« 「ドラッカー名著集1 経営者の条件」P.F.ドラッカー | メイン | i am robot and proud / Catch/Spring Summer Autumn Winter »

2007年2月23日

情報のトリミング、加工の技術。

「リーダーシップ・マネージメント」という本に書かれていた「言葉が世界を分節化する」というキーワードに示唆を得て、さまざまなことを考えています。

ジェームス・W・ヤングやジャック・フォスターなどの本では、新しいアイディアは組み合わせから生まれる、ということが言われています。発想の技術としては古典的なセオリーであり、以前にもブログに書きました。組み合わせだけではなく、分節化から創造的に新しいものを生み出すこともできるということは、考え方のフレームワークとして面白いですね。

しかし、よく考えてみると、A・B・Cという要素で何かが構成されていたとき、A+BとCで文節化されていた何かを、AとB+Cで再編成するということが文節化の切り口を変えるということです。これは組み合わせの方法を変えた、と同じことではないでしょうか。つまり、組み合わせが新しいものを生み出すということ、文節化で世界が変わるという2つの考え方は、表現こそ違うけれども同じアプローチといえるかもしれない。

音楽で考えてみます。専門的な知識はまったくないのですが、小学校程度のシロウトの音楽知識からも、和音の構成を変えると音が変わるということはわかります。たとえば、Cのコード(和音)であるドミソを、ミソドやソドミで弾いたとき、和音としては同じであっても和音から生まれる世界観のようなものはがらりと変化します。単音だけ注目すると音の構成を変えた、ということになるのですが、71鍵のキーボード上で全体を見渡すと、長い鍵盤から別の部分の音を切り取ったということになりそうです。ドミソとミソドは記号的には構成要素は同じであっても、オクターブ上のドと下のドは違う音だからまったく違う和音ともいえなくもない。ギターも高いフレットで押さえたC と低いCのコードは同じであるとはいえ、音はまったく異なります。

写真や映画も同様ですね。写真の場合、トリミング(trimming)といわれるのですが、撮影した写真であっても雑誌や何かにレイアウトするときには、たとえば上部と左部分をカットする、など加工します。まだデジタル化されていない頃には、写真の紙焼き(印画紙)やポジフィルムの上にトレーシングペーパーをかけて、対角線を鉛筆でひいて切り取る部分を指定した後に入稿(印刷会社に入れること)したものです。いまはDTP(デスクトップパブリッシング)なので、マッキントッシュの画面上で簡単にできることかもしれませんが。

トリミングで思い出してしまったのですが、「ブレードランナー」という映画でハリソン・フォードの演じるデッカードが、自宅で写真をチェックするシーンがありました。この機器が音声対応で、もっと右、拡大、などと声で指示すると、ぴっぴっぴっという感じで写真が大きくなったりトリミングされたりする。あのビューワーが印象的で、パソコンも完全に音声で指示ができるようになるといいのに、と思ったりしました。

YouTubeで検索したところ、やっとみつけました。以下の映像は、勝手に編集してしまっているので若干困ったものなのですが(いずれ消えるかも)、カウンターの残り50秒あたりのシーンでそのビューワーが出てきます。一瞬だけですが。

■Sushi Master in BLADE RUNNER

日本語を話す屋台のおじさんのシーンと「ふたつで充分ですよ」という台詞はぼくも気に入っています。英語と日本語でコミュニケーションしているのも、不思議な世界です。しかしながら、Sushi Masterなんでしょうか。うどん屋だと思っていたんだけど。でも、なんだか笑える。シリアスな映画も編集次第ではコメディになっちゃいますね(笑)。

映画も編集が重要です。フィルムのどこを切り取るか、どこをつなぐかということが重要になる。だからディレクターズカットのように、採用されなかったシーンが加えられた別テイクの映像が存在する映画も多い。「ブレードランナー」にもあります。現像したテープを切り貼りしていた時代は遠い昔のことで、いまはノンリニアでハードディスク上で加工が簡単になったようです。しかしながら、それ以上の技術も発展しているので、逆に情報を加工する時間はかかっているのではないかとも思います。

というわけで、とりとめがなくなってしまいましたが、情報が氾濫するネット社会では、音楽や写真や映画だけでなく、情報を切り取ること、情報のトリミングも重要になってきます。

ブログで何気なく使っている引用という手法も、切り取る技術だと思います。あるいは、切り取ってコラージュする技術、スクラップする技術でしょうか。紙になった書籍や新聞にしても、ネット上のブログの記事にしても、切り取って組み合わせて、そこにさらに自分の意見を加えることで自分のエントリーとして表現している。情報編集の技術が求められます。

情報の切り取り、つまりフィルタリングを自動化するのが先日も書いたYahoo! Pipesなのかもしれませんが、フィルタリングされた情報を2次元もしくは3次元的にみせることで、まったく別の見せ方も可能になっていく。

そんなことを考えていて、面白そうだと思ったのが「Kizasiお出かけマップ」でした。

■Kizasiお出かけマップ
http://odekake.kizasi.jp/tokyo/
http://odekake.kizasi.jp/sizuoka/

KIZASIといえば、ブログの頻出ワードをランキング化し、トレンドをグラフでみることができるサービスとして注目していたのですが、これは地図という情報と組み合わせて、現在、最も多くのブログで語られている場所を地図上にプロットするとともに、その頻度を赤い円の広がりや濃さで視覚化するサービスのようです。現在のところ梅関連あるいは河津桜の記事が多いようです。これからお花見のシーズンになると、各地の情報をブログから知ることができていいのでは。

もちろんブログ検索などを使ってダイレクトに情報を得る手段もありますが、地図上に配置されているとわかりやすい。ソース(情報源)は同じであっても、見せ方によってずいぶん変わるものです。現在は東京と静岡だけのようですが、広範囲にフォローしていただけるといいですね。

天気は不安定ですが、そろそろ春の気配。お出かけしたくなる季節です。河津桜の原木がある伊豆の河津町はぼくが生まれたふるさとに近い場所であり、河津桜の便りを読みながら、なんとなく懐かしい気持ちになりました。

投稿者 birdwing : 2007年2月23日 00:00

« 「ドラッカー名著集1 経営者の条件」P.F.ドラッカー | メイン | i am robot and proud / Catch/Spring Summer Autumn Winter »


トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://birdwing.sakura.ne.jp/mt/mt-tb.cgi/288