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2005年11月 9日

想像する力さえあれば。

企業の不祥事が頻発したときに言われはじめたコンプライアンス(法令遵守)ですが、最近は一般的に使われるようになりました。個人情報保護法というのが最近の大きな話題ではあったのですが、今後、企業においては日本版SOX法という内部統制が注目を集めているようです。

ちょっと難しくなっちゃいましたね。実は書いている僕もまだきちんと理解できていないので、それぐらいにしておきます。そんな動向もあるようなので、ビジネスマンとして最低の法律は知っておいたほうがいいかな、と思って、いま実務法務の勉強をしています。

こんなことも知らなかったのか、ということがぼろぼろ出てきて、恥ずかしいかぎりですが、なんとなく勉強している時間が楽しい。なぜ楽しいのか。いままで勉強をしていなかったからだろという理由も、もちろんあるのですが、学んでいる内容が法律だから、ということがあるかもしれない。学生の頃には法律なんてぜんぜんつまらなく感じていたのですが、きちんとあの頃に学んでおけばよかったなあ、と後悔することしきりです。

で、なぜ僕はいま法律が楽しいんだろう、と考えてみました。3つの理由があるようです。

第一に、構造的だから。体系的なんですよね、法律って(当たり前か)。パソコン用語にディレクトリという言葉がありますが、学んでいく知識がディレクトリ的に整理される。この下にこいつがぶら下がる、などなど。その論理的な構造が気持ちよい。

第二に、言葉を定義するから。「契約」と「取引」の違いは何か、ということをひとつひとつ丁寧に定義するわけです。なんとなく辞書を作るような作業で楽しい。

第三に、論理的なんだけど、解釈の余地があるというか非常に曖昧な部分が多い。だから弁護士さんたちは戦うことができるんでしょうね。傾向としてぼくはデジタル系の発想をするひとですが、アナログの曖昧さも好きです。

弁護士、と書いて思い出したのだけど、スティーブン・ソダバーグ監督に「エリン・ブロコビッチ」という映画がありました。ジュリア・ロバーツが演じる貧乏なシングルマザーが、たまたま知り合った弁護士の法律事務所で働きはじめる。やがて大企業に対する訴訟という重大な案件に取り組むようになる。エリンは、インテリではないので、机にしがみついて資料を探していないで、地域の住民たちと仲良くなって、重大な証言を集めていくわけです。

と、脇道にそれて映画のことを考えていて、はっと気づいたのですが、僕の勉強というのは机の上で言葉遊びをしているようなものじゃないか、と。浅いなあ。

法律は「現実とつながっている」ことが大事なんでしょうね。「契約」という言葉の定義の向こうに、品物を持ったおじさんと、お金を持ったおじさんがいて、互いに書面を交わして握手する、みたいな。概念ではなくて事例(ケーススタディ)に結び付けること、現実にその学んだ言葉が像を結んでいくことが大事じゃなかろうか、と考えました。マーケティングや企画だって、現実にぴったりと沿っていないといけない。概念だけをこねくりまわしてもしょうがないですよね(また横道にそれましたが)。

いま読んでいる教科書のなかには、随所にケーススタディ(事例)が出てきます。ところがこの、事例がどうもピントこないんですよね。どういうわけか、イメージを膨らませることができない。事例の部分で眠くなります。なんでだろう?

債務者Aと債権者Bのように匿名になっているからだろうか。□(四角形)と→(矢印)だけで解説されているからだろうか。その殺伐としたチャートから想像力を働かせることができれば、理解も進むかもしれない。しかしながら、この図形から現実を想起させるには、ただものではない力が必要になる。WとXとYから女性を想像するようなものでしょうか。この想像する力さえあれば、もう少し法律を理解できそうなんですが、現状では難しい。バラエティ番組じゃないけど、ドラマ仕立てで解説してくれるとわかりやすいのですが。先日、個人情報保護の教育用ビデオをみたのですが、事例がドラマ仕立てで、ものすごく面白かった。楽しめました。

経済にしても、政治にしても、法律にしても、現実の社会とつながっている学問です。ぼくの場合、ブンガクなんてものを専攻したばっかりに、どうも現実離れした子供っぽい考え方というか抽象的な概念思考が多いのですが、もうちょっと若い頃に成熟した思考を鍛えて、現実的な学問に関心を持っていれば、いまとは違った人生を歩んでいたかもしれません。

とはいえ、永遠に成長できるのが人生、とも思う。人間は、いくつになっても変わることができるものだと信じて、頑張ります。楽しいことを、みつけるのも大事ですよね。それから新しい発見も。「ほう!ほう!ほう!こうなってたのか法は!ほー!」と掛け声をかけつつ学んでいこうと思います(すみません。これはやりすぎでした)。

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■SOX法については、まず用語解説から。
http://coin.nikkeibp.co.jp/coin/nc/gk102/

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*1:ついでに今日は、知的財産に関する法律を学ぶセミナーに参加しました。今日のテーマは、技術移転。大学における発明や開発案件をどのように企業で活用するか、そのとき問題になることは何か、知財を資産化して売買するときにどんな契約などが必要か、その権利はどこに帰属するのか、というお話でした。面白かった。いまの仕事のなかでは生かせないのだけど、考え方のフレームは何か活用できそうな気がします。

投稿者 birdwing : 2005年11月 9日 00:00

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