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2006年3月28日
「書きたがる脳 言語と創造性の科学」アリス・W・フラハティ
▼book06-022:病と天才のあいだで。
書きたがる脳 言語と創造性の科学 吉田 利子 ランダムハウス講談社 2006-02-03 by G-Tools |
書かずにいられないハイパーグラフィアと書きたいのに書けないライターズブロックという病を中心に、自ら子供を失ったときに精神病を患って入院した経験のある神経科医の著者が、痛々しいまでの文章を書き綴った本です。引用されたさまざまな文章とプライベートな体験が織り成された、とてつもなく危険な書物といえるかもしれません。真面目に書かれたことを受け止めようとすると、かなりアブナイ。
インスピレーションに関する記述もありますが、天才のひらめきと精神病はほんとうに紙一重にあると思います。というぼくも、深夜に曲を作ったり文章を書いていたりすると、神様が降りてきた、という感覚を味わうことがある。わかるひとにはわかるのかもしれませんが、その快楽は異常なほどです。時間の感覚も吹き飛んでしまう。もちろん朝になって聴きなおしたり読みなおしてみるとがっかりすることが多いのだけど、あれはいったいなんだったんだろう、と思うことがあります。と、同時に、何かそれは触れてはいけないもののようにも思える。その触れてはいけないものに挑んでいる著者はすごい。
とはいえ、率直な感想を書くとすれば、周辺(辺縁)をめぐる表現に終始している感じもあり、いまひとつぐぐっと本質に突っ込んでいないような印象も受けました。大量の文章を書いているのだけれど、真理の深みは意識的に回避しているような感じもあります。一方で茂木健一郎さんの文章は短いけれど、真理に踏み込んでいる印象がある。あくまでもぼくの私見ですが。
苦しいとき、行き詰っているときに生き生きとした文章が生まれる、というのは非常にわかります。作家というのは、ある程度病んでいないと、才能を発揮できないものなのでしょうか。モーツァルトだって変質的な言葉を使った曲も作っているようなので、ひょっとしたら病んでいたのかもしれない。ビョーキの崖っぷちの手前で立ち止まって、現実と仮想の世界の両方を引き受けることができるといいのですが。3月28日読了。
*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(22/100冊+26/100本)
投稿者 birdwing : 2006年3月28日 00:00
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