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2010年5月 9日
OWL CITY / ocean eyes
▼music10-03:眠れぬ夜に、エレクトロ・ポップのきらめき。
オーシャン・アイズ
アウル・シティー
曲名リスト
1. ケイヴ・イン
2. ザ・バード・アンド・ザ・ワーム~鳥さん、虫さん
3. ハロー・シアトル
4. アンブレラ・ビーチ
5. ザ・ソルトウォーター・ルーム
6. デンタル・ケア
7. 流星群
8. オン・ザ・ウイング
9. ファイアーフライズ
10. ザ・ティップ・オブ・ジ・アイスバーグ
11. ヴァニラ・トワイライト
12. タイダル・ウェーヴ~憂鬱という名の津波
13. ホット・エアー・バルーン (ボーナス・トラック)
14. ラグズ・フロム・ミー・トゥ・ユー (ボーナス・トラック)
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眠れない夜はどうやって過ごしますか?分厚い本を読む。ぼんやりと遠方で眠る恋人について考える。ネットでひたすらキーワードの連鎖を辿って彷徨う。夜更かしの友人と、とりとめのないチャットをする。ひとり酔いつぶれる。ブログの草稿を書く。あるいは・・・音楽を作る。
アウル・シティーは、アダム・ヤングのプロジェクト。彼が「洞窟」と呼ぶ両親の家の地下室で、眠れない夜に曲を作り、MySpaceなどネットのコミュニティを通じて楽曲を発表してファンを増やしてきたそうです。
ベッドルームミュージックという言葉をかつて聞いたことがあります。要するに自宅録音(宅録)なのですが、自分の寝室に機材を持ち込んで、そこで多重録音をして、ドラムマシーンやシーケンサーによるシンセサイザーの打ち込みはもちろん、ギターやベースも弾いてボーカルパートを歌って、ひとりで音楽を作ってしまう。トッド・ラングレンも自宅で曲を作っていました。
そして現在、インディーズやアマチュアのアーティストの地下活動(アダム・ヤングの場合はまさに地下室なので地下なんだけれど)からヒットが生まれる時代になりました。日本でいえば、まつきあゆむさんが注目を集めています。
不眠症から生まれた音楽。だからこそプロジェクトにOWL(ふくろう)という夜行性動物の名前を付けたのでしょう。けれどもふくろうは、叡智をつかさどる鳥でもあります。村上春樹さんの『1Q84』にも出てきたっけ。睡眠障害から地下室で作られた作品にもかかわらず、アウル・シティーの曲は湿ったところがない。夜の暗さを感じさせません。むしろ底抜けに明るい。そして洗練されています。
ぼくが曲調からイメージしたのは、エレクトリック・ポップという意味ではペット・ショップ・ボーイズ、鼻にかかった甘ったるいボーカルでは初期のタヒチ80、あるいはアクアラングというアーティストたちでした。けれどもそんなアーティストたちと類似の枠で括れないほど、突き抜けた明るさがあると感じています。
アウル・シティーのアルバムを試聴したのは3月の終わり頃。某地方のCDショップで、パワープッシュされていました。インディーズで紙ジャケットの安っぽいアルバムなのに、「このアルバムを試聴したひとは、そのままレジに持っていって購入する確率が高い」というような扇動的なPOPが立っていました。確かに試聴したところ、おお、これは買いかも!とおもったのですが、そのときは小遣いと相談して断念。その後、やはり諦めきれずに購入することになりました。
癒される・・・ということばはよく使われます。けれども、ひとによっては何に癒されるか違う。大自然のなかで新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込んで癒されることもあれば、都会のビル群にある最上階のバーで夜景を眺めながら癒されることもあります。生音もいいけれど、ぼくはアウル・シティーのきらきらしたエレクトロ・ポップに癒されました。電子音なのだけれど、かすかに懐かしい。
全体的に捨て曲がありません。つまりぼくにとっては嫌いな曲が1曲もない。聴きはじめると最後まで一気に聴いてしまいます。特に好きな曲は、まず1曲目「CAVE IN」。フィルターをかけたラジオ風の加工から一気に音が立ち上がるところは、エレクトロニカ的なわくわく感をそそります。2曲目「THE BIRD AND THE WORM」は「~鳥さん、虫さん」という邦題のフォローがついていますが、なんとなく可愛い歌詞。
4曲目「UMBRELLA BEACH」は、ペットショップ・ボーイズを思い出しました。この曲好きです。全体の構想のメリハリ、間奏以降の疾走感。そして途中で、録音では生音なのかサンプリングなのかわかりませんが、弦の音が入るのが素敵です(波の音も入っています)。YouTubeから。
■Owl City - Umbrella Beach
7曲目「METEOR SHOWER」は静かなはじまりからスケールが大きくなる展開。また11曲目「VANILLA TWILIGHT」はロマンティックな曲で、2ndシングルだそうです。次の「TIDAL WAVE」および「HOT AIR BALLOON」のアコギのカッティングも気持ちいい。
ライナーノーツに引用されている彼のことばで、共感と尊敬をもって読んだのは次の部分でした。中学時代にギターを弾くことを覚えたのだけれど「一人っ子で、ひっこみじあんだった彼」はバンドを組まずに、プログラミングやシーケンサーを使って曲を作りはじめます。
「ギターを極めるよりもコンピューターに興味が向かったのは、ソロ・アーティストとして最小限のもので最大限のことができるからさ。それにミュージック・シーンなんてないオワトナではライヴを観る機会もなかった。だから、アーティストとは何をするものなのか、僕は自分なりに考えるしかなかったんだ。誰かに憧れてやりはじめたわけではないんだよ。だけど、オワトナの環境は僕の音楽から伝わる素朴さを保つ上で役立っていると思う。醜いものには、あまり触れずに生きてこられたからね(笑)」
ある意味、純粋培養で自分の音楽を育ててきたわけです。情報に溢れている場所は便利であり、刺激にもなるのですが、氾濫した情報に惑わされてかえって自分を失うことがあります。彼の音楽に流れる素直さのようなものは、逆に既存の枠を離れた独創的なものにも感じられます。
YouTubeにはいくつかのライブ映像(アマチュアがビデオカメラで撮影したものでしょう)が投稿されていたのですが、かっこいいなーとおもったのは全米No.1シングルにもなった「FIREFLIES」です。引用します。
■Owl City - Live X - "Fireflies"
編成はギター+ボーカルのアダム・ヤングに、ドラムス、コーラス+キーボード、ストリングス×2というベースレスの編成です。打ち込みと同期させているのだとおもいますが、弦が入っているところがユニークに感じられました。ファイアーフライズは故郷のホタルをイメージしたとのこと。
眠れぬ夜に地下室における宅録から生まれた音楽だそうですが、ヒットしても純朴さを失わないでいてほしいとおもいます。今後に期待しています。
+++++
■MySpace
http://www.myspace.com/owlcity
投稿者 birdwing : 2010年5月 9日 13:25
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