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2007年8月19日

やさしさのかけら。

以前から考えていたことですが、難しいことを難しく書くのは簡単で、難しいことを簡単に書くことのほうがずっと難しいと思います。

難しい言葉ばかり並んだ文章はなんとなく偉そうに見えるけれども、その実、あまりたいしたことを言っていないことも多い。

アタマがよいとはどういうことかという定義によるかもしれないのですが、自己満足で誰かに伝わらないものを書いているひとは、あまり優秀な頭脳を持っていない気がします。頭のよいひとは子供にもわかるように、科学の深い真理や洞察を語ることができるのではないでしょうか。

という難解な文章批判は、アタマが悪いぼくの単なるひがみかもしれないのですが(きっとそうだ)、難しいことを簡単に書けるひとになりたいと思っています。そのためには、できれば難しい本にも挑戦したい。

先日読んだ「アフォーダンス―新しい認知の理論」という本にも、アフォーダンス理論を提唱したウィリアム・ギブソンについて、次のように紹介されていました。引用します(P.15)。

生涯の伴侶だった発達心理学者のエレノア・ギブソンの話によると、彼はいずれの著作も10年以上の歳月をかけて構想し、執拗に書き直したという。どの本も文章はあくまでやさしく、内容はきわめて難解である。とてつもない内容がふつうの言葉で書かれている。

これが理想ですね(笑)。

技術もそうかもしれません。開発者志向の難解な言葉でこれはすごい!と言われても、一般のぼくらにはどうでもよいことだったりして、むしろ簡単に使いこなせるサービスの背後で、ぼくらには気付かないすごい技術が動いているようなことのほうがよっぽどすごい。

開発系のブログには、こんなこともわかんないのか?という高みから冷たく見下ろす視線をよく感じるのだけれど、わかんなくてもいいひとにとってはどうでもいいことだってありますよね(笑)。わからなくても十分にしあわせなわけで。そのどうでもいいことにしがみついているほうが、悲しい。

いま、ぼくはMovableTypeというブログ構築システムでこのブログを立ち上げて、四苦八苦しているのですが、そもそもこのシステムはベン・トロットという開発者が、デザイナーである妻のミナ・トロットから、

「作品を簡単にネットで公開できるシステムって作れないの?」

と相談されたところから生まれたそうです。そこで旦那であるベンは、妻のために開発力を駆使して、簡単にネットに作品をアップできるシステムを作ってあげた。それがMovableTypeの誕生だった。

なんだかおとぎ話のようで、美しい夫婦愛だなあと思うのだけれど、そのやさしさがあったから、現在、全世界で使われるシステムとなっているのでしょう。きっかけは、ほんとうにちいさな夫婦間だけのやりとりだったのかもしれません。けれどもその核にやさしさがあったからこそ、なんとなくこのシステムはいいなあとぼくは思う(ぼくには全然、やさしくないんですけどね。ちぇっ。泣)。

ふつうのひとはあまり考えないと思うのですが、ぼくはAppleにしても、SONYにしても、その背後にある人間的なエピソードに賛同できるかどうかを考えることが多いようです。技術力や企業力だけでなく、ひとに対する「やさしさのかけら」がサービスのなかに残っているかどうかを大切にしたい。

トロット夫妻はシックス・アパートという会社を興して、現在、TypePad(ココログなどで使われているシステム)やVOXというブログサービスを提供しています。

ぼくもVOXのサービスは使わせていただいているのですが、いまひとつ動作が重かったり、自由度がきかないなどの不満はあるものの、ブログを書きたい初心者が作品をすぐに発表できるような配慮があると感じました。ベンがミナを思いやったように、VOXにも企業がユーザーを思いやるやさしさがあるような気がします。というか、あってほしいですね。

さて。

このブログも、やさしさのかけらを忍ばせながら書いていきたいものです。

ぼくはテツガク的なこと、抽象的な概念に関心がありますが、それは決して日常の瑣末な生活から切り離せるものではない、と考えます。むしろ生活と分断された抽象論より、子供や家族と接したり、どこかへ出かけた一瞬に感じた何かのほうが、すばらしいテツガク的な発想を生むことがある。

だからぼくはプライベートなことと、パブリックに公開すべきことを混在させて、さらに抽象的な思考と日常的な毎日のあれこれを雑多に書きとめていきたいと考えています。

ただ、やはり雑多に書きとめていくと振り返るのが大変なので、もう少しカテゴリーを詳細に作ることにしました。次のような感じです。

  • homestyle : 家族のこと、子育てのことなど。
  • workstyle : 仕事、会議や企画を効率的に行う方法、仕事を通じて考えたことなど。
  • private vision : 個人的なテツガク(というほどでもなくて、プチ・テツガク的な何か)。
  • public vision : 社会的な動向についての考え、政治とか環境問題とか健康など。

と、英語にしているところが何かすかしている気もする(苦笑)。「家族のこと」「仕事のこと」「個人的な考え」「社会に対する考え」でいいじゃん、とも思うのですが。いずれ変わっていくことでしょう。

関係ないのですが、夏休みに田舎で空を見上げていたら、矢印のかたちで飛行機が飛んでいったので、その写真を最後に。

飛行機の矢印

あれぐらい高く飛びたいものです。物理的に、ではなくて精神的に。

投稿者 birdwing : 2007年8月19日 18:48

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2 Comments

ぽろり 2007-08-20T00:01

こちらではじめまして☆
ご挨拶が遅れましたが、お引越しお疲れ様でした!
PCに詳しくないので、見たことないものがいっぱいついててただただ驚きました(笑)
ご自分で色々されてるのですよね~。すごい。。。

久しぶりのBWさんの文章を拝見させていただいたわけですが、相変わらずすさまじい達筆ぶり!!!
お元気そうで何よりです♪

これからも応援しています!
また遊びにきまーす☆

BirdWing 2007-08-20T13:25

あらためて、こちらではじめまして(笑)。
お久し振りです。ぽろりさん。

β版をいいことに、やりたい放題ですが
なんとなくごちゃごちゃしている印象があります。
いずれはもっとすっきりしたものに変わると思います。

Flashの多用で重くないでしょうか。
見にくかったら教えてくださいねー。

いまだに操作していると、ぎょっ??とするような
ページが表示されることがあって、
自由度の高さと多機能ぶりについていけません。

ものすごい時間をかけて、びみょーなレイアウトの修正をしたりして、
(文字数とか行の間隔を一日修正していることがありました)
その時間があればエントリいくつも書けるだろう(苦笑)のような、
効率の悪さだったりもします。

ぼくの場合、アナログのリアルな世界でも
ノートを変えると(たとえば罫の狭いものから広いものへとか)
若干、文章が変わってしまうのですが、
やはりブログを書く場所を変えると、最初は戸惑いますね。

>相変わらずすさまじい達筆ぶり!!!

いやいやいやいや、達筆なんかじゃないですって(照)。
ブランクがあったので、やっと最近になって
いままでの書き方を取り戻せたような
そんな感じでございます。

美しい自然のなかで夏休みを過ごすことができて
よかったですね。

ぽろりさんのブログにも
また遊びに行きます。
これからもよろしくお願いします!

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