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2008年5月 2日
コンテンツありき、ユーザーありき。
気候はもはや夏ですね!あったかいを通り越して、暑くなってきました。今日は気温が30度を超えた地域もあったようですが、東京でもここ数日、陽射しの強い日がつづいています。そして、袖が短くなったり(つまり半袖)丈が短くなったり(つまりミニスカート)、街を歩くひとたちの装いも軽やかになってまいりました。
ええと、読まれている女性の方に対してはちょっと恥ずかしいのだけれど、ついでに自分のフェチ具合をカミングアウトするのもいかがなものかと思うのですが、あのう、女性の二の腕が好きです(照)。もっと好きなのは脚なんですけど・・・。
ところで、休日に「笑っていいとも!」をテレビで見ていたら、モデルの方が二の腕の美しい見せ方についてお話されていました。腕を身体から離す、つまり腋を空けると二の腕が美しく見える、とのこと。何気にインパクトのあるTipsではないでしょうか。つまり、腕を身体にぴたっと密着させると肉が横に広がるので、二の腕が太く見える。腋を離すと肉がたゆまないので美しく見えるそうです。お試しください。しかし、無理に脇を空けていると、鍛えられて太くなっちゃいそうな気もしますけどね。余計な心配か(苦笑)。
さて、コンテンツビジネスについて考察しようと思います(きりり)。
はああ、フェチな話をしたあとでは、きりりとできない(泣)。いや、しかし、気分を入れ替えて、真面目に考察します。
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先日、はてなのモバイル機能変更の騒動について考察したのですが、このときにさらに考えたのは、ユーザー視点からはもちろん、コンテンツビジネスという企業視点からこの機能変更がどういう意義があるのか、ということでした。
つまり、はてなも企業である以上、営利を追求しているわけです。この機能変更によって、はてなのビジネスとしてのチャンスは何かあるのか。というよりも、そもそもどうやって、はてなは儲けているのか。そして儲けとユーザー視点、サービスはどのような相互関係にあるのか。
通常、ブログやコミュニティのサービスを展開する企業の収益は、広告収入がメインではないかと思います。しかし、有料会員の制度があるはてなとしては、会員から徴収した会費も収入源といえるのではないでしょうか。そして、そのほかにも収入源はあるのではないか。
何気にアフィリエイトでしょうかね。憶測に過ぎないのですが、「はまぞう」というDVDやCDや本をブログに簡単に貼り付けられるサービスがあります。あれはAmazonのAPIを使ったウェブサービスだと認識していますが、はてなダイアリーの利用者が日記に貼り付けた映画やCDを経由して、訪問者がAmazonで何かを購入した場合、はてなにわずかばかりの収益が入るのではないか、ということを考えました。
個人でアフィリエイトプログラムを登録した場合には、おすすめCDからリンクを辿って購入した場合には個人にもちゃりーんとお金が入るのだけれど、きっと数%は、はてなにも落ちるのではないか。つまり販売代行のような仕組みです。したがって、無料のはてなダイアリー使っているユーザーで、映画や音楽好きで、はまぞうを使ってお気に入りのDVDやCDなどをばんばん紹介している場合には、きっと気付かないうちにはてなの収益に貢献している。自分のお気に入りのアルバムを紹介しているだけなのに、はてなを儲けさせている。
ということは、有料会員が増えなくても、映画や音楽好きの無料会員が集まってくれたら、わずかなちゃりーんも積もり積もってそれなりの収益になるのかもしれない。ええと、きちんと検証していないので、あくまでも憶測にすぎません。
なんか騙されている気がしますよね?コンテンツビジネスの裏側の仕組みをある程度理解すると当たり前のことなのだけれど、たぶんユーザーのほとんどは気付かないことだと思います。
はてなの近藤社長は、CNETに「1000万ユーザー規模のサービスを京都から--はてな近藤氏が目指すもの」というインタビューに応じていました。4月28日の記事から引用します。はてなの会社としてのミッションについての回答です。
ミッションですか(笑)。ちゃんと決めてくださいって、よく言われます。これですって1つ示せるものはないんですけど、いま言ってるのは、「自分たちの手で新しいものを作って、世の中の生活を変えよう」ということです。もう少し具体的にいうと、いまはとにかく、1000万人のユーザーを集めるような規模のサービスを作ろうと、数字としては掲げています。
どのように変えたいのか、が見えないのだけれど、1000万人会員を集めたいという意図は伝わります。
ちょっとうがった見方をすると、この記事は、横暴ともいえるモバイルフィルタリング対応や、強力な破壊機能(カテゴリーを消してしまう)のおまけで困惑を誘った「その場編集」機能の実装によって、ユーザーの乖離や批判が浮上したはてなが、急遽イメージアップするために、広報効果を狙った演出にも思えます。タイミングがよすぎる。
つまり、はてなぐらい注目されている企業であれば、CNETにバーター(広告費を出さずに記事を提供すること)で記事を提供する力はあると思います。さすがに編集部との癒着はないかもしれませんが、ユーザーに不安を与えたモバイルフィルタリングの騒動のあと、ユーザーを安心させるには悪しきイメージを払拭させる必要がある。だから広告塔として社長みずから夢を語った。
