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2006年7月27日
「ざらざら」川上弘美
▼book06-055:ひらがなというやすらぎ、そしてユーモア。
ざらざら マガジンハウス 2006-07-20 by G-Tools |
ざらざら、というタイトルをぼくは、ざわざわ、と読み間違えていたのですが、ぼくにとって川上弘美さんの文章は途方もなくざわざわした気持ちを呼び起こす小説で、転がされるものか、と警戒しつつ構えながら読んだのですが、この短編集はそれほどでもなく、ほっとしました。クウネルというマガジンハウスの雑誌に連載されていた作品で、既に雑誌で読んでいたものもいくつかありました。この雑誌は写真がオシャレで、会社帰りのコンビニでビールと一緒に買いました。
いま、ぼくはたぶん左脳的な本を思想関連書や脳科学、ビジネス書などで吸収していて、そのぶん、右脳的な本を女性作家のやわらかい小説で吸収しているような気がします。そんなわけで、重松清さんの文庫も買っているのだけど、なんとなく抵抗を感じて読まずにいる。また、物語に関しては映画で満足しているところもあり、だからこそ詩的なものや、やわらかい言葉を小説に求めている。もちろん船戸与一さんなどの硬派な冒険小説も好きだけど、いま読まないのは、そんなフレームワークが自然とできてしまっているからかもしれません。
川上弘美さんの描く女性は、なんだかちょっと間が抜けていて、ぼーっとしているようで繊細で、存在感がある。「ときどき、きらいで」という短編では、女の子の友達ふたりが部屋で夕飯を作りながら「はだかエプロン」をします。男の永遠のロマン的ファッションとはいえ、女の子の友人どうしでそんな試してみることってあるんでしょうかね?と思いました。しかし、そのありそうでない、なさそうでありそうなシチュエーションを生み出してしまうのが作家のイマジネーションです。「椰子の実」では、ちょっと、む、と思いました。兄と妹を描いた小説なのですが、人間の幸運・不運というのはある時期だけで判断できるものではなく、折り重なるような波を描きつつ、結局のところプラスマイナスゼロに落ち着くのではないか。そんなことを深く考えました。7月27日読了。
*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(55/100冊+46/100本)
投稿者 birdwing : 2006年7月27日 00:00
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