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2010年5月25日
LOU DONALDSON / SWING AND SOUL
▼music10-04スイングとソウル、音の触感。
スイング・アンド・ソウル
ルー・ドナルドソン
曲名リスト
1. ドロシー
2. アイ・ウォント・クライ・エニー・モア
3. ハーマンズ・マンボ
4. ペック・タイム
5. ゼア・ウィル・ネヴァー・ビー・アナザー・ユー
6. グルーヴ・ジャンクション
7. グリッツ・アンド・グレイヴィー
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音を聴くのは人間の聴覚ですが、聴覚に肌触り、つまり触覚に近いものを感じるときがあります。"耳触り"という感じでしょうか。嫌な音に対する「耳障り」ではなく、音という波が鼓膜の器官に触れるときの感覚。いわば音の触感です。
やわらかな毛布のようにふわふわした音もあれば、金属のように硬質で滑らかな音もある。ぬめっとした生々しい体液を感じさせるような音もあれば、さらさらと零れ落ちていく砂のような音もある。
触感はモノの素材に基づいています。しかし、音の触感の場合には、それぞれ個人的な印象です。したがって、あるひとには生々しく感じられる音が、別の誰かには無機質な音に聴こえるかもしれません。共有できそうですが、言葉化したときにズレてしまう。完全には共有できません。伝わるイメージもあれば、まったく伝わらないイメージもあります。それが音楽の感動を伝えるもどかしさでもあり、面白さでもあるとおもうのですが。
ぼくにとってサキソフォンの音は、弾力性がありながら艶やかな印象の音です。ゴムのような、人間の皮膚のような肌触りを感じます。特にアルトサックスの低音は掠れた音で、ざらついた和紙あるいは羊皮紙のような印象もあります。全般的にサキソフォンの音による触感が好きです。トランペットは金属的で冷たい感じがするんですよね。テナーサックス、アルトサックスによって奏でられたあったかい肌触りが好きです。
というわけで、アルトサックスの奏者であるルー・ドナルドソンの「スイング・アンド・ソウル」。
ブルーノートのベスト&モアシリーズということで、近所のCDショップを物色しているうちに気になって購入。とても安価だったせいもあります。しかし、久し振りにジャジーな気分に浸ることができました。くつろいで、わずかばかりゴージャスな雰囲気も楽しめました。
短い紹介なので、Wikipediaのルー・ドナルドソンの解説を引用します。
ルー・ドナルドソン(Lou Donaldson, 1926年11月3日 - )は、アメリカ合衆国のジャズ・サクソフォン奏者。ビバップやハード・バップ、ソウル・ジャズのジャンルで録音を行なった。
ノースカロライナ州のバディンに生まれる。ソウルやブルース寄りの演奏で知られるが、形成期には、多くのミュージシャンと同じくチャーリー・パーカーから大きな影響を受け、バップ寄りの演奏様式を採っていた[1]。最初の録音は、1952年にミルト・ジャクソンやセロニアス・モンクといったバップの使者とともに行い[2]、1953年には、トランペットのヴィルトゥオーソのクリフォード・ブラウンやドラマーのフィリー・ジョー・ジョーンズとも録音を行なっている。トランペッターのブルー・ミッチェルやピアニストのホレス・シルヴァー、ドラマーの アート・ブレイキーといった錚々たる顔触れのジャズ・ミュージシャンを率いて、いくつかの小編成のグループを組んだ[1]。アート・ブレイキー・クィンテットのメンバーとして、同グループの最も名高いアルバム『バードランドの夜 Vol.1』の録音にも加わっている。
長年にわたってパートナーのピアニストはハーマン・フォスターが務めた。
ピアノはハーマン・フォスター。Wikipediaの解説にある通り、古くからルー・ドナルドソンのパートナーだったとのこと。確かにふたりの演奏は対話的であり、息があっていると感じました。ハーマン・フォスターはあまり派手な演奏ではない印象ですが、ぽろりぽろりというすこしくぐもった音がやわらかくていい。
1曲目「ドロシー」は、ハーマン・フォスターのピアノからはじまるゆったりしたバラードですが、ルー・ドナルドソンのサキソフォンが終わって1分25秒あたりからのピアノの演奏が好きです。変わって2曲目「アイ・ウォント・クライ・エニー・モア」は軽快な曲。日曜日の午前中などに部屋を片付けながら聴くと気持ちよさそう。
3曲目の「ハーマンズ・マンボ」では、レイ・バレットのコンガがきいています。これ、気持ちいいなあ。コンガはセオリー通りというか、正確にマンボのリズムを刻んでいるのですが、その王道的なラテンのビートが快感です。途中からピアノとハイハットのリズムが細かくなって盛り上がって、また元のテーマに戻っていくところもいい。
