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2006年12月28日

「ドラッカーの遺言」P.F.ドラッカー

▼book06-092:人間の大きさを感じさせる、あたたかい言葉に感謝。

4062820005ドラッカーの遺言 (講談社BIZ)
窪田 恭子
講談社 2006-01-20

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なんてあたたかい言葉なんだろう。この本を読んで、ぼくが感じたのはまずドラッカーの人間的な大きさでした。20世紀最高の知性といわれていて、どこか近寄りがたい雰囲気や、難しい理屈を想像していたのですが(もちろん他の本ではそんな専門的な深い知が展開されていると思うのですが)、この本のなかに書かれている彼の言葉は、ひとつひとつがまず心に染みる。頭脳ではなくて、です。

90歳を超えているのに(というのは失礼な言葉ですが)、インターネットの可能性について説き、これからの経済は情報の経済であるということが述べられています。新しい世のなかの動きを、先見的にとらえている。そして常に自らを革新していくことが重要であると諭されています。つまり個人のイノベーションが重要である、ということです。生まれついての才能やカリスマ性ではなく、リーダーとしての習慣がひとをリーダーに磨き上げていくという指摘もありました。

成果を挙げるためには、弱みをカイゼンする「問題重視型」ではなく、強みを徹底的に伸ばして機会をつかむ思考が重要である、という視点も大いに共感します。日本が直面しているのは危機ではなく変化である、という言葉も泣ける。そこには日本をあたたかくみつめる視線があります。この本に書かれている言葉のひとつひとつが心に響き、何度も読み直しつつ、自分はイノベーティブに生きているのだろうか、自分を磨くことを怠っていないだろうかと見つめ直したいような気持ちになりました。

ドラッカーの言葉もさることながら、巻末でジャック・ビーティがドラッカーを追悼し、回想を語る文章にも感銘を受けました。なんというか、クレアモント大学の春のキャンパスの風景が思わず再現されるような文章です。もちろんぼくはクレアモント大学なんて行ったことがないのですが、芝生の美しさとか木々の緑とか、そんな風景のなかを歩いていくふたりの姿が目に浮かんでしまった。

ジャック・ビーティの文章から引用ですが、ぼくは次の表現に考えるところが多くありました(P.184)。

ドラッカーは従来のやり方やプログラム、製品をあえて"捨てる"ことを提唱しましたが、当時その行為は大きな物議を醸しました。いまや彼が破棄を主張したものはことごとく存在意義を失い、ドラッカーの先見の明を表す証左となっています。
ドラッカーは確信していたのです――技術を革新していく環境のなかで育った若者は、変化が直線的でも予測できる形でもなく、連鎖反応的に起きる時代に力を発揮することができる、と。

まさにブログが登場したネットの社会は、連鎖反応的に進展していく社会であり、その社会を生き抜くためには執着や直線的な思考ではなく、多様かつフレキシブルにチャンスを掴む思考が求められると思います。

ドラッカーのように考え、そしてドラッカーのように生きたいと思いました。12月27日読了。

*年間本100冊/映画100本プロジェクト進行中(92/100冊+81/100本)

投稿者 birdwing : 2006年12月28日 00:00

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