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2008年7月21日
[DTM作品] ouse(逢瀬)
うちの息子、次男くんは6月下旬から7月にかけて3週間ほど入院していたのですが、その間、会社には配慮いただいて定時で帰らせていただき、そのまま帰宅の途中に病院に通うようにしていました。病院の消灯時間は8時。早いときには7時、遅いときにはぎりぎりで7時半すぎに病院に到着して、ベッドで寝ている次男くんに会うことができます。
毎日かかさず病院に通っていました。誰に褒められるわけではないけれど皆勤賞です(記憶がないのだけれど)。病院までは徒歩では片道15分ぐらいかかり、往復で30分になります。へとへとに疲れ果てたときはタクシーを使ったり、自転車かっとばしたときもあるのですが、落ち着かない毎日のなかで病院で彼に会えるひとときは、たとえわずかな時間だったとしても尊い時間でした。彼に会ったあとで自宅に帰る前に、病院の地下1諧にある売店の前で缶コーヒーを飲むほっとタイムもまた、ぼくにとってはかけがえのない時間として忘れられません。
ところで、そんな状況のために慌しく過ぎ去ってしまったのですが、今月の7月7日といえば七夕。
織姫と彦星が1年のうちで一度だけ、天の川を渡って逢うことができるという天上の物語が展開される日です。そもそもこのふたり、結婚する前は働きものだったのですが、結婚した後にあまりの仲のよさのために織姫は機を織らなくなり、彦星も牛追いの仕事しなくなったようです。どんだけ仲がよかったのか・・・と思うのですが、天帝が怒ってふたりを天の川を隔てて引き離したとのこと(詳細は、Wikipediaの七夕を参照)。
七夕は、伝統的な遠距離恋愛かもしれない(笑)。映画では「近距離恋愛」というタイトルの作品も公開されたようです。予告編をYouTubeから。遠距離恋愛にかけているのだと思いますが、なかなかキャッチーなタイトルです。
そういえばパトリック・デンプシーが出ているディズニー映画「魔法にかけられて」を昨日観ましたが、こちらもなかなかせつないものがありました。
遠距離恋愛というものがどういうものか、あまりそういう経験の拙いぼくにはよくわかりません。しかし、離れていても通じ合う気持ちというのは強いものだろうと思うし、1年のうちの1日だけしか逢うことができないのであれば、限られた時間のなかでお互いに深く強く愛し合うことができるのではないでしょうか。毎日会うことができる間柄とは違った密度の高い時間を過ごせるような気がします。
時間は途方もなく永遠にあるような印象を受けます。会いたいと思えばいつでも会えるような関係、家族のようないつもいっしょに暮らしている関係であれば、ちょっとぐらい浪費しても大丈夫だろうと思うものです。けれども、何かが原因で遠く離れてしまったとき、お互いの価値を再確認できるのではないか。そして、会うことができる時間を大切に思うようになる。
と、長くなりましたが(苦笑)、そんなことを考えつつ久し振りに趣味のDTMで曲を作ってみました。息子の入院していた3週間は、まったくオンガクに触れない時間だったので、ほんとうに久し振りです。
タイトルは、「ouse(逢瀬)」としました。辞書によると、恋愛関係にある男女が人目をしのんで会うこと、だそうです。ちょっと恥ずかしい(照)。
しかしながら甘い印象だけでなく、せつなさ、激しい感情を曲調に込めたいと思いました。表現できているかどうかはともかくとして、ブログで公開してみます。
■ouse 逢瀬 (3分20秒 4.06MB 192kbps)
作曲・プログラミング:BirdWing
時計の音のような刻みのシークエンスで時間をイメージさせたいと思いました。影響を受けた音としては、ドイツのエレクトロニカユニットであるウルリッヒ・シュナウスでしょうか。そして、ギターの歪ませた音は、ウルリッヒ・シュナウスが影響を受けたというマイ・ブラッディ・ヴァレンタインあたりを意識しているかもしれません。いわゆるシューゲイザーです。弾かないで音源を切り貼りして制作しているのですが、テレキャスターを歪ませて、がこがこ弾きたい気分になりました。
Far Away Trains Passing By Ulrich Schnauss Domino 2005-11-01 by G-Tools |
