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2012年8月19日

「個」がメディアになるとき。

ツイッターやフェイスブックが登場し、ソーシャルメディアという言葉が使われはじめ、ブログや掲示板やSNSなどのアクセス向上を狙ったSM0(Social Media Optimization)という言葉が使われるようになったとき、「企業はメディアになる」ということが一般的に言われていました。

それ以前にも、BMWがブランデッドエンターテイメントとして、広告とも映画ともいえる動画を製作し、YouTubeで配信するようになった後に企業が盛んに動画活用をするようになり、TVメディアが崩壊して企業のネット配信に変わると言われていたように記憶しています。

インフォバーン小林弘人さんの『メディア化する企業はなぜ強いのか?』は企業のメディア化の方向性を示唆するものとして非常に興味深く読みました。さすがにクリス・アンダーソンの『フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略』を監修・解説し、レイチェル・ボッツマンとルー・ロジャースの『シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略』(これはぼくは未読)を監修されただけのことはあります。

「押し付けから惹きつけへ」、ゲーミフィケーションについて、ソーシャルメディアではソーシャル・スター社員の発掘・育成が重要など、『メディア化する企業はなぜ強いのか?』という本には頷くことができるご指摘が満載でした。しかしながら、電通の提唱するAISASに対してARLASというソーシャルグラフによる新しい消費行動の方式を提示されていますが、これは若干どうかな、と。一般的にもあまり浸透しなかったような気がします。

ちなみに、小林弘人さんの提唱されているARLASは、Awareness(気付き)、Recommendation(推薦)、 Like it!(いいね!(共感))、Action(購買)、Share(共有)によるBtoCもしくはBtoBのコミュニケーションです。『メディア化する企業はなぜ強いのか?』のP.217に書かれています。


4774149357メディア化する企業はなぜ強いのか? ~フリー、シェア、ソーシャルで利益をあげる新常識 (生きる技術!叢書)
小林 弘人
技術評論社 2011-11-29

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4140814047フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略
クリス・アンダーソン 小林弘人
日本放送出版協会 2009-11-21

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4140814543シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略
レイチェル・ボッツマン ルー・ロジャース 小林 弘人
日本放送出版協会 2010-12-16

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いまソーシャルメディアを見渡すと、津田大介さんは非常に密度の高い個人による通称「津田マガ」を積極的に配信されている。また、O円生活という態度経済のあり方をツイートして、それを『独立国家のつくりかた』という本にした坂口恭平さんなどユニークな方も登場している。津田大介さんは自らをメディア・アクティビストと肩書きに付けられていますが、きっかけとアイディア、そして行動力(アクティビティ)さえあれば、ソーシャルメディアの時代では、多様な活動を通してぐんと注目されるものです。


4062881551独立国家のつくりかた (講談社現代新書)
坂口 恭平
講談社 2012-05-18

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稚拙ではありながら、前回のエントリでぼくは自分の「負」の体験を含めて「ソーシャルメディアで学んだこと」として、久し振りにエントリを書きました。あまりにも個人生活を露にしたため、低俗だとおもわれたり、知性に欠ける印象を受ける方もいらっしゃったようですが、逆に、情熱的であるという評価もいただきました。また、「大丈夫?」というご心配もいただき申し訳なくおもっています。

企業がメディアになる時代の浸透は、やがて「個」がメディアになる時代をつくるのではないか、とぼくは考えています。

「個」がメディアになる時代は、風評リスク対策などの企業の法務部に求められていたようなスキルが必要になります。企業では、リリースなどの配信する情報は広報部や法務部などで客観的かつ徹底した校閲が入り、炎上したときの対策などが練られます。風評(レピュテーション)を侮ってはいけない。一度失った信用を取り戻すには、なみたいていの努力ではできない。コストもかかります。そうした「業務」が、メディアである「個」に求められるわけです。

