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2006年7月 7日

「コーチングが人を活かす―やる気と能力を引きだす最新のコミュニケーション技術」鈴木義幸

▼book06-050:やさしい、そして深いノウハウ。

4887591195コーチングが人を活かす―やる気と能力を引きだす最新のコミュニケーション技術
ディスカヴァー・トゥエンティワン 2000-05-31

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ビジネス書のなかには、モジュール化されていてわかりやすいのだけど、時間が経つとあまり残らないような本もあれば、やさしい言葉のひとつひとつが実践のなかで現実に楔を打ち込むような本もあります。また、ものすごく難解な言葉で分厚い本もあって、それが重厚な知識として蓄積されるものもあれば、厚いだけで何を書いてあったのかさっぱりわからないこともある。たとえば、ジェームス W.ヤングの「アイディアのつくり方」のような本は、薄っぺらくて簡単で、すぐに読めてしまうのだけれど、時代を超えてアドマンのバイブルとされています。上司からすすめられた必読図書で、ぼくも何度も読み直しました。

このコーチングの本も薄くて、あっという間に読めてしまうのですが、コーチングのバイブル的な本だと思いました。すばらしい。やさしい言葉で書いてありますが、そのひとつひとつはものすごく深いノウハウばかりです。体系らしき構造がみえなくても、これだけ端的に(見開き単位で)整理されていると、実用度も高いと思いました。特に最後で、さまざまな場面を想定して、たとえば「部下に仕事を任せることができない」であれば「信頼する(22) 失敗する権利を与える(94)」のように、50の技術のどれとどれを組み合わせればコーチングできるというアルゴリズムのようなものが書かれているのはすごいと思いました。

テクニックだけでなく、ご自身の体験や聞いた話から構成されているので、説得力も違います。たとえば次のような挿話にはじーんとしました。「同僚のSさん」の話で、風邪をひいた6歳の娘さんがひとりで入院しなければならなくなる。そのとき最初はやさしく諭していたのですが、次第に声を荒げてしまった。そこで次のようにしたそうです。引用します(P.38)。

どうしたものかと途方に暮れはじめたとき、Sさんはふっと思い立って彼女の言葉をただ同じように繰り返しはじめました。「入院するのやだよ」「やだよね」、「お家帰りたいよ」「帰りたいよね」二分くらい繰り返していたそうです。すると彼女がぽつっと言いました。
「お父さん、入院する」
コーチングの基本的な哲学は、「安心感で人を動かす」というものです。アメやムチで相手を動機づけるのではなく、安心感をお互いの関係の中につくりだし、それを相手が行動を起こすための土壌とします。

泣けた。ほんとうにそうだと思います。特に、ぼくも次男が喘息で入院したときに同じようなことを感じました。コーチングは決して部下を掌握するためのテクニックではなく、もっと深い何かを教えてくれそうな気がします。7月7日読了。

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(50/100冊+39/100本)

投稿者 birdwing : 2006年7月 7日 00:00

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