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2009年1月14日

場の記憶、あるいは飛べない何か。

そうだ、空港に行こう、と思い立ちました。理由はないのですが、なんとなく。

空港に関していえば、旅行の経験が著しく少ないぼくには、いまでも空港は特別な場所です。特別というのにはもうひとつの理由があって、電車の駅であれば線路つづきでつながっていて、自動車であれば道路、船であれば海が介在している。しかし、飛行機は離陸すれば地上に残されたひととのつながりを絶ってしまう。地上におけるあれこれと接点を切る場として、ぼくは空港に特別な意味を求めていたように思います。

風景や場が記憶を覚醒することがあります。卒業した大学のキャンパスに戻ると、ありありと学生の頃を思い出すとか、旅行した土地に再び訪れたときに過去の時間がよみがえるとか。

ぼくのなかにある空港の記憶は、緊張が入り混じりながらも楽しいものばかりでした。空の写真を撮りつづけているぼくにとっては、ゲートを潜れば空に近づくことができる場所であり、それだけでもこころが逸る。

とかなんとか。

テツガク的な戯言はともかく、仕事をはやめに終わらせて電車に乗りました。

地下鉄で新橋まで出て、その後はJRに乗り換えて浜松町へ。帰宅時間のせいか、おじさんたちに囲まれて困惑。おじさんは新橋をめざす(のか?)。久し振りにモノレールに乗りました。

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時間帯のせいか、モノレールの席はがらがらでした。どこかの体育館でバレーをやっている姿や、和服で扇子を回しながら踊っている姿がみえました。煌々と灯りの付いているオフィスも多い。お疲れさまです。すっかり夜なので景色は全然みえません。でも、街の灯りが遠く後方に追いやられていくのを、ぼんやりと眺めていました。飛行機から眺めるときれいなんですけどね。ちなみに、ぼくは天空橋という駅名が好きです。なんだか詩的な感じがする。宮崎監督のラピュタを連想するというか。

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空港に到着。出発ロビーです。目の前で、がらがらのキャスター付き荷物を引っ張りながら女性がこけてた(苦笑)。その後、エスカレーターでもこけてる女性がいました。気をつけましょう。焦らずにね。

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見送るひと、到着するひと。チケットを持っていないのが残念です。これでは飛べない小鳥だ。どこかへ飛んで行きたいものだなあ。しかし、どうしてチケットがないのに空港にいるのでしょうか、わたくしは(苦笑)。まあいいか。帰国する国が紛争のために足止めされて、空港で働きながら出発の日を待つ「ターミナル」という映画もありました。トム・ハンクスが主演でしたっけ。

のぼったことがなかったのですが、6Fに展望デッキがあるということで行ってみました。名前はBIRD'S EYE(バードアイ)。おお、ブログのハンドルが鳥だけに親近感がわきます。

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しかし、外に出てみたらさみーのなんの(苦笑)。寒すぎ。風がびゅうびゅう吹いていて、オイルというかガスの臭いがきつい。そんなわけで、ほとんど数人しか人影なし。さ、さ、さ、寒すぎる。がたがたがた。しかし、どういうわけかカップルのほかは、単独の女性が数名。飛行機マニアでしょうか。それとも彼氏を見送っているのでしょうか。

鉄の柵には部分的に大きな穴があって、そこから撮影ができます。穴にデジカメを固定して飛行機をスナップ。暗いので、なかなかうまく撮れません。ぶれるぶれる。というか寒さでぶれる。

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夜の空港も、なかなかよいものです。すらりと流線型の機体が美しい。遠くに街の灯りが線のように並んでみえました。はああ、あの飛行機に乗ってやっぱり飛んでいきたい。

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レストランもありましたが、誰もいない。ゴーストだけが風に吹かれている。

すっかり冷え切ったので展望デッキを後にして内に入ると、次第に冷たい指先にもあたたかさが戻ってきました。書店をうろうろして体温が回復するのを待ったのですが、風で髪の毛がぼっさぼっさになっていた。その後、到着ロビーにあるプロントへ。お茶を飲もうと思ったのだけれど・・・。

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メニューを眺めながらいつの間にか頼んでいたのは、プレミアムモルツ(ビール)とパストラミビーフのサラダでした。ビールは足りなくて、その後プレミアムモルツクロのジョッキを追加してしまいました。苦味がうまい。向かいの席には誰もいないけれど、とりあえず乾杯。

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まったりとひとりで飲み食いしていると、隣の席にモデル風(あるいは水商売風)のきれいなおねえさんがふたりやってきて、ひとりは既婚らしいのですが、既婚ではないほうのおねえさんが、彼氏と元彼とフランス人の3つ巴のレンアイ関係について語りはじめました。

携帯電話の写真を友達に見せながら「これがフランス人、ちょーかっこいいでしょ?逆ナンしちゃったんだよね。逆ナンなんて、はじめてだったよ。で、ぶちゅーの写真。こっちもぶちゅー。でもね、このときは、もうひとりの彼が好きだったから、揺れてたのよねー」などと盛り上がりはじめたので、ぼくは退席。女性って気が多いよなあ。やれやれ。

帰りの電車が長かった(涙)。でも、下膨れの満月に近い月がとてもきれいでした。モノレールからは屋形船もみえました。家に帰りついたころにはすっかり酔いも冷めて、またビールをあけてしまった。なんだか小旅行をした気分です。なにやってんだか。でも、こういう無目的にどこかへふらりと行くのも悪くないですね。本格的に旅行をしたくなりました。どこかへ、ひとりで。

