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2010年3月24日
オンガクと人柄。
KANさんが新しくリリースした「カンチガイもハナハダしい私の人生」というアルバムの1曲目、「REGIKOSTAR ~レジ子スターの刺激~」に嵌まっています。ナタリーという音楽サイトで記事を読んで、どんな曲だろうとYouTubeで検索して聴いたところ、おもわず噴きました(笑)。楽しい。この曲です。
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歌詞の世界の物語を簡単にまとめてみます。
<ぼく>はスーパー(?)でレジを打っている女の子にひと目惚れします。彼女に会うために通い詰めるのですが、めったに会えない。諦めかけていたところに東急線で偶然オフタイムの私服の彼女をみつけて動揺します。彼女をみつめているうちに駅を乗り越してしまう。しかし、そのときを境に会えなくなる。彼女は姿を消してしまう。そうして、きっと彼女は星だったんだ、また会えるときがくるかもしれないとおもう・・・そんな甘酸っぱくて切ない、誰にでもあるようなささやかなストーリーです。
歌詞は以下のサイトでみることができます。
REGIKOSTAR ~レジ子スターの刺激~ KAN 歌詞情報 - goo 音楽
歌詞で楽しいのは、彼女がレジで告げる清算のことばを8回も繰り返すところ(笑)。ふつうのアーティストはここまで連呼しないでしょう。「20%引きです」は、なんとなくかわいい。サビでは「スター」と韻を踏んで「ひと目惚れました/お会計しました おつりが出ました」と、延々と「~した」でことばを合わせていく部分が秀逸です。「乗り越した」というのもユーモアがあっていい。また、「黒タイツ」を3回も繰り返すのはフェティッシュですね(最後は「黒タイチュ」)。これは二の腕の歌(「夏は二の腕発情期)」を作ってしまうような、KANさんの趣向をよくあらわしているとおもいます。
タイトルは1979年のバグルスのヒット曲、『ラジオ・スターの悲劇(Video Killed The Radio Star)』を彷彿とさせます。ぼくにとっては懐かしい。若かりし頃に好きだったこの曲を聴いてみます。
これ、友達がシングルレコード持っていて、借りて聴いたっけなあ(世代が・・・)。ニューウェーブの先駆けでありながら、ポップスの名曲中の名曲だとおもいます。ピアノ+シンセのキーボード類にしてもベースにしても、完璧なアレンジ。イコライジングしてラジオの声のようにしたボーカル、一転して女性ボーカルがサビを担うところも素敵ですね。
一方で「REGIKOSTAR ~レジ子スターの刺激~」の楽曲自体は、聴けばすぐにわかるようにPerfume風のアレンジです。最新音楽ニュースサイトのナタリーからインタビュー記事を引用します。
──それでは、ここからはニューアルバム「カンチガイもハナハダしい私の人生」についてお訊きします。誰が聴いてもまず1曲目で必ず驚くはずの、ものすごく大きな突っ込みどころが用意されていますよね。Perfume、中田ヤスタカ(capsule)さんからの影響を色濃く感じさせるというか(笑)。
いやそれはもう僕、大ファンですから。例えばビリー・ジョエルのあの感じ、THE BEATLESのああいう雰囲気の曲が作りたいとか、具体的な目標とかあこがれの対象があって、そこに向かって作っていくというのを僕はずっと普通にやり続けていて。「REGIKOSTAR ~レジ子スターの刺激~」はその中に含まれる、最近作った曲のうちのひとつですね。
──たまたま彼女たちがKANさんよりも後輩だったというだけで。
Perfumeのここ2枚のアルバム(「GAME」「⊿(トライアングル)」)は何度も聴いてますね。音楽的にすごいファンですよ。
2年ぐらい前からKANさんはPerfumeが好きだということを公言されていたそうですが、ご自身でここまでやっちゃうとは。冒頭は「ポリリズム」そっくりです。しゅわーんというノイズからはじまります。リズムなど随所に中田ヤスタカさんの音作りを感じました。
ただ、KANさんらしい特長としては基本的にバスドラムの4つ打ちを踏襲しながら、サビ以外はエイトビートになっているところだと感じたのですが、いかがでしょう。ちょっとポリリズムも聴いてみます。
ところで、ナタリーのインタビューのなかでKANさんは「例えばビリー・ジョエルのあの感じ、THE BEATLESのああいう雰囲気の曲が作りたい」という動機から曲を作る、ということを述べています。
ぼくもまた、このオンガク好きなんだよねー、という気持ちや憧れが表出していたり、継承されている作品が好きです。
おふざけがすぎると真似やパロディ(それこそ企画モノ)になってしまうのですが、KANさんの場合には誠実さが伝わります。そして、Perfume/中田ヤスタカさんの音作りに対する憧れが込められていながら、ベースとしてはいままでKANさんが歌ってきたシンプルなレンアイの世界です。23年間ずーっと、KANさんが音楽を通じて描いてきた「恋する切ない純朴な青年像」という主題から、大きくぶれていない気がします。
そもそもKANさんの音楽に出会ったのは、大林宣彦監督の「日本殉情伝 おかしなふたり」という映画を観たとき、その音楽を担当されていたからでした。
この映画はモーニングという雑誌の連載マンガが原作ですが、お蔵入りしかけたという危うい状況にあった映画です。しかし、ぼくは大林監督のなかで最も好きな映画です。ビデオが擦り切れるほど観て、いまはDVDで持っています。冒頭だけで、ぼろぼろ泣けました。この冒頭のインストゥルメンタルの曲がいい。ストリングスのシンセによるシンプルな曲ですが、たぶんこの音楽もKANさんが作った曲でしょう。
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おもえば「愛は勝つ」が収録されている「野球選手が夢だった」にも「健全 安全 好青年」という面白い歌詞の曲があり、エレクトロニックなポップのアレンジでした。また「HAPPY TITLE」というアルバムにおいても、古いスタンダードなロック・ポップスとともに、電子音楽全盛だった当時を感じさせる打ち込みサウンドを聴くことができます。
エレクトロニックでありながらあったかい。
これはストレートなラブソングを作りつづけてきたKANさんの人柄によるものかもしれません。
ぼくはインディーズのひねくれた前衛的な曲も随分聴いてきました。ネガティブな文章も読んだり書いたりしてきたのですが、基本的にはストレートに、まっすぐに想いを表現するひとに惹かれます。そんなわけでKANさんのこの曲に惹かれたのかもしれない、などとそんなことを考えました。
音楽に関わらず「エレクトロニックでありながらあったかい」ものに、今後も惹かれていくのではないかと感じています。テクノロジー(技術)と人間性が重なりあう場所に、ぼくは関心があります。
投稿者 birdwing : 2010年3月24日 20:47
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