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2006年3月22日

質より量のアーカイブ。

時間軸に沿ってコンテンツや作品が生成するとき、生成のスピードが止まって成熟すると、時間軸という縦の方向のベクトルから今度は空間的な横の方向へ並列して俯瞰するようになる、というアイディアを昨日考えてみました。と、書いてしまうと理屈っぽいのですが、息子のウルトラマンの楽しみ方からヒントを得たアイディアです。その考えをさらにすすめてみたのですが、情報というのは鮮度やクオリティも重要だけれど、圧倒的な量も重要になるのではないでしょうか。つまりひとつのキラーコンテンツより、高レベルや低レベルを含めて雑多だけれど大量のアーカイブのほうが優れている、という仮説です。

かなり前になりますが、あるWeb系のセミナーで、コンテンツの構造は三角形のツリー構造よりも逆三角形の構造として考えた方がいい、というようなことが提示されていました。通常は、トップページから必要なページを辿るような構造になっているけれど、SEOが進むと、検索エンジンによってダイレクトに検索結果に表示されたページをクリックするようになる。したがって、コンテンツの下位に存在する個々のページが、訪問者が最初に訪れるページになるということです。つまり企業のサイトであれば、企業名や全体像をあらわしたコンテンツよりも、製品やキーワード解説などのページをダイレクトにみることもある。業界用語集やFAQなどを備えたサイトも多くありますが、それも多様な網を投げておくという意味ではよいのではないでしょうか。

ブログに関してもそうですが、引用元(リファラー)をみると、必ずしも最新のページのキーワードから訪問しているわけではないようです。過去に書いた記事のキーワードからページにやってきているひとも多い。ぼくのブログでも、本文で展開しているテーマとは関係なく、年間本100冊+映画100本というパーソナルプロジェクトを進行中で、そのレビューをコラム的に挿入しているのですが、そちらをみていただいて、あらためて本文に関心をもっていただくような方も多いようです。そんな風にして、引き出しが多いことが訪問者を増やすきっかけづくりには効果的かもしれません。ただし、あまりにも関係のない引き出しを作ってしまうと、そのサイトの文脈とはかけ離れた趣向のひとが集まってしまう。キーワードの区切り方にも影響するかもしれませんが、たとえば「プロモーション」の「プロ」のところで検索してやってくる専門的な知識を求めている方もいるわけです。それはそれで偶然の出会いがあって面白いのですが。

この偶然の出会いというのが、茂木健一郎さんの著作にもよく出てくるセレンディピティと呼ばれるものでしょう。コンテンツの量を増やせば、セレンディピティも増える。きっかけとしてやってくるひとは点としてのページを閲覧する訪問者であっても、その訪問先に満足したり関心を持てば、別のコンテンツを読むようになります。ということは、量を増やせといっても実は次のページを読ませるためのクオリティの充実も求められるわけで、ひとつひとつのコンテンツについて手を抜くことはできない。とはいえ、情報発信者が設計や意図をしなかった偶然が生まれることが、インターネットの面白さでもあります(設計や意図しなかった問題が生まれることもありますけれど)。

企業のサイトに関していうと、量を増やそうといってもなかなか難しいこともあります。しかし、歴史のある会社であれば、過去に蓄積してきた経緯というのは十分にコンテンツになり得る気がします。一般に略歴のようなかたちで年表化してしまうことが多いようですが、それぞれの時代にやってきたことを個別のコンテンツとして成立させると、それだけで量は充実する。新しいものばかりに目がいきがちですが、古い情報のアーカイブもひょっとすると新しい情報以上に重宝されるかもしれません。

企業や個人のどちらにおいても、つらかった時代、失敗した時代があるものです。そのときの情報を掲載しておくことによって弱みにつけこまれるような場合もあり、あえて掲載しない判断もあるかもしれません。しかし、そのマイナス面から逆に共感を得られることもあります。BtoBのコミュニケーションについてはまた別途考察したいと思っているのですが、法人と個人は異なる部分もあり、一概にすべて掲載すればよいわけではありません。といっても、よい情報だけでなくあまりよくない情報も網羅すること、構造的に完璧なものではなくて遊びの部分が残っていること、つまり量が豊富といっても画一的な内容ではなく多様性に富んでいることが重要ではないか、と考えました。

個人的に趣味でmuzieでDTMによって制作した音楽を公開しているのですが、コンテンツが一定量を超えたときに、過去の作品についてのダウンロードも増えてきました。あっちはいいけどこっちはいまいちだな、のように比較できることが、訪問者の楽しみを増やすのではないでしょうか。よく言われることですが、価格.comなどの比較サイトも情報に辿り付くまでの楽しみを提供しています。そのためには、やはり比較対象が大量である必要があり、その大量の情報からみつけだすことが重要です。これは息子のトレーディングカードをみていても感じられることです。レアカードも大事だけれど、それ一枚を持っているより、たくさんの種類を組み合わせたりして遊ぶほうが楽しそうです。

ダイバーシティ(多様性)という言葉を取り上げて、組織のなかの多様性の容認について以前書いてみたことがありますが、自分のなかの多様性というのはなかなか難しいものです。アイデンティティというように、統合されていることがよいと思われているのですが、キラーコンテンツ的な売りがなかったとしても、なんだかとりとめもないけど面白そう、という方向性も十分に個性になる気がしました。

投稿者 birdwing : 2006年3月22日 00:00

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