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2006年3月26日
クライマックスについて。
映画も小説も同じですが、たぶんこのあとにクライマックスだな、と想像しながらストーリーを追うことがあります。ぼーっとスクリーンを眺めながらも、なんとなくいままで観た部分を整理したり、先読みをして主人公がこれからどうなるのか、などをあれこれ考えているものです。
たいてい起承転結型のパターンにあてはめて、その枠組みのなかで展開を考えている。そして、起承転結パターンの場合には、転・結という後半部分がヤマになる。しかしながら最後が、起承転結・結・結のように2回ぐらいどんでん返しをする映画もたまにあります。予想もしなかったエンディングが用意されていると、かなり感動するものです。シナリオの完成度が高いので、脚本家の勝利ともいえる。結末にひねりが効いた作品はネタばれになってしまうので、レビューなどでは結末を書かないことが暗黙のルールだったりもします。逆に思わせぶりな伏線をはっておきながら何も起きない映画には、肩すかしをくらわされたような感じがして不満も残る。
一方で、淡々としてヤマのない映画もあります。個人的にはそういう映画も好きなのですが、一般的にはあまり盛り上がりに欠けるような映画は好まれないのかもしれません。確かにエンターテイメント系の映画であれば特に、日常生活にはないスリルなどを求めているわけなので、あまりにも日常的な日々がスクリーンのなかで繰り返されると眠くなってしまう。別に観なくてもいいや、ということになる。
このクライマックスを求める気持ちはなんだろうか、ということを考えていました。それがひょっとすると物語に対する渇望のようなものかもしれない。一方で、何も起こらない淡々とした映像を好むのは、アンチ物語的というか、一種の詩的な広がりを好むことなのかもしれません。
小説でいうと、ぼくは保坂和志さんの小説に傾倒したことがあるのですが、保坂さんの書く小説はみごとに何も起こらない小説です。しかしそのまったりとした日常的な世界に漂っていると、妙に居心地がいいものがある。海外では、ジャン=フィリップ トゥーサンなども飄々としている文章なんだけど、クライマックスがあるようでないような小説だと思います。これもぼくが好きな作家で、「カメラ」「ムッシュー」などは文庫になっていた気がしました。紀伊国屋書店で購入した「愛しあう」はサイン本だったりします。来日したときのサイン本らしく、サイン会場に行きたかったなと後で思いました。
広告もそうですが、一般的に世のなかというものは物語的に生きることを提案していることが多い。知らず知らずのうちに誰かの提案している物語に絡め取られてしまっていることがあります。ここでいう物語というのは、スタイルという言葉に近いでしょう。ぼくらは社会人の物語(スタイル)であったり、子供を持つ父親の物語(スタイル)というひな形を借りて日常生活を送るのですが、自分のオリジナルストーリーだと思っていることが、ステレオタイプのありきたりな常識の物語だったりもします。常識でかまわないけれども、常識の物語はスクウェアなので肩が凝る。
ところで、自分のなかにある展開パターンというのはかなりがっちりとしたもので、その枠を壊すのはなかなか難しいものです。若い頃には融通も利くかもしれないけれど、パターンをわざわざ壊すのは面倒だし力も必要なので、古いパターンでまあいいか、ということになってきます。
久し振りに趣味のDTMに没頭して、3月の初旬頃から中断していた曲を作ってみたのですが、サビの展開を考えようとしたら、どうしても前に作ったことがあるなというサビが出てくる。サビの部分だけ何回も作り直してみるのだけれど、どれも斬新な何かに欠けていて納得ができません。困ったなあ、という感じです。
そのときにいろいろと考えたところ、そもそもサビって必要なのか、ということが頭に浮かんだ。サビというのは曲のクライマックス的な部分ですが、別にクライマックスなんてなくてもいいじゃんと思ったわけです。限りなくアンビエントな方向に向うのかもしれませんが、そういうのもありです。しかしながらぼくは、ポップスを志向したいので、ポップスの場合は覚えやすいメロディで盛り上がる部分というのは必要ではないか、などと考えて、やっぱりサビは必要か、という結論に落ち着いたのですが。
ちなみに曲は80%完成したのですが、3月中に公開できればいいなと思っていますが、気がつくとあと1週間で3月は終わりだったりします。はやいものです。
投稿者 birdwing : 2006年3月26日 00:00
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