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2007年2月 1日

「戦略「脳」を鍛える」御立尚資

▼book07-004:戦略思考のヒントが満載された入門書。

4492554955戦略「脳」を鍛える
東洋経済新報社 2003-11-14

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わかりやすく書かれた文章なので一日で読破しましたが、書かれていること自体は非常に興味深い視点ばかりでした。初版は2003年。けれども時代を超えて読み継がれる内容の本ではないでしょうか。戦略思考を身につけたいひとにはぜひおすすめしたい入門書です。

戦略思考の方式が公式化されているのですが、次のような公式です。

1.ユニークな戦略=定石+インサイト
2.ユニークな戦略=定石+(スピード+レンズ)
3.思考のスピード=(パターン認識+グラフ発想)×シャドウボクシング
4.発想力="拡散"レンズ+"フォーカス"レンズ+"ひねり"レンズ

パターン認識については、コスト系、顧客系、構造系、競争パターン系、組織能力系のそれぞれのコンセプトワードからパターンを認識する方法が示されています。ぼくがなるほどと思ったのは、先人がつくったパターンを事前に知っておくことも重要ですが、とにかくたくさんの事例を経験することによって現場からパターンを構築していく、というような考え方でした。ジェフリー・ムーアの「ライフサイクル・イノベーション」を読んだときには大量の事例に論旨を見失ってしまったのですが、その事例の共通項から公式を見出すことが重要だったのではないか、と思いました。

シャドウボクシングについては、これはまさにぼくは最近心がけていることですが、自分のなかにもうひとりの自分を仮想的に存在させて、まったく逆の視点から脳内会議を開くということです。ひとつの思考に盲目的にとらわれるのはキケンだと考えていて、可能な限りのオプション(選択肢)を考察する。それがどれだけ思いつくことができるか、討議した上で最初の仮説を捨てられる潔さがあるか、ということをぼくはポイントにしています。

BCGのDNAをあらわすスローガンとして「多様性からの連帯」という言葉があるということにも打たれました。外資系の企業なので当然のような気がするのですが、その言葉には同質集団ではいけない、という自戒がある。戦略のエキスパートとしてクライアントから評価を得るためには、異質の人材を投入してチームを組む必要が性がある、という理念をまとめたものだそうです。

その実践として、PNIルールというディスカッションの方法があることにも注目しました。P (ポジティブ)、N(ネガティブ)、I(インタレスティング)の順番で議論を行うそうです。ふつうブレインストーミングというと、肯定的な意見だけ言いましょう、ということを重視していると思うのですが、その後、ネガティブな意見も許容すること、さらに左脳的なロジックではなくて感覚的なI(インタレスティング)についても議論するところが幅広い。これはできそうで、できないことです。というのは、ネガティブな議論をしようとすると、どうしても人格否定になりそうなところがあるし、興味があるという視点でとらえようとすると、感覚でものを言っていないか?という批判もあり得る。特に日本人の会議では、IはともかくとしてNについての議論はしにくいのではないでしょうか。

コンサルティング会社は考えることがサービスであるからこそ、さまざまなナレッジが蓄積されています。学ぶところがとても多い本でした。というか実践しなければ。2月1日読了。

※年間本100冊プロジェクト(4/100冊)

投稿者 birdwing : 2007年2月 1日 00:00

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