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2007年3月18日
「デザイン思考の道具箱」奥出直人
▼book009:デザインがビジネスを変える、デザイン思考の重要性。
デザイン思考の道具箱―イノベーションを生む会社のつくり方 奥出 直人 早川書房 2007-02 by G-Tools |
すでにブログで「build to think(プロトタイプ思考)」について書いてみたり、「経験の拡大」として参与観察によるインサイトの見つけ方を考察したのですが、一般的には視覚的に表現することが主体のデザインの背後で、いわばOS(オペレーションシステム)として機能する思考について言及した本です。思考についてあれこれと思い巡らせている自分としては、非常に興味深い一冊でした。
なぜ興味深いのかというと、その方法論が、ビジュアル表現にとどまることなく、ソフトウェアの設計であるとか、組織のデザインにも応用できる点です。いま世界中のビジネスでイノベーションというキーワードが重視されていますが、革新的な何かを生み出すためには、新しい発想を生むためのシステム、あるいは方法論が必要になります。もちろんシステムや方法論だけでは新しい何かは作れません。けれども、そのヒントとなるようなことがこの本のなかにある。
自分の経験を振り返ってみると、ぼくはどちらかというと技巧に走る側面がありました。仕事においても、趣味の音楽制作においてもいえることかもしれません。けれども上っ面の技巧から創られたものは、説得力がない。何よりも凄みのようなものに欠けると思います。もちろん、現場で手を動かして積み上げた実績が凄みになっていくということもあるのですが、さらにフェーズを跳躍させるためには、「考えること」あるいは、哲学や世界観を持つことが大切になると思う。
考えすぎるのはよくないよ、という言葉が言えるのは、ほんとうに考え抜いたひとだけではないか。そんなことを考えています(苦笑)。一方で、考えながら行動することも重要です。まさに、考える―行動する、というふたつの側面を行ったり来たりしながら(プロトタイプ思考で)、トライ&エラーを繰り返しながら進んでいく。考えてから行動するのではなく、並列処理でカタチにしていく。それがこれからの社会に合ったスタイルのような気がしています。
と同時に、論理的な思考だけでなく、感性の部分を豊かにしていく必要がある。フィールドワークで調べた現場の行動などをシナリオに落としていくという解説があったのですが、ここではまるで小説を書くときのような印象さえありました。物語マーケティングだ、物語が大事だ、と声高に言うマーケッターはたくさんいますが、実際に物語を書いているひとはわずかしかいないような気もします。
しかしながら、マーケッターにおける物語とは、文芸的な物語である必要はなく、要するに重要なのは時系列におけるシークエンス(連続性)の把握ではないかと思います。その一般的なものはAIDMAだったりAISASだったりするのですが、ひょっとすると一般化する必要もないかもしれない。決められたフレームワークを使うのではなく、個々の案件に合わせたシークエンスをデザインできることが重要なのかもしれません。
まだきちんと考えがまとまっているわけではありませんが、いくつかのビジネス書をさらに読み進めつつ、デザイン関連の本にも目を通して、自分なりの理論、哲学を創っていきたいと考えています。3月8日読了。
※年間本100冊プロジェクト(9/100冊)
投稿者 birdwing : 2007年3月18日 00:00
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