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2007年11月24日
「佐藤可士和の超整理術」佐藤 可士和
▼アートディレクターの空間・情報・思考の整理術。
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最近のオフィスはフリーアドレス制を導入しているところも増えているようです(フリーアドレスについての解説はWikipediaの「フリーアドレス」で)。
フリーアドレスのオフィスでは、決められた席がありません。モバイル環境でノートPCを使えば、配線に煩わされることなく自由に仕事ができる。帰るときには明日ここに座るひとのために机の上には何も残せないので、非常に整備されると思います。ただ、日本的な企業においては、どこに座るかについて縄張り争いも生まれそうな気がしているのですが、いかがなものでしょう。
えーと、オフィスで大量の資料を積み上げているぼくからは想像できない世界です(苦笑)。席替えすることになると、いつも大変なことになっています。ついでにいうと、自宅もひどいことになっている。
ほとんど物置きになっている部屋は、積み上げた本の雪崩が頻繁に勃発して、CDはすでにラックからはみ出して平積み状態。子供たちのためなのか自分のためなのかわからない食玩とかガチャポン玩具も大量にあって困惑しています。なんとか活用できないかと思って、ブログで使ってみたりしたのですが、さすがにこれは整理しなくては、という状況です。
そんなわけで「佐藤可士和の超整理術」です。特に整理術の本を探していたわけではなくて、きっかけはデザイン系の著者の本を読みたいと思って本屋をうろついていたときに発見したのだけれど、PCのデスクトップやモノの整理だけではなく、思考を整理するという観点に惹かれました。
どちらかというとモノの整理は簡単で(ある意味、捨てちゃえば全部片付く。というぼくは捨てられないので簡単ではないのだけれど)、それよりも複雑に絡み合った課題を整理する方法のほうが大変です。仕事で重要なスキルでもあり、この部分を興味深く読みました。
実は書かれていることはそれほど目新しいことはないな、と生意気にも思ってしまったのですが、確かに内容は整理されている(笑)。そりゃあ整理術の本の内容が整理されていなかったらお話にならないですよね。真っ白な装丁のように、シンプルですかっとした印象を受けました。
何でもないシンプルなデザインですが細部が計算されていて心地よい。それが良質のデザインかもしれません。
誰でもできそうなんだけど、実はできない。奇抜なものを作るのがデザインではなく、奇抜な何かを削ぎ落としたところにデザインはあるのかも。この本もそんな感じでしょうか。とはいえ、もうちょっと感覚的にぴぴっとくるような視点があると嬉しいと思いました。深澤直人さんの本などには、そんな思考を揺さぶる刺激があったので。
空間の整理術、情報の整理術、思考の整理術のように展開されているのですが、1.情報把握、2.視点導入、3.課題設定というプロセスをチャート化しつつ、キリンの極生、明治学院大学のブランディング、国立新美術館のロゴデザインなど、佐藤可士和さんの実際の仕事の事例を引用しながら整理方法を解説しています。
最終章でまとめられているのですが、この言葉にすべてが整理・集約されているようにも思います(P.210)。
・空間の整理:整理するには、プライオリティをつけることが大切 ・情報の整理:プライオリティをつけるためには、視点の導入が不可欠 ・思考の整理:視点を導入するためには、まず思考の情報化を
そして次のようなポイントが挙げられています(P.214)。
■空間の整理 ・定期的にアップデートする ・モノの定位置を決め、使用後はそこに戻す ・フレームを決めてフォーマットを統一する ■情報の整理 ・視点を引いて客観視してみる ・自分の思い込みをまず捨てる ・視点を展開し、多面的に見てみる ■思考の整理 ・自分や相手の考えを言語化してみる ・仮説を立てて、恐れず相手にぶつけてみる ・他人事を自分事にして考える
このポイントのうち、特に納得したのは思考の整理における「他人事を自分事にして考える」ということでした。だいたい「他人事を他人事にして考える」か「自分事を自分事にして考える」ものです。ひょっとすると「自分事を他人事にして考える」無責任なスタンスだったりもする。
書店で立ち読みしてぐぐっときたのは、冒頭の部分で佐藤可士和さんが「アートディレクター=ドクター」という比喩を使われて、次のように書かれていたからでした(P.29)。
