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2008年10月19日

[DTM作品] あき、星空のもとで。

ぼくの窓の向こうには星空があります。といっても部屋の窓の向こうではなくて、PCの液晶という"窓"の向こうです。

デスクトップの壁紙を星空のイラストに変えました。昼なのに夜の風景なので少し違和感もあるのですが、ダークブルーの配色が好みということもあり、満天の星空が気に入っています。遥かな宇宙に想いを馳せながら、遠い気持ちになれる。ときどき地上のぼくの部屋に戻れなくなってしまうのが困るのですが。

ぼくの田舎では周囲に家がない山奥ということもあって、冬の夜になると吸い込まれるような星空でした。正月に近所の神社におまいりに行った帰りに星空をよく眺めたものですが、天の川の細かい星のひとつひとつまでわかる。こういうときに田舎はいいなあと思う。ところが東京育ちの息子たちにはどうでもいいことらしく、なんだか怖いとのこと。確かに無数の星で埋め尽くされた星空を眺めていると、自分のちっぽけな存在をあらためて感じて怖くなります。

そんな星空の曲を、趣味のDTMで作ってみたいと思いました。先日、休日の空について曲を作ったばかりですが、こんどは夜の空の曲です。創作の限界というか、曲調はあまり変わっていないことに壁を感じてもいますが、空をテーマにすると似てしまうようです。

久し振りにDTM三昧の休日を過ごしたのですが、ブログで公開します。タイトルは「あき、星空のもとで。」としました。


■あき、星空のもとで。 (3分18秒 4.52MB 192kbps)

作曲・プログラミング:BirdWing


今回も全部打ち込みです。いろんな制作手法を経由して打ち込みに戻ってきたのですが、以前とは違った感覚を感じています。それが何かはうまく言えないのだけれど、打ち込みについての意識が変わりました。

利用したソフトウェアシンセは、SONAR付属のTTS-1のみ。ところでこのSONARですが、ついにバージョン8が出るというDMを先日いただきました。ぼくのSONARはいまだに5です(涙)。PCも新調して音楽制作環境を整えたいのですが先立つものがなくて断念しています。理想としては、音楽環境はMACにしたい。やはりリンゴのマークが付いているパソコンはかっこいいと思います。

星空をどのような音で表現するか。これが今回の大きなテーマだったのですが、ひとつはディレイを効かせたエレピなどのシークエンスでした。そしてもうひとつはチェロ、もしくは弦によるクラシカルな音です。あまり大きなオーケストラという感じではなく、弦楽四重奏あるいはバッハの平均律のようなシンプルな感じにしたいと思いました。室内楽のイメージです。

途中、弦のアレンジでクラシックなアプローチをしていますが、なんとなくテクノの奇才であるエイフィックス・ツインなどを思い出したりもしました。彼のように才能もなく、ぶっとんでもいない自分は、どちらかというとオーソドックスな編曲になっていると思います。クラシックのアプローチは、うまくやらないと陳腐になります。編曲のセンスが試されるところであり、要注意です。

ところで、星空がみえない東京で星を眺めるには、プラネタリウムという人工的な施設があります。ぼくはこのプラネタリウムが好きで、渋谷にあった五島プラネタリウムや池袋のサンシャインなど、よく通ったものでした。最近では、500万個の星を投影するMEGASTAR-Ⅱというものすごいプラネタリウムが話題になりました。このプラネタリウムを作った大平貴之さんという技術者が日本にいて、彼のことはドラマにもなったらしい。ぼくは見過ごしてしまったのですが、以前から関心があったので、観ておけばよかったと後悔しています。

■メガスターⅡコスモス
http://www.miraikan.jst.go.jp/sp/megastar2cosmos/
081019_megastar.png


MEGASTARという投影機は日本科学未来館というところに設置されているのですが、ぼくがそのことを知ったのは、レイハラカミさんのCDを購入したときでした。プラネタリウムの上映に彼の音楽が使われていて、さらに谷川俊太郎さんの詩が朗読されるとのこと。CDを購入したときには、「暗やみの色」というパンフレットも付いてきたのですが、とてもうれしかった。

B000FPWX0K暗やみの色
レイ・ハラカミ feat.原田郁子
ミュージックマイン 2006-07-12

by G-Tools

自然至上主義のような立場からすると、プラネタリウムはニセモノに過ぎないし、天然の星空は圧倒的に違うよ、といってしまえばそれまでだと思います。けれどもぼくは、そんなにたくさんの星を投影してどうするんだと嘲笑されながらも、プラネタリウムの再現の限界に挑戦した大平貴之さんの技術者としてのこだわりに惹かれるし、そういうリアルへの挑戦が科学を発展させる原動力だとも思っています。

たとえば、シンセサイザーで創る音楽にしても、音声合成技術にしても、インターネットのサービスにしても、あるいはヒューマノイドやロボットにしても、結局のところバーチャルに過ぎないよね、リアルがいちばんだよね、と言ってしまうことは簡単です。けれども、リアルをどうやって技術で擬似的に再現していくのか、リアルにはない世界観をどう表現するか、そんなことをコツコツと考えつづけているひとたちを応援していたい。

もっと言ってしまえば、所詮、ぼくらがブログで書いているものは、テキストというフォントの集合体にすぎません。けれども2バイトのデータの集まりにすぎない文章で何ができるか、そのことを真摯に考えつづけていきたい。

さて、星に関する曲としては、以前、「half moon」という曲も作ってささやかな掌編小説を公開しました(エントリーはこちら)。実は「あき、星空のもとで。」を聴きながら、「half moon」の続編のような小説もアタマに浮かんでいるのですが、余力があれば書いてみたいと思っています。若さゆえにうまくいかずに引き離されたふたりが、遠い場所でそれぞれの夜に、それぞれの夜空を見上げながら忘れられない大切なひとのことを思う。そんな物語でしょうか。

などと遠い物語を妄想しつつ、日曜日が終わります。

投稿者 birdwing : 2008年10月19日 17:12

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