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2006年5月21日

TAKESHIS'

▽cinema06-032:映像詩としての範列的な構成。

B000C5PNU0TAKESHIS' [DVD]
北野武
バンダイビジュアル 2006-04-07

by G-Tools

よくわからない映画です。しかし、わからないけれどもぐいぐい映像に引き込まれてしまう。それが北野監督のすごさかもしれません。役者として成功を収めている「ビートたけし」と、役者をめざしてオーディションを受けながらコンビニで働いている北野のふたりの物語が錯綜するかたちで進行し、どこまでが現実で、どこまでが妄想なのかわからなくなる。というよりも、そもそも映画というフィクションなので、すべてが想像の世界ともいえる。だとすると何が起きてもいいわけで、その脈絡のなさを徹底的に追求した映画なのかもしれません。ご自身の映画のパロディとも思えるような試みがあったり、銃を発砲する気持ちよさだけを追求した映像もあり、突然エッチなシーンが挿入されたり、笑えるのか笑えないのか困惑するような場面があったり、奇想天外です。

映像の展開としては、「叩く」という言葉で「コンビニで眠っていると客がレジ台を叩く」と「ポルシェのドアを叩く」というイメージを結び付けていく。つまり物語的な筋の連結ではなく、言葉のイメージで映像をつないでいくような範列的な手法がとられています。ばらばらの映像をそんな風にコラージュして、けれども何度か繰り返されることで、ああそういえばこのシーンあったけ、という記憶を再生しながら観ていく。「花束」もそんなイメージを連結する道具として使われています。

ぼくは北野監督の映画をあまり観ていないのですが、確か「あの夏、いちばん静かな海。」にも、そんなイメージの連鎖があったような気がしました(違ったかもしれません)。いちばん好きな映画は「Dolls」だったりします。コメディアンでありながら(というかだからこそなのかもしれませんが)とても静かに染みわたるようなさびしさや、悲しみを描くのがうまい監督だと思います。実験的なものもよいのですが、そんな切ない映画を撮ってほしいと思いました。それにしても北野武さんの顔つきは、年をとってさらに凄みが増したというか、かっこよすぎる。特に寡黙なときの顔はすごい。5月21日鑑賞。

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(37/100冊+32/100本)

投稿者 birdwing : 2006年5月21日 00:00

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