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2007年2月22日

「ドラッカー名著集1 経営者の条件」P.F.ドラッカー

▼book006:ふつうに語られる言葉に内包される叡智。

4478300747ドラッカー名著集1 経営者の条件
P.F.ドラッカー
ダイヤモンド社 2006-11-10

by G-Tools

新しいものを追いつづけることも必要ですが、古典的な叡智を学ぶことも必要ではないかと考えています。新しいトレンドは時代の波に埋もれて消え去ってしまうものも多いものです。Web2.0という言葉がどんなに注目されていても、あと10年後に、ああそんな言葉もあったっけ、と懐かしがられる程度にしかならないかもしれません(逆に、その言葉が分岐点だったと重要になるかもしれませんが)。

昨年、「ドラッカーの遺言」という本を読み、そこで使われている言葉の優しさにぼくは打たれました。そして、彼がナチスドイツの台頭による世界のかなしみを救うために「考える人」となった経歴を知り、ドラッカーの本を時間をかけて全部読破しようと決めました。ちょうどいい時期でエターナルコレクションという名著集が昨年11月から刊行されていたので、第1巻から読んでいくつもりです。

この本のなかでドラッカーはとりわけ難しい言葉も使わなければ、特異なことも語っていません。だからきっと退屈な本に思うひともいるでしょう。正直なところ、ぼくも途中で何度か眠くなりました(苦笑)。でも、さりげない言葉のなかに、はっとするような発想が潜んでいる。その発想は研ぎ澄まされているというよりも、思考のツボを押されるというかエッセンスのようなものです。ぼくの勝手な印象ですが、谷川俊太郎さんの詩はやさしいけれども深い真理を突いているように思います。それに近い感じ。

たとえば、すべての人間がエグゼクティブになれるということ。エグゼクティブとは「できる人」を指すようですが、才能や人格で決まるのであれば、夢も希望も持てません。けれども、思考や習慣を変えることによってどんな人間もエグゼクティブになれる、というドラッカーの提言は元気を与えてくれます。

さりげないけれども鋭い視点は、次のような部分にも感じられました(P.192)。正しい意思決定についての考察です。


意思決定についての文献のほとんどが、まず事実を探せという。だが、成果をあげるものは事実からはスタートできないことを知っている。誰もが自分の意見からスタートする。しかし、意見は未検証の仮説にすぎず、したがって現実に検証されなければならない。そもそも何が事実であるかを確定するには、有意性の基準、特に評価の基準についての決定が必要である。これが成果をあげる決定の要であり、通常最も判断の分かれるところである。

ドラッカーは、成果をあげることを第一に考えています。成果とは組織に対する貢献であり、そのための最善な方法を突き詰めていく。次のようにつづきます。

したがって、成果をあげる決定は、決定についての文献の多くが説いているような事実についての合意からスタートすることはない。正しい決定は、共通の理解と、対立する意見、競合する選択肢をめぐる検討から生まれる。
最初に事実を把握することはできない。有意性の基準がなければ事実というものがありえない。事象そのものは事実ではない。

これは重要ですね。たいてい、「市場がそうなっているから決定する」という風に事実が決定のための要因になる。データを引用することも多い。しかしながら、ドラッカーが重視しているのは、「意見」であり、それもオプションをいくつも考察した「対立する意見」を重視しているわけです。

そもそも日本的な環境では、対立する意見を出しにくい(苦笑)。対立意見を出すと、逆切れされて感情的に排除されたりもするわけです。それは成熟したビジネスといえるのかどうか・・・。つまりビジネスの成果を出そうとするのであれば、とことんさまざまな角度から検証しなければならない。まだこんな考え方もできるのではないか、いやこういう場合もあり得るのではないか、と想像できる限りのオプションを検討することが重要です。これに決まったからこれで、というマネジメントは一見潔く思えますが、マネジメントではない。

ドラッカーの言葉にはじわじわと効いてくる重みのある提言が多いのですが、また折にふれ、読み直しながら考えていきたいと思っています。2月14日読了。

※年間本100冊プロジェクト(6/100冊)

投稿者 birdwing : 2007年2月22日 00:00

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