« Gutevolk / グーテフォルクと流星群 | メイン | Gutevolk / グーテフォルクと流星群 »

2007年2月28日

デザインについて。

先週、インターフェースについて考察していたところ、デザインとは何か、という基本的な疑問がぼくのなかに生まれました。「ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代」という本では、今後はMBAよりもデザインのスキルが重要になるという大胆な予測が提示されています。去年読了した本ですが、その部分が強く印象に残りました。大袈裟だなあとも思っていたのですが、どうやらそうでもないようです。

デザインに興味があったので、何かよい本はないかと書店を徘徊したところ次の本を購入。現在、読書中(P.56)です*1

4152087994デザイン思考の道具箱―イノベーションを生む会社のつくり方
奥出 直人
早川書房 2007-02

by G-Tools

デザインに関していえば、美術系の大学・専門学校に行かれているひと、デザインを仕事にしているひとにとっては基本ではないかと思います。ぼくはデザインの専門家ではないので、私的デザイン考ぐらいでしょうか。技術もデザインも専門家ではなくて、最近といえば専門外のことばかりを書いている気がするのですが(苦笑)。

専門家ではないのですが、「ハイ・コンセプト」などの本によると、デザイン的な思考は創造的な企業において重要なポイントになってくるようです。ブログではイノベーションという長期的なテーマを主軸としていますが、いくつかの副次的な軸のひとつとして、デザインという項目を立て、情報をウオッチしておきたいと思います。

思考と表現=デザイン

まず、いつもの通りWikipediaから「デザインの語源」です。

デザインの語源はデッサン(dessin)と同じく、"計画を記号に表す"という意味のラテン語designareである。つまりデザインとは、ある問題を解決するために思考・概念の組み立てを行い、それを様々な媒体に応じて表現することと解される。

ここでは2つのステップがあると思います。つまり、1)抽象的な概念を考える「思考」と、2)考えたことを記号として具体化する「表現」です。語源的には、思考と表現=デザインといえるかもしれません。

Wikipediaのページには広義のデザインとして解説もありますが、こちらを引用・考察するとわけがわからなくなりそうなのでやめておきます。ただ、ここで書かれていることは次のようなことだと思います。

思考と表現がデザインであるとすると、美術や芸術だけがデザインではありません。いまこうしてブログで"思考"を"表現"していることもデザインといえるかもしれない(と、いえないかもしれない)。息子に将来の夢を語らせることもライフスタイルのデザインかもしれない。絵を書くこと、立体を作ることだけがデザインではなくて、モノが使われる用途を企画したり、都市の20年後を計画することもデザインです。

ところがデザインというと、"思考と表現"の後者の表現のほうばかりが注目されがちではないでしょうか。モノとして、ほれこれがそうだ、と画用紙やプロトタイプを提示することがデザインだと思われている。デザインの思考の部分については、デザイナーが考えることじゃないでしょう、という雰囲気もあります。けれども今後のビジネスにおいては、戦略、計画、ビジョン策定、世界観の確立といったこともデザインとして重要になっていくようです。

というまさにそのことが、いま読みはじめた「デザイン思考の道具箱」という本に書かれていて、GEやP&Gの創造的な取り組みが取り上げられています。単純に製品の外観をデザインするのではなく、使用者のニーズというところまで「想像」し、企業戦略をデザインする部分を重視しているとのこと。また、スタンフォード大学Dスクールや、IITインスティテュート・オブ・デザインのような次世代の人材を育てるために、デザイン×マーケティングのような教育が実践されているようです。

デザイナーの思考にふれる3冊

さらにデザインを要素化・類型化して考察しようとしたのですが、なんとなくうまく構造化できないので、いまのところは保留にしておきます。そこで去年読んだデザイナー関連の書籍から3冊をピックアップして、再度その内容を振り返ってみることにします。

思考をテーマにブログを書いているのですが、デザイナーさんの本は、ぼくにとっては宝石のようなアイディアの集大成でした。ドラッカーなどの経営書を読むのとはまた違った刺激があります。やはりそれは右脳的な思考という印象を感じました。あるいは世界を文節化すること、切り取る視点のうまさという気がします。ロジックを構築するというよりも、感覚で思考の輪郭を切り抜いていく。カッターのようにすぱっと斬ることもあれば、ちぎり絵のように和紙のけばだった端が残っていることもある。そうした言葉のひとつひとつに示唆を受けました。

▼「デザインの輪郭」深澤直人

考えない(without thought)という考え方、行為に溶ける、あたりまえ、ふつうなど、意図しない自然なものをデザインするという禅問答のような姿勢に打たれました。換気扇のようなCDプレイヤーなど、ありそうなんだけれども気付かなかった何かをデザインできる、すばらしい方だと思います。

4887062605デザインの輪郭
深澤 直人
TOTO出版 2005-11-10

by G-Tools

▼「デザインのデザイン」原研哉

深澤直人さんが感覚的であるのに対して、原研哉さんは評論的でしょうか。テツガク的であるといえるかもしれない。あるいはブンガク的です。谷崎潤一郎の「陰翳礼賛」がデザインの花伝書と言及するあたりなど、ロジックの面からも優れた読みものであると思いました。「情報の建築」という言葉にも惹かれます。

4000240056デザインのデザイン
原 研哉
岩波書店 2003-10-22

by G-Tools

▼「ナガオカケンメイの考え」ナガオカケンメイ

深澤直人さん、原研哉さんが文化的であるのに対して、ナガオカケンメイさんの書かれたものはビジネスの現場からの生の声が伝わってきます。日記形式だからということもあるかもしれないのですが、辞めていくスタッフに対する憤りがリアルに書かれていたりして、それがまたいい。デザイナーもまた現実に生きているという実感があります。

4757213093ナガオカケンメイの考え
ナガオカ ケンメイ
アスペクト 2006-11-17

by G-Tools

さて、本だけでなく、よいデザインに触れることで、頭脳ではなく感性でデザインをわかっていこうとも考えています。以下のGood Design Aworrdでは、録音機器から都市の交通、ロボットスーツなどもあってなかなか面白いと思いました。ネットで見ているだけではなくて、実際に触ってみたり体験することが大事なのかもしれませんね。

■Good Design Award

http://www.g-mark.org/library/2006/award-best15.html

*1:それにしても、気がついてみると今年になってCDを15枚も購入していました。ブログにレビューを書き始めたら面白くて次々に買い漁ってしまったのですが反省。以後、浪費を控えて書籍や映画に投資をシフトする予定です。

投稿者 birdwing : 2007年2月28日 00:00

« Gutevolk / グーテフォルクと流星群 | メイン | Gutevolk / グーテフォルクと流星群 »


トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://birdwing.sakura.ne.jp/mt/mt-tb.cgi/295