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2008年8月14日
ミニマルでいこう。
この暑いさなかに、週末になると部屋を片付けています。雪かきをするように(この表現は涼しくていい)、わさわさと部屋に詰まれた雑誌や本を処分している。売れそうな本はデイバックに詰めて、近所の古本屋に2往復ぐらいして本をさばいていて、1回につき20冊、だいたい1,500円ぐらいで引き取ってもらえます。きちんと数えていないのですが、150冊ぐらいは処分しました。気持ちいいですね、不要なものが部屋からすっきり片付くのは。
溜め込みやすい質(たち)です。捨てられません。いつ役に立つのかわからないものであっても、とりあえず取っておいてしまう。だからぼくの部屋には捨てられない本や雑誌が積まれていて、なかには1980年代のダ・カーポという雑誌があったりします。R25のようなフリーペーパーでさえ、ご丁寧に保存されている。
でも、ふと思ったのは、この大量の活字をいつ読むのだろう?ということでした。そして、自分にとって必要なものなのか、と。さらにいま、ぼくはできる限り生活をシンプルにしていきたいと考えています。原研哉さんの「白」という本を読んだせいかもしれないのですが、何もないけど自分がいる、自分がいればいい、ぐらいの状態にしたい。その反面、クレイジーな科学者のような、雑多なもので埋め尽くされた研究室のような部屋も好きなんですけどね。
部屋を片付けていたところ、かなり前に購入した谷川俊太郎さんの「minimal」という詩集を発掘しました。
minimal William.I. Elliott 川村 和夫 思潮社 2002-10 by G-Tools |
たしか新宿の紀伊国屋書店で購入した記憶があります。非常に短い言葉で書かれた詩集で、英訳された詩も掲載されています。何気にサイン本です。
買ったときには、なんだかぴんとこない詩集で、あまり真剣に読まなかったのですが、夜眠る前にぱらぱらとめくってみたら、言葉がとても尖がってぼくの意識に飛び込んできました。いい感じです。たとえば、次の「拒む」という詩。
拒む
山は
詩歌を
拒まない
雲も
水も
星々も
拒むのは
いつも
ヒト
恐怖で
憎しみで
饒舌で
To Reject
A mountain
does not reject
poetry;
nor do clouds,
water
or stars.
It's always
people
reject it,
in fear,
in hatred,
and with verbosity.
沈黙しているような自然は詩を拒まないけれど、感情があり言葉を持っている賢い人間は詩を拒む。ぎすぎすした人間社会を批判しているようでもあるし、飄々とした孤高の詩人が雲や星に向けて詩を語るような、生きる姿勢のようにも読み取れます。言葉を恐怖や怒りで拒むのではなく、自然のようにニュートラルな姿勢で心に染み込ませたいものです。
もうひとつ、いいなあと思ったのは次の「座る」です。
座る
ソファに座っている
薄曇りの午後
剥き身の蛤みたいに
しなければいけないことがある
だが何もしない
うっとりと
美しいものは美しく
醜いものも
どこか美しく
ただここにいることが
凄くて
私は私じゃなくなる
立ち上がって
水を飲む
水も凄い
Sitting
I'm sitting on a sofa
like a shelled clam
this partly cloudy afternoon.
I have things to do
but, mesmerized,
I do notings.
Beautiful things are beautiful.
Even ugly things
have something beautiful about them.
Just being here
is fantastic
and I cease being myself.
I stand up
and drink some water.
Water is also fantastic.
ただ、あるがままの姿が美しくて凄い。存在自体に価値がある。それ以上の何も要らない。そんなミニマルな姿勢に惹かれます。
多くのものを抱え込みすぎな自分ですが、ほんとうに大切な最小限のものさえあれば、それで十分だと思っています。過剰に何かを求めると、どんどん不幸せになっていく。いちばん大切なものさえそばにあれば、それでいい。多くのことに手を伸ばすのではなく守るべきものをきちんと守りたい。
けれども、いちばん大切なものをきちんと守ることが、いちばん難しい。大切なものは、得てして指の隙間から零れ落ちてしまうものなので。
投稿者 birdwing : 2008年8月14日 00:17
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