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2005年11月11日

こころに残る。

フリーペーパーが好きです。特にR25はかかさず毎週読んでいるのだけれど、今回のNo.68号では石田衣良さんの連載エッセイ「空は、今日も、青いか?」で、ジャズ・タクシーの話が書いてあって、ちょっとじーんときました*1

実はR25を持って帰ろうとして会社に忘れてしまったので思い出しながら書いているのですが、ジャズタクシーというのは、真空管アンプを搭載して、ジャズのレコードをがんがんかけながら走る名物タクシーのこと。何かのニュースでぼくも実物をみたことがある。そもそも運転手さんの趣味ではじめたのが、かなり引き合いも多いらしい。特に、定年退職をする上司の送別会で、花束を抱えた上司をそのタクシーに乗せてあげるそうです。びっくりしているおじさんに、JAZZ好きなあなたのために部下のみなさんからの贈り物なんですよ、と運転手さんが教えてあげると、定年退職のおじさんは男泣きに泣くそうだ。そりゃ泣けるだろう。ぼくだって書いていてなんだか泣けてきた。というか涙腺弱いのですが。きっとその日のことは、いつまでもこころに残ると思います。

石田衣良さんのIWGPは、ドラマはDVDを借りて全部みたのだけれど、小説はまだ全部を読んでいません。そのなかに「ワルツ・フォー・デビー」という作品があるらしい。ワルツ・フォー・デビーというのは、有名なビル・エヴァンスのアルバムおよび曲で、ぼくが最初に買ったジャズのレコードでもあります。もうはるかな昔のことで(遠い目)うろ覚えなのだれども、逗子に住んでいるちょっとおしゃれな友人と、学生時代に渋谷のタワーレコードに行ったときに、これいいよ、これぜったいにぴったりだから聴きなよ、と勧められて買った輸入版のレコードでした。半信半疑で持ち帰って家で聴いてみると、まさにぼくにぴったり。めちゃめちゃはまった。その時期、朝起きると一度、学校やアルバイトから帰ってくると寝るまでずっと、ワルツ・フォー・デビーを聴きながら暮らしたものです。たぶん、いま家にはレコードが1枚、CDが2枚あるはず。

もちろんビル・エヴァンスのピアノもやさしくていいのだけど、スコット・ラファロのベースがよい。奔放というか、メロディアスというか。とはいえ、ジャズを聴くひとにとっては、このアルバムは若葉マーク的、というか入門編ではないかと思います。残念ながらぼくはあまりジャズには詳しくありません。ただ、学生のときに逗子在住のおしゃれな彼に教えてもらったビル・エヴァンスとチェット・ベイカーに関しては、いまでも時々聴くことがあります。彼らの曲を聴くと、学生時代のおんぼろなアパートと、リサイクルで1万5000円で買ったステレオの音を思い出します。

さらにジャズベースで連想したのですが、ぼくがかっこいいと思ったのは、かなり前にラガーのCM「カンパイ!ラガー」で、いまは亡き、いかりや長介さんがエレキのアップライト・ベース(BSX)を弾いてたシーン。曲はベイ・シティ・ローラーズのサタデイ・ナイトです(これもまた懐かしい)。かっこよかったなあ。一時期キリンのサイトで公開されていたのですが、もう公開されていないのでしょうか。CMの動画ファイルがないか、必死で探しているんですが、みつからない。でも、あるブログでちょっとみつけた。かっこいいなあ。みつからないのだけど、たくさんのブログで「あのCMはよかった」という風に語られている。

ベーシストらしい存在感、というのが、いかりやさんにはある。親指でばしばし弾く、「いかりや弾き」という個性的な奏法は当時話題にもなっていたようですが、物静かなんだけど頼りになって、しかも時には情熱があるという人徳がまず大きい。年齢を重ねるにしたがって、そんな人徳を身につけていきたいものです。ぼくは社会人になってからバンドをやっていたことがあるのですが、ベース担当で、そのときに10年後には、アップライト・ベースを買う、弾けるようになる、と言っていたことを思い出しました。そのままになっているのですが。ちょっとまたはじめてみようか、と思ったりして。

一方でプロモーションの視点、ブランディングの視点から考えると、ぼくらはそんなCMを見たいですよね。そうして、なんだかむしょうにラガーが飲みたくなってくる。ラガーの6缶を買うと、いかりやバージョンのCDがもらえたらしい(いいなあ)。もちろんビールを売りまくることが大事なのかもしれませんが、いかりやさんのかっこいい姿は、ずーっとみんな忘れない。それがもとでベースをまた弾きはじめたなんてブログもありました。

秋だからでしょうか。亡きひとを思ったり、過去の日々を懐古したり。ちょっと湿っぽくなってしまいましたが、そんなときもある、ということで。

ついでに、亡きひとについて、思い出だけでなく遺伝子情報を残す、という試みもあるようです。亡くなったひとのDNAを木に注入し、その木を生きた墓標とする、とのこと。HOTWIREDの記事「故人のDNAを含む木を「生きた墓標」に」を読んで、すごいことになっているなあ、と驚きました。

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■現在のラガーのサイト。「人は、人を思う」というコピーで、やはり人と人のあたたかいつながりをテーマに、ビールのある風景を訴求しているようです。


http://www.kirin.co.jp/brands/RL/


*1:じーんときたことはジャズ・タクシーのほかにもあって、仕事がつらい、おもしろくないといいがちだが、ほんとうにそうだろうか、と石田衣良さんは書いている。ジャズ・タクシーのように、自分のやりかたで演出し、自分もお客さんも楽しくすることが大事じゃないか、と。先日の日記にも書いたけれど、ぼくもこの考え方に全面的に賛成です。

投稿者 birdwing : 2005年11月11日 00:00

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