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2010年5月30日

iPadの衝撃。

Apple製品には、ぼくらをわくわくさせる魅力があります。デザインでしょうか、製品が提供するライフスタイルでしょうか。Windows派のひとには冷ややかな視線を浴びそうですが、"iPad"はAppleファンに新しい希望を与えてくれました。多くのひとが発売前から熱狂的に取り付かれ、たくさんのニュースで取り上げられました。ぼくもまた日本の発売当日に購入したひとりです。

100510_ipad.jpg最初はそれほど大きな期待があったわけではありません。5月10日に、今日はiPadの予約開始日だということを偶然に思い出して、量販店に並んだのがきっかけでした。

受付はラスト2人目。ぎりぎりで間に合ってラッキーな気分になり、受付列の最後尾のおじさんと仲良くお話したりして予約を完了しました。その日最後の予約をしたおじさんは、白い髭に眼鏡が似合うどこかデザイナーさんらしい雰囲気のある方でした。そういえば彼も「なんとなく来て、並んじゃったんだよ」とか言っていたっけ。

予約をしたところ、どういうわけか早く手に入れたい欲求が高まりました。指折るように発売日を待っていると、発売日の前日に入荷の電話あり。混雑を避けるために20分ごとに購入の時間を設定しているとのこと。早く手に入れたいので、28日の金曜日、朝のいちばん早い時間に購入することにしました。

多くのひとは、Wi-Fi+3Gのモデルを購入されたようです。しかし、ぼくはモバイルでの利用を考えず、家で無線LAN(Wi-Fi)で使うこと、iPodと同期させて音楽を入れることもないので保存容量も16GBでいいや、ということでいちばんシンプルで低価格なモデルを選択しました(というよりも予算の問題もあったわけですが。苦笑)。Wi-Fi・16GBのiPadは4万8,800円でした。

ソフトバンクが回線の契約といっしょに販売していたため、キャッシュカードのチェックなどもあり、量販店の店員さんもめちゃめちゃレジで戸惑っていました。確認事項や用紙をひとつひとつチェックして(どこかそんなところも携帯電話の販売に似ている)、梱包されたビニールを切って中身まで確認するのには驚きました。うーむ、できればビニールの梱包は家で自分で切りたかったのだけれど。

家に持ち帰って記念写真(笑)。うひゃひゃー購入したぞ、ということで。

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白い箱の表面にはiPadの初期画面が印刷されています。しかしよくみるとメールのアイコンのところに7通届いている通知マークがある。そんな細かいパッケージの表現にも、思わずにやり。

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上箱を開いてみると、下箱のいっぱいいっぱいに液晶の画面が"嵌まって"いました。でかい。パソコンと比較するとそれほど大きくないはずなのですが、ホームボタンだけのシンプルなデザインのせいか、突起物がまったくないので液晶が広く大きくみえます。

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ぎっちぎちに入っていたのでうまく取り出せなかったのですが、iPad本体を取り出すと、その奥には説明書などの書類が紙のケースに入ってさらに嵌まり込んでいます。まったくムダがありません。なんとなく洞窟のなかで秘密の文書を取り出していくような感覚で楽しい。

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同根されている書類はマニュアルというほどでもなくて、ボタンの簡単な説明が書いてある一枚のシートのほか、保証書など。iPodなども同様でしたが、驚くほど解説書がない。インターフェースを洗練させて、直感的に操作できるから解説は不要なんだよ、というAppleの自信を感じました。白いアップルマークのシールが付属しているのも、なんとなくうれしい。ファンのこころをくすぐります。

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その奥には何があるのかなーとおもうと、USBケーブルと電源アダプタが、これもまた嵌まっている。嵌まりすぎ。

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iPad持ってみました。片手だと意外に重い。

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裏面に感動。大きなロゴマーク以外に、ごちゃごちゃとシールが貼られていたりネジ止めがまったくないのが美しい。なめらかなカーブを描いているのも最高のデザイン。

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ぼくは表面の保護用に、ELECOMのSmooth-Slidein Mat Film for iPad を手に入れました(量販店のカードのポイントで)。マット(ざらざらの)素材なので、指の跡がつきにくい。摩擦係数0.258で滑らず、硬度3Hで傷に強く、紫外線もカットするようです。失敗と埃を恐れたのですが、ヘラでおさえつつ、なかなかうまく貼れました。

