« 引用から離れて。 | メイン | 掌編#01:おじいさんになりたい。 »

2006年3月 3日

「経営の構想力 構想力はどのように磨くか」西浦裕二

▼book06-020:経営書というよりもエッセイとして。

4492531734経営の構想力 構想力はどのように磨くか
東洋経済新報社 2004-02-13

by G-Tools

冒頭の部分では、いくつか参考になる考え方がありました。たとえば、全体を俯瞰する力と現場の力という両方が必要であるとか、哲学とリアリティの必要性、編集力という視点、「幼い時期の特徴を失わずに成長すること」という生物学用語のネオテニーなど。しかしながら、そうした言葉が引用としてばらばらに散りばめられている感じがあり、全体として統合されていない印象を受けます。おいしい言葉をつまんできてはトッピングしているけれど、本質的な著者自身の思想が見えてこない。

たとえば、編集という用語を使われていますが、たぶん著者は編集者ではないと思うので、その実体がともなっていないような印象を受けました。テキストをツギハギに引用することが編集ではないと思います。借り物の言葉を散りばめることは編集ではなく引用であり、編集にはさらに高度な知的な作業が必要になるはずです。個人的な体験も引用されているけれど、その体験が考え方や思想というところまで高められていないため、薄っぺらな感じがしました。同様に、構想力という言葉も耳あたりはいいけれど、全体的にはキーワードだけが浮いていて、その考え方を深化させていないように思えます。あまりにいろんなものを盛り込みすぎているので、ある特定のテーマを集中して深化させた方がよい気がします。

経営書として考えると物足りないし散漫なイメージの本ですが、エッセイとして読むと、それなりに楽しめるかもしれません。すぐに読み終わることもできるので。3月3日読了。

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(20/100冊+20/100本)

投稿者 birdwing : 2006年3月 3日 00:00

« 引用から離れて。 | メイン | 掌編#01:おじいさんになりたい。 »


トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://birdwing.sakura.ne.jp/mt/mt-tb.cgi/1132