とはいえ、いい「個」にしていなさい、とはぼくは言いたくない。

「いいことばかり言わない」で、批判や批評もできるのがソーシャルメディアの醍醐味であり、広告という「コミュニケーション」とは違う点だとおもうからです。広告業界のなかには、従来の広告(AD)の延長として、コミュニケーションプランニングを考えている方もいらっしゃるようですが、ぼくはそれでいいのかなあ、とおもう。ソーシャルメディアの時代には、いったんいままでのコミュニケーションをリセットして、もう一度、ソーシャルメディアに適した施策を考えなければいけないのではないか。

ところで、「個」がメディアになるとき、匿名か実名か、ということは大きな問題になります。

韓国の方からツイートでお話を聞いたのですが、韓国では実名が主体であり、匿名は信用されないとのこと。ただ、彼の発言を遡って読んで、彼には「実名至上主義」または「韓国優位主義」のような偏見があるようで、思考に偏向がみられる。もちろんアメリカなどでも(あるいは全世界で)、実名が主体となりつつあるのですが、残念なことに、日本では実名にすると陰湿ないやがらせを受けることもあります。日本の文化は特異なのです。そこで、ぼくは実名と匿名を使い分けることをおススメします。

実名と匿名の使い分けについては、ぼくも留意していて、「ソーシャルメディアで学んだこと」というエントリでは、ツイッター+フェイスブック+ブログを連動させて使う、というコンセプトを立ててみました。しかしながらツイッター+ブログとフェイスブックの投稿を連動させたところに脆弱性があり、ある方にフェイスブックでぼくの実名を晒されてしまいました。そこから急速にぼくが誰であるかが拡散し、誹謗中傷のようなものも受けています。いまメディアの運営主体に削除を要求するとともに、個別に訴えることも視野に入れています。

「個」がメディアになる時代には、自己防衛力も必要になります。先手で​攻める、防衛する、逃げるなど、多様な戦術を使い分けることが必​要。もちろん戦術(テクニック)だけでなく戦略も重要ですね。思考力、知力の戦闘になる。とはいえ、闘わずして逃げる、ということもありです。無駄なものに力を注いでも無駄であり、不毛ですから。

一方、ぼくは特定の少ないひとたちとブログでコミュニケーションすればいい、と考えていたのですが、ある方をツイッターで批評したため、またぼくが赤裸々なレンアイ体験を綴ったせいもありますが、ブログのアクセスが急増しています。以下にGoogle Analyticsからのキャプチャーを貼ります(数値はページビュー:2012年7月16日~8月16日)。


GAPV.jpg


瞬間PVですが、8月16日に1,903PV/日がありました。上限で計算するのはどうかとおもうのですが、このレベルのPVを維持するようにブログを書くとすると、1日約2,000PV、1ヶ月を約30日として、2,000×30=6万。6万PVがあれば、たとえ炎上記事や好奇心まじりのひとたちを含んだとしていても、「個」のメディアとして影響を持つレベルになるのではないでしょうか。

ただ、ぼくは上記の数値を冷めた目でみています。

ぼくはアフィリエイトで稼いで生活しているわけではないし、SEOでたくさんの訪問者を集めて喜んでいるような企業、ブロガーとは違う。ほんとうにわかるひとが読んでいただいて、そのひとたちと密なコミュニケーションをしたい。ブログのアクセス数なんて信用できません。あらためて自省すると、炎上させて得た結果は「信用」できない。と同様に、数万のフォロワーがいるツイッター利用者も、信用できない気がします。

先日、小山田圭吾さんが過去のいじめ経験を雑誌のインタビューで答えたことがあった、というエントリを読みました。ぼくはコーネリアスの大ファンで、「POINT」というアルバムなんて、もうやられた感いっぱいで何度も夢中になって聴き直しました。しかし人間としての彼は、そういうやつだったか。すーっと引いた。しかし、そのあとでまた考え直しました。アーティストには最低のやつもいますが、作品はまた別のものではないか、と。


