身体的にも音的にも明るい色になるような気がしました。先鋭的なイ行の音も、ウ行やオ行のくぐもった音と比べると明るく発話できる/聞こえるのかもしれません。

なぜぼくは音と色彩、ことばと色彩などにこだわるのか。

最近、絶対音感や共感覚に関するテーマで本を探して読んできました。ぼくのアンテナがそちらの方面に向くのは、何より知的好奇心です。

個人的に、自分には絶対音感も共感覚もありません。だから、どんなに特殊な能力に関する本を読んでも完全に理解はできないし、ないものねだりの悔しさも感じる。絶対音感や共感覚を解釈しても、後付けの理屈ともいえるでしょう。

けれども好奇心を起点として、表現の可能性を追求してみたいとおもっています。五感それぞれを研ぎ澄ませること。また、研ぎ澄ませた五感を連携させること。そうすることによって、文章を書いたり音楽を作ったりするときに(最近では曲を作っていませんがDTMが趣味のぼくとしては)、自分のなかにあるなんとなくもやっとした感覚を適切に、リアルに、脳内にある質感をそのまま(つまりクオリアを)表現できないか、と夢想しました。

そのものズバリの風景を表現として切り取ることは無理だとしても、ある風景や感情を音や文章に「翻訳」したい。そんな尽きない欲望が自分のなかにあります。技術の問題ではなく、表現する身体に関わる問題かもしれません。あるいは、「死とは何か」「私とは何か」と考える哲学のように、永遠に答えに辿り着けないテーマのような気もします。

それでもぼくは銀杏の樹木をみるとき、煌くような樹木をことばにしたい。風景が奏でるオンガクがあれば聴いてみたい。そのためには、目で見る、耳で聴くという単一の方法だけでは難しい。五感をザッピング(テレビのリモコンのチャンネルを次々と変えること)したり、視覚×聴覚を交差させたり、西洋の哲学と日本古来の哲学を横断させたりする考え方や姿勢に、表現力を磨くための鍛錬があるのではないでしょうか。あるいは、音を視る、ことばに触れる、など、感覚を解放することにヒントがありそうです。

いま、デジタルカメラにおさめた銀杏の写真を眺めながら、静かに耳を澄ませています。残念ながら、ぼくのなかにある音叉はまだ共鳴しません。ふさわしい音楽も、そしてことばも聴こえてこないようです。

投稿者: birdwing 日時: 22:38 | | トラックバック (0)