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2006年5月21日
「村上春樹論 『海辺のカフカ』を精読する」小森陽一
▼book06-037:言葉を操る生き物、の倫理。
村上春樹論 『海辺のカフカ』を精読する (平凡社新書) 平凡社 2006-05-11 by G-Tools |
問題の多い評論です。「海辺のカフカ」を精読することによって物語の背後にある意味を解き明かし、文学作品だけでなく歴史という文脈(コンテクスト)のなかに、この作品の問題を位置づけていきます。癒しという視点からベストセラーになった作品を「処刑小説」であると断言し、村上春樹的現象の社会的な責任を問う評論ともいえる。評論のなかで、この作品は読者の「思考停止」を促すという言述があったのですが、確かにその通りであると感じました。文芸評論家ではないぼくは印象で語るしかないのですが、村上春樹さんの小説には、たとえば「どうよりよく生きるべきか」という問いと答えをうやむやにしてしまう何かがあるような気がしていました。また、「海辺のカフカ」は9月11日に出版されたということをあらためて考え、出版社のマーケティング戦略というものにも目を向けてみるべきだ、とあらためて感じました。養老さんの本では、テロリズムを人間的な行為であると解説し、倫理というアウトプット(行動の規制)が重要であると書かれています。出力という意味では言葉も出力であり、言葉の暴力、言葉によるテロというものもあり得る。ぼくも爆弾発言をするタイプなので逆によくわかるのですが、言葉を操る生き物としての倫理観については、もう少し考えてみたいと思いました。非常に示唆に富む見解が多く、特に第五章の結びについては深く考えさせられました。このことについてはいずれまたブログで書いてみるつもりです。5月21日読了。
*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(37/100冊+31/100本)
投稿者 birdwing : 2006年5月21日 00:00
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