B00005Q7O5point
CORNELIUS
プライエイド 2001-10-24

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ぼくは「個」メディアに人徳が必要であると考えています。

それは「発言」自体がそのひとの「作品」だからです。そして別途、リアルな発言者本人がいる。気をつけなければいけないのは、「バカ」とか「死ね」とか暴言、もしくは「うんこ」など稚拙な言葉を繰り返す「個」は、発言=リアルな人物の人格とおもわれてしまうことです。これはとても残念なことであり、もし実名でSNSをやっていらっしゃるようであれば、暴言を吐いた相手に侮辱罪で訴えられる恐れもあります。憲法21条の表現の自由についてもよく調べること、とツイートを通じて、法律に詳しい方からご教示いただきました。

また、氏名、性別、生年月日、職業はもちろん、個人の写真も個人情報です。「公開されているから流用した」では済まないかもしれません。ご本人の承諾は得ていますか。もし勝手に公開するなどのモラルを欠けば、問題になるかもしれません。

ぼくは聖人君子でも、ネットのエライひとでもありません。ただの匿名を使った無名のブロガーです。しかし、自分の経験を通じて、いま書いたようなことを学びました。自分を実験台にして学んだことですから、虚偽はありません。誠実なブロガーを標榜するので。

正論に嫌気がさすひともいるかもしれませんが、このようなエントリがソーシャルメディアの「品格」を保つ、ささやかな布石になればいいな、とおもっています。賢い「個」になりましょうね、SNSをお使いのみなさま。

実は別途、個人メディアを活用した、わくわくするような企画をおもいついちゃったのですが、あまりに長文なので(苦笑)ここまでにしておきます。その企画については「行動」して結果をお見せするつもりですので、乞うご期待!

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ご連絡

本日、ツイッターアカウントを鍵つきにしました。その後、フォロワー申請をされている方がたくさんいらっしゃるのですが、申し訳ありません。ぼくは当分フォロワーを増やさないつもりです。ぼくのブログやツイッターを読んで共感を得たかたもいらっしゃるかとおもいますが、ぼくが考えたことについては随時、ブログでまとめていくつもりです。ぼくに関心があるようでしたら、こちらに訪問していただくようにお願いいたします。

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追記 (8月20日):togetterをご覧になったみなさまへ

「いま話題の」ブロガーBirdWingです(笑)。ブログに訪問いただきありがとうございます。健康を心配されている方もいらっしゃるようですが、ぼくは元気です。今日も暑い一日でしたね。

あちらの記事では、取材に行こうとして104で取材先の電話番号を探したツイートを削除したことが取り上げられていましたが、取材先に関心がなくなってしまったので、その後は何もしていません。いろいろと勘違いされているようですが、勘違いもネットの「多様性」かとおもいます。

それから、togetterの記事は、あまりにも長すぎて(苦笑)、クライマックスに至るまでの経緯にテンポがない冗長なものなので、編集(いくつかのぼくのツイートを削除)させていただきました。ご了承ください。

夏休みも残り少なくなってきました。充実した日々を過ごされますように。

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追記(8月23日):いただいたコメントに関して

昨日は家族といっしょに昼食・映画・夕食をともにして充実した時間を過ごしました。楽しかった!子供たちの夏休みもそろそろ終盤が近づいています。

さて、数名の方から「感想」をいただきました。しかしながら、このエントリおよびtogetterやNAVERのまとめを読んでいただければわかるように、ぼくは炎上に対する感想は重要ではなく、「そこから何を学んだのか」ということに注目しています。いただいた感想は、そこまでのレベルに達したものではなく、非常に残念ですがブログでは不採用といたしました。また、個人情報に触れるコメントは保存し、ストーカー規正法に照らし合わせて今後を検討しています。ここはぼくの表現の場であることをご理解ください。

したがって、小林弘人さんの本を読んだ、この本はこういう部分も重要ではないか、とか、大学でもSNSの使い方に気をつけるように学生向けにわかりやすく資料を作っている例がある、とか、法律の観点からみてネットに潜む危険性はこんなところにある、とか、そんなご意見や情報を募集しております。ただの炎上の感想はご遠慮ください。