Loveless My Bloody Valentine WEA 1991-11-05 by G-Tools |
リズムに関しては、若干ドラムのノイズが気になります。ローファイ志向ということで気にしないつもり(苦笑)。最近はいくつもフリーのWAVEファイルを切り貼りしてリズムを構成しているのだけれど、サンプルを選ぶ時間がものすごく長い。感性でチョイスしているのですが、もう少しシステマチックに制作できるといいなあというのが実感です。
天上の恋、七夕を意識したため、スペーシーな音像を作りたいと思っていました。そんなわけで空間系エフェクトとしてディレイを使いまくりです。途中でシーケンサーがメインになる部分では、フリーのVSTiであるCygnus-Oを重ねています。こんなインターフェースになっていますが、どこで拾ってきたか忘れました。
季節やそのときどきに感じたことを題材として、ブログを書くように曲を作り、ここで公開していきたいと思っています。制作方法は変わったとしても、10年ぐらい作りつづけるのが理想です。
織姫と彦星のあいだに流れるような、たゆとう時間の感覚でいろいろなことを継続していけるといいですね。ゆるゆると、ささやかなライフワークとして。
投稿者 birdwing : 2008年7月21日 14:13
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2 Comments
- かおるん 2008-07-22T12:13
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逢瀬、という語感から「情念」みたいな先入観を持ってしまいましたが、ずっと穏やかな曲ですね。確かに恋人というよりは息子さんとの逢瀬という感じです。
ちょっと前に、占い師さんにインタビューをしたとき、本物の恋人同士というのはどこかテレパシーのようなものでつながっていて、一方が別れようと心の中で決心すると、彼はもちろんまだ誰にも話していないのに、その晩に彼から電話がかかってくるなんてことがよくあるんだそうです。遠距離恋愛において、目に見える姿や聞こえる言葉以上に、そういう第六感が必要なのかもしれません。
ところで先週、パトリック・デンプシーがブレイクしたドラマ「グレイズ・アナトミー」のシーズン1をまとめて見たばかり。これも一種のテレパシーですかね。
- BirdWing 2008-07-22T22:45
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かおるんさん、コメントありがとうございました。そして曲を聴いていただいて、ありがとうございます。
逢瀬というと古典的な恋愛を想像します。確かに情念どろどろな感じです。ただ、ぼくはその情念どろどろも文学的な要素ではないかと思っていて、そんな情念を展開部分の歪んだギターで表現したつもりですが、性格のせいか実力のなさか穏やかになってしまいました。残念。
テレパシー、面白いと思いました。確かに想いは波動として伝播するかもしれません。というわけで、ネットのとある都市伝説をひとつ引用しておきます・・・
>> 遠距離恋愛のふたりがいました。
>> 電話はもちろんメールやチャット、ふたりだけの掲示板などで
>> 愛を交わしていたそうです。
>> ある日の早朝、
>> 眠れずに彼女が掲示板に書き込んでいると、
>> どこからか彼のコロンの匂いが。
>> かすかだけれど確かさをもって感じられるその香水の匂いは
>> 意識を集中していないと消えてしまう。
>> そのことを掲示板に書き込んだそうです。
>> でも、そのうち匂いは消えてしまった。
>> ところがその数分後に彼からの書き込みがあり、
>> 眠っていたのだけれど目覚めて、
>> ちょうど彼女の書き込みを読んでいたとのこと。香り通信だっけかな、ネットを通じてアロマを合成する機械をどこかでみました。けれどもそんな機械を使わなくても、オンラインでつながることによって、空間を超えて愛しいひとの気配が伝わったのかもしれないですね。現代の織姫と彦星は、会えない時間をメールやチャットでコミュニケーションしていたりして。
パトリック・デンプシー観ましたか。テレパシーでしょうか。テレパシーによるデンプシーつながりということで(笑)
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