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2006年8月19日
「海のふた」よしもとばなな
▼book06-058:絵本のような、けれども現実的な。
海のふた (中公文庫) 中央公論新社 2006-06 by G-Tools |
よしもとばななさんの作品は、人物や情景の設定がマンガ的だと思うのだけど、なんとなくそう思って読んでいると神秘的な何かにがーんととばされて、ぼくの場合、困惑と衝撃を受けることが多いようです。西伊豆の実家でかき氷屋をやっている主人公のところに、顔にやけどの痣が残る「はじめちゃん」という女性がやってくる。彼女は、祖母を亡くしてその遺産相続などの人間関係に疲れ果てているのだけど、ふたりで夏を過ごすうちに、お互いに人生で大切なものは何かということを見つめなおす、というストーリーです。スローライフというか、ロハス的な内容でもあり、けれども立ち直ってインターネットで自分の場所を確立しようとする「はじめちゃん」が今風でもあり、不思議なファンタジーでありながら現実でもある不確かさが感じられます。ただ、人間の醜さに目をつぶるのではなく、地域も自分も変わってしまうことをよしとすることが、きちんと生きていくためには大切なことかもしれないな、と思った一冊です。名嘉睦稔さんの版画26点が挿画として掲載されていて、この版画は文庫ではなくもう少し大きなサイズでみたいと思いました。8月15日読了。
*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(58/100冊+52/100本)
投稿者 birdwing : 2006年8月19日 00:00
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