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2006年6月10日
「グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する」佐々木俊尚
▼book06-041:すべてを破壊し、私企業は神になるのか。
グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する 文春新書 (501) 文藝春秋 2006-04 by G-Tools |
スタートは非常に優秀な学生ふたりが立ち上げたベンチャーだったかと思うのですが、グーグルのやってきたこと、やろうとしていることは、かなりスケールが大きいと思います。この本では、テクノロジーだけでなく、たとえば羽田で駐車場サービスをやっている夫婦の企業にとってグーグルは何をもたらしたか、というようなプロジェクトX的なエピソードを盛り込みつつ、さまざまな視点からグーグルの意義を検証していきます。新聞社でお仕事をされていた佐々木さんの文章は非常にわかりやすく、ああそういうことだったのか、と過去の出来事を再考することができます。
しかし、個人的な感想としては、広告ビジネス的なとらえ方はいまひとつ興味をひきませんでした。確かに、アドセンスなどのキーワード広告は画期的なものだったかもしれないし、その広告収益が企業を大きく変えたともいえるのですが、ではグーグルは広告業かというと、そうではないような気がする。
ぼくはグーグルは、情報の供給をライフラインに変えるようなビジネスという気がしました。ありきたりといえますが、かつてインターネットによるネットワークのインフラがライフラインに変わる、という表現があったかと思います。それは電気や水道と同じように、ネットワークの回線が生活に必要なものとなるということですが、インターネットで重要なのは回線はもちろんそこで供給される内容で、その内容によってはインターネットは電話にもなれば銀行にもなるし、テレビになったかと思うと雑誌だったりもする。職業安定所にもなれば政府にもなる。
プライベートなものであれ、パブリックなものであれ、ここでやりとりされているのは情報です。つまり生活に必要なあらゆる情報をタダで提供しますよ、というところがすごい。それはもはや検索でもなくて、情報を水や電気のように供給するビジネスです(水や電気だって有料ですが)。停電のように、グーグルが止まったら都会では生活できないようになるかもしれない。
それが権力だと思います。だから政治に左右されると非常に怖いものになるし、この本のなかでは新しい監視社会像というものが書かれていて、映画の「マイノリティレポート」のようにすべての人間の情報がデータベース管理される恐ろしさにも言及されている。そういえばグーグルは遺伝子情報をデータベース化する話もなかったっけ?などと思い出し、ちょっと身震いしました。学生の頃にガス代や電話代が払えないと、社会から取り残されたような気持ちになったものですが、危険な情報を配信している、ということでグーグル八分となったとき、自分の情報が検索に引っかからなくなるぐらいならいいのですが、アドレスやIDで遮断して情報そのものを提供してもらえなくなったりしたらかなしすぎる、などと思いました。6月8日読了。
*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(41/100冊+34/100本)
投稿者 birdwing : 2006年6月10日 00:00
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