« 「グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する」佐々木俊尚 | メイン | 芝生。 »

2006年6月11日

夢を、あきらめない。

少年の頃、学校の文集には必ず「将来の夢」というテーマがあったような気がします。ぼくの夢は、発明家だったような気もするし、小説家や詩人だったような気もする。父がぼくに託した夢は、教師になることだったのですが、残念ながらぼくは父の夢をかなえることはできませんでした。息子というのはそういうもので、父の願いとは別の方向に育ってしまうものかもしれない。うちのふたりの息子たちもどうなることやら、という感じです。

帰省の途中で立ち寄った書店に、これはという本があり、ついつい買ってしまいました。1歳から100歳までのひとりひとりの笑顔と夢についての文章をまとめた「1歳から100歳の夢」という本です。

卒業文集のように同時代的な夢をまとめるのではなく、世代を縦に100年分横断しているのがいい。まず1歳の木村春太くんの夢からはじまります。まだ文章が書けないので、クレヨンの絵なのですが、なんだか伝わってくるものがある。

yume_1.jpg

ごくふつうのひとがふつうの夢を語っていく。これがじーんとします。感動する文章が多いのですが、16歳の中平希望さんの「大好きを歌う」という次の文章がよかった。オペラ歌手になるために努力しているようですが、厳しいことがたくさんあるらしい。

yume_16.jpg

好きで歌っているものに点数がつけられて順位がつけられるのはとても辛い事です。毎日毎日どんなに練習を重ねても向き不向き、さらには才能なんかある人にはやっぱりかなわなかったりして。一時期にはそれが原因で光のない暗闇に落ちてしまった事もありました。

つづいて27歳の河野由紀子さんの夢なのですが、「おばあちゃんになりたい」という言葉があり、思わずシンクロニシティを感じてしまった。というのもかつてぼくはこのブログで「おじいさんになりたい。」という掌編小説を書いていたからでした。悪性リンパ種で入院したときに、同じ病気の50代の戦友(年上なのですが共に病気を克服するという意味で戦友と呼んでいたそうです)が「次の誕生日を迎えられるかな」と言っていたことが忘れられないそうです。歳を取るのが恥ずかしい、というのはよく言われることですが、ひとつ年齢を重ねることができるのは大病のひとにとっては、ものすごく「うれしい」ことである。泣けました。一日一日を精一杯生きなくては、と思いました。

yume_27.jpg

男性の素敵な文章もたくさんあります。そして素敵な笑顔がある。44歳の北川善浩さんは、新婚旅行のハワイでトラブルがあって奥さんを傷つけてしまった。そのときのことを謝るために、へそくりを貯めて、もういちど奥さんとハワイに行くことを考えているとのこと。

yume_44.jpg

50歳を超えたらこんな感じになりたいと思ったのが、大学で教鞭もとられている広瀬敏明さんの笑顔です。それから、うちの親父に似ているな、と思ったのが94歳の葛城眞さん。「百薬の酒と羊羹」というタイトルで、一日の終わりのささやかな楽しみについて書かれています。うちの親父も生前は酒が大好きだったのですが、あと25年ぐらい生きて、葛城さんのようなおじいさんになってほしかった。

yume_94.jpg

そして最後は100歳の矢谷千歳さんの夢で終わります。「悲しいとき つらいときも 楽しいことも 夢のようで/大事にしてもらい 大事に云ってもらい 長生きを喜んでもらい うれしい」という言葉に重みがあります。そして人生にも自然と同じように春夏秋冬がある、自然と同じかと思う、という言葉で結ばれています。

yume_100.jpg

100人のなかには、91歳で東京造形芸術大学通信教育部の写真コースに入ったというおじいさんもいました。90歳でも夢をあきらめずに追いかけている姿に感動しました。いくつになっても夢は持っていたいし、その夢に向って前向きに取り組んでいたいものです。

この本は読み終わったら、息子たちの写真といっしょに田舎の母に送ってやろうと思います。

さて、ソトコトという雑誌の7月号に、「特集:【完全保存版】ザ・ベスト・オブロハスデザイン」という記事があって、ぼくはこの重い雑誌も買ってしまってしばらく鞄に入れていました。

sotokoto105344.jpg

ロハスとはLifestyles Of Health And Sustainabilityの略で、健康と環境に留意したライフスタイルだとか。世界的な動きらしい。ぼくはなにか広告や商業的な思惑が入っているような気がして、いまひとつ全面的に素直に受け止められない偏見があったのですが、「あなたにとってロハスとは?」というページに書かれた読者審査員の感想には頷けるものがありました(P.78)。つまりこういうことです。

丁寧に/暮らすこと。
未来を/想像しながら/今を生きること。
いらいらしないこと。/いらいらしないためには/どうすればいいか、/考えること。
祖先や子供たちへの/リレーが自然に繋がること。

これはよいなあ、と思いました。

ところで、Vocaloid MEIKOのコンテスト結果が発表されました。ぼくは入賞できませんでしたが、なんと!以前このブログで取り上げたMonkey & 36 Maniacsさんが拝郷メイコ賞でレコーディングとのこと。おおーっなんだかひとごとでありながら、うれしい。2月の時点で、このひとは才能がある、すごそうだと思っていたのですが、ひとつ抜け出たのではないでしょうか。

ぼくは残念な結果でしたが、そもそもお祭りに便乗したようなものであるし、ぼくはぼくの夢をあきらめずにいたいものです。それがどんなにささやかな夢であったとしても。

+++++

■「1歳から100歳の夢」。現在45歳あたりを読んでいます。

49020970871歳から100歳の夢
日本ドリームプロジェクト
いろは出版 2006-04

by G-Tools

■「1歳から100歳の夢」を推進している日本ドリームプロジェクトの公式ホームページ。「みなさんの夢」のコンテンツでいくつかの夢をみることができます。

http://www.hello-iroha.com/dream/

■Vocaloid MEIKOコンテストの結果発表ページ。さすがみなさんクオリティが高いです。夢をかなえたという感じでしょうか。

http://players.music-eclub.com/contest_archive.php?id=017

投稿者 birdwing : 2006年6月11日 00:00

« 「グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する」佐々木俊尚 | メイン | 芝生。 »


トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://birdwing.sakura.ne.jp/mt/mt-tb.cgi/663