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2006年2月 9日

リアルの到達点。

少し前のブログになりますが、渡辺千賀さんのOn Off and Beyondで「作るは困難・使うは簡単-リアルタイム・エンタープライズ」という記事がありました。リアルタイム・エンタープライズという言葉自体は、ERP関連のカンファレンスで耳にしたことがあり、実際に大手メーカーにおける開発事例などの解説を聞いたことがあったのですが、まずは冒頭の一文がよいと思いました。IPOセンサー2006年1月号に掲載したコラムの原稿とのことです。引用します。

シリコンバレーでソフトウェア産業に携わる人たちを見て感心するのは、「地に足の着いたこまごまとした開発」と、「個別の開発を思い切り抽象化した包括的ビジョンの構築」との間を、自在に行ったり来たりする能力だ。アプリケーションの開発は、コードをがりがりと書く仕事。一方で、アーキテクチャをしっかりと作り上げるには、個別の開発から何段階も次元を上げ、高いところから俯瞰する哲学的思考が求められる。そしてその両方を行き来することで技術が進歩する。「現実の泥沼をかき分けて進む力」と、「体系化する力」の両方が求められる、知的力仕事だ。

やっぱりそうなんだなあ、という感じです。

ぼくもまったく同じことを考えていました。ぼくの携わっている仕事はソフトウェアの開発ではないけれども、やはり日々の仕事に埋没すると「高いところから俯瞰する哲学的思考」に欠けます。レンガを延々と運びつづけるようなことになる。かといって、仙人のように形而上的な高みにいても、現場からは浮いてしまう。「現実の泥沼」にはいつくばって進まなければならないのが仕事というものです。

茂木健一郎さんが著作のなかで書いていましたが、結晶化された形而上的な世界と猥雑な現実のふたつの世界を引き受けなければならない、という言葉にも合致しそうですね。彼は「世界知」と「生活知」の2つの視点を提示していますが、どちらか、ではなく、その両方を獲得するところに意味があるはず。もう何度も同じことを繰り返して書いているのですが、それが情報化社会というリアルの生き抜く方法であり、到達すべき生き方ではないでしょうか。

リアルタイム・エンタープライズの最終的な到達点は、企業活動の変化がその起業と関わるあらゆるひとに即時的に伝わる、ということかもしれません。渡辺千賀さんは「10分後の空席状況まで「リアルタイム」にわかる」OpenTableというレストラン予約サイトのサービスを例に挙げていますが、ぼくがカンファレンスなどで聞いたことは経営者が時々刻々と変わっていく経営情報を把握する、というようなテーマだったかと思います。変化の激しい社会だけに、リアルタイムでチャンスをつかむことが大事なのでしょう。しかし、それだけ情報も増えるということであり、ちょっとへとへとになりそうな気もします。

「概念は難しいがアプリケーションは使いやすい」という視点もOn Off and Beyondのなかでは論じられていますが、サービスが実用化されるためにはシンプルであることも重要です。たとえば、CMS(Contents Management System)という概念のまま進んでいたら、ブログはこれほど爆発的に広がっていなかったかもしれません。HTMLを知らなくても書きたいことを簡単にWebサイトで公開できちゃうんだ、という使いやすさがあったからこそ普及したのだと思います。技術や創造的なことが広がるためには、包括的ビジョンだけでは難しい。

ところで、別の観点からのリアルですが、趣味のDTMのお話です。昨年末に購入したRealGuitarが1.5から2.0にアップグレードしたというメールをいただきました。英文でした。お知らせとレジストレーション・キーが添付されているメールと、いきなり何の予告もなく2通の英文メールがぼくのところに届いたので、あわててクリプトン・フューチャー・メディアのサイトを探したのですが、残念ながらリアルタイムでアップデートの告知はされていなかったようです。告知されていたのかもしれませんが、ぼくは探すことができませんでした。

とはいえそんなに難解なメールではなかったし、むしろ英文の方がわかりやすい気がしました。テクニカルな文章は英語の方がわかりやすい。まずはデモンストレーションのビデオを観たのですが、これがすごいことになっていた。そこで、さっそくアップデータをダウンロードして、2.0にバージョンアップしてみました。

技術の進化というのは、すごいなあと思いました。どこまでリアルになっていくのでしょうか、Real Guitar。これはほんとうにびっくりします。先日「新しい日々。」という曲でこつこつアップストロークやダウンストロークなどを打ち込んでいたのですが、パターンという機能も付加されることによって、プリセットで、じゃんじゃかだったり、つくちゃかだったり、弾き方を簡単に変えられるようになっていました。とはいえ、使いこなしにはますます時間がかかりそうです。技術の進歩にクリエイティブな力がついていけません。

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■Real Guitar2.0のビデオによるデモを観ることができるサイト(英文)。 ビデオを観るためにはDivX(5.2.1以上)が必要のようです。イーグルス、クラプトンの名曲を思わせるデモ曲が聴けてニヤリです。映像なしで聴いてもリアルなギターと遜色ありません。
http://www.musiclab.com/downloads/listen/

投稿者 birdwing : 2006年2月 9日 00:00

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