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さてパソコンと接続です。ごちゃごちゃしてお見苦しいのですが、ぼくのVAIOノートとUSBで繋ぎました。

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iPadのほうには、iTunesと接続するように画面に表示されます。購入前に気付いてわずかに焦ったのですが、iPadはiTunesと接続して利用することが前提になっています。ところがぼくは、最近はiPodを使わないし、iTunesは重いので削除していました。あわてて最新版のiTunesをインストール。バージョン9.1以上のiTunesが必要となるようです。

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ここからあとは画面の指示にしたがって、スムーズに初期設定が完了しました。Wi-Fiの接続も問題なく完了。はじめての設定には、以下の本がとても参考になりました。

4861905842iPad スターティングガイド (INFOREST MOOK PC・GIGA特別集中講座 384)
インフォレスト 2010-05-06

by G-Tools

さて、実際にiPadを使ってみた感想ですが。

すごいっっっ!iPhoneを使っている方には周知のことだとおもいますが、タッチパネルと加速度センサーによる操作感が気持ちいい。アイコンをタップしたり、画面をフリックするのも快感。IPS液晶はとてもみやすくて美しい。

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SafariによるWebサイトのブラウジング、YouTubeのレスポンスと画面の美しさも感動でした。自宅の環境では1階と2階で無線LANを使っているのですが、アンテナが1本しか立っていなくてもスムーズにサイトが表示されます。

以前リビングでは、Wiiを使ってインターネットをブラウジングしていました。しかし、大画面のテレビに映し出せるメリットはあるものの、WiiのOperaは非常に遅く、YouTubeなどは表示されないことも多かったのです。重いコンテンツの場合、読み込みの経過を示すバーがあと5ミリのところで止まってしまうこともありました。また画面にソフトウェアキーボードが表示されるものの、Wiiのコントローラはゆらゆら揺れてしまうので文字入力にとてもストレスを感じました。

ところがiPadならばっちりです。スティーブ・ジョブズのようにソファーでくつろぎながら、ふふふん、という感じでインターネットができる(Flashのページはみることができませんが、別にいいかなという気がしてきました)。

Googleのマップも快適です。航空写真の表示も可能であり、ストリートビューもさくさく動くのにはびっくりしました。その他、デジタルカメラで撮りだめした家族の写真のうち、主要なものはほとんどiPadに入れてしまおうと考えています。指先でタップしたり、ピンチイン/アウトできるのが楽しい。

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App Storeも使って早速無料のゲームなどをダウンロードしまくりました。子供(次男)がまっさきにはまったのが、Labyrinth 2 HD Lite。iPadを傾けてパチンコ玉を転がしてゴールの穴に入れるゲームです。iPhoneではもうおなじみのゲームですが、なにしろ画面がでかい。手放せなくなっていました。

■Labyrinth 2 HD Lite (無料・20.3MB)
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つづいて、Air Hockey Gold。これは2人で対戦できるようなので面白いようです。また、10 Pin Shffle TM というボーリングゲームも子供たちは気に入っていたようです。

■Air Hockey Gold(無料・8.5MB)
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音楽系のアプリが揃っているのもうれしいところ。JamPadはなんでもありというか、キーボード(ピアノ)+リズムギター+指板が表示されたリードギター+ドラムキットが使えます。アプリ内で課金をすると機能が拡張されるようです。これだけ楽器を詰め込むとさすがに液晶画面が狭いのですが、ぽろぽろりん、ががーっとピアノ+ギターを適当に弾いているだけでも結構面白い。

■JamPad(無料・26.7MB)
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以上は無料ですが、有料になるとさすがによく作られています。とはいっても、たとえばPro Keysは115円!缶コーヒー1本に満たない価格にもかかわらず機能が充実しています。下の写真では、上段にパーカッションのパッド、下段にキーボードを配置していますが、上下段ともに鍵盤にすることも可能で、上の鍵盤をソロ、下の鍵盤をバッキングに使うことができます。ディレイのエフェクトもあり、ピッチベンドも使える。これはライブなどでも活用できそう。

