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2006年5月 7日
「第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい」M・グラッドウェル
▼book06-033:人間という高度なセンサー。
第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい (翻訳) 沢田 博 光文社 2006-02-23 by G-Tools |
極度の興奮状態に陥ると、どんなひとも一時的に自閉症のような状態になるそうです。どういうことかというと、他人の心が読めなくなる。この本のなかに書かれているのですが、ニューヨークのホイラー通りの悲劇として、夜中に家の外で煙草を吸っていた男が、巡回していた警官の呼びとめに挙動不審な行動をしたばかりに、4人の警官に41発の弾丸を打ち込まれて殺されてしまったそうです。これは、不審者を追いかけるときの興奮状態と暗闇のために表情を読めなかったことから、かなしい事件に結びついたのだと解説されています。
つまり、普通の状態であれば、ぼくらの視線はそれぞれのひとの表情や状況を読もうとする。ところが極度の興奮にあったり、時間がなかったりすると、ある種の盲目的な状態になる。ちょうどこれは、自閉症のひとの視線と同じ状態になるらしい。自閉症のひとにドラマをみせると、喧嘩している登場人物の顔に視線が推移するのではなく、まったく関係のない壁の絵などをふらふらと視線がさまよう。他人の感情を読もうとする心理のセンサーが触れないようなのです。
科学的な分析でも見抜けなかった美術品の贋作を「何かおかしい」という直感から2秒で見抜いた専門家、15年後に夫婦が別れるかどうかを瞬時に見抜く心理学者など、状況を「輪切り(スキャンということだと思います)」にして判断する人間の能力について書かれた本です。といっても特別な能力ではなく誰もが持っている能力であり、このスキャンする能力は無意識的な部分が大きな働きをしているとのこと。人種差別について書かれた文章を読んだあとに心理テストをすると、理屈ではわかっていても黒人に対する印象が悪い結果になってしまう。怖いことだと思いました。マインド・コントロールにつながるような気がします。ヤクザ映画をみると、肩をいからせて歩いてしまうというように、何を観るか、何を聴くか、ということがそのひとに影響を及ぼすわけです。
体系的な理論になっているわけではないのですが、ひとつひとつのエピソードがとても面白く、無意識の罠にはまることもあるものだな、と考えた本でした。5月3日読了。
*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(33/100冊+29/100本)
投稿者 birdwing : 2006年5月 7日 00:00
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