4曲目「ペック・タイム」はスイングな感じ。ベースとドラムス+コンガになるところが快感です。そしてドラムソロ、コンガのソロが交互に入ります。一転して5曲目「ゼア・ウィル・ネバー・ビー・アナザー・ユー」はルー・ドナルドソンのサキソフォンが全面的に歌い上げるバラード。雰囲気があります。個人的には中間部分のハーマン・フォスターのピアノがよかった。なんというかギターのハーモニクスを爪弾くような音なのですが。
6曲目「グルーヴ・ジャンクション」はスイング。7曲目「グリッツ・アンド・グレイヴィー」はソウル、R&Bです。ゆったりめのリズムで、ベースとドラムからはじまって、ソウルフルな演奏で終わります。スイングからソウルへ。ルー・ドナルドソンが意識した音楽の志向性を垣間みたように感じました。
と、感想を書いてみて気付いたのですが、アルバム全体の曲の構成が緩急つけられていて、とても聴きやすい。そもそも「スイング・アンド・ソウル」とタイトルに名付けられているわけで、スイングの軽快なリズム感とソウルフルな雰囲気やノリがアルバムとしてうまく融合されつつ、まとめられているのだとおもいます。
演奏に胡椒のような絶妙な味付けをしているのが、コンガの達人といわれるレイ・バレットのリズムです。カッとかパンという乾いた音がサックスやその他の音に溶け込むと同時にメリハリを付けています。ライナーノーツから引用すると次のように書かれています。
ドナルドソンはこのアルバムで初めてコンガ奏者を録音メンバーに迎えた。そして、これ以降コンガは彼の音楽の特長のひとつになる。モダン・ジャズにおけるコンガは通常ラテン調の効果を出すために使われるが、ドナルドソンは自己のジャズ・サウンドのひとつの要素として使った。その意味で、メインストリーム・ジャズでコンガを使った最初のジャズ・ミュージシャンのひとりといえる。
ぼくはコンガの音が好きで、趣味のDTMでは打ち込んでみたり、ループ音源を加えたりしています。しかし、コンガ自体の楽器についてよく知りませんでした。奏法にはまったくの無知です。コンガはキューバの楽器なんですね。
というわけでこれもまたWikipediaでコンガの奏法について調べてみました。次のような奏法があるようです。
スティック(撥)を用いず、直接素手でヘッドを叩く奏法が一般的。主な奏法を以下に列挙する。
- 指全体でヘッドの端を押さえ込まないように叩くオープン
- 指先でヘッドの中心を弾くように叩くオープンスラップ
- 指先でヘッドの中心を弾くように叩き、ヘッドを押さえ込むクローズドスラップ
- 手のひら全体でヘッドを押さえ込まないように叩くベース
- 手の付け根でヘッドを押さえ込むヒール
- 指先でヘッドを押さえ込むトゥ
- 手のひら全体でヘッドを押さえ込むクローズ
- 指先でヘッドの端を押さえ込むモフ
うーむ。よくわからない。というわけで、コンガの達人レイ・バレットの演奏をYouTubeで探したところ、以下のようなソロ演奏シーンをみつけました。
■Ray Barretto-Solo De congas
凄い。片手でヘッドの上を滑らせることによって音程を変えることもできるんですね。パーカッション、奥が深いと思いました。この乾いた音が、サキソフォンの演奏をきりっと締めているように感じます。
サキソフォン、ジャズというと先入観として夜と酒のイメージがあるのですが、コンガの入った演奏では、さわやかな休日の朝の雰囲気も感じられます。洗濯されて日光に向けて干されて、さらりと乾いた布地のような肌触りです。ルー・ドナルドソンの「スイング・アンド・ソウル」、何度か聴き直しましたが気に入っています。
+++++++++
別のアルバムですが、以下の曲もハーマン・フォスターのピアノです。
■Lou Donaldson - South Of The Border
投稿者 birdwing : 2010年5月25日 20:35
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2 Comments
- aparadekto 2010-10-27T07:31
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Hey, I can't view your site properly within Opera, I actually hope you look into fixing this.
- BirdWing 2010-10-27T12:33
-
Hmm, I see... Why don't you see my site with browsers other than Opera?
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