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2007年12月 6日

楽器の美、ギター愛。

書店を徘徊して、たまに特集が面白いと購入するBRUTUS。前回の映画特集は買いそびれてしまったのですが、今回は「ギター愛」というGuitar特集なので買ってしまいました。

BRUTUS (ブルータス) 2007年 12/15号 [雑誌]BRUTUS (ブルータス) 2007年 12/15号 [雑誌]


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しかしながら、よく考えてみるとぼくには特に贔屓なギタリストがいない。リッケン・バッカーのギターには憧れがあったのですが(とにかくかっこいいと思った)、ではビートルズのジョン・レノンやジョージ・ハリスンをギタリストとして羨望していたかというとそんなことはない。

ずいぶん後になって、ロディ・フレイムがTakamineのギター弾いているのをライブでみてかっこいいなあと思ったのですが、やっぱりギタリストじゃないし。そういえば、学生時代には癒し気分でゴンチチ聴いてたこともあったっけ。Takamineのギター購入してからは、押尾コータローさんなんかも聴いたりしました。

純粋にギターの音を聴いていいなあと思ったのはジャズのジム・ホールなんですが、それもビル・エヴァンスを聴いていくなかで、「アンダーカレント」というふたりで演奏したアルバムがあって、単音の響きに惹かれたからです。他のアルバムを聴いたんだけど、このアルバムほどのめり込めなかった。

B001CRGTNWアンダーカレント
ビル・エヴァンス ジム・ホール
EMIミュージック・ジャパン 2008-09-26

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と、非常に困惑しつつ、さらにジミ・ヘンドリックスが露出しすぎな雰囲気にも馴染めないものを感じながら、この雑誌を購入したのですが、ふと気付いたのは、「ギター」愛であって「ギタリスト」愛ではないのだ、と。つまり楽器としてのギターに対する思い入れについての特集なんですね。ああ、なるほど、それならわかる、と思いました。

以前の言葉についての特集でも面白かったのですが、BRUTUSの特集でやっぱりいいなあと思うのは、いろんなひとのインタビューで構成されていることです。今回登場するのは次のようなひとたち。

・リリー・フランキー
・奥田民生
・エリック・クラプトン
・香椎由宇
・平野啓一郎
・岸田繁(くるり)
・トミー・ゲレロ
・高橋千佳子/杉崎美香
・レス・ポール
・藤原ヒロシ
・Char
・村治佳織
・高見沢俊彦
・箭内道彦 など

この節操のなさ・・・というとどうかと思いますが、多様な感じがいい。高橋千佳子さん、杉崎美香さんが公園でギターを抱えている写真の反対ページは、92歳で現役ギタリストでもあるレス・ポールおじいさんだったりする(笑)こんな感じ。

071206_guitar1.JPG

この朗らかに微笑むおじいさん、レス・ポールというギターを生み出したまさに伝説のひとですよ?

この構成、編集の妙という感じがします。やはり、BRUTUSの編集しているひとはセンスがいい。その後、ギター工房の職人さんのお話や、ギターのカタログが続きます。ミュージシャンが弾いたギターがいくらか、などというトリビア的な内容や、ヴィンテージギター検定という26問のテストがあったりします。うげ、エリック・クラプトンの使ったギブソンES‐335 TDC(1964)は、92,208,000円とな!

いつも楽しみに思っているブック・イン・ブック的な中綴じの特集では、27人のギタリストがCD&DVDのベスト50のほか、全部で150本の名盤を紹介しています。27人のなかには野村義男さんという懐かしい名前のほか、キリンジの堀込高樹さんなど多彩です。堀込高樹さんが第1位に推薦しているのは、スティーリー・ダンの「幻想の摩天楼」。うーむ、なんか非常にわかる気がした。複雑なひねりの効いたちょっとジャズ的なコード進行などは、ドナルド・フェイゲンあたりのソングライティングからきているんでしょうか。

このCD&DVDカタログもそうなのですが、ぼくはカタログ的なものに弱い。500本から厳選したレアヴィンテージのページのように、きれいに情報が整理されているページに惹かれます。

071206_guitar2.JPG

手の届かないギターだけではなくて、後半にはエレキ・アコギの購入ガイドもあるのがうれしいですね。

ところで先日、大学時代の先輩の結婚式の後、2次会までの時間を潰すためにお茶の水の楽器店をぐるぐる回ったのですが、3万円で買えるギターがあってびっくりしました。デジタル楽器だけでなく、ギターのような楽器にも価格破壊が起きている。

けれどもやっぱり、手の届かないガラスケースのなかにあるようなギターは風格が違う。そして、美しい音を出す楽器は、やはり美しい容姿をしているものではないか、と思います。女性もそうかもしれません(などと、フェミニストっぽいことを書くと照れる)。美しさのトータリティのようなものがあり、内面の美しさが外見を磨くようなところもあるのではないか。

自慢じゃないけれど、ぼくは楽器を弾くのがほんとうに下手で(苦笑)、かといって上手くなるための練習を努力するわけでもいのですが、楽器のある風景もしくは部屋というのが好きで、ギターでもピアノでも、部屋にあるだけでいいなあ・・・と和んでしまいます。インテリアじゃないので、弾いてあげなきゃかわいそうだ、とは思うのですが。

購入する意図もなく、かといって試奏するわけでもないのだけれど、ときどきいまでも会社の帰りに、ぶらりと楽器店に立ち寄ることがあります。それだけでもう、しあわせだったりする。安上がりなものです(苦笑)。

投稿者 birdwing : 2007年12月 6日 00:00

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