■Pro Keys(115円・39.5MB)
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個人的には、コルグのiERECTRIBE(6月30日まで1,200円、通常2,300円)を買うつもりです。ひょっとするとiPadで音楽制作も可能になってしまうかもしれない。願わくば、TENORI-ONとかMonomeのような、新しいインターフェースの楽器アプリが出てきてほしいですね。

ところで巷で話題の電子書籍の方面はいかがでしょう。

まずはAlice for the iPad-Liteの無料版をダウンロードしてみたのですが、本体を揺らすと時計が揺れて、おおーっとおもったものの3ページしかないため、なんともいえません。その後、iBooksをインストールしてWinnie-the-Poohを読んでみました。ページをめくる感覚、印刷が裏うつりしているところまでリアルです。単語を指で押していてると辞書が起動するのもいい。しかし、その辞書が英英辞書なので残念。日本語辞書と連携すれば、そのまま英語の教科書にもなりそうです。

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つづいて豊平文庫‐無償版をダウンロードしてみました。うーむ、なんか非常にレアな本が揃っている感じ。しかし、iPhone用のアプリのため、2倍モードで読むと文字にジャギー(ぎざぎざ)がみえていまひとつ。大手拓次の詩集などをダウンロードしました。

電子書籍的なクオリティと醍醐味が感じられなかったので、つづけて有料版のi文庫HD(700円)を購入。本棚にずらりと表紙が並んだ画面は気分が盛り上がりました。とはいえ、本のラインナップは豊平文庫とあまり変わらないような。

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マイナーな作家(というのも失礼ですが)の知られざる名作に出会えるのも興味深い機会です。自己啓発本の新書ばかりのリアルな書店とは、一風変わった書棚といえます。とはいえ、できれば自然科学系で面白そうな本もあるとよいとおもいました。それからやっぱりメジャーな最近の本も揃っていてほしい。

意外にいいなとおもったのが、電子版「産経新聞」です。その日の産経新聞をそのままiPadで読める。文字は拡大できるので読みやすい。どんな収益モデルで運営されているのかという勝手な不安がよぎりましたが、新聞あるいは週刊誌はこのような形態で配信していただくと、読者としては非常に重宝するとおもいます。ラテ欄は不要であり、社会面、スポーツ面だけ読みたいひともいそうなので、それこそ音楽がアルバム販売から曲販売に移行したように、コンテンツばら売りも可能かもしれませんね。

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こうしてiPadを使いながら、このガジェットの位置づけは何だろうと考えつづけていたのですが、電車や移動時に使うモバイラー的な用途は、iPadが本来めざしていた活用シーンではないと考えました。つまり、そのようなツールであれば、iPhoneやiPod touchで十分です。

また、ネットブックも隆盛しましたが、結果的にそれらはノートPCの廉価版、小型版にすぎなかったとおもいます。

ホーム・コンピューティング、リビングPCのようなコンセプトは、かなり昔からハードウェアメーカーを中心に提唱されてきました。方向性としてはiPadはそれらに近いのですが、ホーム・コンピューティングが従来のままのPC(Windows PC)をテレビやAVと融合させてエンターテイメント環境を創出しようとしたのに対して、iPadはタッチパネルという卓越したインターフェースや洗練されたデザインによって、まったく別の世界観を構築しているようにおもえます。家電どうしがつながる、という考え方ではなく、このガジェット単体で生活様式を変えてしまう。そんな印象です。

iPadのコンセプトは、ソファに座ってプレゼンテーションをしてみせるスティーブ・ジョブスの姿に既に集約されていたように感じます。

ぼくはiPadに3Gの通信も16GB以上の保存容量も求めませんでしたが、個人的には正解だったと感じています。次世代のiPadがあるとすれば、もっとシンプルで手軽なものになるのではないでしょうか。データはすべてクラウドに預けることによって、手元には何も置かなくていい。通信はどのような方式であれ無線になる。もっとも要求されるのはコンテンツです。

現在、電子書籍に対して日本の出版業界の動きが鈍いということは、大きな機会損失だと感じました。片手で持てるような端末ですが、ビジネス契機と時代の変化を巻き起こす潜在能力を秘めていると感じます。SFのなかにしかなかった世界がいま手元にある。そんな衝撃があります。

投稿者 birdwing : 2010年5月30日 18:33

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