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2005年1月19日
書くことのキャズム
ジェフリー・ムーアのマーケティング理論によると、「ビジョン先行」派(Early Adopters)と「価格と品質重視」派(Early Majority)の間には大きな溝(キャズム)があり、ハイテク製品がブレイクするためには、この溝を越えることが必要だという。以下の本で書かれています。
キャズム 川又 政治 翔泳社 2002-01-23 by G-Tools |
つまり、新しいもの好きで誰よりも早く新製品を使いたいオタク(Innovators)や製品の未来に期待して購入するビジョン先行派(Early Adopters)には売れたとしても、その先にいる価格や品質を慎重に検討するようなひとたち(Early Majority)に売るのが難しい、ということ。この溝を越えられずに消えていった製品も多い。
で、唐突なのですが、ブログに関してもキャズムってあるなあ、と思いました。
それは「読むこと」と「書くこと」のキャズム(溝)です。この溝を超えてしまえば書き続けられるのだけれど、勇気がなくて越えられない。
掲示板やコミュニティに関してはROM(見るだけで書き込まないひと)という言葉もありましたが、もしかすると「読む」と「書く」はまったく別の思考形態もしくは行動だったりするのかもしれません。
実はプライベートな話ですが、昨年の末に大学時代の友人たちと同窓会をやったときに、何かやろう!と盛り上がって、ココログを使ってブログを立ち上げました。グループで投稿ができるので、みんなで書いたら面白いと思ったわけです。とりあえず僕は言い出したひとなので書き込むのですが、メールで「今日のブログ読んだよ。面白いね」と感想を送ってくれても、なかなか書き込んでくれない。
ところが、本日、ついにメールしかくれなかった友人のひとりが投稿してくれました。すごい。キャズムを越えたわけです。
そうしてひとつひとつキャズムを越えることで、何かができるような気がします。積み重ね、だと思うんですよね。たかがブログですが、文章を書くことには変わりがありません。そして、人間の思考は言葉によるものだから、文は人なり、ということにもなる。書くことで自分を対象化できるし、書くことを発端として自分を変えることもできる。
複雑な文章や借りものの言葉を使っているうちはまだまだで、ほんとうは自分の言葉で語ることが重要かもしれません。それは決して複雑な言葉ではなくて、シンプルな言葉なのかも。
そんなことを考えていて思い出したのが、田坂広志さんの「企画力」「営業力」という本です。
企画力 「共感の物語」を伝える技術と心得 田坂 広志 ダイヤモンド社 2004-03-11 by G-Tools |
この本はすごく読みやすい。行間も空いているし、たいした本じゃないじゃん、というひともいるかもしれません。けれども、僕は読んでいて、1語1語がびしばし利きました。いろいろな経験をされて言葉を研ぎ澄ませると、こういう言葉になるんだな、と。つまりツボが的確に押さえられている。これを言いたかった、考えていたんだけど言えなかったんだよ、というエッセンスが詰まっている。例えば、プロは瑣末な仕事にも手を抜かない、なぜなら手を抜くと勘が鈍るから次に大きな仕事をしようと思ってもできない、ということなどなど。
「いつかはやりたい」と言っても、いまやっていなければできないのと等しいと思います。言うことは容易いが、行動は難しい。できることからはじめること。一歩踏み出すこと。そうして、できることを積み重ねること。
降り積もった雪のなかに足を踏み出すのは躊躇します。きれいな風景を壊したくない。踏み出した途端に、足を滑らせて転ぶかもしれない。それでも、踏み出したことで別の場所に行くこともできる。
一歩踏み出すひとたちを応援したい。そうして自分自身も踏み出すひとでありたい。どんなにリスキーであっても。そんな決意をあらたにしました。
投稿者 birdwing : 2005年1月19日 00:00
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