しかし、ぼくにはこの記事の発言自体が、モバイルフィルタリングの裏側の理由につながってしまうんですよね。どういうことか考察してみます。
あのとき、はてなはモバイルからアクセスした全員に「会員登録」をさせようとしていたわけです。つまり、会員を集める=収益構造を安定化させる、という企業の論理から、あの無謀な機能追加を強制的に行ったのではないか。
せっかくアクセスした日記なのに、会員登録しなければコメントができない・・・であれば、仕方なしに登録しようか、というユーザーもいたはずです。とくに著名人の有名ブログなどでコミュニケーションを楽しみにしていたユーザーにとっては、とにかく登録してコメントしたいと思ったのではないでしょうか。そんな狙いもあって、企業の論理から強制的に登録させようとして非会員ユーザーには登録を課すような機能を実装したのではないか、と。
1000万人会員を集めたい、という目標のためには、強硬手段も仕方ありません。ユーザーからの悲鳴は無視しても、登録は増やしたい。モバイル事業者からの要請と言い訳して、子供たちを有害コンテンツから守るという見せ掛けの正義で覆い隠して、実は登録増加を狙ったのではないか。
一方で、こういう視点もあります。会員以外のユーザーが携帯電話で知人のはてなダイアリーにアクセスしたらどうなるでしょう。
携帯電話の特性から、携帯電話の所有者はPCとは比べものにならないぐらい規模が大きいといえます。しかも、携帯電話は「いつでも、どこでも」個人がモバイルインターネットにアクセスできるツールです。電車のなかでも、ちょっと暇な時間にアクセスできる。ベッドのなかであっても、お気に入りの日記の更新を確認できる。
ここで何が起こるかというと、非会員ではないモバイルユーザーによるアクセスから、はてなのサーバーやインフラに24時間、アクセスの場所を問わずに過剰な負荷がかかることになる、ということです。そのための設備を増強しなければならないし、人員も増やさなければならない。収益に直結する増強であれば問題ありません。しかしながら、非会員のコメントは、単なる負荷にすぎない。はてなの収益には何も貢献しない。
だから、はてなは、モバイルフィルタリングという大義を前面に出しながら、自社の収益に貢献しない「負荷(=非会員モバイルユーザー)」を排除しようとしたのではないか。
ということを考えてみると、はてならしい施策ともいえます(苦笑)。ユーザーを単なる収益や機能改善のためのモルモットとしか考えていない。そんな企業姿勢が浮き彫りになる。
そういえば、はてなスターの機能を実装したときにも、ぼくらが時間を削って一生懸命に書いたブログの文章を「流れて消えていくもの」のように表現していたことを思い出しました。その拙い弁明に対して、ブロガーとして強い反発と憤りを感じたっけ。ユーザーに対する説明のひとつも満足にできない、へんてこな日本語しか使えない開発者のおまえに言われたくないだろう、と。
いま、秋草孝さんの「見えるデザイン」という本を読んでいるのですが、そのなかで、ひとびとの利益(=喜び)を優先することが企画には重要である、ということが書かれていました。
見えるアイデア ヴィジュアル・コミュニケーション・トレーニング塾 秋草 孝 毎日新聞社 2008-03-14 by G-Tools |
読み始めたばかりなのに、今日はさらに二冊購入。そのうちの一冊は、幻冬舎から、熊野英介さんの「思考するカンパニー」という本です。偶然ではありますが、こちらでも環境への取り組みを触れながら、営利を追求する企業であっても、利他的な思考の重要性を説かれています。
思考するカンパニー―欲望の大量生産から利他的モデルへ 熊野 英介 幻冬舎メディアコンサルティング 2008-02 by G-Tools |
自社の儲けや利益だけを盲目的に追求する企業は、利用者に愛想をつかされていく。利用者はそれほど馬鹿ではありません。むしろインターネットの登場により、利口になってきている。それよりも重要なことは、設立当初のユーザー視点に立脚した姿勢を、はてなは見失っているように感じています。あるいは時代の流れが変わりつつあることに気付いていない、というか。
「へんな会社」であるはてながどこへ向かおうとしているのか。正直なところ、ぼくにはよくわかりません。海外進出も志があったというよりも、何となく行ってみた(梅田望夫さんがシリコンバレーからの風も吹かせてくれたので)という印象があります。そして厳しい批判をすれば、結局のところ失敗したのではないか、という冷めた目もある。
しかしながら、開発のアイディア=企画に少しでもユーザー視点が加味されれば、若干はよくなるのではないかという期待もあります。「生活を変えるような」画期的なコンテンツありき、でもあるのですが、やはりユーザーありきのサービスではないか、と考えるので。
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あ、そうだ。備忘録的に書いておくと、もう一冊購入した本は、これ。
おしゃべりなデザイン―ニッポンのクリエイター12人のインタビュー集 田村 十七男 六本木 泰彦 Real Design編集部 〓出版社 2008-03 by G-Tools |
12人のデザイナーさんのインタビューです。ロボットのデザイナーさんもいる。ぼくはデザイナーではないのですが、デザインを仕事とするひとに対する憧れはあります。彼らの思考から、しなやかさを学びたいと思っています。
投稿者 birdwing : 2008年5月 2日 01:01
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