なぜなら、答えはいつも、自分ではなく相手のなかにあるからです。それを引き出すために、相手の思いを整理するということが、すごく重要になってくるのです。
これは、わかる。ものすごくわかるなあ。営業にしても企画にしても、自分を売り込む能力が必要だと思うじゃないですか。ところがかなりそうではなくて、相手のなかにあるもやもやとした思いをカタチにできるかどうかが重要です。だから、自分で勝手に描いたソリューションを押し売りしても、相手にとってはメイワクにしか思えないこともある。
整理のプロとしては、自分の思考が整理できることはもちろん、相手の思考を整理してあげられることが重要になるのかもしれないですね。
相手の思考を整理するためには、個人的な感情を一度捨ててすっきりしなければならないし、多面的な角度からみる必要もあります。そして多面的な思考のためには、経験値も必要だし、知識や絶え間ない学習も必要になる。もちろん過剰な情報に惑わされていたら整理できないので、そこで情報を取捨選択捨する技術も重要になる。
なぜ、捨てるのか、という言葉も考えるものがありました。次を引用します(P.213)。
でも、決して“捨てる”ことが目的なのではありません。あくまでも手段なのです。「何のために捨てるのか?」といえば、本当に大事なものを決めるため。そして、大事なものを、より大切に扱うためなのです。
うーむ。そうだなあ。確かにぼくは最近、何が大事なのか、ということをよく考えるのですが、大事なものを守ってより大切に扱うためには、いくつかの何かを捨てなければならないこともあるものです。
もちろん人生はそれほどシンプルではなくて、大切なものは複数あって、その複数の大切なものを維持するためにはかなり大変だったり整理できない気持ちに悶々ともするのですが、人生、整理の連続なのではないのかな、と思ったりもしています。簡単に整理できちゃうようであれば、それはそれでつまらないのではないか、と。11月3日読了。
投稿者 birdwing : 2007年11月24日 00:04
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2 Comments
- ママン 2007-11-24T12:39
-
お久しぶりです。お昼の休憩中。
「あー、先に鳥さんトコ読んでおけば良かった~」と思って(泣)
さっきお客さんと話していて、圧倒して帰らせてしまったんですぅ。
迷っていて、不安もあるのに、「あれもある・これもある」ってたくさん逆に詰め込んでしまったのが敗因だと記事を読みながら思って。
モヤモヤを「捨て」させてあげた方がこの場合良かったんだろうな~
いい記事をありがとうございます。
この本は買おうかな?と立ち読みしたんですけど難しそうでやめて(笑)
噛み砕いてくださったので、わかりました!
- BirdWing 2007-11-24T13:51
-
お久しぶりです。お仕事お疲れさまです。
ママンさんのお仕事はサービスも複雑なので、
なかなか難しいですよね。
でも、お客さんが欲しがっている要望をうかがって
ぴったりのサービスはこれでしょうか…という
おすすめができれば、顧客満足度No1の
販売ができるのではないでしょうか。ぼくは営業にしても販売にしても
聞く力が重要ではないかと思っています。時間もかかりますが、余計な雑談も結構大事ではないかと(笑)
それでリラックスして、
なんとなくお仕事お願いしようかなーと思うことも
ありますよね。なんといっても
仕事をしているのは人間なので。ぼくが思うに、提案するときには
ひとつの選択肢だけに絞り込んでおすすめするのではなく
とりあえず3パターンほど提出して
あとはお客さんに選ばせる、ということも重要かと思います。
というのは、お客様ご自身が選んだものは
ご自身でも納得されていると思うので。うーむ。この本はどうでしょう。
購入するまでもないと思いますよー。
780円ぐらいだったら買ってもいいかも、という感じです。
図書館で借りるぐらいで十分でしょうか。
さわりしか書いていないのですが
ちょっとでもお役に立てて嬉しいです(笑)えーと。いろいろと考えるところがあり
VOXとかSNSとか退会して整理してしまったのですが、
ありがとうございました。
このブログはライフワークとして続けるつもりですので
よければ、また遊びにきてくださいね。ぼくもママンさんのブログを拝見します。
仕事に子育てにジェットコースターな
楽しい記事を楽しみにしています。お仕事頑張ってください!
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