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2006年9月 1日

インプット、アウトプット。

旅行中にデジタルカメラが壊れて、札幌のヨドバシカメラで3万円ほどでFinePix V10を購入したのだけど、なんとなく歯ブラシを失くしてしまったからコンビニエンスストアで購入するような感覚がありました。

それまで持っていたデジタルカメラはFinePix F401で、5年ぐらいは使った気がします。以前には、デジタルカメラを購入するにはかなり真剣に悩んだような気もしていて、さらに高級なものだという印象があった。ところが、今回は必要に迫られてということもあるのですが、なんとなくひょいと買ってしまったわけです。

もちろんいまでも10万円以上するデジタル一眼レフについては、そんな風に買えるものではないけれども、それ以外のものはどちらかというと生活必需品に近い。コモディティ(日用品)化しているともいえる。実際に、なんとなく従来から使っていたことと価格帯からFinePixを選んだのですが、乱暴な話をしてしまえば、記録ができれば何でもよかったわけです。

ちょうど読んでいた大前研一さんの「ザ・プロフェッショナル」という本に、この現象に対する答えのような部分があり、興味深いものがありました。写真ファンという一部を除いて、デジタルカメラはパソコンに「入力」するための部品であるということです。以下、引用します(P.106)。

人間の目は三○○万画素以上の画像を識別できません。つまり、それ以上の画素数は無用です。部品としてのデジタルカメラはこのハードルを越えています。もはやデジタルカメラは、プロのカメラマンや愛好家を除いて、ボーナスをはたいて購入するような商品ではなくなってしまいました。アメリカでは使い捨てデジタルカメラが一○ドルで販売されています。一世を風靡した使い捨てカメラという業界も死に瀕しているのです。

携帯電話に付いているカメラも最近では高い画素数になっていますが、やはり用途としては記録もしくはインプットするための「部品」です。そして、インプットという機能はアウトプットとも無関係ではなく、アウトプットがどれだけ高速かつきれいであるかということも関わってくるようです。

フィルムのカメラは写真屋さんに持ち込んで紙で出力しなければならないために、最速でも1時間ぐらいかかるものであり、その時間がもどかしい。一方でデジタルカメラや携帯電話のよさというのは、撮影した画像をその場で画面上でアウトプットして確認できることです。

ブログのよさというのも、キーボードで入力した文字を画面上ですぐに確認できる点にあります。ワープロ以前の時代には、原稿を書いて印刷所に持ち込んで写植屋さんなどが活字を組まなければ、活字という形で確認できませんでした。それがワープロ時代には、すぐにプリントアウトできるようになった。そして、いまではプリントアウトしなくてもネット上の画面で確認できる。もちろんプリントもできますが、画面で確認できれば印刷しなくてもよいという印象もあります。

はてなの編集画面では、「編集」の横に「プレビュー」というタブがあり、作成した内容をすぐに確認できるようになっているのですが、何気ない機能でありながらこれがぼくには結構うれしい機能だったりします。もちろん編集画面の下部には従来どおり、「確認する」というボタンがあるのですが、こちらは編集画面に戻りにくい。完成に近い状態でプレビューする場合には画面下部のボタンを押すのですが、書きながら確認する場合には、タブで切り替えたほうが使いやすい。

ブログのアウトプットといえば通常横書きですが、日本人はやっぱり縦書きでしょ、という感覚もあって、最近みつけて面白いなあと思っていたのは、縦書きブログ「八軒屋南斎」 です。以下はスクリーンショット。

060691_tate.JPG

フォントがいまひとつという気がするのですが、やっぱり日本語のよさは縦書きで発揮されるような気もしていて、横のものを縦にアウトプットするだけで雰囲気はまったく別物です。このような技術の開発は、応援したいですね。あるといいなあ、と思いつつ、なかなかありません。

ところでカメラというカテゴリーで考えると、フィルムカメラとデジタルカメラは競合するように思えますが、実はインプットという視点では、デジタルカメラと競合するのは、キーボードかもしれません。静止画・動画の入力機器と、テキストの入力機器という意味です。ということは、アウトプットで競合するのは、ディスプレイとプリンターになる。

この考え方を基盤とすると、テレビとパソコンは競合ではないともいえます。というのは、テレビはいまのところはインプットできないので。双方向型のテレビになったとしても、たとえばボタンを押して投票して簡易アンケート集計のようなものができるだけでは、まったく競合にならない気がする。

インプットとして競合するのは、デジタルカメラ、ビデオ、キーボード、ペン入力のボード、マイクであり、そして人間の目でしょうか。いまのところデバイスとしてあまりないのが触感、嗅覚のようなものであり、そんな装置もこれから開発されていくのかもしれません。ただ難しいのは、アウトプットがしにくいということでしょう。パソコンからよい匂いが出てきたり、ディスプレイに表示された女性に触れるとやわらかい、というのはちょっと楽しそうですが、パソコンから悪臭が放出されてくさくなったりすると困る。

音声をテキストに置き換えたり、鼻歌をMIDIのデータに置き換えるようなソフトウェアもありましたが、やはり何が問題化というとインプットの問題はもちろん、アウトプットの精度という気もしています。開発者の方としては当然のことかもしれませんが、インプットとアウトプットは別々に考えることではなく、両側面から考えることかもしれない。

映画を観たり小説を読むのも同じであって、知人によかった内容を教えてあげる=アウトプットしたり、ブログにレビューを書くことによって、逆にインプットの幅が広がるような気もしています。たくさんインプットしてもほんのわずかしかアウトプットできないこともあったり、一瞬のひらめきが膨大なテキストを生産することもあるのですが、頭のなかを活性化するためには、バランスよく入力と出力を繰り返すことが必要だと思います。

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■FinePix V10の製品ページ。ほんとうはiフラッシュ搭載の機種がよかったんですけどね。iフラッシュは、フラッシュが届かない暗い背景もきれいに撮れる機能のようです。

http://fujifilm.jp/personal/digitalcamera/finepixv10/index.html

■縦縦書きブログ「八軒屋南斎」。しかしながらこれは単純に横のものを縦にすればいいという問題ではなく、縦書き思考で文章を考える必要があると思います。つまり、横と縦では書く姿勢を変えるべきである、とぼくは思う。こだわりすぎかもしれませんが。

http://www.nansai.net/blog.swf

■鼻歌ミュージシャン2。DTMを趣味としているのですが、ぼくの場合はコード先行が多いので、どうかなという気もします。けれどもソフトウェアという道具を変えると、曲づくりもメロディ先行型に変わるかもしれない。

http://www.medianavi.co.jp/product/hana2/hana2.html

投稿者 birdwing : 2006年9月 1日 00:00

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