また、ぼくのうつ病をご心配いただいている方もいらっしゃるようですが、おかげさまですっかり寛解の上、完治いたしました。お医者さまからのお墨付きもいただいております。長かったトンネルをやっと潜り抜けた、というような爽快感でいっぱいです。お気遣いいただいてありがとうございます。

セミの声が聞こえます。まだまだ暑い日がつづきそうです。みなさま、体調を崩されないよう十分にご自愛ください。

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追加情報(8月24日)

あまりにも長くなりすぎたため、エントリを分割いたしました。ご関心のある方は、以下「ツイッターのトラブル対処法」でお読みください。

http://birdwing.sakura.ne.jp/blog/2012/08/post-250-e.html

投稿者 birdwing : 2012年8月19日 12:22

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2 Comments

匿名 2012-08-20T23:47

アクセス数があがったのは(絶対他の人が書いていると思うけれど)高広さんにからんで炎上したからで、あなたの記事の価値では全くないということは理解しておいた方がいいと思います(釣りか)

BirdWing 2012-08-22T05:07

コメントありがとうございました!匿名さん。

炎上させてアクセスを稼いだ件、しっかり理解しておりますよ。なのでぼくは「炎上させて得た結果は「信用」できない」と文中に記載しております。そして、ある意味、「仕掛けた」というと語弊があるかとおもいますが「無自覚」に炎上させたのではなく「自覚的」に試みたことです。

無自覚と自覚的の違いは、無自覚の場合、特定の誰かに対する感情的な憤りや嫉妬に翻弄されたものであるものに対し、自覚的であるということは、すべての流れを意識化において、自分を客観的にコントロールするということです。したがって、実名がばれる、挑発的な発言によって何らかのトラブルが生まれるリスクも計算しておりました。

オーソドックスなマーケティングの話をしましょう。たとえば、広く事例に使われているのでご存知かとおもいますが、コカ・コーラとペプシ・コーラの話。

コカ・コーラのようなマーケット・リーダーに、第二位の市場を持つペプシ・コーラが市場拡大を挑むとき、通常の広告戦略では太刀打ちできません。そこで、ペプシ・コーラが行ったのは比較広告という挑発的な手法でした。飲み比べてみればどちらが美味いかわかるというものです。

ブログの世界において、著名ブロガーの方と比べれば、ぼくはチャレンジャーどころかニッチャーですが、もしそんな無名のぼくがもっと名前を知られたいと考えたら「泥臭い」炎上のような方法でしか伸し上がることはできないのです。そこにはたくさんのリスクがともないます。しかし、リーダーを批評するような手法でしか伸し上がれない。

同様に中小企業やスタートアップのベンチャー企業の営業スタイルにもいえるかもしれません。実績でいったら大企業の著名な製品・サービスに対抗できない。したがって、おとなしい紳士的なアプローチでは効果がない。製品を名指しにして、「A社よりもこんなところが優れていますよ」という泥臭い売り込みをするぐらいの貪欲さが必要になります。

というようなことまで考え、では誰に、どのようにアプローチしたらいいのかを考え、今回のような手法をとらせていただきました。

ただ、結果としてわかったのは「ブログの記事の価値がなかったとしても炎上さえさせればアクセス数なんてどれだけでも稼げる」という不毛さです。そこで繰り返しますが、ぼくは自分が凄い、などと思い上がってはいません。ただ瞬間的なアクセス数には凄いものがあった(不毛だけれど)と冷めた目でみているだけです。同様にフォロワー数がムダに多いツイッターをご利用されている方、フェイスブックをご利用されている方にも疑問を感じています。

お分かりいただけましたでしょうか?とはいえ、勇気を出してコメントいただいたのは匿名さんだけでした(笑)コミュニケーションできたことを、たいへん嬉くおもっています。長文のお返事で失礼いたしました。

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