空港を離れた場所で考えたことを少しだけ。

日本語が亡びるとかブログは終わったとか、識者は終わりを宣言したがります。あるいは、おれの人生はもうおしまいだと、人生を諦めて自分を殺めてしまうひともいるかもしれません。安易に共感できる、よくわかるよ、とはいえませんが、終わらせなければならない辛さもきっとあるでしょう。煉獄のような苦しみから解き放たれるためには、どこかできっちり線を引かなければならない。負の連鎖を断ち切る勇気も、ときには必要です。

けれども・・・と、往生際の悪いぼくは考えます。

いずれは終わりたくなくても終わってしまう生なのだから、みずから終わらせる必要はないのではないかな。もう少しつづけてみませんか、と。あるいは、どうやったら継続できるか、維持できるか、ということを考えるときに新しい生き方も閃くのではないだろうか。関係性というものは生成変化していくものであり、一般論として正しいものが正解ではなく、状況下で自分が選択した答えが正しい。

淡い、とはいえない強い何かがぼくのなかにあり、終わらせることもできなければ、忘れ去ることも捨て去ることもできないまま、わだかまっています。いったいこれは何なのか。毎日のように考えつづけて考え抜いたところ、なんだかよくわからなくなりました(苦笑)。いっそのこと脳内のこの部分だけメモリをクリアできればしあわせなんだが、と思ったりするのですが、そうもいかない。しぶとく消えてくれないんだな、これが。

飛べない何か。夜の展望デッキで吹きさらしの風に凍えていたときは、そんな何かも吹き飛んでしまったのですが、どうやら根強くここに残っているようです。その何かを相棒として、うまくやっていこう。な?相棒。

投稿者 birdwing : 2009年1月14日 23:59

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4 Comments

胡瓜 2009-01-19T13:26

分かります。分かります。
空港とか飛行機って、ふと気になりますw

うちは、伊丹空港が比較的近くて。
頑張れば自転車でも行ける距離なんで・・・。
ミニが小さい頃は当時運航してたマリンジャンボを
よく見に行きました。目の前が滑走路のフェンスで
もう、背伸びしたら届く?な高さで飛行機が
着陸する場所もあったりして。
飛行機って、日常の交通手段としては頻繁に
利用しないけど、飛行場で見てると普通に
山手線並みに、次々飛んでたりして(笑)
それが何ともおかしくて見入ってます。

今週の土曜、いよいよミニがカナダ出発でして。
一旦、羽田まで飛んで、成田まで行くみたいです。
土曜日、再び思い立ったら又空港に行って見て下さい(笑)
どれかにミニが乗ってるはずです(笑)

BirdWing 2009-01-20T20:30

お返事が遅くなり失礼しました。まだ自宅のネットが開通していないので、昨日は会社の帰りにパソコンが使えるカフェでビールを飲みながら順番を待っていたのですが、混雑していて断念しました。

胡瓜さんちは伊丹空港の近くなんですか。そういえばマリンジャンボありました。懐かしいです。ポケモンジェットみたいな飛行機も楽しいですよね。手が届くぐらい近くで見ることができるのは凄い。迫力ありそうです。息子さん(ミニくん)を自転車に乗せて、飛行機を見にいく胡瓜さんを想像したら、なんだか和みましたよ(笑)。そういえばぼくも長男くんがちいさなとき、電車好きだったので駅に電車を見に行ったっけ。

ぼくが行った空港は羽田だったのですが、成田はちょっと遠いかもしれません。「巨人の星」の飛雄馬のねえちゃんのように(古い)、そっと柱の陰からミニくんを見送りたいところですが・・・えーと、ミニくんの顔が分からないじゃないですか(苦笑)。外国といえば、ESTAの申請が必要になったのも旬な話題でした。胡瓜さんは外国に行くことが多いから慣れていると思いますが、ぼくはたぶんあたふたしそうです。

胡瓜さんとは、ネットで日記を書きはじめた頃からお話させていただいているのですが、ミニくんの受験に関する話では泣けました(というか胡瓜さんの話には泣ける話が多すぎるのですが)。もう修学旅行の年齢でしょうか。最近は外国に行くんですね。そんなに大きくなったのかと思うと、しみじみしちゃいました。。。

楽しい旅行ができますように!

胡瓜 2009-01-20T21:06

ESTA!!確かアメリカでしたっけね?
ネット社会と言えど、年配の方には申請もネットからって
事で不親切のような気もしたり・・・。
そして旅行会社の代理申請も有料らしく商魂たくましいとか
思ってみたり・・・。

そして、お知らせです(笑)
ミニ君は、修学旅行では無く・・・
一年間ですが留学でカナダに行っちゃいます(笑)
それほどまでに大きくなりました☆
どうか更にしみじみしてください(笑)

BirdWing 2009-01-20T21:45

うわっ。留学ですか!!!さらに一年もカナダに?

すごいなあ。びっくりしました。立派になったなあ、ミニくん。すみません、最近、ネットができなくてですね、時間に追われてネットカフェでは自分のブログしか更新できていないので失礼いたしました。わー、しかし驚いた。

胡瓜さんの教育の賜物なのでしょうね。きっとひとまわりも、ふたまわりも大きくなってミニくんは帰国することでしょう。となると、もはやミニくんとは呼べないですね。デカくん?

将来が有望だなあ。はあ、うちの息子も何とかしたいものだ。

更に、しみじみしみじみ。。。

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