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2009年6月25日

香り、ほのかに。

5月の終わりごろでしたが、夜中に帰宅するときに草いきれのむっとした匂いに包まれて、おお、季節が変わりつつあるのだな、と感じたことを覚えています。雨には雨の、夏には夏の匂いがあります。

季節のうつろうこの時期。思考力を鍛えるだけでなく感覚も研ぎ澄ましていたい。慌しい毎日のなかではこころが磨耗することも多いのだけれど、感性を豊かに、五感を大事にすることによって、目にみえるものだけでなく、みえないものの変化を感じていたいとおもいます。

嗅覚をテーマにした作品としては、「パフューム」という映画をおもい浮かべました。匂いに関するこだわりはどこか官能的なイメージにつながります。フェロモンなどの動物的な嗅覚の要素があるからかもしれません。

B000R59N4Cパフューム スタンダード・エディション [DVD]
ベン・ウィショー.レイチェル・ハード=ウッド.アラン・リックマン.ダスティン・ホフマン, トム・ティクヴァ
ギャガ・コミュニケーションズ 2007-09-07

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ちょっと変わったところでは、原田宗典さんに「スメル男」という小説があったかな。ものすごーく臭い人間になってしまう主人公の話でした。

4061851764スメル男 (講談社文庫)
原田 宗典
講談社 1992-06

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その臭さといえば数キロ先からでも嗅げるという。テーマとしてはSFっぽいのですが、彼の書く小説はどこかあたたかい(まあ、ちょっと軽すぎたりお調子ものっぽいところもある)。「優しくって少し ばか」という処女作品が一時期とても好きで、影響を受けました。ぼくの文体の数パーセントには原田宗典さんの成分が含まれているような気がします。

ところで、暑くなってくると気になるのが汗の臭いです。今週のR25が面白かった。制汗剤の「AXE(アックス)」とタイアップの企画になっていました。

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中綴じの真ん中のページに、ビニールで綴じこまれた7種類のフレグランスのサンプルが付いています。

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ひとつひとつを取り出すと、スプレーの部分に香りの粒子が印刷されていて、こすると匂いが出る。エッセンスからアンリミテッドまで7種類の香りを体験できます。なんだか昔にこんな雑誌の付録があったような気がする。

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クイズ形式になっていて、この匂いが好きな女の子はこの子、という写真もついています。オトコの子はこういうのが好きなんだよね(笑)。

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ダークテンプテーションのちょっと甘い匂いもいいかな、でも、アンリミテッドのハーブっぽいものも捨てがたい・・・などと嗅いでいたらよくわからなくなりました。おまけに好みの女の子が好きな香りがいいなと思いこもうとしたり。ハイセンスな青文字系(?)の彼女が好きな香りが、どうやらぼくの好みの香りらしい。まあ、広告なので仕込みという雰囲気もしないではないですけれども。

この制汗剤は、先日ドラッグストアで気まぐれにテスターを試したことがあったなあ。しかし、個人的には一度失敗して懲りたのですが、制汗剤やアフターシェービングローションのようなものは無香料がいい。ホストっぽい、というとホストのお仕事の方に失礼ですが、無駄に香るひとになってしまうので。汗臭さは消えたとしても、別の意味で臭くなってしまう。無香料がいちばん。

そもそも家人によると、ぼくは「なんとなくトロピカルな匂い」がするらしいのです。どういう匂いだそれは?と疑問なのですが、自分の体臭は自分ではわからないのでなんともいえません。ちなみに、あまり香水の話などをするのは女々しい印象で気が引けるのですが、ぼくはジバンシイのウルトラマリンというコロンを使っています。青い色が好きです。ウルトラマリン ブルースカイという商品もあるらしく、空好きな自分としては気になります。

B000FP34SAジバンシイ ウルトラマリン オーデトワレスプレー 30ml H33
ジバンシイ

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B000WTHKWAジバンシイ ウルトラマリン ブルースカイ オーデトワレスプレー 50ml-J33
ジバンシイ

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この香水を使いはじめたのは実は偶然のなりゆきがあり、息子に「どの匂いがいい?」と訊いたところ、これを指差した。しかし、どうやら彼は「ウルトラマン」に似ているので、ついこれを選んでしまった気がします。そんな長男くんは匂いや味に敏感で、「小田急線の新宿駅の匂いが好き」とか「エビアンは他の天然水よりだんぜん美味しい」などと言う繊細な少年です。

匂いは、どちらかというとほのかに香るほうがよい。

身体だけでなく文体にも香りがあります。ぼくの文章は、自分らしい匂いを醸し出しているのかな。できることならば子供っぽい雰囲気は卒業して、セクシーな大人の男性らしい文章を書きたいのだけれど、なかなか難しいものです。ついでにいうと、加齢臭を漂わせないようにも気を付けつつ(苦笑)。

たまに周囲に悪臭をふりまく歩く公害のようなひとがいますが、ほのかによい香りを漂わせるような(実際に何か香水をつけているわけではなくてもね)、人間味のあるひとになりたいものです。

投稿者 birdwing : 2009年6月25日 22:22

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2 Comments

かおるん 2009-06-29T18:04

無駄に香るひとっていうのに笑ってしまいました。いますね、そういう人。最近「必然性のある表現」ということをずっと考えていたので、それとも重なりました。

桜沢エリカの『メイキン・ハッピィ』という漫画があって、海外宝くじで18億円当てたごく普通のOLがニューヨークに渡り香水ビジネスをする話。なかなか面白く読んだのですが、その中である天才調香師が「その人に似合う香りならいくらつけても自然なものだ」と言ったセリフが印象的でした。誰にも似合う色やかたちがあるように、香りも似合えばその人のイメージをふくらませるし、逆にちぐはぐだとそれだけが浮いてしまい、足をひっぱります。

ジバンシィのウルトラマリン、私も以前使っていた事があります。人を通して香るのはウルトラマリンみたいなユニセックスな香りが好みですが、自分にはもう少し甘めの香りのほうが合うようでした。

ちなみに今うちの中は、昨晩たいた蚊取り線香のにおいでいっぱいです。

BirdWing 2009-06-30T23:39

かおるんさんもウルトラマリンを使っていたんですか。奇遇ですね。

「必然性のある表現」いいとおもいます。自然体がいちばん。中島義道の本を読みすぎたせいか、最近、嫌われようが疎まれようが、自分の言いたいことを発言し、やりたいことをやり、やりたくないことはやらない、自然でありたいとおもうようになりました。なかなか難しいことであり、かおるんさんが書かれていたように、やりたいことで対価を得られることがプロとしては重要ではありますが、よくみせようという見栄や執着心を捨て去ると、こころも文体も楽に軽くなります。

そういえば、香り通信というものをどこかで開発していたっけ。インターネットでも擬似的に香りが体験できるようになるといいですね。映画館で導入されたような記事もかなりまえに読みましたが、ヒットしなかったのでしょう。

蚊取り線香のにおい、よいですねえ。最近嗅がなくなりましたが、ふわっと漂ってくるとノスタルジーを感じて、あったかくなります。

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