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2010年3月13日

[DTM作品] mizu_no_wakusei(水の惑星)

和歌山県太地町のイルカ漁を題材にした長編ドキュメンタリー映画「ザ・コーブ(the cove)」が、アカデミー賞を受賞しました。「わんぱくフリッパー」の調教師リック・オバリーを含む撮影隊が、隠し撮りによってフィルムに収めた作品であるとのこと。

ただ、ぼくは多くのひとと同様、このニュースをきいてとても居心地の悪い印象を受けました。というのは、日本人全体がおとなしいイルカを殺戮しているようなイメージにとらえられ、批判の対象になっている気がしてならないからです。

ぼくはイルカの肉を食べたことがありません。

クジラの肉は、ちいさな頃に学校給食で竜田揚げを食べた記憶があります。ウシやブタの肉なら日常でずいぶん食べています。ときにはウマやヒツジもおいしくいただきますが、イルカを漁で捕獲することがいけないのであれば、なぜ他の動物たちはいけないのでしょう。極論をいってしまえば、トマトやニンジンだって生命です。イルカだけが槍玉にあげられるのは何か納得がいかない。

生態系(エコシステム)の連鎖のなかで、ぼくらは他の生き物たちを食することによって生きています。全体論でくくるべきではないのかもしれませんが、自然に生かされているぼくらのちっぽけな存在の有難さを感じ取る必要はあります。他の動物を食することで自分の生命を維持している、ということ。食べ物であると同時に、すべての生き物は同じ地球上に棲む仲間でもあります。

ということを考えながら曲を作りました。今回もエレクトロニカ風の曲です。タイトルは「水の惑星(mizu_no_wakusei)」としました。ブログで公開します。お聴きください。


■mizu_no_wakusei 水の惑星(4分13秒 5.78MB 192kbps)

作曲・プログラミング:BirdWing


すこし「ザ・コーブ(the cove)」の映画の話に戻ります。池田信夫さんがブログで批判されていました。とても共感したので、3月10日の「エコロジーという自民族中心主義」というエントリを引用します。

イルカを年2万頭殺すことが残虐なら、年3500万頭の牛を殺すアメリカ人は何なのか。デリダもいうように、高等動物と下等動物の区別には意味がなく、人間と動物の境界も恣意的なものだ。たとえば新生児を殺したら殺人だが、妊娠3ヶ月で中絶するのは犯罪にはならない。逆に、かつては老人を「姥捨て山」に遺棄することは犯罪ではなかった。殺してはならないものの境界を決めるのはそれぞれの時代や地域の文化であり、絶対的な基準はない。

ところがキリスト教文化圏は、すべての人類に普遍的な倫理があると信じる特異な地域だ。さらに人間が神の姿に似せてつくられたという特権意識をもち、すべての動物は人間のために殺されるのが当然だと考える人間中心主義が強い。「イルカは賢いから殺すな」という主張の根底には、黒人などの「劣った民族」は殺しても奴隷にしてもよいという自民族中心主義がある。

池田信夫さんは日本をバッシングする「政治的意図」を危惧されています。自分たちの文化は棚上げして他の文化を批判あるいは排除しようとする「自民族中心主義」には、確かに危険性が潜むと感じ取りました。

閑話休題。

音楽でイルカというとおもい出すのは、ネオアコ系のオレンジジュースというバンドの次のアルバムです。ぼくの音楽とは関係ないのですが、ジャケットを掲載しておきます。

B0000565U9キャント・ハイド・ユア・ラヴ・フォーエヴァー
オレンジ・ジュース
ポリドール 1998-03-25

by G-Tools

「水の惑星(mizu_no_wakusei)」の制作メモです。

今回はSONAR付属のGrooveSynthとフリーソフト中心で作りました。イメージとしては広い海原をパッド系のシンセで、あとクジラの鳴き声のようなリフをフリーシンセのminimogueVA、イルカあるいは海鳥の鳴き声をGrooveSynthで作っています。

minimogueVAの操作パネルはこんな感じ。アナログ風です。今回はプリセット音のSoft Mini Sweepをベースにして、つまみをいじって音作りをしました。

100313_minimoog_re.jpg

ドラムスはフリーシンセのRhythms v3.6.1です。テクノ系の音作りにはいい。操作パネルはつまみが並んでいますが、プリセットを利用。コンプレッサーを強めにかけて、低音をイコライザーで持ち上げています。

100313_rhythm_re.jpg

ところで、制作中にトラブルが多発で苦労しました。まずは、いい感じになってきたなあ・・・とおもったらソフトウェアがフリーズ。作ったデータが跡形もなく消えていました。それこそ"海の藻屑"です。調べてみると音声ファイルにミックスダウンした部分だけ多少保存されていたので、そのファイルを利用しつつ制作。しかし非力なPCには限界らしく、ソフトウェア上ではドロップアウトして再生できなくなってしまい、試しにエクスポートしてみたところミックスダウンが書き出せたので、やっと完成した次第です。

インスパイアを受けたのは、特定のミュージシャンではなくサイトの音楽でした。まずは、ユニクロのUNIQLOCK。音楽を担当しているFPMについては、ブルータス2/15「吉本隆明特集」号の記事で知りました。以下では音を消していますので、右下の音声ボタンを押して音楽をお聴きください。

もうひとつは、ソニーエリクソンから発表された新しいケータイXPERIAのサイト。アンドロイドというOSによる携帯電話ですが、さすがにソニーエリクソンだけあってかっこいい。こんな音楽作ってみたいなあ、と。

100313_experia.jpg

と、このようにつれづれに書き進めてみて、イルカ捕獲の問題と音楽の趣向は合致しにくいものがある、と感じました。海外ではトム・ヨークのように環境問題に関心を示しながら良質の音楽を作るアーティストがいます。思想的なものと音楽をうまく重ね合わせることができるといいのですが。大きな(自分にはあまりにも大きすぎる)課題です。

投稿者 birdwing : 2010年3月13日 18:32

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